>> すき家 深夜休止6割個別労働者のミクロレベルでの「いやなら辞めればいいじゃん」路線、「下からの個別的で離合的な自主闘争路線」が、とくに階級的スクラムを組んでいる訳ではないもののベクトルの合成のような形でマクロ的な動きとなり、結果的に、すき屋の多くの店舗で深夜営業が中止せざるを得ない状況に至りました。
1167店 複数勤務確立できず
牛丼チェーン最大手「すき家」を展開するゼンショーホールディングスは30日、全店舗の約6割に当たる1167店舗で、深夜に複数勤務体制を確立できないとして、10月1日から当面、深夜営業を休止すると発表しました。
すき家は人手不足と新メニューの過重負担で、今年2月から3月にかけて一時閉店が相次いだため、4月に「店舗の労働環境改善」を経営の最重要課題にすると発表。会社が設置した第三者委員会は7月、深夜の1人勤務(ワンオペ)解消などを提言しました。
すき家店舗は現在、1981店舗。このうち、22店舗が閉店中で、116店舗は24時間型ではない店舗です。24時間営業の1843店舗のうち、深夜の複数勤務体制を確立できたのは、589店舗にとどまりました。87店舗は曜日によっては深夜も開店します。
報道発表では「今後の人員確保の状況によって深夜の営業状況は変化します」としています。
また、ゼンショーはすき家以外の焼き肉、うどん、ラーメン、カフェなどの事業をグループ別会社に承継し、ゼンショーの社名を「すき家本部」に変更するとしています。
すき家で働く労働者が加入している首都圏青年ユニオンは、「ワンオペ」を即時廃止し労働条件の改善を行うよう求めていました。 <<
旧来的な「上からの包括的で要求獲得型の階級闘争路線」が全く効果が無かった訳ではないと思いますが、「下からの個別的で離合的な自主闘争路線」が、あたかも「ベクトルの合成」のように増幅され、「労働市場における供給量の減少」という形で一番大きなインパクトを与えたということでしょう。「いやなら辞めればいいじゃん」路線は、労働問題関心者からはあまり評判の良いものではないようですが、やはり大きな力を持っているということを今回の事態は物語っていると言えます。
そして、今回の事態は、労働者がゼンショー社に対して依存した状態で起こったものではありません。すなわち、既存の体制に組み込まれることによって「過酷な深夜労働」の中断と引き換えに「何か別のもの」を代償として取らされたわけではありません。他者に対する依存度を下げるという点で、真の意味で自主的な過程を経ていると言えます。
『赤旗』は普段、自分たちが関係してきた運動が成果を挙げれば、たとえ僅かな成果であっても大々的に宣伝する姿勢をもつメディアです。その『赤旗』が、記事にしているとはいえ、それほど宣伝的な書きっぷりをしているわけではない所を見ると、旧来的な「上からの包括的で要求獲得型の階級闘争路線」の大家である共産党としては、面白くないけど認めざるを得ない事態なのかもしれません。
これから如何するべきか。いまの「下からの個別的で離合的な自主闘争路線」は、「横のつながり」がほとんどない全く個別的なものなので、「各個撃破」されてしまう危険性があります。その点では、旧来的闘争スタイルの支持者の主張は一面においては正しく、マクロ的なアクションも不可欠であると私も思います。その点、以前から述べているように、個別労働者は、単に自分の心の奥底から湧き出る自主的で創造的な要求、主体的な要求に従って良い環境を提供する個別資本家を選択するだけではなく、階級的な連携と支援のネットワークを形成してゆく(「鉄の団結」ではなく「緩い連携」で十分です)ことが必要でしょう。
また、単に依存度を下げるだけではなく、いずれは資本家の権力の源泉にも迫る必要があります。経済情勢が平常的な場合においては、今回のような市場経済を活用する方法は有効ですが、恐慌のような非常事態においては、なかなか難しいものがあります。そうした事態においても守るべきものを守るためには、単に他者への依存を下げるのではなく、自らの都合に依拠した自立的な立場を構築する必要があります。
しかし、決して忘れてはいけないのは、最後の決定的な部分は、上から降ってくるものではなく、下から積み上げてゆくことによって得られるという点です。今回の事態は、それを明確にしたといえるでしょう。