2014年10月06日

最後の決定的な部分は下から積み上げてゆくこと

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-01/2014100114_01_1.html
>> すき家 深夜休止6割

1167店 複数勤務確立できず

 牛丼チェーン最大手「すき家」を展開するゼンショーホールディングスは30日、全店舗の約6割に当たる1167店舗で、深夜に複数勤務体制を確立できないとして、10月1日から当面、深夜営業を休止すると発表しました。

 すき家は人手不足と新メニューの過重負担で、今年2月から3月にかけて一時閉店が相次いだため、4月に「店舗の労働環境改善」を経営の最重要課題にすると発表。会社が設置した第三者委員会は7月、深夜の1人勤務(ワンオペ)解消などを提言しました。

 すき家店舗は現在、1981店舗。このうち、22店舗が閉店中で、116店舗は24時間型ではない店舗です。24時間営業の1843店舗のうち、深夜の複数勤務体制を確立できたのは、589店舗にとどまりました。87店舗は曜日によっては深夜も開店します。

 報道発表では「今後の人員確保の状況によって深夜の営業状況は変化します」としています。

 また、ゼンショーはすき家以外の焼き肉、うどん、ラーメン、カフェなどの事業をグループ別会社に承継し、ゼンショーの社名を「すき家本部」に変更するとしています。

 すき家で働く労働者が加入している首都圏青年ユニオンは、「ワンオペ」を即時廃止し労働条件の改善を行うよう求めていました。
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個別労働者のミクロレベルでの「いやなら辞めればいいじゃん」路線、「下からの個別的で離合的な自主闘争路線」が、とくに階級的スクラムを組んでいる訳ではないもののベクトルの合成のような形でマクロ的な動きとなり、結果的に、すき屋の多くの店舗で深夜営業が中止せざるを得ない状況に至りました。

旧来的な「上からの包括的で要求獲得型の階級闘争路線」が全く効果が無かった訳ではないと思いますが、「下からの個別的で離合的な自主闘争路線」が、あたかも「ベクトルの合成」のように増幅され、「労働市場における供給量の減少」という形で一番大きなインパクトを与えたということでしょう。「いやなら辞めればいいじゃん」路線は、労働問題関心者からはあまり評判の良いものではないようですが、やはり大きな力を持っているということを今回の事態は物語っていると言えます。

そして、今回の事態は、労働者がゼンショー社に対して依存した状態で起こったものではありません。すなわち、既存の体制に組み込まれることによって「過酷な深夜労働」の中断と引き換えに「何か別のもの」を代償として取らされたわけではありません。他者に対する依存度を下げるという点で、真の意味で自主的な過程を経ていると言えます。

『赤旗』は普段、自分たちが関係してきた運動が成果を挙げれば、たとえ僅かな成果であっても大々的に宣伝する姿勢をもつメディアです。その『赤旗』が、記事にしているとはいえ、それほど宣伝的な書きっぷりをしているわけではない所を見ると、旧来的な「上からの包括的で要求獲得型の階級闘争路線」の大家である共産党としては、面白くないけど認めざるを得ない事態なのかもしれません。

これから如何するべきか
。いまの「下からの個別的で離合的な自主闘争路線」は、「横のつながり」がほとんどない全く個別的なものなので、「各個撃破」されてしまう危険性があります。その点では、旧来的闘争スタイルの支持者の主張は一面においては正しく、マクロ的なアクションも不可欠であると私も思います。その点、以前から述べているように、個別労働者は、単に自分の心の奥底から湧き出る自主的で創造的な要求、主体的な要求に従って良い環境を提供する個別資本家を選択するだけではなく、階級的な連携と支援のネットワークを形成してゆく(「鉄の団結」ではなく「緩い連携」で十分です)ことが必要でしょう。

また、単に依存度を下げるだけではなく、いずれは資本家の権力の源泉にも迫る必要があります。経済情勢が平常的な場合においては、今回のような市場経済を活用する方法は有効ですが、恐慌のような非常事態においては、なかなか難しいものがあります。そうした事態においても守るべきものを守るためには、単に他者への依存を下げるのではなく、自らの都合に依拠した自立的な立場を構築する必要があります。

しかし、決して忘れてはいけないのは、最後の決定的な部分は、上から降ってくるものではなく、下から積み上げてゆくことによって得られるという点です。今回の事態は、それを明確にしたといえるでしょう。
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2014年10月05日

資本家の権力の源泉を踏まえた自主化闘争;自立的な自主化であるために

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS02H1V_S4A001C1MM8000/
>> 有休消化、企業に義務付け 長時間労働を是正
厚労省が検討 2014/10/3 2:03
 厚生労働省は企業に対して社員の有給休暇の消化を義務付ける検討に入った。社員の希望をふまえ年に数日分の有休の取得日を企業が指定する。社員から有休取得を申し出る今の仕組みは職場への遠慮から休みにくい。労働基準法を改正し法的義務にすることで欧米より低い有休の取得率を引き上げる。「ホワイトカラー・エグゼンプション」など労働時間の規制緩和と並行して長時間労働の是正を進め、働き手の生産性を高める。


(以下、会員限定につき省略) <<
役所も色々考えてはいるみたいですが、こんなので如何にかなれば、事はココまで深刻化していないでしょう。いわゆる「ブラック企業」は、そもそも法律など守っていないのだから意味はありません。また、そうでなくとも、まず間違いなく休暇分が労働強度の強化によって跳ね返ってくるでしょう。

以前の記事でも述べましたが、物事を徹底するには、マクロ的・包括的手法だけではなく、ミクロ的・個別的な方法の展開が不可欠です。今回も、なんだかんだいって「義務化」というのは実質はさておき、インパクトとしては大きいので、それを追い風にミクロ的・個別的なアクションを展開してゆく必要があります。

特に、資本家の権力の源泉を踏まえた自主闘争が肝要です。それに切り込まない対応は、奉行所への請願と大差のない百姓一揆の亜種にすぎません。つまり、所有権、分配権、指揮命令権を意識し、単に権利・権益を獲得するだけではなく、それらに対して労働者階級側も一定の影響力を保持できた上での権利・権益の獲得することです。もしそれが出来ないのであれば、目の前の権利・権益に惑わされて体制内に絡めとられることなく、袂を分かつべきでしょう(それを支える支援が不可欠なのはいうまでもありません その点、ユニオンが転職支援することは本当に大きな意味を持っています)。

所有権、分配権、指揮命令権に対して労働者階級側が一定の影響力を保持することは、最近の記事で私が繰り返し否定している「体制内化」とは異なります。私が否定しているのは、既存の体制を本質的に改変することなく順応して行くという意味での「体制内化」です。これは、相手の「慈悲」に依存した、非自立的なものです。積極的に影響力を行使してゆくことは、それに当たりません。自らの都合に依拠した自立的なものです。それはむしろ「体制建設」とか「体制創造」というべきでしょう。私はこれを「階級闘争」と呼びたくありません。自主・自立的なアクションであることを明確にするため、「自主闘争」あるいは「自主化闘争」と呼びたいと思います。

体制建設・体制創造のための自主化闘争を推進するためには、ある種の「諦め」を排し、自主的意識を持つことが第一に必要です。「自主的意識」といっても、「世の中を変えてやる!」というような、旧来的な意識である必要はありません。以前より述べてきているように、ただ自らに対して素直になればよいだけです。キツいならキツいで無理しない。そもそもスペックが違う超人(社畜?)なんかを比較基準にするのではなく、「自分の基準は自分自身である」という主体的視点を持つ、その程度で構いません。下手に国家・社会・階級など意識するのではなく、ただひたすらに自分自身に素直になれば、それが合力的に社会を動かすのです。

また、経営管理能力の向上も必要です。資本家が前述の権力を持つ基盤には、御幣を恐れずに言えば、労働者階級が経営的に無能であるから、労働者たちよりは広い視野で経営に関与できる人々が、その地位と権限を私的に利用することによって、労働者階級がいいように利用されてしまっているというのは、否めない事実でしょう。真に自主的であるためには、文字通り、自己と周囲世界の主人にならねばなりません。そのためには、自主意識と経営管理能力の向上は不可欠でしょう。

なお、私は「資本家打倒」まで要求するものではありません。あくまで目的は階級間勢力均衡です。この世界は相互作用的であるというのが私の世界観ですが、それは労使関係にも例外なく適用されます。労使関係は呉越同舟です。

前述のとおり、「有給取得義務化」はインパクトの大きい動きであり、労働者階級はこれを追い風として、上述の原則に基づいてアクションを展開べきです。しかし、現実に目を転じてみれば、最近の階級闘争は役所頼みで、ミクロ的に対応する気概が本当に足りません。このままでは今回も空振りに終わる、それどころか下手に義務化だけが残って労働強化に繋がるんでしょうね・・・
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