2017年04月13日

朝鮮半島情勢を巡る、戦前の朝日新聞のような短絡的論調の「世論」

■戦前の朝日新聞のような論調
朝米対立の激化による朝鮮半島情勢の「緊張」が高まるとされているここ数日、戦前の朝日新聞のような短絡的で好戦的な論調の世論が展開されています。いわゆる「斬首作戦」が、もう今にも始まるかのような認識がわりと本気で語られています。

軍事行動は、あらゆるケースを想定し、どう転んでも対応できるように備えてから開始するものであり、きわめて戦略的なものです。軍事行動計画が目指す目標がハイレベルであればあるほど考慮すべきケースは爆発的に増加するものです。「危ないかもしれないから今のうちに・・・」といったレベルでは「斬首作戦」に至るはずもありません。

先日、あのトランプ米政権はシリアにミサイル数十発による攻撃を実施しましたが、逆に言えばその程度の攻撃に留まりました。かつて、イスラエルがイラクの核開発を阻止するために奇襲的空爆作戦を展開しましたが、逆に言えば建設中の原子炉の破壊に留まりました。政権担当者の排除というのは、アメリカやイスラエルのような国であっても、そう易々と選択するものではないのです。

この程度の「緊張」で、もう今にも「斬首作戦」が始まるかのような調子は戦争を軽く見すぎており、戦前の朝日新聞のような単細胞と言わざるをえません。

■甚だしい平和ボケ
また、軍事行動の要諦は兵站です。強力な武器があっても補給路が貧弱では打撃力にはなりません。アメリカといえども補給の展開には一定の時間がかかります。たしかに今、朝鮮近海には空母が向かっているようですが、本気で朝鮮の政権転覆を目指すとすれば、この程度では不可能です。兵站の無視――70年たっても相変わらずという他ありません。

さらに、日本の目と鼻の先で軍事行動が展開されるかもしれないというのに、自分たちの日常生活にはまるで関係の無いことであるかのような甚だしい平和ボケっぷりにも驚かされます。朝鮮人民軍の反撃の可能性、難民問題、日本国内に潜伏している工作員の破壊活動など懸念すべきケースはあまたあるはずですが、それらを考慮に入れている言説は乏しい。甚だしい平和ボケっぷりです。

■軍事行動がもたらす経済的影響を考慮していない軽薄なる世論動向
そんな中、意外なことに『新潮』が、経済の側面から朝鮮半島有事の展開を指摘しています。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170413-00519749-shincho-kr&p=2
>> 金正恩「斬首作戦」 実行ならば日本経済も打ち首に

デイリー新潮 4/13(木) 8:00配信


(中略)

■難民と死者の数は…

 朝鮮半島有事と言えば、参照したいのは、70年近く前の朝鮮戦争である。この戦争で起きた特需が日本の復興の足掛かりとなった。

「有事のドル買い」という言葉もある。これまでもミサイル発射など、半島が不安定になると、必ず円安、株高に振れてきたものだが、

「このタイミングで朝鮮半島有事が起きれば、余程のことがない限り、円高が起こるでしょう」

 と言うのは、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏。

「昨年のブレグジットの時がそうだったように、最近は世界的なリスクが起こると、その回避のために円が買われる傾向にあるのです。日本が大被害を受けた東日本大震災の時ですら円高になりました。今回の場合は、最悪100円を割ることも考えられます」

 シグマ・キャピタル株式会社のチーフエコノミスト・田代秀敏氏も同様で、

「円高になるのはほぼ確実で、そうなれば、株価も自動的に下がることになる。暴落と言ってよいレベルかもしれません。国債も外国人投資家から売り浴びせられ、金利が急騰し……」

 経済的に苦境に立たされるのだという。

 それ以上に、作戦が成功し、金王朝が崩壊しても、政情不安は否めず「少なく見積もって5万人、最大で20万人」(前出・志方氏)と言われる難民が日本海を渡って押し寄せ、その財政リスク、治安リスクは未曾有のものとなる。


(以下略) <<
外国為替レートの変動という経済面から日本への影響を分析するのは重要な試みです。軍事行動の展開を想定するということは、こういうケースも考えるということです。その点、こうした分析は世論から自生的には出てきていません。重要な論点を検討することもなく現段階で「斬首作戦」を取り上げ、はしゃいでいる手合いの認識の軽薄さが際立ちます戦前の朝日新聞のような短絡的で好戦的な自分たちの考え方と同じ原理原則で、現代軍事戦略が立てられているわけがありません

■「労働党体制の維持」が至上命題――意外と素直に「遺憾の意」を表明した過去も
今以上に緊迫の度合いが高まって「戦争秒読み」と言われる段階になったとしても、本当に「斬首」に至ることはないと思われます。アメリカ側が踏みとどまることもあるでしょうし、逆に朝鮮側が事態を回避することもあるでしょう。実は過去にもありました。たとえば、ポプラ事件では、情勢が意外な方向に展開し、分が悪くなったと見るや、キムイルソン主席は「遺憾の意」を表明しました。

「ポプラ事件はキムイルソンの老熟した戦略的対応であり、若くて予想不可能な行動をとるキムジョンウンにはできない」という指摘もあるかもしれませんが、キムイルソン主席もキムジョンウン委員長も「労働党体制の維持」もっといえば「自分の生存」を最重要事項として位置づけ、その目標を達成するためには何でもするという点においては、まったく同じです。キムジョンウン体制においても、国家記念日等のミサイル発射実験・核実験を行い国威を発揚するには絶好の節目であっても、対米関係を考慮して見送ったことがありました。キムジョンウン委員長は、「労働党体制の維持」を至上命題とする点においてブレはまったくなく、すでにそれを実践しています

この点は、よく言えば「名をこそ惜しむ」国、悪く言えば「インパール作戦」の国である日本とは根本的に異なります。キムジョンウン委員長も名誉・メンツは大切にしていますが、労働党体制の維持・自分の生存のほうが重要であるという点には少しもブレがありません。戦前の朝日新聞のような短絡的で好戦的な自分たちの考え方と同じ原理原則を、キムジョンウン委員長がとっているはずがありません。それほどまでに愚かであれば、来年で建国70年になる朝鮮民主主義人民共和国は、とっくの昔に滅亡しているはずだし、キムジョンウン体制が5年も続くはずがありません。

「あなたとは違うんです」。
posted by s19171107 at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする