NHK特設
http://www3.nhk.or.jp/shutoken2/senkyo/朝日特設
http://www.asahi.com/articles/ASK727WH3K72UTIL02W.html都選管
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/election/togikai-all/togikai-sokuhou2017/「単なる地方選挙」とは言えない東京都議会議員選挙。
@
まーた特定政党を「圧勝」させてしまった東京都民の懲りない投票動向
A実態が伴っているとは到底思えない小池知事率いる
都民ファーストの会の「なんとなくの大勝利」から見える4年後の次期都議選の波乱の予想
B
実質的勝者としての
公明党、負けは負けでも
「仕掛け」を残しているかもしれない
自民党C2議席前進したとは言え、
超逆風下の自民党を下回る19議席に留まった事実と新しい議会構成から見える「共産党の限界」が判明した開票結果でした。
■主要政党の獲得議席数(資料)
まず資料として、ここ最近の都議選の結果も交えて、主要政党の獲得議席数を便宜として以下に掲載します。
見方は、議席数(得票率|議席占有率)です。49(33.7|38.6)は、「49議席獲得、得票率33.7%、議席占有率38.6%」ということです。
データは都選管ホームページ拾いました。間違っていたらそれは打ち間違いです(調べればすぐバレるウソなんてつきませんよ)。
調整するのは手間がかかりすぎるので、
『赤旗』がやっているような調整はしていません。
05年 09年 13年 17年
都民 49(33.7|38.6)
自民 48(30.7|37.8) 38(25.9|29.9) 59(36.0|46.5) 23(22.5|18.1)
公明 22(18.0|17.3) 23(13.2|18.1) 23(14.1|18.1) 23(13.1|18.1)
民進 35(24.5|27.6) 54(40.8|42.5) 15(15.2|11.8) 5( 6.9| 3.9)
共産 13(15.6|10.2) 8(12.6| 6.3) 17(13.6|13.4) 19(13.8|15.0)
@まーた特定政党を「圧勝」させてしまった東京都民の懲りない投票動向
今回の自民党の壊滅的敗北は、なんといっても
「驕り」であることは、あまり異論はないのではないかと思います。ではなぜ、都議会自民党は、身の程を知らないほどにノボせ上がってしまったのでしょうか。それは突き詰めれば、
前回都議選における全員当選の「成功体験」と、昨今の「自民一強」の情勢に起因するものです。議席を寡占的に占めているからこそ、牽制球を投げてくるライバルがあまりにも弱小すぎたからこそ、都議会自民党は、やりたい放題「できた」のです。気の緩み・驕りが生じたのです。
一強政治がどれほど緩み・驕りを生むのかをこれ以上ないまでに実例として明白に示した都議会において、その反省を生かし、
「特定政党の議席寡占」を正す絶好の機会、勢力均衡に近い議席数にもとづく相互牽制で、緊張感漂う議会に造り替える絶好の機会が、今回の都議選だったのです。その点において、今回の都議選においては、「都民ファーストの会を圧勝させ、自民党の議席を激減させる」のではなく、
「特定政党に突出した数の議席を与えてはならない」という方法論で臨むべきだったのです。
都議会自民党の「やりたい放題」に対して「お灸を据える」というのは、今回の都議選の一大テーマで、そのテーマは達成されました。自民党は特大級のお灸を据えられたと言えます。しかし、
コトの本質を踏まえず、懲りもせずに今度は都民ファーストの会に圧倒的な数の議席を与えてしまったのが東京都民なのです。
都民ファーストの会を熱烈に支持した有権者の中には、「都議会自民党の魂胆が邪悪である一方、都民ファーストの会は善意の政党だから、都民ファーストの会に投票するのがベスト」という観念を持っている人もいるかもしれません。しかし、都議会自民党は決して、他党に比べて突出して邪なる魂胆を持っているとまでは言えないでしょう。
そもそも、政治において、政治家・政治勢力の「邪な思いの有無」言い換えれば「善意」に期待する制度構築は自殺的です。ガリガリの利己主義者が罷り間違って権力を手にしてしまったとしても権力の暴走がないように多重の保安機構を備えるべきなのです。「絶対的権力は絶対に腐敗する」といいますが、仮に心の奥底では邪なる魂胆を持った輩が議場に
「いた」としても、その邪な魂胆を実現
「できない」ようにするのが政治制度づくりなのです。
【左翼運動の再生を目指す立場から、少し脱線して。。。】
左翼運動内部でよく言われる「ソビエト・ロシアの社会主義はレーニン時代はよかったが、スターリン一味によって大きくゆがめられてしまった・・・しかし、それはスターリン一味のせいであって、社会主義のせいではない。レーニンも『スターリンは粗暴すぎる』と言っている!」といった形の、妙ちくりんな「擁護」論は、換言すれば、「社会主義体制は最高指導者や幹部の資質によって天国にも地獄にもなりうる欠陥制度」と言っているに等しいものです。
邪悪な資質を持った個人・派閥の政治工作程度で180度転回してしまうような制度は欠陥制度というほかありません。スターリンの独裁政治は、主体的条件としてスターリン個人の性格も勿論影響しているでしょうが、客観的条件としてレーニンの思想・レーニンの党・レーニンの国といった「スターリン個人」に還元できない要素も影響しています。
レーニンの無法的暴力信仰の非や、ボリシェビキの党組織がすでにレーニン時代から脆弱性があったことを認めなければなりません。また、このことはCollectivism(集産主義)が内包している本質的危険性にも波及する話であり、Collectivismの一種であるCommunism(共産主義)にも付きまとうリスクであることを正しく理解すべきです。
【脱線終わり】
もっとも、今回の都議選では直前まで「都民と自民が激しく競り合う」とされており、だれも自民がここまで大負けするとは思っていませんでした。
「ふたを開けてみたらビックリ」という部分はあるでしょう。しかし、もう少しバランスを取ろうとは思えなかったのでしょうか。創価学会・公明党が年明け早々逃げ出し、今年は自民党への逆風がずっと吹き続けていた半年、
いつもの「風」が吹くパターン、後で後悔するパターン。そろそろ学習して、意識的にバランスを取ろうとしてもいい頃ではないでしょうか。A次期都議選の波乱の予想
実態が伴っているとは到底思えない小池知事率いる都民ファーストの会の「大勝利」は、4年後の次回都議選を想定不可能なものにしています。
しがらみに切り込もうとする小池知事の政治姿勢は痛快なものがあるとはいえ、就任から1年が経とうとする今日においても、独自の成果は果たせていません。豊洲市場問題に果敢に切り込んだことは評価すべきです。結果的に豊洲移転になったとはいえ、前任者の決定を再考せずに機械的に豊洲移転を承認することと、ゼロベースの再考の末に前任者の結論と同じになったことは雲泥の差がありますが、とはいっても、
独自的な結果は残せていないのは事実です。
いまだに「反自民」が鮮明なる成果を挙げられていない・政権担当能力を十分には実証できていない事実を見るに、確かに利権まみれとはいえ自民党という政党の調整能力は、「相対評価」的な意味において、割と現実主義的なのかもしれません。絶対評価的な視点において断固に反自民の私としては、とても気に入らないけど、政治というものは結局は「よりマシ」を選ぶものです。「絶対評価」ではなく「相対評価」こそが政治である点において、このことは事実として受け入れざるを得ないとも思っています。
そうした自民党の政策に対して、「斬り込み隊長」としての素質は証明しているとはいえ、
「建設者」としての素質は就任から1年が経とうしている昨今においてもハッキリしない小池知事と、その取り巻きたちの新党の大勝利は、一抹の不安をもたらすものです。
B実質的勝者としての
公明党、負けは負けでも「仕掛け」を残しているかもしれない自民党
前項と関連する話ですが、この選挙の実質的勝者は、23議席から前進も後退もせず、得票率においてもここ最近、
特に変動のない公明党でしょう。
政治とは力の問題ですが、ここでいう
力は単純に議席数であるとは言い切れません。少数派であったとしても
要点を抑えれば、大きな役割を果たすことができます。逆に、それなりに議席数を持っていても、議会構成上いいポジションを抑えていない党は、思うように目立てないものです。
都民ファーストの会は、ほとんどが素人で出来ている集団です。
この自民大逆風をも生き抜いた「古狸」どもや、行政専門家としての都職員たちを相手にして、どれだけ与党としてやっていけるのかというと、惨憺たる予想ばかりが出てくるものです。その点において、
公明党都議は「小池派にとっての老練した友軍」であり、「49議席・得票率33.7%」の素人集団とは質的に異なる「23議席・得票率13.1%」の集団です。都民ファーストの会は、公明党がいなければ回っていかないことでしょう。その意味で、「23議席・得票率13.1%」だけでは
単純に測れない政治的力を持ったと言えます。
あるいは、
「オリンピック成功」を錦の御旗として、遠くないうちに都議会自民党との関係修復もあるかもしれません。「反自民」を一つのアイデンティティとしてしまっている都民ファーストの会では自民党との関係作りは困難ですが、「オリンピック成功を至上命題とする都知事」という肩書であれば、逆に「大同団結して協力しなければならない」という
大義名分を掲げることができます。
足早に都民ファーストの会代表を辞任し、「あくまで都知事」とした小池氏。都議会自民党とは対決しつつも、自民党本部とはそこまで対決を深めていない小池氏。そもそも、
小池知事は決して「リベラル」などではなく保守政治家です。何か企んでいますよ、あの人。
C2議席前進したとは言え、
超逆風下の自民党を下回る19議席に留まった事実と新しい議会構成から見える「共産党の限界」さて、共産党。小見出しが既にマイナスですが、まずは良かったところを述べておきましょう。
今回の都議選における広報チラシで共産党はいつもどおり福祉拡充を主張していましたが、その財源として、割と現実的なプランと数値を持ち出してきました。共産党の財源論といえば、ハチャメチャなのは論外として、少しマトモであっても、かつての「内部留保収奪論」の「たった1パーセント」といったような曖昧な言説に終始し、結局のところ、あまり具体性を持てなかったものでした。
もうすぐ結党100年になるが今まで一貫して野党でありつづけた共産党に、すべての政策について通暁せよとまで言うのは、あまりにもハイレベルな要求ですが、そうはいっても、
福祉や平和、人権といった「党の十八番」については、ある程度の政権担当能力を見せつけなければなりません。ただでさえ共産党は「非現実的な政策」と揶揄され、それが党勢拡大の一つの足かせになっているのだから、
そうした評判を跳ね返すような政策を、的を絞ってもよいから打ち出すべきなのです。その点、
今回は、政策立案的に進歩したと思いました。
小見出しに沿った内容に移りましょう。
2議席前進したとはいえ、
これ以上ない逆風下の自民党の獲得議席数に及ばなかった共産党。思想的には相いれないものがあるとはいえ、共産党員の日々のひたむきな努力は私も実体験として知っており、それには率直な敬意を表する(方向性はどうしても賛同できないが、その純粋性は率直に尊敬に値する)ものでありますが、
やはり、20議席前後が限界なのでしょう。
勝利したとはいえ、限界点が見えつつあるのが共産党です。
以前から述べているように、在野勢力は政権を目指さなければなりません【※1】。
【※1】このことは、7月8日づけ「
やっぱりカルト、ますますカルト」でも改めて論じましたので、あわせてごらんください。
得票率はあまり変化していません。09年の8議席があまりにも衝撃的でしたが、このときは得票率に対して獲得議席数が異常に少なかっただけで、
得票率ベースでみれば大して党勢は変化していないとみるべきです。民進党は今回も、すべての指標で激減していますが、その分が共産党に流れたとも言えなさそうです。
先に公明党の項において、政治力は単純に議席数であるとは言い切れないと言いました。このことは、まさに共産党についても言えます。
前回都議選で共産党は8議席から17議席に大躍進しましたが、
この4年間、倍増したほどにはパッとしなかったというのが率直なところではなかったでしょうか。たとえば
「豊洲市場の危険性」は、共産党が10年以上前から指摘していたことですが、
13議席時代も8議席時代も17議席時代もほとんど何の動きもありませんでした。しかし、以前から共産党がずっと指摘してきたものと大差ない内容を小池知事がぶち上げた途端に豊洲問題は大きく動きました。それでも、その
急な激動の中で共産党は独自の立ち位置を見いだせませんでした。我が物とできませんでした。コンクリートの上を流れた地下水がアルカリ性だから豊洲は危険だなどと騒ぎ立てて、土木・建築関係者からバカにされたくらいでした。
実は、
8議席にすぎなかった09年〜13年のほうが、キャスティングボードの一翼を担っていたという点においては、都議会共産党は大きな政治力を持っていたと言えます。自民公明で61議席、民主単独で54議席だった
当時の議会構成において、8議席の共産党の動向は、生活者ネットと無所属の計4議席と並んで極めて大きな意味があったからです。
それに対して
前回17議席のときは、自民公明で80議席以上を寡占していました。そして
今回の19議席においては、他方で小池派が70議席以上を寡占。
議会構成上の立ち位置は大して変わっていないのです。
8→17→19を喜ぶのはよくわかります。共産党の地域活動は、革命的ロマンと信仰に近い確信がなければ絶対無理です。しかし、冷徹に「科学の目」で見れば、
そんなに喜んでいる場合でもないのです。
■最後に
予想以上の自民党の大敗・小池新党の大勝利があったとは言え、あまり革新の可能性を感じない都議選でした。
■管理上のお断り
この記事は「あまり革新の可能性を感じない都議選開票結果」として7月3日2時58分10秒に投稿したものですが、7月4日22時35分づけで大幅に内容を拡充したものに書き換えました。
本来であれば、拡充分は別記事とすべきところですが、かなり内容が重複すること、また、当ブログは検索エンジン経由での来訪者がほとんどであり主張内容を少数の記事に集約すべきであるとの判断から、既存記事を再利用して内容を統合することとしました。
これに伴い、記事のタイムスタンプも変更としました。
(私以外にとってどうでもいい断り書き情報?)