>> 両備2労組 ストライキ予定から一転「無料で運行」岡山市の新規バス路線参入で■利用者には影響を及ぼさない一方で経営側には打撃となる両備グループ2労組の集改札スト
4/25(水) 11:52配信
岡山市の新規バス路線運行をめぐり、競合する両備グループの2つの労働組合が26日と27日にバスなどのストライキを予告していた問題です。労働組合は、運行するが改札はしない「集改札スト」に変更し、バスや路面電車を無料で走らせると発表しました。
(両備バス労働組合/高木秀治 執行委員長)
「全日、集改札スト、無改札で運行させていただきます」
(中略)
両備バス労働組合は、「新規参入によって労働者の生活を維持できなくなる」として、23日、西大寺線で1時間のストを行いました。
さらに、26日と27日にもストが予定されていましたが、「会社側にダメージを与えた上で、利用者に不安を与えたことをお詫びしたい」として、バスは走らせるものの料金の徴収を放棄する「集改札スト」を実施すると発表しました。
西大寺線で26日は1時間、27日は終日行なわれる予定です。
(両備バス労働組合/高木秀治 執行委員長)
(Q.27日運行開始する「めぐりん」新路線を意識したものではない?)
「めぐりんを意識するのは事業者側ですよね。私たち組合は意識も何もないです」
(以下略) <<
昨年12月26日づけ「商行為の一環としてのストライキ――自由経済を維持・拡大するためにこそストライキは展開すべきだが、その労働者の利益にとっての弊害についても認識すべき」や2月21日づけ「国労・動労の方法を克服した東労組のスト戦略」でも述べましたが、労働争議における労働者側の戦術は、「利用客を敵に回さない一方で、企業当局側には打撃を与える」という方法論であるべきです。一企業の労使はお客様(消費者)との関係においては「呉越同舟」の関係にあるという事実を直視し、「誰を敵に回してはならないか」ということを十分に承知した上で戦術を練らなければならないわけです。
その点、今回の両備グループの2労組が採用した「運休スト撤回・集改札ストへの変更」は、「利用者には影響を及ぼさない一方で経営側には打撃となり、その要求を迫る」という点において、賛同し得る方法だったと思います。
消費者にしてみれば「どうしてお宅らの内輪の問題に私たちが付き合わされなければらないの?」と納得しかねるような展開、利用者・消費者が置き去りにされがちだった労働争議からの進歩です。「労使の対立」ばかりに気を取られ「生産者と消費者の関係」を見落としがちだった労組運動に、より大きなスケールを意識した視点が導入されつつある吉兆です。国労の轍を踏まないためにも、こうした形での労働運動が更に展開されることを願っています。
■労使が手分けして抗議活動を展開する一環に位置付けられる今回の集改札スト
なお、岡山市における問題のバス路線への新規参入認可については、企業側も決して望ましいことだとは思っていないところです。企業側としては、今回のストライキは市への交渉材料として活用し得るものです。ある意味において、企業側と労働者側が「同じ方向」を向いており、対立構図にあるわけではないのが本件。今回のストライキは、新規参入認可を巡って「労使が手分けして対抗している」とも捉え得るものです。「こういうストライキの使い方もあるんだなー」と思ったところでした。
■両備グループの件とは真逆の消費者直撃の労働運動
これに対して、ほぼ同時期的に以下の記事が配信されました。おなじみの今野晴貴氏です・
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180423-00007141-bunshun-soci&p=1
>> 労働組合が東京駅の自動販売機を空にした日両備グループの件とは真逆の消費者直撃の労働運動。それでいながら「今回の順法闘争を受けて、ブラック企業ユニオンでは5月6日にイベントを開催する。(中略)自分も労働組合でブラック企業と闘ってみたいという人は、ぜひ参加してみてほしい。」というイベント告知につなげる今野氏。「順法闘争」という不吉な単語を連発する始末。わざとやっているのかな? 「自分も労働組合でブラック企業と闘ってみたいという人」というくだりからは、消費者直撃の方法論を取っているにも関わらず、そのことについて言及していない点において、労使対決にしか今野氏の意識が向かっていないことが推察されます。まさに消費者不在の労働運動、このご時世では推奨しかねる方法論であると言わざるを得ません。
4/23(月) 17:00配信
文春オンライン
先週4月18日、JR東京駅構内の自動販売機で売り切れが続出しているという情報がインターネットを駆け巡った。きっかけは労働組合・ブラック企業ユニオンによる次のツイートだ。
(中略)
普段の東京駅ではほとんど見かけない光景
実際、ホームによってもばらつきがあるが、駅構内の設置場所によってはかなり売り切れが目立っていたようで、ひどい機械では1台あたり7つも「売切」の赤いランプが点灯していた。これは普段の東京駅ではほとんど見かけることのない光景だ。
今回の事態が起きたのは、JR東京駅構内の自動販売機の補充を担当する、サントリー食品インターナショナルグループの自動販売機大手「ジャパンビバレッジ東京」に勤務する社員10数名が労働組合に加盟し、「順法闘争」を行ったためだった。法律に従い休憩を1時間分取得し、残業を全く行わずに仕事を切り上げるという戦術である。
もちろん、本数を少なめに入れるとか、仕事をサボタージュしているわけではない。単に法律や社内規則にのっとって自動販売機を回っただけで、補充の追いつかない機械が続出してしまったというわけである。普段から休憩すら取れず、いかに過密な業務を強いられていたかがわかるというものだろう。
ごまかされた残業代未払い
なぜ、このような事態が起きたのだろうか。今回、ジャパンビバレッジ東京に対して順法闘争に踏み切ったのは、 ブラック企業ユニオン という労働組合だ。現在、ジャパンビバレッジの現役社員14名が組合に加入して団体交渉をしているという。
同社の問題は複数あるが、その一つが残業代の未払いだ。同社では、昨年12月まで、自動販売機の飲料を運搬・補充する外回りの業務に対して、残業代を支払っていなかった。ひどい場合は、1日4時間以上ただ働きをさせられている労働者もいた。
この違法な「定額働かせ放題」を是正するため、ブラック企業ユニオンの組合員が労働基準監督署に申告を行った。昨年12月に労働基準監督署が同社に対して、労働基準法違反の是正勧告を出している。
ところが同社は、あろうことか「労基署とは見解が異なる」「残業代未払いはない」として、現役社員に対して、少額の金銭を支払うことで事態の収拾を図ろうとした。具体的には、社員一人ひとりを急に呼び出して面談を行い、根拠の不明瞭な金額を提示して、その場で強引に同意書を書かせるという手法である。ここで会社側は社員に、「これは残業代ではない。社長のご厚意だ」とまで説明していたという。
(中略)
今回の順法闘争を受けて、ブラック企業ユニオンでは5月6日にイベントを開催する。順法闘争の経緯や、組合員の労働実態などを、組合員自身の発言や映像を通じて報告し、ブラック企業との闘いかたを多くの人に知ってもらうための企画だ。筆者もゲストとして発言する。自分も労働組合でブラック企業と闘ってみたいという人は、ぜひ参加してみてほしい。
今野 晴貴
最終更新:4/23(月) 17:00 <<
■「消費者を直撃するべき事案」もあり得る――消費者が労働者を搾取するケース
しかしながら、今野氏の言説とは無関係に本件を考察すれば、むしろ「消費者を直撃するべき事案」なのかもしれません。というのも、自販機ユーザーにとっての利便性は、自販機屋の労働者たちの負担の上に成り立っていると言い得るからです。
マルクスの『資本論』をしっかりと読み込んでいれば分かることですが、表面的な点において「労働者を搾取する資本家」も、「お客様」たる消費者と対峙する資本主義的市場経済のシステムにおいては、そのシステムの被造物に過ぎません(競争の強制法則)。つまり、マルクス経済学的に見れば、「労働者を搾取する資本家」の搾取=労働者vs資本家の対立構造には、消費者vs資本家・企業家の関係があるというわけなのです。
近代経済学的な立場に立ったとしても、この事実は揺るぎのないことでしょう。近代経済学的な立場においては、労働者が搾取される舞台たる労働市場は、対消費者の財市場の付属物、調達のための要素市場です。労働市場は財市場に従属し、それに影響を受けるものであるというのが近代経済学的な立場であるわけです。
親方日の丸のくせに欲張った国労の「順法闘争」とは異なり、今回の「順法闘争」は、人たるに値する生活を営むための必要を充たす最低限度たる労働基準法に定められた法定基準に沿ったものに過ぎません。最低限度に過ぎない基準に沿るや否や、東京駅の自販機が軒並み品切れ状態になるということは、一般消費者たちが当然の如く受け止めている「自販機は24時間常に欲しい商品がラインナップされている」という事実が、関連業界の労働者たちの無賃労働に支えられていたことを示すものであり、すなわち、企業側だけではなく一般消費者たちも関連業界の労働者たちを搾取しているということになるわけです。
もちろん、上掲記事を読む限りにおいて今野氏がそのようなロジックで今回の「順法闘争」を位置づけているとは到底、読めないものです。おそらく今野氏は、消費者不在の労働運動の立場に立っていると思われます。
■「消費者直撃」が容認される境界線はどこか
労働者の待遇改善要求運動において消費者直撃の方法論が正当化されるか否かは、結局のところ、消費者の支払い額が労働者の待遇にとって十分な額であるかということにかかっています。
消費者は十分な額を支払っているのに、労働者の手取りが「操業停止点」を割り込んでいるのであれば、それは企業内部での分配問題です。内輪の問題であり、消費者がそれに付き合わされるのは、いい迷惑です。他方、そもそも消費者が不適切に安い対価しか支払っていないのであれば、企業だって慈善目的で事業をしているわけではないのだから、どうしても労働者の待遇は劣悪になってしまうことでしょう。こうした場合に企業側を責め立てても、彼らだって困ってしまうことでしょう。
本件;ジャパンビバレッジ東京のケースについていえば、企業と消費者がそれぞれ別個に同社労働者たちに負担を強いていたものと推察されます。その点において、消費者直撃の「順法闘争」を採用したことは、今野氏のロジックとはまったく別解的に「全面的には否定評価できない」と私は考えています。
■一企業の努力の限界について(補足)
なお、財市場においては、消費者は往々にして労働者です。経済はシステム的な循環の視点でとらえなければなりません。手取りが少ないから支払額も少なくなり、それゆえに更に手取りが少なくなり・・・という負のスパイラルを意識すべきです。このスパイラルを解決し得るのは、万能ではないものの経済政策です。決して、一企業の努力でどうにかなるものではありません。