https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190919-00000528-san-cn
香港「5大要求」内容に変化も 落としどころ見えず■香港抗議活動の方法における問題点
9/19(木) 12:52配信
産経新聞
【香港=田中靖人】6月から続く香港の抗議活動で、抗議側は「5大要求」を掲げている。香港政府はうち1項目の「逃亡犯条例改正案の撤回」を受け入れたものの、ほか4項目にはほぼ応じていない。ただ、内容は団体や時期により微妙な差がある。
(中略)ただ、5項目目として民主派の立法会(議会)議員らが求めていた「林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官の辞任」は、7月上旬から民主派団体「民間人権陣線」が掲げる「普通選挙の実現」に変わってきている。
林鄭氏は今月4日に条例案撤回を表明。17日には政府幹部と公募の市民との対話集会を来週から始めると発表した。だが、抗議活動には明確な指導者がおらず、落としどころが見えない状態が続いている。
焦点となっている「5大要求」。残念ながら大方が予想しているように、中国共産党がこれを認めることはないでしょう。とりわけ「普通選挙の実現」は可能性ゼロと言っても過言ではないでしょう。
もちろん、実現の可能性が極めて低いとしても、「そんな要求を展開するな」ということにはなりません。切実な要求であればこそ、困難であったとしてもその旗を掲げ続ける必要があるでしょう。
しかし、困難な要求を「目標」として実現しようとすればこそ、その「方法」に注目しなければなりません。その点、以下で述べるように重大な問題点が存在していると言わざるを得ません。
■明確な指導者が不在であること
まず、明確な指導者が不在であることを問題視しなければなりません。
昨今、ネット発の自生的・自然発生的な政治活動が、何かと持て囃されています。整然とした組織的指導下での街頭運動の場合、党派性を隠しきれずどこか不自然さや胡散臭さが漂うものですが、ネット発の街頭運動の場合、まさに「民衆が立ち上がった」と言い得るからでしょう。
自生的・自然発生的な政治活動は、これはこれで良さがあると私も思います。しかし、ある程度、運動が継続して明確な将来像を掲げてそれを実現させる段階に至っては、指導者不在とはいうのはまずい。
私はチュチェ思想派なので以下、チュチェ思想に基づいて述べますが、人間社会は、それぞれ個性を持ち、それゆえ多様な自主的要求と創造的能力を持っている多くの人々から成り立っています。そうした社会の変革を志そうとすれば当然、人々の多様な要求を共通の要求に集大成し、その実現のために人々の多様な能力を共通の能力に転換する必要があります。言い換えれば、組織として調整され結束される必要があります。
こうした調整は、高度に複雑化し、かつスピード感を求められる現代社会の情勢においては、自生的・自然発生的な調整過程に任せきりにはできません。そもそも、予定調和的世界観自体にも疑いの目を向けなければならないのが現代社会の現実です。それゆえ、組織的調整と結束を推進させる役割を担う人物、人々の自主的要求と創造的能力を統一・調整する中心軸としての指導者が必要になるのです。
このような指導者論の立場から申せば、落としどころが見えない香港の現状は、まさに「指導者不在」ゆえの現状であり、指導者がいかに重要な存在であるかを示すサンプルであると言えます。
■外勢依存であること
香港抗議活動を「方法」の面で検討するとき、次に、外勢依存であることを問題視しなければなりません。なんと星条旗を振る展開だそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190909-49630309-bbc-int
「トランプ大統領、香港を助けて」 香港デモ隊、米国に介入求める当人たちも、自らが掲げる要求が中国共産党に受けれられるはずがないと分かっているからこそ星条旗を振っているのでしょう。如何ともし難い事実から出発すればこそ、現状では星条旗を振ってアメリカに頼るしかないとはいえ、それにしても外勢依存と言う他ないアクション。自力に依って立っておらず、厳しい言い方をすれば「他力本願」なのです。
9/9(月) 13:52配信
14週にわたり民主化を求めるデモが続く香港で8日、デモ参加者が星条旗を振りながらアメリカ総領事館まで行進し、ドナルド・トランプ大統領に、香港を中国から「解放」してくれるよう訴えた。
デモ参加者には、「トランプ大統領、香港を救ってください」、「香港を再び偉大に」と書かれた横断幕を手にした人の姿もあった。
■米議会の取り組みも要求
デモ隊はまた、米議会上院で超党派議員が今年6月に提出した、香港の自治を守る「香港人権・民主主義法案」の可決を求めた。
この法案は、アメリカ政府が、香港の貿易上の特別な地位が正当であると確認するため、1年毎に、香港の高度な自治性を認定するというもの。
香港の独立性を中国当局が抑圧していると認められれば、アメリカは中国当局を制裁対象とすることができる。
(以下略)
アメリカは上下両院の外交委員会で「香港人権・民主主義法案」をそれぞれ全会一致で可決したそうです。しかし、事態は決して「好転」していません。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00071/092700004/?P=2
米議会が法案を可決、星条旗にすがる香港の悲壮 - 香港2019(4)結局、香港人の運命は米中の駆け引き道具と化しており、決して香港人は自主的な境遇にはないというわけです。これは如何ともし難い事実から出発すればこそ、現状では星条旗を振ってアメリカに頼るしかないとはいえ、果たしてこれを乗り越え、香港の民衆が自力自強の道に進むことはあるのでしょうか? そもそもそういった発想があるのでしょうか?
(中略)
いま、香港で若者たちが星条旗を振り、米国で事実上香港の普通選挙実現を求める内容を含む法案が可決される。まるで香港の若者たちの苦悩に、米国が人道主義をもって応じているような美談にも見えるが(そしてその全て否定するものではないが)、米国のまなざしが香港ではなく北京に向いているのは間違いない。米中対立というコンテクストでその行動を読み解くほうが実態に近い。
法案は、香港への優遇措置を見直す可能性を含むものだ。つまり目の前に立つ若者たちは、自分たちが住む場所の経済的な利益を損なう可能性のある政策の実行を願っている。しかもその米国の判断を阻止できるかどうかについて、香港人たちができることはない。ひとえにそれは、中国政府が一国二制度を維持するかどうかにかかっている。
危うい賭け、とも言え、捨て身の悲壮、とも言えるだろう。
中国政府が自由主義陣営との結節点としての香港の価値を認める限りにおいては、米国の香港に対する優遇措置を必要とし続け、「香港人権・民主主義法案」は圧力として機能する。だが中国が、香港のその機能を上海や他の都市で代替できると判断したら、同法案は中国に対して何の効力も持たなくなる。中国政府を信用できず、民主化を求めている香港人が、「香港の価値を認め続けてくれるに違いない」と中国政府を信用する前提で戦わざるを得ないという皮肉がここにはある。
もし後者のワーストシナリオが実現したら、香港に待ち受けているのは、中国からも米国からも見捨てられるという救いようのない運命なのだ。
それでも彼らは星条旗を振っている。
報じられていないだけかもしれず、また私の調査が不十分なのかもしれませんが、そういった流れは見られません。ただひたすら外勢依存・他力本願な展開だけが現れています。自力自強の道を歩まない限り、自らの運命の主人として自主的な境遇を獲得することはできないでしょう。
■総括
香港の民衆が、切実ながらも困難な要求を「目標」として実現しようとすればこそ、「明確な指導者が不在であること」及び「外勢依存であること」を「方法」の面において指摘しなければなりません。チュチェ思想派として私は、まずは明確な指導者を立てて組織的力量を強化しつつ、長期的には自力自強の道を歩むべく備えるべきだと考えます。そして、混迷を極める香港抗議活動は、明確な指導者の必要性及び自力自強の道を歩むことの重要性、すなわち、主体的な社会変革運動論の正しさを示しているものと考えます。
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ラベル:チュチェ思想 世界観・社会歴史観関連