今年は昨年以上に始動が遅れ早2月。武漢肺炎を巡る朝日両国の比較が、わりあい「書きやすかった」ので、チュチェ109年第1号記事はそれにしましたが、やはり当ブログ的には、昨年末の朝鮮労働党第7期第5回総会について触れないわけには行かないでしょう。
■総会の要点
『労働新聞』チュチェ109年1月1日づけ総会報道によると、今次総会は次のような内容だったようです。
キム・ジョンウン委員長は、いわゆる「年末期限」を迎えつつあった先の総会において、「世紀を継いできた朝米対決は、今日に至り、
自力更生と制裁との対決とに圧縮され、明白な対決の構図を描いている」と分析された上で、「対話を口にしながらも我が共和国を完全に窒息させ圧殺するための挑発的な政治軍事的、経済的悪巧みをさらに露骨化しているのが
昼強盗アメリカの二重的行動」であり、「
核問題でなくても、アメリカは共和国に対してまた異なる何かを標的と定めて迫ってくるであろう。現情勢は、各方面で内部の力をより強化することを切迫に要求している」とされました。
それゆえに、自強力を育てようとせず制裁解除を待つようでは、敵は攻勢を強めて共和国の前進を遮ろうとするだろうから、共和国は自力更生によって
敵の封鎖に対して正面突破戦を展開しなければならないとし、
『我々の前進を阻害している全ての難関を正面突破戦で突き抜けよう!』、これが全党と全人民が掲げるべき闘争スローガンであるという総路線を提示なさいました。
そして、正面突破戦の基本戦線を
経済戦線であると定義し、「革命的な思想と精神は時代をリードしなければならないが、
経済事業は現実に足をしっかりとつけて進行しなければならない」としつつ、全般的な生産と供給の均衡を取り、人民経済計画の信頼度を決定的に高めるための鍵となる問題を提示されました。まず解決しなければならない問題は、「経済事業体系と秩序を合理的に整頓すること」と指摘し、「
過去の過渡的で臨時的な事業方式を継続して踏襲する必要はない」と言明されました。また、「
経済司令部としての内閣責任制、内閣中心制を強化しなければならない。内閣の統一的指導と指揮を保障しなければならない」ともされました。
その流れの中で、国家商業体系・
社会主義商業を至急復元する必要性にも言及。社会主義商業の本分を固守しながらも国家の利益と人民の便利を一緒に保障できるよう商業サービス事業を改善しなければならないと強調されました。
「先質後量」の原則で生産物、創造物の質を高めるようにとも仰いました。
「農業戦線は正面突破戦の主戦場」とし、農業部門の科学技術力量と農業科学研究機関をしっかりと調えるよう訴えられました。
そして、共和国が依拠する
無尽蔵の戦略資産は、科学技術であるとして教育政策への注力を表明。経済政策と教育政策を結び付ける視点を提示されました。
正面突破戦の勝利の担保として
キム・ジョンウン委員長は、「強力な政治外交的、軍事的担保がなければならない」とし、造成された情勢に対処し、
外交戦線をさらに強化するよう指令。
誰も侵犯することができない無敵の軍事力を保有し継続して強化していくことは、党の揺るがぬ国防建設目標だとしつつ、アメリカによる敵対的行為と核威嚇恐喝が増大している現実で、共和国は
可視的経済成果と福利だけを見て未来の安全を放棄することはできないと強調されました。
その上で、アメリカの対共和国敵視政策が撤回され、朝鮮半島に恒久的で堅固な平和態勢が構築されるときまで、国家の安全のための必須的で先決的な
戦略兵器開発を中断することなく継続して粘り強く行っていくと宣言されました。
「我々の抑制力強化の幅と深度は、今後アメリカの対朝鮮立場の如何によって上方修正されるであろう」とも宣言されました。
このほか、全党的、全国家的、全社会的に
反社会主義・非社会主義現象を掃討するための闘争を高強度で展開し、勤労団体事業を強化して全社会的に道徳綱紀を強く打ち立てる必要性についても言及。そして、こうした事業においては、
党の団結した威力とその嚮導的役割が極めて重要だとも強調。革命の参謀部である党の強化も盛り込まれました。
最終的なビジョンとして、
「全人民が不屈の革命信念と炎のような祖国愛、堅忍不抜の闘争精神で継続して力強く闘争してゆけば、難関を突破して『この世に羨むものはない』の歌が全国すべての人民の実生活となる新たな勝利を迎えることになる」と説かれました。
その結果、次の内容の決定書が採択されました。
첫째, 나라의 경제토대를 재정비하고 가능한 생산잠재력을 총발동하여 경제발전과 인민생활에 필요한 수요를 충분히 보장할것이다.
第一に、国の経済の土台を再整備し、可能な生産潜在力を総発動させ、経済発展と人民生活に必要な需要を十分に保障する。
둘째, 과학기술을 중시하며 사회주의제도의 영상인 교육, 보건사업을 개선할것이다.
第二に、科学技術を重視し、社会主義制度の影像である教育・保健事業を改善する。
셋째, 생태환경을 보호하며 자연재해에 대응하기 위한 국가적인 위기관리체계를 세울것이다.
第三に、生態環境を保護し、自然災害に対応するための国家的な危機管理体系を打ち立てる。
넷째, 강력한 정치외교적, 군사적공세로 정면돌파전의 승리를 담보할것이다.
第四に、強力な政治外交的、軍事的攻勢で正面突破戦の勝利を担保する。
다섯째, 반사회주의, 비사회주의와의 투쟁을 강화하고 도덕기강을 세우며 근로단체조직들에서 사상교양사업을 짜고들것이다.
第五に、反社会主義・非社会主義との闘争を強化し、道徳の綱紀を確立し、勤労団体組織における思想教養事業に取り組む。
여섯째, 혁명의 참모부인 당을 강화하고 그 령도력을 비상히 높여나갈것이다.
第六に、革命の参謀部である党を強化し、その領導力を高めていく。
일곱째, 혁명의 지휘성원인 일군들이 사회주의건설의 전진도상에 가로놓인 난관을 뚫고나가기 위한 정면돌파전에서 당과 혁명, 인민앞에 지닌 자기의 책임과 의무를 다하기 위하여 분투할것이다.
第七に、革命の指揮成員の活動家たちが社会主義建設の前進途上に横たわる難関を突破するための正面突破戦で、党と革命、人民の前に持つ自己の責任と義務を果たすために奮闘する。
여덟째, 각급 당조직들과 정치기관들은 이 결정서를 집행하기 위한 조직정치사업을 짜고들며 최고인민회의 상임위원회, 내각을 비롯한 해당 기관들은 결정서에 제시된 과업을 철저히 집행하기 위한 실무적조치를 취할것이다.
第八に、各党の組織と政治機関は、この決定書を執行するための組織政治事業を組んで最高人民会議常任委員会、内閣をはじめとする機関は、決定書に示された課業を徹底的に執行するための実務的措置を取る。
(以下略)
■「持久戦体制」へ
さて、すでに発表から1か月たっており、十分すぎるほど論評が尽くされています。それゆえ、いまさら網羅的な論評をしても仕方ないので、私が気になった部分について好きに書かせて貰いたいと思います。
昨年12月30日づけ「
朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会に関する部分的報道内容に基づく考察」で私は、「
年末期限以降の新たな道の概要は、(1)地域情勢に即した国防力強化措置によって事実上、並進路線へ回帰しつつも、アメリカが共和国を刺激するような言行を慎む限りにおいては、アメリカのメンツを潰すようなことや対話局面が決定的に崩壊するような事態にはしないこと。そして、(2)自力更生路線のさらなる鮮明化を二本柱とする「持久戦体制」と推察・考察できる」と述べました。
(1)については、≪
누구도 범접할수 없는 무적의 군사력을 보유하고 계속 강화해나가는것은 우리 당의 드팀없는 국방건설목표≫(誰も侵犯できない無敵の軍事力を保有し、強化し続けていくことは我が党のゆるぎない国防建設目標である)というくだりが明白に示すように、
やはり国防力強化措置は、再び前面に押し出されるようになりました。
しかしながら、≪
세상은 곧 멀지 않아 조선민주주의인민공화국이 보유하게 될 새로운 전략무기를 목격하게 될것이(다)≫(世界は遠からず朝鮮民主主義人民共和国が保有することになる新たな戦略兵器を目撃することになる)程度に
留めている点、≪
우리의 억제력강화의 폭과 심도는 미국의 금후 대조선립장에 따라 상향조정될것이(다)≫(我々の抑制力強化の幅と深度は、今後アメリカの対朝鮮立場の如何によって上方修正されるであろう)としている点を見るに、
依然として対話局面が決定的に崩壊するような事態を目指しているわけではないことが分かります。
≪
조선로동당 위원장동지께서는 전대미문의 혹독한 도전과 난관을 뚫고나가는 정면돌파전에서 반드시 승리하자면 강력한 정치외교적, 군사적담보가 있어야 한다고 하시면서 조성된 형세에 대처하여 외교전선을 더욱 강화하기 위한 방략들을 제기하시였다≫(朝鮮労働党委員長同志は、前代未聞の厳しい挑戦と難関を切り抜ける正面突破戦で必ず勝利するには、強力な政治外交的、軍事的担保がなければならないとおっしゃり、造成された情勢に対処し外交戦線をさらに強化するための方略を提起された)というくだりの
「外交戦線」という単語にも注目すべきでしょう。
(2)については、≪
세기를 이어온 조미대결은 오늘에 와서 자력갱생과 제재와의 대결로 압축되여 명백한 대결그림을 그리고있습니다≫(世紀を継いできた朝米対決は、今日に至り、自力更生と制裁との対決に圧縮され、明白な対決の構図を描いています)という一文が端的に示しています。前掲12月30日づけ記事で私は、各道の農業経営委員長がオブザーバーとして会議に参加したことに注目し、「
自力更生の中心として農業生産の自力更生を位置づけ、そしてその責任者として各道の農業経営委員長が総会に出席したとすると、今回の党中央委員会総会の開催目的には「自力更生路線のさらなる鮮明化」があるように思われます」と推測しましたが、
概ね的中したようです。
キム・ジョンウン委員長の新年最初の現地指導先はスンチョン(順川)リン酸肥料工場建設場でした。
『朝鮮新報』も報じているように、
年明けから共和国メディアはこぞって農業部門での飛躍を呼びかけているとのことです。
なお、「チュチェ農法」が出て来ず、≪
농업부문의 과학기술력량과 농업과학연구기관들을 튼튼히 꾸릴데 대한 문제≫(農業部門の科学技術力量と農業科学研究機関をしっかりと作ることに関する問題)といった表現になっているのはチェックしておきたいと思います。
■「内閣中心制の強化」は分権型社会主義の実践
「経済司令部としての内閣責任制、内閣中心制の強化」については、昨年4月の施政方針演説と関連付けて読み解くと、興味深い事実を見て取ることができるでしょう。
キム・ジョンウン委員長は、
次のように指摘されていました。
정치적령도기관인 당이 행정사업에 말려들고 실무적방법에 매달리면 자기의 본도를 잃게 되는것은 물론 행정기관들의 기능을 마비시키고 당의 권위를 훼손시키며 결국은 혁명과 건설을 망쳐먹을수 있습니다.
政治的領導機関である党が行政事業に巻き込まれ、実務的な方法に没頭すれば、自らの本性を失うことはもちろん、行政機関の機能を麻痺させ、党の権威を傷つけ、結局は革命と建設が台無しになる恐れがあります。
キム・ジョンウン委員長による
改革の重要特徴として「
経済に対する党の過剰な干渉を正常化させる」という点があります。もちろん、今総会中の≪
당중앙위원회의 결정집행이자 내각사업≫(党中央委員会の決定執行こそが内閣事業)という大枠は越えられないものの、これまで漸進的に展開されてきた改革です。
ここでいう内閣中心制の強化とは、
社会主義企業責任管理制によって計画権を付与された各生産単位からボトムアップ的に報告された内容を内閣が集約し、それらが構成要素となり国家戦略が組み立てられる、今日における朝鮮式経済計画の強化に他なりません。国家からのトップダウン的な命令を現場はただ実行するだけという旧型の経済計画:指令型社会主義とは根本的に異なるものです。
「経済事業は現実に足をしっかりとつけて進行しなければならない」や「過去の過渡的で臨時的な事業方式を継続して踏襲する必要はない」というくだりと併せて考えるに、ちょうど昨年、伝統的な「テアン(大安)の事業体系」が憲法から削除された事実を踏まえると、
ボトムアップ的な現代朝鮮式経済計画の野心的な展望が見えてきます。
分権型社会主義の実践例であるとも言い得、実務的にも思想的にも注目に値するものです。
■「社会主義商業の復元」の意義と「消費社会主義」への転換
社会主義商業の復元について言及があったことも、
実務的にも思想的にも注目に値します。
商業とはすなわち市場的流通であり配給ではないからです。商業の役割を高めることは、
実務的に注目すべき提起です。
思想的意義についてですが、まず言葉の定義の問題として、
朝鮮における社会主義商業とは、本質的に人民に対する供給活動であり、
人民の物質的・文化的需要を満たすための商業活動をいいます。資本主義商業と比較すれば、マルクス経済学の枠組みで言えば、前者はW−G−W’を基本とする流通であり、後者はG−W−G’を基本とする流通であると言えます。
W−G−W’とG−W−G’は実際的には分離が困難です。それゆえ、市場化は「無限に自己増殖する価値運動」としての資本の増殖こそが経済の主目的に成り下がる資本主義社会を必然化するものであるという見識が古くから根強く残っています。
共和国が社会主義商業の復元について言及していることの思想的意義とは、共和国が如何にして商業を社会主義の枠内に組み込むかという点にあると言えます。
チュチェ108(2019)年12月31日づけ「
チュチェ108(2019)年を振り返る(1):社会主義企業責任管理制が憲法レベルで位置付けられた共和国史と社会主義思想発展史に残る画期的一年」社会主義勢力が長年定式化に苦しんできた「競争」の概念を我がものとし、「個人の能力と努力に対する評価」を社会主義の枠内に取り込む実運用体系を構築することで社会主義思想を発展させたと述べましたが、
ことしチュチェ109年は、これに続いて「社会主義商業の復元」をとおして「商業及び市場流通の社会主義化」というテーマが提示されたものと言えるでしょう。
なお、朝鮮における社会主義商業を商業活動の所有形態に焦点を当てて分類したとき、国営商業(国営企業による商業)と協同商業(協同組合による商業)に分けられますが、
「商業及び市場流通の社会主義化」の問題はやはり、所有形態の問題が大きくかかわってくるものと思われます。
■「先質後量」原則の重大な意義
「先質後量」原則については、『朝鮮新報』チュチェ108年8月8日づけ「
平壌第1百貨店展示会を訪ねて/売れ筋から見る市民生活」と関連付けると興味深いでしょう。すなわち、当該記事では
「評価基準は消費者」とされています。
共和国も遂に、供給サイド偏重の経済から脱却し始めたということになります。
消費者にとっての質を優先させようとすれば、当ブログでも以前から指摘してきたように、
消費生活は本質的に多様性を帯びている点において、流通及び生産もまた多様化しければならなくなります。いくら天才的なアイディアをもった人物であったとしても、その脳味噌から絞り出し得る発想には限界があるので、多様なアイディアを保障するには、生産単位もまた多様であらざるを得ず、そしてその生産を消費者に繋ぐ流通も多様であらなければならなくなります。
このことを以って、F.A.ハイエクは設計主義を基調とする集産主義に対する競争を基調とする自由主義の優位性を説きました。超集産主義と言えるソ連は、最後まで質の問題を解消できず、ハイエクの予言どおりの経過をたどって崩壊しました。
この経緯を踏まえるに、競争概念の社会主義化に成功し、続いて商業及び市場流通の社会主義化にも取り組み始め、
「先質後量」原則に基づき「評価基準は消費者」だともする共和国は、実にチャレンジングな領域に足を踏み入れたと言えるでしょう。
この課題の
成否のカギは、社会主義企業責任管理制にあるでしょう。前述のとおり本質的に多様性を帯びている消費需要を柔軟に充足させるためには、流通及び生産もまた多様化する必要があり、よって
生産現場に大きな裁量権を認める必要が生じますが、しかしながら、人間による人間の搾取を廃絶させ、支配と隷属を根絶し、人民大衆の自主性を実現すること:社会政治的生命体を構築することを究極目標とする朝鮮式社会主義においては、
生産手段の私有化までは認められないことでしょう。
それゆえ、
所有形態は社会的所有でありながらも、計画権等の実務的権限を生産現場に認める社会主義企業責任管理制の重要性がますます増大すると言えます。計画権を各生産単位に付与し、そこからボトムアップ的に提案される生産計画を国家経済計画に盛り込むことを「人民経済の計画的運営」と定義する社会主義企業責任管理制が不可欠でありましょう。
社会主義版の「所有と経営の分離」が進むことでしょう。
このことについては、続報を待ちつつ更に考察を深めたいと思います。
■国家経済発展5か年戦略について
最後に、
国家経済発展5か年戦略の最終年を迎えるにもかかわらず、それについて言及がなかったことについて、取り上げておかなければならないでしょう。
まだ朝米交渉が、共和国にとって楽観的雰囲気に包まれていた昨年の「新年の辞」でもそれほど言及されていなかったので、そもそもこの単語の出現回数自体にはそれほど意味がないのかも知れませんが、そうはいっても「0回」は流石に取り上げておかねばならないでしょう。
さて、「対米対峙は長期戦になるが、全人民が不屈の革命信念と炎のような祖国愛、堅忍不抜の闘争精神で継続して力強く闘争してゆけば、難関を突破して『この世に羨むものはない』の歌が全国すべての人民の実生活となる新たな勝利を迎えることになる」というのが今総会で提示された路線の趣旨ですが、総会報道は冒頭で、経済建設分野でも一連の成果が達成されたとしつつ豊作・増産を報じてもいます。これらの成果はいずれも国家経済発展5か年戦略の成果に他なりません。
このように文脈を整理して考えると、
国家経済発展5か年戦略に対する言及が今総会報道になかったのは、「国家経済発展5か年戦略の達成済み成果を長々と振り返るよりも、今後の正面突破戦について強調するのを優先するために割愛した」という見方ができるでしょう。達成済みのことを振り返って成果に酔うよりも、
危機感をあおって正面突破戦を強調し体制の引き締めを期そうとしていると考えられるのです。
なお、国家経済発展5か年戦略が放棄されたのかといえば、通例、経済計画が上手くいっていないときは、まず計画期間の延長や数値目標の変更から始まり、最終的には「達成した」と宣言されるものです。かつての第1次7カ年計画は、まず実施期間が延長された上で、本当かどうかは分かりませんが「達成した」という発表がなされました。部外者からすれば経済計画が達成されたか否かなど検証しようがないのだから、当局が「達成した」と宣言すれば、それは「達成した」ということになるわけです。
しかし、今回はそうはなっていません。1月17日づけ『朝鮮新報』は、朝鮮社会科学院経済研究所(在ピョンヤン)のリ・ギソン(李基成)氏とのインタビューを掲載しています([
1]、[
2]。邦訳[
A]、[
B])が、その中で
「戦略遂行期間に達成する数値目標は変更されていない」とれさています。これは、
「経済計画が上手くいっていないとき」の典型的パターンとは異なります。この発言について、韓「国」キョンナム大のイム・ウルチュル(林乙出)教授は、「
特に「史上最大規模の制裁が敢行されたが、戦略的な実行期間に達成する数値目標は変更されなかった」と強調した部分を注意深く見守る」と評価しています(SPN1月17日づけ
北 사회과학원 연구사, 국가경제발전 5개년전략...자립경제토대 강화-인민경제 현대화 이룩 주장)。
また、仮に国家経済発展5か年戦略が放棄されたとすれば、少なくとも今後は、「国家経済発展5か年戦略」という単語を筆頭にこれに関連した一切の言説が控えられるはずです。「儒教文化」と「科学的社会主義」という、正統性を何よりも重視する2つの思想体系をともに信奉している共和国政権が、単に「失敗」しただけではなく「失敗して諦めて投げ出したもの」に触れるはずがありません。しかし、
共和国国内でのリ・ギソン氏への上掲インタビューが共和国当局によって許され、そしてそれが朝鮮総聯機関紙である『朝鮮新報』に掲載されたところを見ると、「放棄した」とは言えないように思われます。
■おわりに――社会主義の革新へ
「「内閣中心制の強化」は分権型社会主義の実践」「「社会主義商業の復元」の意義と「消費社会主義」への転換」「「先質後量」原則の重大な意義」の各節は、通常的な総会報道論評とは異なる角度から書きました。どれほどの閲覧者の皆さんが現代朝鮮式社会主義の行方に関心があるのかは存じ上げませんが、昨年の大晦日付け「
チュチェ108(2019)年を振り返る(1):社会主義企業責任管理制が憲法レベルで位置付けられた共和国史と社会主義思想発展史に残る画期的一年」でも長文を投稿したとおり、私にとってはこれこそが関心のド真ん中です。
今年も現代朝鮮式社会主義の行方にスポットライトを当てた記事執筆を進めてまいる所存です。よろしくお願いいたします。