戻れば銃殺されるのに…脱北民29人はどうして北朝鮮に戻ったのか(1)昔から言われていたこと。たとえば13年前のチュチェ96(2007)年に韓「国」の保守紙・『朝鮮日報』は次のような記事を掲載していました(さすがに朝鮮日報サイトにはないので、web.archive.orgから)。
7/29(水) 15:03配信
中央日報日本語版
「命懸けで脱北したのではないのか。分かっている再越北事件だけでも30件余りになるとは信じられない」
「北朝鮮に行けば銃殺される場合もあるのに、どうしてわざわざ…」
江華島(カンファド)から最近越北したキム氏(24)の他にも過去8年間に再入北した脱北者が少なくとも29人いることが分かった。また、2015年から昨年9月まで、再入北したものの、発覚して国家保安法で処罰を受けた脱北者も12人いる。キム氏の越北を契機に、韓国内では越北背景に対する関心が高まっている。命を賭けてまで北朝鮮を脱出した脱北民が再び北朝鮮に戻る理由は何か。
(中略)
(2)韓国社会に適応できず…法体系を束縛として感じる場合も
脱北者が韓国社会に適応できない点も再入北を選ぶ原因の一つだ。キム・ソクヒャン氏は「脱北者が韓国にやってくるのは、あちらに行けば自身の夢をかなえることができ、財政的にも豊かな暮らしができるだろうと考えるためだが、実際に韓国に来て彼らが感じたことは違っていただろう」と話した。また、「特に、北朝鮮とは違い、むしろ規制と法体系が自分を束縛していると感じるかもしれない」と付け加えた。
さらに「キム氏の場合、再入北の前に性暴行容疑で捜査を受けていたが、北朝鮮ではこのような理由で人を捕まえたりしない。むしろ村にうわさが立っても『女性のほうがなぜもっと気を付けなかったのか』という反応だっただろう」と説明した。匿名を求めたある専門家は「こちらにくればすべて解決できるだろうと思いがちだが、韓国は韓国で秩序があり見えない差別がある。社会体制が完全に違うため適応が容易ではない」と話した。
(3)北朝鮮、脱北民の再入北懐柔政策を展開か
一部では再入北した者が北朝鮮政権によって報復されるのではないかと懸念する。これについて東国(トングク)大学北朝鮮学科のキム・ヨンヒョン教授は「概して脱北者は北朝鮮内部で行方不明者として処理される。韓国で顔がよく知られた一部の人を除けば、戻ったからといって大きく問題にならないこともある」とした。世界北朝鮮研究センターの安燦一(アン・チャンイル)所長は「正恩氏の執権以降、脱北者を懐柔しようとする態度が見える」とした。安氏は「今回、キム氏が再入北すると、朝鮮中央通信が帰郷という表現を使った。これは帰ってくれば『おぶってやれなくても抱きしめてやるくらいはしよう。帰ってきたい人は帰ってこい』という信号だと解釈することができる」と話した。
(以下略)
http://web.archive.org/web/20070206042317/http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/02/05/20070205000007.html
【社説】「人間らしい生活」を夢見た脱北者に絶望を与える韓国計画経済vs自由経済および自力更生vs他力本願の体制優位競争においては、残念ながら「北朝鮮」は現状においては極めて厳しい状況にありますが、そんな「北朝鮮」に帰りたいと思う人は、かなり以前から、単なる個人的事情というわけではなく社会的背景のもとに現実としているわけです。
脱北者・金万鉄(キム・マンチョル)さんが家族11人を乗せた小さな船で韓国に渡ってきてから、8日で20年になる。「元祖脱北者」として知られる金さんは今、本人が言うとおり「これ以上なく惨めな」境遇にある。
67歳になった金さんは、62歳の夫人とともに京畿道広州の野山にある10坪コンテナに住み、アメ袋を一日に5000個作る内職で1日に1万ウォン(約1300円)の収入を得ている。傷だらけの手を腫れ上がらせた金さんは、「北朝鮮での生活に逆戻りしたようだ」と語ったという。
金さんがこんな状態に陥ったのは、詐欺の被害にあったからだ。講演料などで一時10億ウォン(約1億3000万円)の財産を作った金さんは、甘い言葉にそそのかされて宣教祈梼院、済州道の土地、清津のシカ牧場などに投資しては金をだまし取られた。それどころか、いまだ借金を返済できていない状況だ。2001年からコンテナに住みはじめた金さんは2003年、心筋梗塞(こうそく)で倒れた。
韓国刑事政策研究院の報告書によると、脱北者の5人に1人にあたる21.5%が詐欺の被害に遭っている。韓国民全体で詐欺の被害に遭ったことのある人は0.5%だ。脱北者が詐欺に遭う確率は実に43倍にもなる。
(中略)
今月で脱北者の数が1万人を超える。ある北朝鮮専門家が指摘したように、われわれはこの「小さな北朝鮮」すらまともに受け入れられないでいる。脱北者は詐欺などの犯罪の餌食となり、社会の冷たい仕打ちに直面し、挫折している。
(中略)
金万鉄さんは20年前、「人間らしく暮らせる韓国にやって来た」と語った。しかし昨年11月、あるテレビ局が行った世論調査で、脱北者の33%が「北朝鮮が処罰しないなら帰りたい」と答えた。これがその「人間らしい国」の現実なのだ。
そのことが再度、検証された展開であります。