イーロン・マスク氏の「ウクライナは勝てない」発言が波紋を呼んでいます。波紋というよりも困惑というべきでしょうか。ロシアによる侵攻直後にウクライナをテクノロジーの面から支えたマスク氏がこのように発言。同じようなことを継続して発言し続けている鈴木宗男氏に対するバッシングとは明らかに違います。
いま日本世論は、米欧諸国の軍事支援を受けたウクライナが大きく前進しているのに対して、ロシアは戦場においても戦争指揮においても混乱と混迷を深めているという状況把握が主流です。そんな中での≪
This is highly likely to be the outcome in the end – just a question of how many die before then≫と予見する
マスク氏。
「勝っているのになぜ? それもマスクさんが」といった反応が多く見られます。
マスク氏なりに冷静に情勢を整理した結果の「ウクライナは勝てない」なのでしょう。マスク氏のツイートはあまりにも短く断定的なので、どういう見立てでこの結論に至ったのかは不明ですが、ウクライナは米欧諸国、とりわけアメリカからの支援なくして戦争継続はまったく望めないところ、
最近、対米関係においても温度差が目立ちつつあるように私には見受けられます(ここから述べることは私の見解です)。
マスク氏の見立ては、まったく理解できないものではないと考えます。
今回はまず、マスク氏の提起を受けて最新の情勢分析をしたうえで、マスク氏発言に対する日本世論の反応について取り上げる2本立てとしたいと思います。
■戦争継続の可否に直結するウクライナと米欧諸国との温度差の拡大
米欧諸国はウクライナに対して巨額の軍事支援を実施し、それを活用してウクライナ軍は反撃を強めています。米欧諸国の支援なくしてウクライナは戦争遂行はまったく不可能です。しかし以前から指摘されているとおり、
米欧諸国は実際にはウクライナが求めている武器等をオンデマンドには支給して来ず、戦争は「管理」されています。つい先日もハイマースを追加で4台供与すると米政府は表明しましたが、
納入は何と数年後。米当局は在庫を切り崩して直ちに供与するのではなく、新たに調達したものをウクライナに供与する方針だといいます(「
米、ウクライナにハイマース18基など11億ドル支援 納入には数年」9/29(木) 6:30配信 朝日新聞デジタル)。ウクライナと米欧諸国との
温度差が目立ちます。
ここ最近飛び込んできたニュースにおいても注目したいものがあります。アレクサンドル・ドゥーギン氏の子女である
ダリヤ・ドゥーギナ氏暗殺事件についてアメリカ当局が「ウクライナの犯行」であると断定したとリークされた件、そしてこのことが、従米国家ニッポンの国策報道番組であるNHK「ニュース7」で早速報じられた(10月6日放送)件です。
CIAはもちろん職務としてダリヤ・ドゥーギナ氏暗殺事件を調査するでしょうが、その調査結果を必ず公にしなければならないわけではありません。
何らかの意図があってリークされ公になったものと考えるべきです。ましてそれを日本のような極東辺境国家にまで「遍く」報道させることには、さらに意図があると考えなければなりません。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6db19ffc532995556079a4d11c27f90718cbc280米当局、ロシア思想家の娘の「爆殺」がウクライナの仕業と断定
10/6(木) 16:30配信
Forbes JAPAN
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は10月5日、プーチン大統領の盟友とされる極右思想家の娘ダリヤ・ドゥーギンが8月にモスクワ近郊の自動車爆弾テロで死亡した事件で、米国の情報機関は、ウクライナがこの攻撃に関与したと考えていると報じた。ロシアは、この攻撃がウクライナのシークレットサービスの犯行だと非難していたが、ウクライナはそれを否定していた。
米国はこの攻撃に関与しておらず、ウクライナの当局が攻撃を許可したことを非難しているという。NYTは、匿名の政府関係者の証言として、この攻撃に関する情報が先週、米政府内で共有されたと報じた。
(以下略)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221006/k10013850511000.htmlロシア思想家の娘死亡“ウクライナ政府の一部が関与か”米報道
2022年10月6日 20時42分
プーチン大統領の「頭脳」とも呼ばれるロシアの著名な思想家の娘が、ことし8月に車の爆発で死亡した事件で、アメリカのメディアは、ウクライナ政府の一部が事件に関与していたとアメリカの情報機関がみていると伝えました。
ことし8月、ロシアの首都モスクワ郊外で走行中の乗用車が爆発し、プーチン大統領の外交政策に影響を与えてきたとされる思想家、アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘でジャーナリストのダリア氏が死亡しました。
アメリカの有力紙のニューヨーク・タイムズは5日、この事件について、複数の当局者の話として、アメリカの情報機関はウクライナ政府の一部が爆発物による暗殺計画を許可したとみていると伝えました。
そのうえで複数の当局者はアメリカは事前に暗殺計画を把握しておらず、支援もしていないとしていて、事件のあとにはアメリカがウクライナ側に対し忠告をしたとも話しているということです。
また、当局者は暗殺計画の標的が実際はドゥーギン氏だった可能性があると話しているということです。
そして、伝統的に他国の秘密工作は明らかにされないとしたうえで、当局者はウクライナによる危うい行動を抑えなければならないと考えていると伝えています。(以下略)
ウクライナの人権監察官として、今般の戦争にけるロシアによる戦争犯罪を幾つも告発してきたリュドミラ・デニソワ氏がロシア兵による性暴力事件を捏造したとしてウクライナ議会から解任された(「
Ukraine Official Fired Over Handling of Russian Sexual Assault Claims」BY ADAM STATEN ON 5/31/22 AT 1:28 PM EDT Newsweek)とき、「ニュース7」を筆頭とする日本メディアはほぼ完全に黙殺したものでした。ダリヤ・ドゥーギナ氏暗殺事件の扱いが異例であることが際立ちます。
ここにもウクライナと米欧諸国との温度差を感じざるを得ません。
そして昨日、クリミア大橋で大規模な爆発があった件についてゼレンスキー・ウクライナ大統領は「
これは始まりだ」などと述べたとされます(「
ウクライナ側「これは始まりだ」 クリミア大橋炎上でプーチン氏が原因調査を指示」10/8(土) 17:50配信 テレビ朝日系(ANN))。クリミア大橋への攻撃がこれまで一切攻撃がなかった背景には、アメリカがそれを厳に禁じてきたからだとされています。そんなクリミア大橋に攻撃があった模様です。
アメリカのことなので、自らは手を汚さず手下にやらせるという可能性も絶無ではないものの、アメリカは「ロシア・ウクライナ両国ともに勝ち過ぎず負け過ぎず」の原則の下に戦争を「管理」してきており、
アメリカがこの戦争の「終わらせ方」について方針転換したという兆候は見られません。そんな中でのクリミア大橋での大爆発とゼレンスキー大統領の匂わせ発言。ウクライナと米欧諸国との
温度差がますます顕著になってきたように思われます。
なお、米欧諸国同士での温度差についてはもはや改めて論じるまでもないでしょう。
■ロシアからのメッセージ
ロシアについても
「混乱」を描写する中から一つの可能性が見えてきています。
ペスコフ・ロシア大統領報道官は、併合したヘルソン州・ザポロジエ州とウクライナとの「国境」について
「地域住民と協議を続ける」という不可思議な説明をしたといいます(「
露、4州併合も「国境」説明できず 動員でも混乱」10/5(水) 21:54配信 産経新聞)。10月3日づけ「
戦争の落としどころを歴史的に考えて」でも述べたとおり、
これはメッセージとして捉えるべきでしょう。
また、いままで「周りをイエスマンで固めた裸の皇帝:プーチンが誇大妄想に駆られて始めた個人的戦争」として構図化されてきたこの戦争について、「
強硬姿勢の私兵部隊と正規軍の対立鮮明に」という見方で報じられるようになってきました(「
苦戦続くロシア軍 強硬姿勢の私兵部隊と正規軍の対立鮮明に」10/5(水) 18:44配信 毎日新聞)。プーチン大統領が独善的独裁的に采配をふるっているのではなく、フォロワーシップに配慮しつつリーダーシップを発揮しているという構図に修正され始めました。戦争はいまのところエスカレーションはしていません。
強硬派の戦争拡大を望む破滅的な主張をプーチン大統領が抑えているという見方が出てきています。「プーチン政権下での停戦・終戦」という方向に構図が修正され始めているように見受けられます。
マスク氏の情勢整理が如何なる理由によるものかは分かりませんが
、こうした現実の展開を総合的に踏まえたとき、まったく理解できないものではないでしょう。
■もっとも合理的・打算的に行わなければならない戦争において合理的な計算を疎かにしている
それではここからは、マスク氏の発言に対する反応を取り上げてみたいと思います(読みづらいコメントがあるので適宜、編集として改行を加えています)。
「
マスク氏がウクライナの「和平プラン」ツイート、大統領ら強く反発」(10/4(火) 12:08配信 Bloomberg)のコメ欄。
ビジネスや経済視点から考えればそうなんだろうが
さすが他人の感情が分からない天才ならでは、だ
「
マスク氏「和平案」に反発 侵攻終結の持論一蹴 ウクライナ大統領」(10/5(水) 14:15 配信 時事通信)のコメ欄。
マスク氏は経済人。経済的な視点はある一線を超えた場合は意味はないと思う。
ウクライナ市民がロシア軍に戦闘終了後に虐待や拷問の挙句に殺害されている状況下で停戦合意がウクライナ国内で承認されるだろうか?先ず、無理です。
では国際世論から言ったらどうか?
これも良い出せる国はいないと思う。
少なくともG7は今回のロシアへの併合を非難しており、停戦合意に向けて話なんかしないと思う。
更に、考えたくはありませんが、ウクライナ軍がヘルソンやセベロドネツクを奪還し、もしブチャやイジュームの様なことが発覚したら?
国際社会は更にロシアへの反発とウクライナ支援に向かうのではないか。
もとより
戦闘行為を伴う戦争というものは政治的目標を達成するための一手段なのだから、
非常に合理的・打算的に行わなければならないものです。マスク氏の主張を「金銭的合理性に偏重している」などとして批判する上掲2コメントは、
奇しくも自らについて「合理性を捨象している」と自白していますw「採算」が取れないなら戦闘行為を伴う戦争はしない、これは当然のことです。もっとも合理的・打算的に行わなければならない戦争において、「
ビジネスや経済視点」だの「
経済的な視点はある一線を超えた場合は意味はない」だのとマスク氏に唾を吐きかけるような非常に危険な発想。
戦争というものの基本的な位置づけがそもそも日本においてはズレていることを示しているように思われます。
■実現可能性の問題に善悪・当為の問題として答えている
「
マスク氏「ウクライナ勝てない」 ツイッターに投稿、反発の声も」(10/5(水) 9:35 配信 共同通信)のコメ欄。
そういう問題ではない。
ロシアのこの侵略モデルが成功したらどんな地域でも無法者が統治する国ではこれを参考に戦争を起こすことが出来るということが問題。
ウクライナは勝てないではなく勝たなくてはならないなのだ。
勝つには勝つなりの支援をしなければならないし、どうせ支援するならウクライナ軍が取り返した領土にNATO軍を警備に駐留させるくらいのことはやった方がいい。この大動員は空白地帯から歩兵だけを送り込む作戦なのかも知れないから。戦闘地域での奪還はウ軍にやってもらえばいい。取られていない、奪還したところはNATOに防衛させる。
ご立派な大演説ですが、マスク氏の≪
This is highly likely to be the outcome in the end – just a question of how many die before then≫という主張に対して「
ウクライナは勝てないではなく勝たなくてはならないなのだ」や「
勝つには勝つなりの支援をしなければならない」は、
反論になっていません。
「できるの?」「すべきなんだ!」「いや、だから『できるの?』って聞いているの」という不毛なやり取り。マスク氏の見立てが必ずしも正しいとは言い切れない(私には分からない)ところです。しかし、
落ち着いて考えれば「話が嚙み合っていない」と直ちに分かるはずのところ、反論として成り立っていない上掲コメントを投稿・いいねクリックしてしまうあたり、
一部世論は「冷静さを失っている」とはいえそうです。
■拙速にも一回の戦争ですべてを解決しようとしている
「
マスク氏「和平案」に反発 侵攻終結の持論一蹴 ウクライナ大統領」(10/5(水) 14:15 配信 時事通信)のコメ欄。
確かに今和平すればこれ以上の犠牲は出ないし財政的支援も終わりです、経済も回復するでしょう、第三者的見方ですね、ウクライナとしては自国を蹂躙され罪なき民間人が拷問等で多数殺害された、貴方が当事者ならどうする、この様な侵略者を勝利者にして良いのか、マスクさんの意見は自分の経済のみの意見だが、地球は国際法で決着をつけないと力の暴力が絶えないのではないか。
「
マスク氏「ウクライナ勝てない」 ツイッターに投稿、反発の声も」(10/5(水) 9:35 配信 共同通信)のコメ欄。
マスク氏の言い分は基本的に鈴木宗男氏などの親ロシア派の考えと変わらない。
自分には関係ない他人事であり、自身のビジネス環境を考えれば、戦争の長期化は避けたいという思惑。そこに自由や祖国を守るというマクロ理念、侵略のそもそもの意味を考える事も無い。
仮に自分達が侵略される立場であっても、新たな支配者に迎合して上手く立ち回る自信があるし、それが賢いと考える人達。確かに、こういった人達というのは、そういった能力に長けており、マクロな理念理想とは縁遠い存在。
この戦争の行方がどうなろうと、自身の考えを省みる事は無いのだろうと思う。降伏と言う和平を選択すれば自身の主張通りになるし、ウクライナ勝利でも多数の犠牲者を生み出した結果に論点をずらせばいい訳が成り立つ。
上手く立ち回る能力に自信があるのだろうが、彼の本質を見透かす人間も少なくはないだろう。
またしても反論になっていませんが、あえて彼らの問題提起に応えるとすれば、
「この一戦で決着をつける必要があるのか」という問いを更に立てる必要があるでしょう。
4月15日づけ「
本当に国のことを思うということは如何なることであるか、同志愛と革命的義理の在り方はどうあるべきか:キム・イルソン同志生誕110周年」で取り上げましたが、若き
キム・イルソン主席は、祖国を日帝から取り戻すためにこそ「志遠」を掲げつつ断腸の思いで中国・満州に渡り、満州を根拠地として朝鮮解放の戦いを20年にわたって展開されました。当該記事でも述べましたが、首領様の決断を踏まえると
一所懸命的な徹底抗戦、死守戦が祖国防衛のための唯一の道といわんばかりの言説は、事実に反する凝り固まった思い込みであるように思えてなりません。
マスク氏は、このままアメリカがウクライナ支援を継続・拡大し続けるとは見通さず、≪
This is highly likely to be the outcome in the end – just a question of how many die before then≫としています。
もしこの見通しが正しいとすれば、ウクライナは臥薪嘗胆して捲土重来を期する他に道はありません。「
マクロな理念理想」を追い求めればこそ、「この様な侵略者を勝利者にして良いのか(そうするべきではない)」を貫徹すればこそ、
「この一戦で決着をつける必要はない」と発想を転換し、ロシアを「百年千年の敵」と位置付けて対決を続ける以外に道はないものと思われます。
■21世紀になっても最終的な担保は「力」だが、「力と力の対決」を貫徹しきれていない
「
マスク氏「ウクライナ勝てない」 ツイッターに投稿、反発の声も」(10/5(水) 9:35配信 共同通信)のコメ欄。
例えばドネツク、ルハンシク州の一部をロシアに切り取られた状況で停戦合意したとして、確かに短期的には「平和」は訪れる。しかし、侵略して他国の領土を奪うことに成功したという事実は更なる侵略に繋がる。クリミア侵略が今回に繋がったことは明らかなように。だからこそウクライナは闘い続けている。
短期的な平和は経済不安のリスク軽減に繋がるし安全な他国でマネーゲームをしている人間が求めるのは当然だが、まさに命懸けで祖国や子孫のために闘うウクライナ人に対しそれを押し付けるのはあまりに利己的ではないか。目先の安定を求めたがために災いが何倍にもなって降りかかってくるなんて話は第二次
世界大戦でもあった。
これもまたご立派な演説ですが、徹底的に抗戦を続けて勝ち目はあるのかというのがマスク氏の問いなのです。
「
クリミア侵略が今回に繋がったことは明らかなように」というコメ主。たしかに一理ある主張ではありますが、
ならば一旦停戦して時間を稼ぎ、その間に今度こそ金城鉄壁の国防を固めればよい話でしょう。今回の一戦だけで決着をつける必要はありません。
「
マスク氏、ロシアとの「和平案」提示 ウクライナ大統領ら反発」(10/4(火) 10:04 配信 AFP=時事)のコメ欄。
>ロシア編入の是非を問う住民投票の国連監視下でのやり直し、クリミア半島でのロシアの主権承認、ウクライナの中立国化を含む和平案
この人的には、停戦合意によってマーケットが始動し、核攻撃などの可能性が減り、自分の企業と資産の価値が下がらなければ、他はどうであれ問題無いんだよ。それが経営者というものなんだろうね。
ただしこの案は国家というものが領土と国民からなる、というのを無視しちゃってて、これがまかり通れば少数民族紛争のある国は外国勢力の軍事侵攻を招いて占領さえさせれば住民投票で独立できる、ということになっちゃう。
企業としての経営や経済的には誰がどこの国籍だろうと、どの国がどこを併合しようと交戦状態でなければ正常な市場として機能する、という事なんだろうけど、まぁあくまでこれは計算上の論理だし、嫌味を言えば戦争や交戦によって得をする人の事すら考えてないってことになるね。
「
これがまかり通れば少数民族紛争のある国は外国勢力の軍事侵攻を招いて占領さえさせれば住民投票で独立できる、ということになっちゃう」・・・仮に今回ウクライナがロシアを撃退できたとしても、力の信奉者たるロシアには「2022年の我々は弱かったから敗退した」という「教訓」しか残らないでしょう。
まさかコメ主が期待するような道徳的な改心は望めないでしょう。
「
イーロン・マスクの「ロシア寄り」の和平提案に非難が殺到」(10/4(火) 16:00 配信 Forbes JAPAN )のコメ欄。
それを認めたらウクライナの完全敗北だね。それが認められないからウクライナは戦って抵抗することを選択したんだから、認めてしまったらそれを守るために戦って命を落とした兵士と国民が完全に無駄だったことになってしまう。
それに戦争をしたら現状を変えることができるという実績ができてしまうので、ロシアに続いて戦争を仕掛ける国が多発し、結局は世界中で戦争を発生させる原因となることだろう。つまり戦争を収めようとしたことが、さらなる戦争を生み出すことになる。
「
認めてしまったらそれを守るために戦って命を落とした兵士と国民が完全に無駄だったことになってしまう」→だから戦争をやめられない・・・
どつぼに嵌り込んだ人の典型的な発想。日帝も最後はこれで身動きが取れなくなったものでした。
「
戦争をしたら現状を変えることができるという実績ができてしまう」ともいいますが、それは既にアメリカの手によってアフガニスタンやイラクで実践済みのものです。ロシアがウクライナに対してやっていることは、アメリカがアフガニスタンやイラクでやっていることと大差ないと見るべきです。
そもそも今の「国際社会」は第二次世界大戦という「力ずくの現状変革」の上に成り立っているものです。また、東西冷戦は、両陣営が「力ずくで現状維持」したからこそ全面戦争には至らなかったものです。第二次世界大戦後に拵えられたさまざまな建前すべてを剥ぎ取れば、結局のところ依然として「力」が厳然として存在しています。つまり「何を今更」なのです。
「
戦争を収めようとしたことが、さらなる戦争を生み出す」ともいいますが、このままズルズルと戦争を続けるよりも、
いったん停戦して時間を稼ぎ、その間にウクライナをハリネズミのような高度国防国家に改変して二度とロシアが手を出せないようにするという道もあるでしょう。何もこの戦争一回で決着をつける必要はないように思われます。
「力と力の対決」であるからこそ、不利なときには何とかして時間を稼いで実力を養う必要があります。
最も合理的・打算的に行わなければならない戦争が泥沼化してゆく最も典型的な展開。「今日のウクライナ戦争は明日の台湾・沖縄有事」という見方に則れば、何としてでも北東アジア情勢が「台湾・沖縄有事」にいきつく前に事態を落ち着かせなければならないでしょう。この国は、ひとたび戦火の火蓋が切って落とされれば留まることを知らないからです。
結局、
21世紀になっても最終的な担保は「力」なのです。このコメントを筆頭に日本世論は色々と御託を並べていますが、
この根本的な原理を十分に理解していないように見受けられます。ときどき、理想主義的な願望・動機が見え隠れしているのが気になります・・・
■総括
もっとも合理的・打算的に行わなければならない戦争において合理的な計算を疎かにして善悪・当為の問題に拘泥すること、
拙速にも一回の戦争ですべてを解決しようとすること、そして
「力と力の対決」を貫徹しきれていないこと・・・イーロン・マスク氏の「ウクライナは勝てない」発言から相変わらずの世論反応が見えてきています。