https://news.yahoo.co.jp/articles/39fc15b356a0e35a5cafdd84ca8d6aabab6d8826金与正氏、談話で異例の「大韓民国」表記 別の国家と見なす?
7/11(火) 17:44配信
毎日新聞
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は10、11日に発表した談話で、韓国を「大韓民国」と表記した。これまで北朝鮮の要人による声明などでは「南朝鮮」などと表記していたため、韓国国内では「韓国を別の国家として見る立場を公式に示したのでは」との見方が広がっている。
与正氏の談話は、朝鮮半島周辺を飛行する米軍の偵察機を非難する内容。10日の談話では「『大韓民国』の合同参謀本部が米国防総省や米インド太平洋軍司令部の報道官かのように振る舞っている」と表現。11日の談話でも「『大韓民国』の軍部は直ちに口を閉ざさなければならない」などと警告した。いずれも、北朝鮮が強調する際に使うかぎかっこ付きで使用されていた。
韓国統一省によると、北朝鮮は過去に第三者の発言やメディアの内容を引用する際に「大韓民国」と表現したことはあるが、公式に発表した声明・談話などで大韓民国と呼んだ事例はないという。同省は「北朝鮮の意図と今後の態度を引き続き注視していく」としている。
(中略)
聯合ニュースは従来の南朝鮮という表現は「『同じ民族』または『統一の対象』と見る観点が反映されたもの」だとし、「金正恩政権が金日成政権時代から続いてきた統一戦略を放棄し、『国家対国家』として南北共存に重きを置く政権への転換を宣言したと解釈できる」との分析を伝えた。
これに先立ち北朝鮮は、韓国・現代グループの玄貞恩(ヒョン・ジョンウン)会長が北朝鮮東部の金剛山観光地区を訪問する計画を不許可にした。その内容を北朝鮮側の南北間の窓口である祖国平和統一委員会や朝鮮アジア太平洋平和委員会ではなく、北朝鮮外務省局長の談話で発表したため、韓国では「外国のように韓国に接する意味が含まれている」との指摘が出ていた。【ソウル日下部元美】
https://news.yahoo.co.jp/articles/23db28526cde4547d5462ec7723e11951f3481c4 金与正氏が「大韓民国」と表現 北朝鮮は「二つのコリア」路線になったのか 澤田克己
7/18(火) 10:50配信
サンデー毎日×週刊エコノミストOnline
北朝鮮が「大韓民国」という言葉を使ったことが、韓国で波紋を引き起こしている。北朝鮮は韓国のことを「南朝鮮」と呼んできたのに、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏が談話で「大韓民国」を使ったのだ。相手の立場を尊重して正式国名を使った、とは考えにくい。となると、自分たちは韓国とは違う国だという立場を示したのではないか、つまり統一ではなく「二つのコリア」路線なのではないかとも考えられる。韓国としては気になるところである。
金与正氏は7月10日と11日に米軍偵察機の活動を非難する談話を発表した。その中で「『大韓民国』の合同参謀本部が米国防総省や米インド太平洋軍司令部の報道官であるかのように振る舞っている」などと表現した。
韓国と北朝鮮は法的に互いの存在を認めておらず、韓国は北朝鮮を「北韓」、北朝鮮は韓国を「南朝鮮」と呼んできた。首脳会談の合意文などでは互いの正式国名を使うし、北朝鮮メディアも第三者の発言を引用する時などに「大韓民国」を使うことはある。ただ、北朝鮮が公式の声明や談話で「大韓民国」を使ったのは初めてだという。
韓国メディアは「南北関係を国家対国家、それも敵対的関係だと見ていく意図を明らかにした」(東亜日報社説)とか、「現在の分断状態を恒久化し、どのような統一の議論も拒否するという意味だ。金氏王朝の永続化という意味でもありうる」(朝鮮日報社説)などと解釈している。
(以下略)
■二重山括弧で括った「大韓民国」という表現が示すこと
「
韓国統一省によると、(中略)
公式に発表した声明・談話などで大韓民国と呼んだ事例はない」(毎日新聞記事)や「
北朝鮮が公式の声明や談話で「大韓民国」を使ったのは初めてだという」(サンデー毎日×週刊エコノミストOnline記事)とのことですが、そんなことはありません。
チュチェ74(1985)年4月に最高人民会議が「大韓民国国会へ送る手紙」を発表した例があったはず(和田春樹『北朝鮮現代史』岩波新書、2012、p152)。この最高人民会議の書簡は、チュチェ69(1980)年開催の朝鮮労働党第6次大会で提案された高麗民主連邦共和国構想を底流として、チュチェ73(1984)年秋の韓「国」領域での水害に対する共和国政府による援助物資の提供や、同11月の北南経済会議及び北南赤十字予備会談の開催といった関係改善期の文脈で実現したものでした。高麗民主連邦共和国構想は、一国二制度の朝鮮半島版というべきものであり、韓「国」を国家として認めることを前提とするもの。国際的な冷戦構造のなかで少しでも国是としての祖国統一に近づけるための提案、民族和合を目指すための提案であったと位置付けることができます。もちろん、高麗民主連邦共和国構想を以って共和国が自主統一・赤化統一の国是を放棄したわけではありません。
翻って今回。明らかに敵対的な意味で「大韓民国」と言っているものと思われますが、
共和国が自主統一・赤化統一の国是を放棄してまで韓「国」を独立国家扱いしているとは言えないでしょう。「
韓国を別の国家として見る立場を公式に示した」という見方は誤りだと考えます。
なぜならば、原文において「大韓民国」という単語を二重山括弧で括っているからです。東洋経済が下記記事を公開しています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ad96038431776c1beda3f0e181447b5c1096aee金総書記の妹が《大韓民国》と括弧でくくった訳
7/16(日) 5:51配信
東洋経済オンライン
(中略)
■《》(二重山括弧)は「認めていない」という意味
そして翌7月11日にも金・副部長は談話を発表し、「《大韓民国》軍部」と表記した。この《》(二重山括弧)で韓国の正式国名である大韓民国を囲った意図は何かをめぐり、韓国をはじめ世界の北朝鮮ウォッチャーの関心を引いた。
これまで、北朝鮮による韓国の呼称は「南朝鮮」とするのが普通だった。これには「同じ民族である国家の南半分」という意味がある。では、二重山括弧は北朝鮮でどんな意味を持つのか。
北朝鮮の教育内容に準じた教育を日本の朝鮮学校で受けた在日コリアンは、「二重山括弧はおおよそセリフや固有名詞に使うが、例外的な用法がある。それは、書き手である北朝鮮から見ると、一般的用語だけど自分たち(北朝鮮)は認めていないという意味合いを出すときだ。主に敵対する勢力が使う用語だったり、そんな勢力を卑下したり皮肉を伝えたりするときに使う」と説明する。
また朝鮮学校の教科書でも、「この二重山括弧の部分にどんな意味があるか考えてみよう」という設問があるという。となると、金副部長ら北朝鮮指導部は、「現在の南朝鮮は同族の国ではない。同じ民族として相対することはしない」という意味にも取れる。
7月14日にも金・副部長は談話を発表したが、ここでも「拡大抑止」「核協議グループ」といった自らが受け入れがたい用語には《》をつけて表記している。
(以下略)
上掲毎日新聞記事を筆頭に、本件に関する日本メディアの記事のほとんどが、二重山括弧の意味合いを「強調の印」と解釈していますが、
私は「書き手である北朝鮮から見ると、一般的用語だけど自分たち(北朝鮮)は認めていないという意味合いを出す」という見立てが正しいものと考えます。ちなみに私も、共和国を朝鮮半島唯一の主権国家だと考え、軍事分界線以南はアメリカ統治下にあり主権国家だとは言い難い(戦時作戦統制権を持っていないのは、やっぱりねえ)と考えているので、当ブログでは 韓「国」 という表現(国にカギカッコをつける)を常用しているところです。
※なお当ブログでは、キーワードであることを示すために記事内初出単語をカギカッコで括ることはありますが、その場合、二回目以降はカギカッコを外しています。 韓「国」 のように最初から最後まで一貫してカギカッコで括った単語のみ、揶揄やからかいの意味合いを込めています。
ユン・ソギョル「政権」はもはや「従米」を超えて「崇米」という域に達しています。共和国政権の同「政権」に対する非難は非常に激烈なものがあり、
どう考えても関係改善期ではありません。また、国際環境を鑑みると、たとえば共和国は昨夏、ウクライナから独立を宣言している親ロシアのドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を国家として承認しました。世界に政治的に親ロシアの国は決して少ないことはなく、対ロシア経済封鎖に協力しない国はもっと多いとはいえ、両人民共和国を国家承認する国連加盟国はロシアのほかには共和国とシリアくらいものです。これに対して韓「国」政府は、つい先日もユン・ソギョル氏がキーウを訪問するなど、ゼレンスキー政権支持の立場を明白にしています。
新冷戦が始まったと考えれば、共和国の旗印は非常に鮮明だといえるでしょう。
■二重山括弧つき「大韓民国」という表現は、「所詮傀儡なのに、ひとかどの独立国家を気取っているぞ(笑)」といった具合に軽んずる意図がある
キム・ヨジョン党中央委員会副部長がいったいどのような発言をしたのか正確に確認しましょう。常に、事実から出発することが肝要です。まず10日の談話。
http://www.uriminzokkiri.com/index.php?lang=jpn&ptype=cfodoc&mtype=view&no=48017金與正党副部長が談話発表
【平壌7月10日発朝鮮中央通信】朝鮮労働党中央委員会の金與正副部長は10日、次のような談話を発表した。
今日午前、わが国防省のスポークスマンは、最近になってわが国家の主権と安全利益を重大に侵害している米軍の憂慮すべき空中偵察行為に厳重警告を送った。
実に見ものは、南朝鮮のかいらい軍部一味がいち早く米軍の重大な主権侵害事実を否認したことである。
今や、「大韓民国」の合同参謀本部が米国防総省や米インド太平洋司令部の代弁人にもなるかのように自任している。
ややもすれば、口出しし、口出しせずにはむずむずするその悪い癖は、政治をするという連中や軍部ごろも一様に持っている「大韓民国」一族の体質的特質のようである。
天下の厳然たる事実をいかにして白昼に眉一つ動かさず否認することができるのか。
240海里以上の探知半径を持った敵対国の偵察資産がわれわれの200海里の経済水域を侵犯するのは明白に、朝鮮民主主義人民共和国の主権と安全に対する重大な侵害となる。
わが方の軍事境界線水域はもちろん、経済水域の上空も米軍偵察資産が意のままに入って来れる米国の軍事演習場ではない。
かいらい軍部は、無理押し主張を慎み、口をふさがなければならない。
(以下略)
10日の談話では「
大韓民国」という語句を使いながらも、明確に「
かいらい軍部は、無理押し主張を慎み、口をふさがなければならない」と言っています。
韓「国」政権が傀儡政権であると言明しています。
続いて翌11日の談話。
http://www.uriminzokkiri.com/index.php?lang=jpn&ptype=cfodoc&mtype=view&no=48021金與正党副部長が談話発表
【平壌7月11日発朝鮮中央通信】朝鮮労働党中央委員会の金與正副部長は11日、次のような談話を発表した。
「大韓民国」の軍部は、またもや米軍の挑発的行動について差し出がましく先頭に立って「『韓』米の正常な飛行活動」という厚顔無恥な主張をして、わが主権に対する侵害事実を否認した。
当該の空域に関する問題は、わが軍と米軍の問題である。
「大韓民国」の軍部ごろは差し出がましく振る舞わず、直ちに口をふさがなければならない。
10日、米空軍戦略偵察機は5時15分から13時10分まで江原道通川の東435キロから慶尚北道蔚珍の東南276キロまでの海上の上空で朝鮮東海のわが方の経済水域の上空を8回にわたって無断侵犯し、空中偵察行為を強行した。
(以下略)
「
当該の空域に関する問題は、わが軍と米軍の問題である」のに、
「「大韓民国」の軍部」が「差し出がましく先頭に立って」しゃしゃり出てきたと指摘しています。
「
江原道通川の東435キロ」を韓「国」が実効支配しているのかは私はよく知りませんが、少なくとも「
慶尚北道蔚珍の東南276キロ」周辺は、共和国の実効支配領域から遠く離れており、韓「国」の実効支配が及んでいるものと思われます。韓「国」が主権国家であるとすれば、当該空域は同国領空であると言え、どこの国の飛行機を飛ばすかどうかは同国の勝手であるはずです。
もし共和国が韓「国」を主権独立国家だと認めているのであれば、「こんなことをするとは、大韓民国はアメリカの対共和国敵視政策の片棒を担ぐのか!」と抗議するであろうところ、キム・ヨジョン副部長は、当該空域における問題を「わが軍と米軍の問題」と断言しました。
このことを鑑みるに、韓「国」を主権国家として認めているとは言い難いように思われます。
また、文書が「
繰り返される無断侵犯の際には、米軍が非常に危険な飛行を経験することになるであろう」などとアメリカに対する警告で終わっており韓「国」については言及していない点からは、
韓「国」を添え物扱いしているような印象を受けざるを得ないものです。
二重山括弧つき「大韓民国」という表現は、「所詮傀儡なのに、ひとかどの独立国家を気取っているぞ(笑)」といった具合に軽んずる意図があるように読めます。この表現からは、共和国政府が怒りのボルテージを一段と高めたことは分かりますが、しかし、「軍事分界線以南を国として認めている」とは言えないと考えます。■共和国の政治史及び朝鮮民族の思想史を鑑みるに、単に言及がなくなったことだけでは政策の根本的転換であるとは言い難い
その前提で、「別の国」論に立つ韓「国」・聯合ニュース記事を見ておきましょう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9685ff35a98d42891d7a58563516853e436b2e58金与正氏が談話で異例の「大韓民国」使用 韓国は「別の国」と強調か
7/11(火) 11:18配信
聯合ニュース
【ソウル聯合ニュース】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長が談話で韓国を従来の「南朝鮮」ではなく「大韓民国」と呼び、その背景に関心が集まっている。
(中略)
だが、与正氏が正恩氏の「委任」を受けて発表した談話で「大韓民国」という表現を使ったことから、北朝鮮が韓国を「別の国」と見なす姿勢を鮮明にしたとの分析が出ている。朝鮮半島情勢の悪化に伴い対韓・対米交渉の見通しが暗くなり、北朝鮮の政策が協力を通じた関係変化の模索から「敵対的共存」に主眼を置く「二つのコリア(Two−Korea)」政策へ変化したとの見方だ。
北朝鮮のこうしたスタンスの変化は、2021年の第8回朝鮮労働党大会から徐々に表れた。
北朝鮮は同党大会で党規約を改正し、「全国的な範囲で民族解放民主主義革命の課業を遂行」という文言を削除して「共和国北半部で富強かつ文明ある社会主義社会を建設」「全国的な範囲で社会の自主的で民主的な発展を実現」といった文言を新たに加えた。このことも、金正恩政権が金日成(キム・イルソン)政権から受け継いできた北朝鮮主導の統一戦略を放棄し、「国対国」として韓国と北朝鮮の共存を図る政権への転換を宣言したと受け止められる。
第8回党大会では、書記局で重要な地位を占めていた対南担当書記のポストが廃止された。また、対韓国業務の従事者らは19年のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談の決裂後、「革命化教育」を受けたり公の場から姿を消したりした。
北朝鮮の対韓国窓口機関だった祖国平和統一委員会の存在も見えない。同委員会はかつて、南北関係の重要な議題に対する北朝鮮の立場を発表してきたが、第8回党大会以降は何の発表も出していない。
韓国・北韓大学院大の梁茂進(ヤン・ムジン)総長は、与正氏が韓国を「大韓民国」と表現したことは北朝鮮の「2国家体制」政策の表れだとし、「今回のことを北と米国の間の問題だと規定したように、この先、朝鮮半島問題について大韓民国と協議しない、相手にしないという意思がにじんでいる」と分析した。
共和国の政治史及び朝鮮民族の思想史を鑑みるに、単に言及がなくなったことだけでは政策の根本的転換であるとは言い難いように思われます。
共和国は、主張に強弱をつけたり一旦ひっこめたりすることで時機に沿った政策を展開してきました。たとえば、共産主義という国家の根本にかかわるキーワードさえも、
キム・ジョンイル総書記時代の最末期には一旦ひっこめましたが、
キム・ジョンウン総書記時代になってから再度言及するようになりました。
以前から指摘してきたように、ソ連などと異なり共和国では、決まった公理公式から政策を演繹して全国一斉に実施するのではなく、政策を地域的・実験的に展開して上手くいけば全国的に展開する方式を取ってきました。建国初期の土地改革に代表される大変革の例はあるものの、新しいアイディアが実験的に実践されてから全面的に導入される例も多いことに気がつかされるのです。社会主義国は一般的に「急進的な設計主義的方法論による制度建設」の路線を歩むものですが、共和国は、意外なことに、「実験的・試行錯誤的方法論による制度進化」がよく見られるのです。国家の根幹を成すチュチェ思想も、その形成史を振り返ればそうでした。
それゆえ、
今回のように一回や二回の談話で珍しい表現が出て来たからといって、それが国是の変更にまで至るのかは断言し得ないのです。
朝鮮民族の思想史の射程からも述べておきましょう。小倉紀蔵先生の『朝鮮思想全史』(ちくま新書、2017)では次のように指摘されています(p22〜23)。
朝鮮思想史に特徴的な変化法則は、以下のとおりである。
まず、自国の安全保障上の理由や統治権力の安定性という理由により、朝鮮では思想の純粋性が追求される傾向が著しく強い。(中略)思想が純粋性の獲得をめざして運動している時期は、きわめて躍動的な社会が実現される。この純粋な思想によって統治がなされ、国家や共同体の成員の生命が維持され、充実している時期は、継続して純粋性が追求される。この時期には情報が統制される。だが、ある時点を境にして、純粋な思想の現実的効力が失われはじめると、統治権力の意志によって、情報の遮断など負の回転が始まり、思想の純粋性を死守しようという運動が、国家や共同体の成員の生命を劣化させる。生命の劣化が極度に進むと、あるとき電撃的・革命的に新しい思想が導入されたり発明されたりし、情報の流入・混淆は奔流のように進行し、それとともに社会の霊性的躍動性(加速度)が一気に強まる。そして新しい思想による新しい生命が社会を果敢に変革していく。
朝鮮思想史には、躍動性と静態性の両方がある。そのどちらかのみを本質として認識してはならないのである。
思想史というものは、ある一定の歴史的な社会・文化的集団に共通な考え方の様式であり、これは代々継がれてゆくものと考えます。つまり、現代朝鮮半島においても、程度の強弱こそあれ、この思考様式は引き継がれているものと考えられます。
朝鮮の思想の特徴から考えたとき私は、以前の政策の否定を言明したときにのみ根本的な転換が発生したと言い得、言及がなくなった程度ではまだ根本的な転換が起きたとは言えないのではないかと考えます。それゆえ今回のキム・ヨジョン副部長による「大韓民国」発言からは、
「『二つのコリア』路線になった」といった類の路線変更が起こったとは言い難いのではないかと考えます。
■階級対立を覆い隠すプロパガンダによって自家中毒を起こしている「保守」は理解できないのかもしれないが・・・
韓「国」の保守紙である朝鮮日報記事についても取り上げておきたいと思います。
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/07/12/2023071280021.html記事入力 : 2023/07/12 10:48
北が初めて使った「大韓民国」の呼称、うかつにやり過ごしてはならない【7月12日付社説】
(中略)
北朝鮮が「大韓民国」という表現を使ったことは、「同じ民族」として最低限の配慮も今後はしないことを意味する。「まさか同じ民族に核兵器を使うわけない」と考えるなということだ。今後は核問題・ミサイル問題における南北次元での交渉は全て拒否し、新たな挑発を敢行する可能性も考えられる。哨戒艦「天安」爆沈のように証拠の確保が難しい挑発、あるいは新たな核実験などもあるかもしれない。いずれにしても北朝鮮の意図を引き続き詳細に分析し、これに対応していかねばならない。
階級対立を覆い隠すプロパガンダによって自家中毒を起こしている「保守」は理解できないのかもしれませんが、
チュチェ思想を含む社会主義・共産主義は、為政者と人民大衆とを峻別する立場を取っています。それゆえ、韓「国」の為政者に対してこの上ない罵倒を展開したとしても、それが直ちに朝鮮半島南半分の同胞たちに危害を加えるという意味にはならないでしょう。■総括
結局、
キム・ヨジョン副部長談話からは、共和国政府が怒りのボルテージを一段と高めたことは分かりますが、しかし、「軍事分界線以南を国として認めている」とは読み取れないと私は考えます。