2013年02月01日

「オレのカネ」

「駆け込み退職」問題について、報道を引用しつつ少々。なお、以下引用記事中の太字処理、下線処理は当方によります。

タイムリミットは昨日までだったので、人数が出揃ったようです。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG3105Q_R00C13A2CC0000/
>>> 埼玉、駆け込み退職153人 県教委は100人臨時採用
2013/2/1 11:46

 地方公務員らの「駆け込み退職」問題で、埼玉県教育委員会とさいたま市教委などは1日までに、2月の退職手当引き下げを前に、教員ら153人が1月31日付で退職したと発表した。

 退職者の内訳は養護教諭を含めた教員が104人(教頭3人、学級担任30人)、県職員33人、学校職員16人。1月下旬に問題が発覚した後、6人が退職を撤回した。県立高教頭や小学校教諭らで「子供たちのために最後まで勤務したい」などと話したという。

 県教委などは、授業などに支障がないよう約100人を臨時採用し、2月1日から各校に順次配置する。任期は3月末まで。県教委は「必要な教員はほぼ確保した。大きな混乱は起きないと考えている」としている。

 改正条例は、国家公務員の退職手当を減額する法改正を受け、昨年12月の県議会で可決、成立した。勤続35年以上の職員が3月末まで勤務すると現行制度より手当は約150万円少なくなる。年度末まで勤務した場合、2カ月分の給与を考慮しても約70万円少ない。〔共同〕
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結局153人が「駆け込み退職」したそうです。しかし、今年度の県の定年退職者は、およそ1300人だということなので、1割程度でしかありませんね。

こうなったこと自体は、制度設計から見て、目に見えたことでした(思ったより少なかったけど)。人間なんてこんなもんですよ。カネ、カネ、カネ。しかし、教員が圧倒的な人数を誇っているのが気になるところです。「人間なんてこんなもん」とは言っても、庁舎でデスクワークに従事している一般職員ならまだしも、ふだんは子供たちを相手にお花畑みたいなことを言っている教員が、いざ自分のカネになると急に超現実主義者になってガツガツしはじめるってのは、笑うに笑えませんね。

当事者は次のように述べています。
http://mainichi.jp/select/news/20130201k0000e040219000c.html
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駆け込み退職:唐突な制度改革に怒り…教諭が心情

毎日新聞 2013年02月01日 14時31分(最終更新 02月01日 18時26分)

 ◇「働いた方が損をする。こんな失礼な話はない」

 退職手当の引き下げ前に教員が退職を希望した「駆け込み退職」問題。早期退職を決断した埼玉県立高の男性教諭(60)は1月31日、教員人生を締めくくる最後の授業に臨んだ。「一生をささげた仕事。生徒を思っていなければ60歳まで続けられるわけがない。最後をこんな形で終えるのは悔しく、残念でならない」。毎日新聞の取材に、苦渋の決断を下した胸の内を明かした。

 教諭は英語を担当し、2年生の副担任を務めた。2月からの退職金減額については昨年12月中旬、校長から説明があった。試算表を見ると差額は約150万円。3月末まで勤めた場合の給与を考慮しても、70万円の減額になる。

 1人暮らしでローンの返済はない。生活が切迫しているとは言えなかった。だが、唐突な制度改正に怒りがこみ上げた。「身を削り働いてきたのに、働いた方が損をする。こんな失礼な話はない。『要らない』と言われたようだった」

 2年前から肺の病気などを患い、体力の限界を感じてもいたが、生徒の顔を見るたびに心は揺れた。何と言えばいいのか。年度途中で仕事を投げ出し、同僚にも迷惑をかける。始業式のあった1月8日に「早く決めなければ後任が探せず、迷惑をかける」と早期退職を決断した。同僚も「こんな不条理な制度を我慢して受け入れないで。1月末で辞める選択をしてもいい」と背中を押してくれた。

 「教員が途中で辞めるのは無責任」「生徒がかわいそう」「制度が悪い」。早期退職を巡る批判や擁護が報じられる中、自分も1月で辞める教員だ、と生徒に説明した。

 最後の授業。「今回の件で、人にはいろいろな立場や思いがあることを知ってほしい。嫌な辞め方だったけど、君たちと過ごせたことは最高の思い出です」。そう締めくくると、生徒たちは「ありがとうございました」と感謝の言葉を返してくれたという。【林奈緒美】
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擁護できるポイントがなかなか見つからなかったというのが正直な感想です。生活が苦しいというのならば、仕方ありませんが、そういうわけでもない。

しいて言えば、「働いた方が損をする。こんな失礼な話はない」というのは、そのとおりなんですが、それをいうなら以下の記事の第4段落の太字部分のほうが説得的です。
http://www.saitama-np.co.jp/news02/01/08.html
>>> 「駆け込み退職」に苦言や制度批判272件、退職金削減に賛成も

 退職手当が2月1日から引き下げられるのを前に県教職員の「駆け込み退職」が相次いだ問題で、県にメールやファクス、電話などで寄せられた意見は31日現在で計272件(県教育局で受けた146件を含む)に上った。県に苦言を呈したり、退職する教員や制度を批判する内容が大半を占めた。

 件数は早期退職が報じられてからの累計。上田清司知事は1月22日の定例記者会見で「担任が辞めるのは不快。無責任のそしりを受けてもやむを得ない」などの考えを述べていた。

 県広聴広報課によると、県に対する主な反対意見は「無責任なんて言えるのか。早期退職すれば得するような退職金に設定したのは、そもそも県ではないか」(女性)、「4月1日からにすれば、寂しいことにならなかった」(男性)、「あなた方の制度設計の間違いが一番の原因。意図的に職員に踏み絵を踏ませたのかと、勘繰りたくなる」(男性)など。

 一方、退職金削減について「本当に素晴らしいと思う。赤字なのに職員が民間より多くの退職金をもらい、それで足りないから交付税を受けるなんて、おかしいので」(女性)との賛成意見も。

 退職する教員に対しては「金のために担任まで生徒を放り出し、最後まで職を全うしないのは、まさに責任放棄と言われても仕方ない。早期退職を認めないか、何らかの処分の対象にしてもいい」(男性)との厳しい指摘や、「子を持つ親としては、今どきの教員なんてそんなもんかという気分」(女性)という嘆きもあった。

 また、中には「経済的な損失を考えて退職する教員もいるだろうが、今回の減額措置に対して、抗議の意味合いで退職する教員もいると思う」(男性)と、教員のやりきれない思いに同情する声もあった。
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結局、太字処理した部分が全てだと思います。たしかに急に退職金を引き下げられるのは不満だというのは、とても良く分かるんですが、「そもそも、以前の金額は財政力から考えて妥当なのか」という視点は何処に行ったのか。退職金は「給与の後払い」であるわけですが、であればこそ、「全体の業績」次第で減額だって十分あり得る話です。どうも、「全体のことよりもオレのカネ」といった「自己都合中心」の懸念が拭えないんですよね。。。

下線部分は、「自己都合中心」を見抜いた見解であると言えると思います。当事者は色々と言い訳していますが、すればするほど自分で自分を貶めているように見えてなりません。

良くも悪くも日本人は、とても「世間を見据えた視野」を持った人たちです。ギリシャのデモに対する日本人の冷ややかな、あきれて半ば無視しているような反応を見れば分かると思います。そういう人たちに共感してもらえるような「世間を見据えた視野」をも含めた主張をしないと、「結局、いろいろ言っているけど自分のカネなんでしょ?」と思われるだけでしょうね。

予想外に9割近くの人たちが、損をしてでも職務を全うしようとしているのも、「世間を見据えた視野」があるからなのかもしれません。
posted by 管理者 at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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