http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-27/2013022706_01_1.html
>>> デフレの要因 わずか19品目たしかに家電やIT機器は尋常ならざる下げ幅ですが、しかし、自ら述べているように、問題の19品目を除外しても僅かに+0.6%じゃないですか。CPIは少しインフレ気味に値を出す傾向にあるので、まだ「デフレ脱却」と断じることができるか微妙でしょう。また、そもそもデフレの議論に際して単年度の資料だけでは不足です。統計資料を数年単位で見ると、2011年度のような例外的な年もあるにせよ幅広い品目において傾向として価格が下がりつづけており、物価水準の足を引っ張っているのです。感情屋のように都合のいい情報に飛びつくべきではありません。まあ、これは政府の2月の月例経済報告にも言えることですが。
パソコン・ビデオレコーダー・家庭用ゲーム機…
物価の持続的下落である「デフレ」がわずか19品目によって引き起こされていることが日本銀行の調査でわかりました。日本共産党の大門実紀史議員が20日の参院予算委員会で取り上げました。
2011年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年度比0・0%と横ばいでした。ただ09年度と10年度、2年連続で下落したために、低い水準にとどまっています。日銀の試算は、消費者物価指数が前年度比0・0%となるにあたってどの品目がどれくらいの影響を与えたのか(寄与度)を調べたものです。
生鮮食品を除く総合指数の調査対象となる524品目のうち、消費者物価が前年度比10%以上下落したのは19品目でした。
最も下落したのはパソコン(デスクトップ型)で前年度比39・0%の下落。以下、ビデオレコーダー、家庭用ゲーム機(携帯型)、電気洗濯機(洗濯乾燥機)、電気冷蔵庫、テレビなどが並びます。化粧品のファンデーション(高級品)など3品目以外はすべて家電やIT(情報通信)機器です。
これらの中には高額な品目も含まれますが、すべての世帯が毎年買い替えるというものではありません。そのため消費者物価指数に占める割合(ウエート)は低くなります。ウエート合計1万のうちパソコンは10、ビデオレコーダーは14、テレビでも101で、19品目合計でも255にすぎません。それにもかかわらず、下落率が高いために19品目合計で消費者物価指数を0・6%押し下げました。
下落率の高い19品目以外では、261品目が10%未満の下落です。58品目が前年度並み、186品目が上昇しました。品目数が多いため、ウエートは9745を占めます。これらの505品目によって消費者物価指数が0・6%押し上げられました。
一部の家電やIT機器によって消費者物価が下落していることが「デフレ」の要因です。日常生活に身近な品目は、価格は下がっておらず、むしろ上がっているものもたくさんあります。
物価上昇は国民生活を直撃します。このようなときだからこそ、政府は「物価上昇目標」ではなく「賃上げ目標」を持つことが必要です。なによりも消費税増税を中止することが求められています。 <<<.
さらに言えば、統計数値だけを見ると特定の19品目だけがデフレの原因のように見えるかもしれませんが、諸産業は連関しているのですから、「コレさえなければ。。。」という話にはならないでしょう。記事中、槍玉に挙げられている19品目以外にも、261品目が下げていることを自ら指摘していますが、それら261品目も19品目を「アシスト」する形でデフレ化の一因になっている可能性はありますし、価格が上がった186品目ですら、デフレに作用していることもありうるでしょう。たとえば燃料等の価格の上昇がある種の財への需要を減らし、価格の低下をもたらすといったように。デフレは総合的・構造的なものであり、「一部の家電やIT機器によって消費者物価が下落していることが「デフレ」の要因」という書き方はミスリードを誘います。
でも、そんなことよりも重大なのは、下げている品目が軒並み、日本経済にとって重要なものばかりであるにもかかわらず、その辺にあまり触れられておらず、無邪気に賃上げを主張しているところです。苦戦している本当に如何でもいい産業で、主要産業は好調だというのならまだしも、これからの日本を引っ張って行こうかという「稼ぎ頭」が苦戦しているのです。おもな要因は陳腐化だと思いますけど、陳腐化ということは環境の変化が激しいということです。そんななかで、「生活必需品の価格はむしろ上昇している! だから賃上げせよ!」などとデマンド・サイドへのテコ入れを主張されても、一面においては正しい主張ですが、経済が円環状の因果関係をもつ相互依存システムである以上、それを支えるサプライ・サイドのテコ入れもまた同時並行的に必要とされます。しかし、それについては例によって触れられていません。純粋な消費者の観点・立場から見れば正しいんでしょうけど、総合的には難しい注文です。価格上昇品目についても「コストプッシュ・インフレ」である推定されるものが多く、やはり難しい注文です。
いや、SAABを「見殺し」にしたスウェーデン(参考)のように、ドライな立場に転向したというのなら、それはそれで結構な話(それくらいのサプライ・サイド政策も必要かもしれません)ですし、製造業をあきらめて金融立国にするというのなら、まあそれも選択肢の一つかと思いますが、普段の発言を総合するに、そんなことはなさそうです。労働価値説を有難がっている人たちが「金融立国」はないでしょう。
共産党は数多ある政党の中でも観点・立場を明確にしている政党であると認識しています。しかし、経済というものは以前から繰り返し述べているように、円環状の因果関係が張り巡らされている相互依存システムです。参議院ウェブページにアップされている大門氏の質問ムービーを見る限り、「賃上げ⇒デフレ脱却(=インフレ)」で思考回路が固定化されているようでしたが、実態は「相互作用」なのです。それゆえ、特定の観点・立場に固定化するのは、どんなんなのかと思う次第です。
その点、安倍首相の認識は共産党よりは少しはマシかなと思います。大門氏の「賃上げ」質問に対して「CPIの約50%のウェイトを占めるのはサービスの価格だ。日本においては横ばいor下降傾向。物価安定目標を2〜3%にするには、サービス労働の価格をあげ、賃金アップに資するようにしてゆくことが望ましいのではないかと思う」(要旨)と答えました。でもこれ何故か、『赤旗』記事では何故かバッサリとカットされているんですよね。大門氏も「サービス業は労働集約的だから、その価格を上げることは賃上げであり、その点では首相と一致がある」(要旨)みたいなこと言っていたのに。