共和国に関するここ最近の情勢を見るに、どうも「挑発」というキーワードが新しく西側メディアの「辞書」に載ったようです。
「挑発」――きわめて二分法的、すくなくとも複数の「立場」を想定しての使用される言葉です。そして、多くの場合、自らを「義」の立場に位置づけ、相手方を「不義」の立場に位置づけて用いられる言葉です。字義によらずとも、昨今の共和国に対する日本の敵対的風潮を見ても明らかでしょう。
しかし、ここで敢えて共和国の立場から今回の情勢を見てみると、どうなるでしょうか。「人工衛星運搬ロケット」も「長距離弾道ミサイル」も一緒くたにする「国連決議」は「挑発」ではないのか、明らかに北侵演習である「米韓合同軍事演習」にB2爆撃機を投入する、これは果たして「挑発」にならないのか。アメリカによる諸々の対共和国敵視・敵対政策はどうなるのか。共和国が掲げるチュチェ思想は、ある出来事や行為が「義」か「不義」かというのは、それを判断する人間の「立場」、端的には「階級性」に左右されるとしています(マルクス・レーニン主義からの継承)。おそらく共和国当局は、こうしたアメリカ側の動きこそが挑発であり、それはすなわち、帝国主義の本性が現れている証左であると、結構本気で考えているでしょう。
私もわざわざ「共和国」と呼称するくらいですから、共和国当局の立場と見解には共感を覚えています。他方で、「だからと言って何も、ホンモノの長距離弾道ミサイルの発射準備までしなくても」とも思っており、「挑発」という汚名を着せられる原因の一端を自ら作っているとも思っています。そうした立場から昨今の情勢を見ていると、昨今の風潮は、あまりに「西側の視点」に偏りすぎていると思います。
しかし、これはこれである意味においては正しいと思います。先ほども述べたように、「ある出来事や行為が「義」か「不義」かというのは、それを判断する人間の「立場」、端的には「階級性」に左右される」わけです。「現在の国際社会の常識」においては、日本は「日本の立場」から物事を見、評価するのは当然であり、わざわざ敵国を利するような評価を下す必要はないからです。
国際政治・国際経済なんてそんなものです。自国は何処まで行っても自国の立場を貫く。もちろん、他国にまったく配慮しないのも問題ですが、だからといって何も敵国を利するようなことをする必要はないのです。そういう意味では、アメリカによる対共和国敵視・敵対政策には目をつぶり、徹底的な従米姿勢に基づき、自国を「義」、共和国を「不義」とレッテル張りする姿勢は、「日本の立場」としては至極当然なのであります。しかし、それは逆に言えば、国際政治や国際経済の舞台で語られている言葉なんて、きわめて「立場的」「国家的」「階級的」なシロモノであり、あまり客観性のある言葉ではないのです。
共和国への対応を見る限り、アメリカ側の行動を完全に棚上げしている自民党政権は「グローバル・スタンダード」に近い国際感覚を持っているように感じられます。問題は、いわゆる「世論」です。果たして「世論」は、その点をわかって「挑発」という言葉を使っているのか。そもそも客観性に乏しい文脈で使われている単語であるにもかかわらず、どうも本気で使っているように思えてなりません。
いまは日本の方がパワーバランスにおいて圧倒的に「強者」の側についているので良いですが、もし、まったく別のフィールドであったらどうでしょうか。そこでは、日本のほうがグレー(それもかなりクロに近いグレー)な行為を行っているが、それは日本の国益からすれば、どうしても中断するわけには行かない行為であったら。おそらく、利害相手国は、これ見よがしに「道理」だとか「筋」だとかを持ち出し、日本側の抵抗に対して「不義」だとか「挑発」だとか言ってくるでしょう(すでに中国共産党政権が尖閣諸島をめぐって「日本の挑発」とか言っていますし)。果たしてそのとき日本の「世論」は、利害相手国の「道理にかなった批判」とやらを受け入れ、自ら茨の道、没落の道を歩むというのでしょうか。
驚くべきことに、戦後の長い期間、日本は、利害相手国の「道理にかなった批判」とやらをバカ正直に受け入れてきました。しかし、いまやそんな余裕はありません。そろそろ「グローバル・スタンダードな国際政治・国際経済の文脈における『義』とか『不義』なんてものは、客観性に乏しいものだ」ということに、世論レベルでも気がついてほしいものです。
もっとも、「『現在の国際社会の常識』自体がどうなのか」という問いはたてられてしかるべきでしょう。そんなに自国中心主義でいいのか。書いている自分でも「階級中心主義とウリふたつで、危険な『常識』だなあ」と思います。将来的には克服してゆくべきものだとは思いますが、残念ながらこれが現実です。高い理想を掲げることは大切なことですが、現実から漸進的に進んでゆくべきであり、理想から急進的に進むべきではありません。
2013年04月22日
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