2013年04月24日

セルフ洗脳

中国爆発記事で有名な如月隼人さん。今日は共和国について書いておられます。すげえテキトウな「解説記事」。。。

でもまあ、世間標準では事実報道の部分もバイアス満載であるところ、如月さんの場合は、比較的ハッキリと分かれているので、良い方か。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130424-00000032-scn-int
>>> 北朝鮮「米国の誤判断は歴史的敗北を招くだろう」
サーチナ 4月24日(水)13時48分配信

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は23日、米国の誤判断は歴史的敗北を招くだろう」と題する論説を発表した。半島情勢を巡り米国が北朝鮮を「危険な誤判断」、「軽率な行動」と批判していることに反発し、「誤判断」、「軽挙妄動」をしているのは米国であり、朝鮮戦争についてのブラッドレー統合参謀本部議長の言葉を引合いに出して、米国は再び「史上最大の歴史的敗北だけをもたらすであろう」と主張した。

 米国について「われわれに対する無知と朝鮮半島の変化した政治的・軍事的力の関係に対する誤った判断にもとづいている」、「米国は、軍隊と人民が領袖の周りに志と情で固く団結したわれわれの一心団結とその威力について知らない」と主張。

 米国の対北朝鮮政策としては、「核兵器による恐喝を柱とする武力侵攻」とともに「内部崩壊を狙った思想的・文化的攻勢と経済制裁」により、「わが国の制度を崩せると判断している」、「このような対外政策が他のところでは通じるかも知れないが、わが共和国には通じない」と宣言した。

 自国の核兵器保有については「今日の朝鮮半島も過去の朝鮮半島ではない」、「朝鮮は列強の角逐場として無残に踏みにじられていた過去の弱小国ではない」と主張。自国が核武装をしたことにより「戦争勃(ぼっ)発の危険は著しく抑止されるようになった」と主張した。

 米国に対して改めて「今からでも旧時代的な対朝鮮政策から速やかに脱する方がよかろう」、「米国の誤判断は、史上最大の歴史的敗北だけをもたらすであろう」と論じ、最後の部分を「60年前の朝鮮戦争は、誤って選んだ場所で、誤って選んだ時間に、誤って会った相手と戦った誤った戦争であったと言った先任者らの言葉は、現米行政府にとっても慎重に受け止めるべき教訓となる」として締めくくった。

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◆解説◆
 同論説で注目されるのは、「朝鮮は列強の角逐場として無残に踏みにじられていた過去の弱小国ではない」との部分だ。朝鮮戦争、あるいはそれ以降の南北対立の状況も踏まえて北朝鮮が「列強」と断じているのは、第一に米国を指すと考えてよい。しかし、「角逐場」と言うからには“相手”があるはずで、その相手とは中国の国を思い浮かべることは困難だ。

 つまり「自国は大国の勢力争いの犠牲になってきた」との主張にも等しく、北朝鮮が中国にも根深い不信感を抱いていることが分る部分だ。

 なお、朝鮮戦争について「誤って選んだ場所で、誤って選んだ時間に、誤って会った相手と戦った誤った戦争」と米議会で証言したのは、オマール・ブラッドレー統合参謀本部議長(当時)。ただし、ブラッドレー議長の発言は、同戦争に軍を送り込んだ中国を念頭においた発言で、北朝鮮を“恐れた”意味合いはない。(編集担当:如月隼人)
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解説部分の2行目、「北朝鮮が中国にも根深い不信感を抱いていることが分る部分だ」。読んでいて「何を今更」と思いました。共和国がしきりに繰り返す「チュチェ(主体)」や「チャジュ(自主)」といったキーワード、とりわけ共和国の国是である「チュチェ思想」は、反ソ反中の文脈から出てきたものですよ

まさか、共和国が従前から中国を完全に信頼してきたとでも思っているんですか? 共和国は従前から、決して他国を全面的には信頼していません。たとえ中国でも。 もし、昨今の「中国が北朝鮮を見限ろうとしている」といった言説に乗っかって、「ようやく北朝鮮も『中国がウリナラを見限ろうとしているニダ…もはや中国も信頼できないニダ!』と気がついたに違いない!」とか思っているなら、もう少し勉強したほうがいいでしょう。あくまで平壌運転、、、じゃなくて平常運転なんですから。

解説部分の3行目、「ただし、ブラッドレー議長の発言は、同戦争に軍を送り込んだ中国を念頭においた発言で、北朝鮮を“恐れた”意味合いはない。」の部分について。

朝鮮総連機関紙『朝鮮新報』(インターネット版)のチュチェ99(2010)年10月29日付け「軍事分野で深まる朝中友好 「地域安定」目指す協調体制」には、以下のように書かれています。
http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2010/05/1005j1029-00001.htm
>>>(前略)
「参戦60周年」を機に再確認された朝中の「血盟関係」には、他の二国間関係にない特徴がある。それは社会主義理念の共有だ。朝鮮労働党と中国共産党はともに「プロレタリア国際主義」の旗印を掲げる政党だ。その精神に立脚するならば、反帝国主義と社会主義発展のため私心なく相互支援するのは当然の道理だ。また、現実問題として社会主義国家である朝鮮と中国は山河連なる隣邦であり、地政学的にも共通の利害がある。
(後略)<<<
上掲記事にもあるように、共和国は、祖国解放戦争(朝鮮戦争)の性質を「プロレタリア国際主義の発露」として捉えています。

従前から自国を自主勢力として位置づけ、「自主・平和・親善」の旗印の下で全世界の自主勢力と「プロレタリア国際主義」に基づいた連携・連帯を表明している共和国政府が、この文脈でブラッドレー発言を取り上げるというのは、現在の「朝米関係」は本質的に「全世界の自主勢力と帝国主義勢力の関係」であるという認識のもと、「もしアメリカが自主勢力の一員である共和国に手を出そうとすれば、朝鮮人民のみならず、中国を含めた全世界の自主勢力を敵に回すことになる」といいたいのでしょう。アメリカが共和国を単独で恐れているか否か」といったレベルではないのです。

さらに言えば、祖国解放戦争の時期、アメリカは核兵器をほぼ独占(開戦時点でソ連の最初の核実験からまだ1年たってないし)し、圧倒的な軍事力を誇っていました。しかし今や、共和国も自前で核兵器を保有するに至った。そして「千万軍民の一心団結」もある。共和国の普段の主張から考えて「祖国解放戦争期の中国人民志願軍に比肩する力を我々は持っている」という意図もあるでしょう(本当に比肩する力を持っているかどうかは、さておき。プロパガンダですから)。

前回の記事で「ある出来事や行為が「義」か「不義」かというのは、それを判断する人間の「立場」、端的には「階級性」に左右される」とは述べましたが、プロパガンダや外交交渉のためではなく、真剣な対応を考えるための資料としての記事であるならば、「階級性」を乗り越え「事実性」に迫っていただきたい。そのためには、もうすこし「ピョンヤン発」の情報に当たってほしいものです。「ピョンヤンの主張内容」が事実かどうかはさておき、「ピョンヤンは、そういうことを言っている」のは事実ですから、少なくともそれは正面から受け止めるべきです。前回の記事では、「プロパガンダや外交交渉のためにコジツケ・スリカエは、そんなにオカシイことではない」としましたが、あくまで事実を見据え、自覚的にコジツケ・スリカエを展開している場合のみの話です。自覚なきコジツケ・スリカエは、自分で自分にダマされるようなものです

まあ、冒頭にも述べましたが、如月さんの記事は、最近ちまたに溢れる共和国関係の「解説記事」のなかでは比較的良いほうですけどもね。果たして昨今の「解説記事」は自覚的なコジツケ・スリカエなのか。ピョンヤンの動向の記事なのに、ピョンヤンの主張をロクにチェックせずに想像で穴埋めしながら書いていないか。その結果として、自分で想像したストーリーを自分に刷り込んでいないか(それも無自覚に!)。もちろん、私にも言えることです。
posted by 管理者 at 22:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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