2013年06月12日

主体的な自由経済

http://mainichi.jp/select/news/20130612k0000m010142000c.html
>> 規制改革原案:「混合診療」今秋に拡大 まず抗がん剤

毎日新聞 2013年06月12日 02時30分


 政府が14日に閣議決定する「規制改革実施計画」の原案が明らかになった。治療行為の一部に例外的に保険外診療を認める「保険外併用療養費制度」を拡大するよう厚生労働省に要求。新技術が同制度の対象になる「先進医療」かどうかの審査を迅速化するため、外部機関などによる専門評価体制の創設も打ち出した。現行制度の対象拡大で保険診療と保険外診療を組み合わせた「混合診療」の将来的な全面解禁につなげる狙いがある。

 計画は「本年秋をめどにまず抗がん剤から開始する」と実施時期も明記した。

 日本では公的保険外の自由診療と保険診療の併用(混合診療)を禁じており、併用を認めるのは例外という位置付けだ。認定の際は、技術の有効性や安全性の証明を医療機関が担い、年間の審査件数は約40件。期間も1件に6〜7カ月かかり、これまでに認められたのは約100技術にとどまっている。

 これに対し、外部の評価機関を活用すれば審査の迅速化、効率化が見込める。計画は「最先端医療迅速評価制度(先進医療ハイウエー構想)」(仮称)を掲げる。抗がん剤は次々と新薬が出るため、自由診療の併用が迅速に認められるようになれば、抗がん剤の新薬を使いやすくなる。

 計画は規制改革を「経済再生の阻害要因を除去し、民需主導の経済成長を実現するために不可欠」と位置付け、規制改革会議が5日に安倍晋三首相に答申した項目をすべて採用したうえで、「先進医療の大幅拡大」などを追加した。内閣府は各項目の実施状況を年度末ごとに点検し、結果を規制改革会議に報告するとともに、公表する。

 ただ、首相が「全面解禁」方針を打ち出した一般用医薬品のインターネット販売は、副作用リスクの高い一部の市販薬の扱いを巡って調整が続いており、実施計画の最終案が固まっていない。【宮島寛】

 ◇解説 所得で不平等生む恐れ

 日本では公的保険の利かない自由診療と保険診療の併用(混合診療)を禁じ、併用すると医療費は保険診療分も含めて全額自己負担となる。国民負担が伴う保険医療は、有効性や安全性がより厳密に確立されている必要があるためだ。ただし、専門家でつくる厚生労働省の「先進医療会議」の審査を条件に、例外的に事実上の混合診療を認める「保険外併用療養費制度」がある。

 保険診療と自由診療が併用できれば、保険診療分は1〜3割の負担で済み、まだ保険が適用されない先進的な医療も受けやすくなる。とはいえ、利益を受けるのは自由診療分を全額自己負担できる人に限られる。

 このため、現行制度ではいったん保険診療との併用を認めた自由診療の技術も、あらためて保険適用を検討する。「混合」は一時的なもので、いずれは保険適用し、国民等しく受けられるようにするという原則だ。

 ただ、保険適用の対象になれば国が薬価などの公定価格を決める。製薬企業にすれば自由に価格を設定できる自由診療対象のまま保険診療と併用できるほうが利益が出る。すると本来保険が利くはずの薬も自由診療対象のまま残り、保険診療しか受けられない低所得の人は服用できなくなる恐れがある。【佐藤丈一】
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3月の社説においては毎日新聞は「安全性」と「医療格差」の2つを根拠に混合診療に異を唱えていました。ただ、今回の原案では「外部の評価機関の活用」を掲げている点、ちょっとそういった理由で異論を唱えるのは難しいと思ったのか、「医療格差」に論点を絞ったようです。もっとも、記事中でも触れられているように、事実上の混合診療である「保険外併用療養費制度」が既に機能している以上、「安全性」を根拠にした異論は少し妥当性に欠いているかなとも思います。

さて、「医療格差」。いいたいことは分かるんですが、それを根拠に「混合診療反対」とまで行くんでしょうか? すくなくとも、毎日新聞の掲げる論拠で「混合診療反対」まで導けるのか。どうも、インセンティブの問題を適切に解決すれば、「混合診療反対」まで言わなくても良いように思えます。

毎日新聞は3月の社説で以下のように述べていました。
>> 高齢化や医療技術の革新に伴って公的医療費は年々増えている。医療費抑制への圧力が強まる中で混合診療を解禁したら、患者負担の自由診療が広がるのは目に見えている。毎日多数の患者を診察して疲弊している現場の医師にとっても高収益の自由診療は魅力的なはずだ。今でさえ医師不足や医療崩壊が叫ばれているのだ。保険診療しか受けられない患者は医師探しに苦労することになりはしないだろうか。 <<
そして今回はこういっています。
>> ただ、保険適用の対象になれば国が薬価などの公定価格を決める。製薬企業にすれば自由に価格を設定できる自由診療対象のまま保険診療と併用できるほうが利益が出る。すると本来保険が利くはずの薬も自由診療対象のまま残り、保険診療しか受けられない低所得の人は服用できなくなる恐れがある。 <<
表現の仕方や角度は違うものの、要するに同じ事を言っています。すなわち、混合診療を禁止する理由を「医療費抑制のための価格統制をするため」と言っているのです。

ムチャクチャですよね。そんなことしているから、ますます医師不足・医療崩壊になるってのに。価格統制がどういう経済的効果をもたらすのか。供給インセンティブが失われて需要過多になるのは、それこそ「目に見えている」はずです。

混合診療に反対なら反対で、それはそれで主張として大切にすべきです。しかし、毎日新聞の記事を読む限りでは、結局、「供給側のインセンティブをどう刺激するか」という話しか見え来ず、その問題さえ解決できれば、混合診療を解禁しても大きな問題は生じないのではないかというメッセージしか読み取れませんでした。なんなの、実はその程度の問題なんですか?

ちなみに私としては、保険診療は、単なる「副作用の有無」程度ではない、いっそう厳重な薬効審査が必要だと思います。公のお金を使うわけですから、ホイホイと何にでも公金を出すべきではないでしょう。他方で、だからといって禁止することもないと思います。新しい薬を使ってみたいと思う患者、新しい薬を世に問いたいと思っている製薬界、そういった人々の要求にも応じるべきでしょう。

ここ最近、私が民間企業活動を重視する立場をとっているのも、類似の理由です。公共部門の活動は、公のお金を使う以上、慎重に慎重を期する必要が生じます。他方で、一定の社会的条件の下での自己決定は、そこまでの厳重さは求めらず、比較的、高い自由度を確保することができます。人民大衆の自主的意識がますます多様化してゆき、創造的能力が飛躍的に向上してゆくであろう、これからの「主体的な時代」においては、「小回りのきく対応」「自由自在に変化・変形してゆける組織」の重要性がますます上昇してゆくことでしょう。となれば、どうしても慎重に慎重を期する必要がある公共部門の活動よりは、民間企業活動のほうが何かと対応できる機会が多いのかなと思うのであります。

とはいっても、公共部門の活動がまったく無意味になるとも思っていません。こうした民間企業の活動に援護射撃を加えてゆくという重要な役回りが科せられていると思います。つまり、公共部門が「前衛部隊」になる時代は終わり、民間企業という突撃部隊を後方から支援する(十分なインセンティブが得られるような政策的補助)「補給部隊」だったり、あるいは突撃部隊の前に立ちはだかる障害物を粉砕する(規制緩和)「砲兵隊」のような立ち位置になっていくのが、これからの時代なのではないかと思います。

また、そうした個々の組織の活動をネットワーク化してゆく役割も、政府は担っているでしょう。もちろん、この「ネットワーク化」は、計画経済的な利用を目的としたものではなく(繰り返すように、計画経済は不可能です)、情報網的な位置づけを想定しています。

以上、チュチェ思想と自由経済を「混合」した反革命的主張でした。
posted by 管理者 at 20:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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