>> 刃物で観光客を脅迫 長城ツアーのガイド(太字化処理は当方による)
2013.7.7 18:46
北京郊外の万里の長城観光スポット、八達嶺などを見物するツアーの大型バス内で3日、男性ガイドが小型のナイフのようなものを振り上げて「殺すぞ」と乗客を脅迫する事件があった。中国メディアが7日、伝えた。被害に遭った乗客に外国人が含まれていたかどうかは不明。
(中略)
北京では、市の正式な許可を受けていないツアーも横行。インターネット上では「政府の取り締まりに頼るだけでなく、観光客も安さを求めて、かえって大損することがないようにしないといけない」と注意を呼び掛ける声も紹介されている。(共同) <<
違法・脱法行為に対して当局が手入れ・取締りを行うことは当然です。それが当局の存在意義なのですから。しかし、中国のような警察国家・監視国家でも今や「市の正式な許可を受けていないツアーも横行」とのこと。一般国民の諸活動を「見守る」ことの難しさがここにも現れていると思います。
ここ最近、私は「マクロからミクロに影響を及ぼすタイプの対応(マクロ的対応)の限界」と「ミクロにおける自発的な対応(ミクロ的対応)の強化の必要性」について説いておりますが、その理由は、本件と類似した理由によります。たしかに当局の規制や指導といった「マクロ的対応」は必要不可欠であるが、他方において、すべてに目を光らせることは実現不可能であるという事情がある。となれば、個々人による「ミクロ的対応」による補完もまた不可欠であり、ミクロとマクロが相互補完しあうことで、何とか望ましい状態を達成・維持するほかにないと思うからなのです。
治安問題の限らず、たとえば労働問題もそうです。行政や司法による監視・指導は不可欠なのはたしかですし、労働法制がザルというのもそのとおりですし、労基署の人員が足りなさ過ぎるのは問題だというのもそのとおりです。しかし仮に、「企業側のインセンティブ」への十分な配慮もなされている夢のような強力な労働法制が出来、さらに国家予算が労基署に対して最優先に振り分けられるような「労働者の国」が出来たとして、問題は解決するでしょうか? 本当にあらゆる部署やグループに常時、一人ずつ監督官を配置する(正に工場のラインオペレーターみたいに)するならまだしも(それでも難しいとは思いますが)、それは幾らなんでも非現実的すぎるでしょう。
繰り返しになりますが、「マクロ的対応」の整備は必要不可欠だとは思いますが、どうしても「盲点」が生じてしまう。そして、中国の例を見る限り、「盲点」は案外、広範に分布しているようです。となれば、そうした盲点を突く「ミクロ的対応」の出番は、思ったより多いのではないかと思うのです。
「ミクロ的対応」を主張する私の言説を、「マクロの責任放棄」と見る方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私は既に述べているように、「マクロ的対応」の意義と必要性は認めています。私が主張しているのは、「マクロ的対応」には原理的に限界があるのだから、「ミクロ的対応」をも用いることによって総合的に望ましい状態を達成・維持すべきだといっているのであって、「マクロ的対応」を完全に否定したり、「マクロの責任放棄」を促すつもりはありません。不可能なことをやろうとしたり、あるいは、出来もしないのに「自分たちの責務だから、部外者が触れることは禁止する」として結果的に時間を浪費し、無法状態を放置するほうが、よほど無責任だと思うのです。
どうしても「マクロ的対応」の出番を増やしたいのならば、これも以前から述べていることですが、「斬込隊」や「前衛部隊」としてではなく、「補給部隊」か「砲兵隊」のような立ち居地で、前線(ミクロ)からの要請に応じて「ミクロ的対応」を強力にバックアップするといった手ならあると思います。