>> 法人税引き下げ「大胆に判断」=設備投資減税を優先―安倍首相http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130710-00000090-jij-bus_all
時事通信 7月4日(木)20時5分配信
安倍晋三首相は4日夜、NHKの報道番組で、国際的に見て高い水準にある法人実効税率について「日本が(世界の)トップランナーになっていくように大胆な判断をしていきたい」と述べ、引き下げに強い意欲を示した。国際競争力強化のため、日本企業の税負担軽減に向けて一歩踏み込んだ格好だ。
首相はまず、設備投資を促す減税措置を優先的に講じると指摘。その上で「国際競争に勝ち残るための法人税(率)がどれくらいか議論していきたい」と語り、諸外国の水準を踏まえて税率引き下げを検討する考えだ。
また、消費税率引き上げの最終判断に当たっては「(デフレ脱却への)最初で最後のチャンスを絶対に逃したくない」として、増税が景気に与える影響を十分配慮することを重ねて強調した。 <<
>> ソフトも投資減税対象に=成長戦略第2弾で―経団連提言経済政策について。1月15日づけ『サプライサイド・エコノミクス』や2月18日づけ『いやいや全然違うから共産党さんw』においても述べましたが、私は、いわゆる「アベノミクス」については、「まったくの間違った政策ではないとは思うが、『サプライ・サイドへのテコ入れ』の面、そして『政府が《期待》を《指導》できるのか』という2つの点において疑問が残る」と考えています。
時事通信 7月10日(水)17時1分配信
経団連は10日、政府が今秋に成長戦略第2弾で打ち出す設備投資減税に関する提言を発表した。安倍晋三首相が唱えている「産業の新陳代謝」を促すため、生産設備に限らず、ソフトウエアも含めた事業用資産全般を特例として減税対象にするように訴えている。非製造業も含め、2013年度から適用が受けられるよう求めた。 <<
繰り返しになりますがもう一度述べます。すなわち、国民経済を伸ばすには個人消費を伸ばすことが必要であることは論を待たないと思いますが、個人消費は『恒常的なフローに対する期待』に規定されると考えられます。ここでいう「期待」とは「経済の先行き予想」のことです。期待が明るければ、財布の紐は緩くなりますし、逆に暗くなったとすれば、将来に備えて貯蓄に励むので、財布の紐は固くなると考えられます。特に、人間は生活水準の急激な低下を嫌い、一生を通じておおむね一定程度・「恒常的」と考えられる生活水準を維持しようとすると考えられます。それゆえ、消費支出の水準は恒常的に入ってくると期待できる収入水準に見合ったものになると考えられるのです。反対に、ストックの切り崩しのような一時的な収入は、とくに不況期のような期待が低迷している時期には、よっぽど困窮している人でもない限り、大部分が貯蓄に回ると考えられます。事実、麻生内閣は「定額給付金」と称して「霞ヶ関の埋蔵金」を切り崩してバラ撒きましたが、ストックの切り崩しに過ぎないことは余りにも明白だったために、政権関係者が期待したほどの効果は見られませんでした。
このように、個人消費を伸ばすためには、ただ単に個人所得を増やせば良いのではなく、恒常的なフローとして増やす必要があります。個人所得の多くは給与です。このことはすなわち、個人所得を恒常的なフローとして増やすためには、企業業績を恒常的に改善する必要があります。ここに、「サプライ・サイドのへのテコ入れ」が必要になる理由があるのです。
さて、企業は投資をする際に何を考えているのでしょうか? 利潤最大化を意図している営利企業であれば、収入と支出とを比較していることでしょう。具体的には、現在から未来にかけての期待収益率(収入)と、利子率や税率(費用)を比較・計算して意思決定をしています。
その点では、首相や経団連の「投資減税」という政策は全くの間違いとはいえず、成長戦略のメニューに盛り込むことは否定しません。しかし、いくら利子率や税率を下げたからといって、期待収益率がどうしようもなく低ければ、やはり投資する気にはならないでしょう。マーケットとしての日本の魅力を向上させる必要があります。たとえば新たなビジネス・チャンスを提供することは、一つの方法であり、そのためには、実際にやるか・やるべきかは別(必要ないかもしれない)として、規制改革の検討は避けては通れません。しかし、アベノミクスは規制改革に及び腰です。たまたま政権が転がりこんで来てしまって本人たちも準備不足だったというのならまだしも、「野党・自民党」の時代は決して短くは無かったはずです。それでもなお、ビジョンすらどこかおぼろげ、出てくる政策案といえばどこかで聞いたことのあるような古い話ばかりとなると、やはり改革に及び腰なのではないかと考えざるを得ません。「サプライ・サイドへのテコ入れ」において疑問が残ってしまうのです。
さらに言えば、設備投資に当たっては、最終的には「主観的な思い切り」、ケインズの言うところの「アニマル・スピリット」が影響する部分はかなり大きいと考えられます。設備を償却しきるほどの遠い未来のことなど誰も正確にはわからないので、最終的には「計算」というよりは「感性」に頼らざるを得ないからです。こうした「主観的な思い切り」は決して「政府による指導」の対象にはならないでしょう(エリート主義者であるケインズは、政府による予見と政策誘導が可能だと考えていたようですが、私は、それは理性への過信だと思います)。
アベノミクスは、「当局が期待を完全にコントロールできるものではない」と認めてはいるのは私も存じ上げています。しかし、それは裏を返せば「そこそこならば、いけるんじゃないか」と言っているのに等しいと思います。繰り返しになりますが、設備投資は最終的には「主観的な思い切り」であり、ロゴスではありません。「主観的な思い切りを政策的にサポートする」というのならば、それは大賛成ですが、それは必然的に、実際にやるか・やるべきかは別として、規制改革の検討へと行き着きます。しかし、既に述べたように、やはりアベノミクスは規制改革に及び腰であると言わざるを得ず、果たして何処まで有効なのだろうかと疑問が残ってしまうのです。
だからといって、みんなの党や維新の会のように「既得権益と戦う」といって文革路線・階級闘争路線をとるべきだとも思いません。文革路線・階級闘争路線は野党の手法であって、政府・与党がやる手法ではありません。与党はむしろ、そうした文革路線・階級闘争路線を調整する役割があると思います。政府・与党の役割については、話がずれてきてしまうので、またいつか面白い報道記事があったときのネタにしたいと思います。