2013年08月18日

「小泉改革」を克服した新しい改革を

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130818-00000017-mai-pol
>> <タクシー>減車義務化 運転手労働条件改善へ自公民が法案

毎日新聞 8月18日(日)8時10分配信

<タクシー>減車義務化 運転手労働条件改善へ自公民が法案

 ◇規制緩和 抜本見直し

 自民、公明、民主3党は、国がタクシーの台数制限を事実上義務づける「タクシーサービス向上法案」で合意した。規制緩和による競争激化で悪化した運転手の労働条件の改善が目的。これまでの事業者による自主的な供給削減(減車や営業時間の制限)では不十分と判断した。秋の臨時国会での成立を目指す。「小泉構造改革」の象徴の一つだったタクシーの規制緩和を抜本的に見直す。

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 タクシーの規制緩和を巡っては供給過剰による運転手の待遇悪化が格差拡大の象徴としてたびたび指摘されてきた。このため、2009年には都市部で自主的な減車などを3年以内に行うよう促す「タクシー適正化・活性化法」が成立した。

 ただ、減車を一律に割り当てると独占禁止法に抵触するカルテルにあたる可能性があるため、適正化・活性化法は自主的な取り組みを促すにとどまった。協力しないタクシー業者への強制措置もなかった。

 このため、新法案は、国が指定する特定地域の協議会とタクシー事業者に減車や営業時間の制限など輸送力の削減方法を盛り込んだ計画を国土交通相に提出するよう義務づけ、計画に基づく削減は独禁法の適用除外とすると明記。協議会に不参加の事業者にも、国が地域の計画に沿うよう勧告・命令でき、従わない場合の営業停止や許可取り消しも盛り込んだ。

 また、特定地域内の新規参入や増車は現在は認可制だが、期限付きで「禁止」に強化。運転手の賃金低下につながる過度の運賃値下げ競争を防ぐため、国交相が特定地域ごとに運賃の幅を定め、事業者はその範囲内で料金を決める新たな仕組みも盛り込んだ。

 今回の新法が成立すれば、小泉改革下でのタクシーの規制緩和の内容はほぼ否定される。規制緩和による自由競争で経済が活性化し全体が底上げされるという小泉改革の基本的な考え方に一定の限界があることを与党も認めた形だ。

 業界内でも過当競争に対する嫌気があり、国の強力な規制の復活で一部業者の「抜け駆け」が封じ込められれば、横並びでの減車に応じるとみられる。ただ、規制でタクシー運賃が下がらなくなる一方で、運転手の実質的な労働条件改善につながらなければ、消費者軽視という批判を受ける可能性もある。【横田愛】

 ◇ことば【タクシーの規制緩和】

 タクシーは小泉政権下の02年2月に施行された改正道路運送法で参入が原則自由化され、台数は01年度の約20万8000台がピーク時は22万2500台まで増加した。09年度の適正化・活性化法施行で11年度には19万6500台まで減少。一方で、景気低迷による利用者の減少が著しく、タクシー運転手の平均の年間所得は291万円と01年度を43万円下回っている。
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運転手労働条件改善――それ自体はとても良いことなんですが、「参入規制強化による供給量是正」よりも「廃業支援による供給力是正」に注力したほうが良いのではないかと思います。

そもそも、なぜ過当競争に陥っているのに供給量が自然と減らないのか。その理由の一つには「辞めるに辞められない」状況があるでしょう。タクシー業から撤退しても次の飯の種がない――そうなれば、たとえ過当競争であろうと今の業界にしがみつく他ありません。過当競争への対応は、決して「参入規制強化」だけではないのです。

今回のような「参入規制強化」は、どんなに美しい言葉、同胞愛に満ちた言葉で飾ったとしても、その本質は「特定業界の特権階級化」に他なりません。その結果、特権階級に仲間入りできなかった同業者や、あるいは権力の保護を受けるに至っていない他業界の業者は差別的な扱いを受けることになります。そして、記事中でも指摘があるように、消費者軽視という視点もある。更に言えば、いまは参入規制強化という「権力的保護」によって何とかなるかもしれませんが、状況がもっと悪くなったとき如何するのか。いたずらに「ゾンビ化」を促進させ、もうどうにもならなくなってから慌てて「対策」をはじめても大混乱に陥るだけでしょう。いわゆる「炭鉱争議」における、毛沢東からエールを送られるほどの激烈な「階級闘争」と、エネルギー需要の変化による「自然消滅」の歴史は、多くのことを示唆しているでしょう。

ことあるごとに引用しており、「またかよ」とお思いになる方もいらっしゃることを承知でまた触れますと、スウェーデンの元財務相だったヌーデル氏は、次のように述べています(読みやすいように一部、改行と太字化を加えました)。示唆深いと思います。
http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/other/pdf/5292.pdf
>> ソーシャルブリッジという概念の3 つめの側面は、就業人生への復帰です。

仕事に長い間就いていない人たちは、もう一度就職をするにしても、それに必要なスキルを失っています。この人たちに、就業に必要な求められるスキルを身に付けさせるには、積極的労働市場政策によって、労働市場への再参入を支援することが必要でしょう。従って、失業者には、新しい職を探すための手助けと再訓練の機会が与えられなければなりません。わたしたちは、OJT から学校教育までさまざまな機会を提供しています。重要なのは、高失業率がそのまま受け入れられるような風土を作らないことです。

既に申し上げたように、ここでの考え方は、人を守るということです。雇用を守るのではありません。フランスやドイツにあるような法律は、私たちにはありません。そういった法律は、産業が消滅してしまいますと、かえってコストを高めてしまいます。一方、私たちは、その産業を生き残らせるためにお金を提供するのではなく、個人が自分の身を守るために使えるお金を提供するという考え方です。競争が激しくなることによって自分の働いている会社が例え倒産したとしても、自分の人生は揺るがないのだという自信を人々に持たせなければなりません。

つまり、ソーシャルブリッジは、古い、競争力をなくした仕事から、新しい競争力のある仕事に人々を移らせるためのインセンティブにならなければならないわけです。スウェーデン人が変化を好んでいるのかといえば、それは全くのうそになります。スウェーデン人は、変化を好んではいません。しかし、ほかの国よりも変化を受け入れる大きな土壌が多分あるでしょう。
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もちろん、そう簡単にホイホイと新しい仕事が生まれるものではありません。私としても、「タクシー運転手の再雇用先」の見当がなかなかつかない(詳しくは述べないでおきます)のは、正直に告白しなければならず、短期的な政策としては、あるいはアリかもしれません。更に言えば、私みたいなタクシーなんて殆ど縁のない貧乏人が、タクシーを頻繁に利用するブルジョワ(笑)の財布の心配をする必要なんてないのかもしれません(厚生経済学的な意味で)wしかし、これを恒常的な政策として掲げることは、既に述べた理由から多くの問題点があるといわざるを得ません。「参入規制強化による供給量是正」は、やるとしても、「廃業支援による供給力是正」という大枠の中の一つの「苦痛緩和剤」でしかないと思います。

そう考えると、記事中の「規制緩和による自由競争で経済が活性化し全体が底上げされるという小泉改革の基本的な考え方に一定の限界があることを与党も認めた形だ」というのは、半分正しく、半分正しくない見解であると言わざるを得ません。私としては、「小泉改革の誤り」は、第一に「急進左翼」であったがゆえに「過渡的な緩和策」を軽視した点、そして第二に「自己責任論」というある種の宗教を信奉していたがゆえに「産業構造の変化にとなう適切な社会的援助」がなされなかった点にあると思います。その結果、上手くいくものも上手くいかなくさせてしまった上に、社会的な大混乱を引き起こし、守旧派の亡霊の復活を許してしまい、さらに「産業構造改革」という言葉に妙な色をつけてしまいました。特に最後の点については、私のように「チュチェ時代の国民福祉のためにこそ、経済の自由化・供給主体の多様化が求められる」という立場の人間からすれば、「小泉改革の罪は誠に深い」と言わざるを得ないと思います。

参入規制強化を支持する言説のなかには、きっと同胞愛に満ちた人もいることでしょう。私の知る範囲内にも、「地方の建設業界は今、本当に疲弊している。談合を許すべきだ」と公言して憚らない、「小泉以前の自民党支持者」がいます。しかし、そういう人たちの「善意」が「ゾンビ化」という副作用をもたらし、長い目で見てより深刻な事態を引き起こすのではないでしょうか。小泉改革の急進左翼的側面と宗教的側面を克服した新しい改革が求められていると思います。

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posted by s19171107 at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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