2013年08月24日

ブラック企業・ブラック社員に対するチュチェの視点

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130824-00000695-bengocom-soci
>> ブラック企業の共犯者!? サービス残業大好きのブラック社員にどう対抗すればいい?

弁護士ドットコム 8月24日(土)11時50分配信

最近はテレビのニュースでも普通に耳にするようになった「ブラック企業」という言葉。社員に過酷な長時間労働を強いたり、精神的に追い詰めたり、賃金を不当に抑えたりする会社を意味する言葉として、すっかり定着した感がある。

このようなブラック企業が存在しているのは、経営者の姿勢によるところが大きいだろう。しかし、ブラック企業を存続させているのは経営者だけではない。ブラックな企業風土に疑問をもたない「ブラック社員」がいて、経営者と共犯関係になって会社を支えているとも言えるのではないか。

サービス残業や休日出勤は当たり前で、経営幹部の理不尽な要求にも従順に応じ続ける……。こういう社員は会社にとってはありがたいだろう。しかし、それに引きずられて、他の人まで同じように働かなければならないという空気が生まれているとしたら、職場の労働環境はいつまでも改善しないだろう。

そこで、このような社員がサービス残業を自重するなど、「ブラック企業的な働き方」をしないように、会社や本人に求めることはできないだろうか。労働問題にくわしい岩井羊一弁護士に聞いた。

●「ブラック社員」に個人で対抗するのは難しい

「そのような『ブラック社員』に対抗する手段としては、次の5つが考えられます。

(1)直接、『ブラック社員』に改善を求める

(2)労働組合に入って団体交渉を行い、ブラック社員の言動を指摘する

(3)労働基準監督署に申告し、行政指導をしてもらう

(4)弁護士に依頼して会社と交渉をする

(5)会社を辞めてしまう」

――どれも敷居が高そうだ。

「そうですね。実行するのは、いずれも難しいと思われるのではないでしょうか。ブラック企業やブラック社員に個人で対抗することは、実際には困難です」

――法的な救済制度はない?

「法律では『労働組合を作って使用者と対等に交渉する権利』が、労働者に与えられています。したがって本来は、労働組合の力でブラック社員や企業に対抗していくのが理想です」

――会社に労働組合があるとは限らない。

「そうですね。むしろ、いわゆる『ブラック企業』には労働組合がないことがほとんどです。そのような場合、一人でも入ることができる外部の労働組合に入るという手もあります」

――いずれにしても大変そうだ。ちょっとぐらい我慢するべき?

「対抗することが難しいからといって我慢して働けば、長時間労働やパワハラなどにより、心身に障害をうけ、ひどい場合には過労死、過労自殺にいたります。我慢せずに、まずは周囲に相談してください」

――誰に相談したらいい?

「相談先としては、労働基準監督署、外部の労働組合、弁護士などがあります。相談する際には、時間外労働の記録、ブラック社員から言われた違法な言葉などを記録に残しておくことが重要だと思います」

ブラック企業を支える「ブラック社員」に対抗するのは、現実的にはなかなか難しいようだ。しかし岩井弁護士が指摘するように、ただ我慢して働くのはしんどすぎる。「会社を辞める」という選択肢を取るのでないかぎり、まずは、専門機関に相談してみるのがよさそうだ。

(弁護士ドットコム トピックス)
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ブラックな企業風土に疑問をもたない「ブラック社員」に対して、サービス残業を自重するよう求めることはできるか?――これは左翼的な視点から見ても興味深いテーマです。それだけに記事の内容が何故か結局、「ブラック企業との階級闘争」ばかりに注目し、「ブラック社員」については、ほとんど触れられていないのにはガッカリしました。

昨今のブラック企業問題の取り上げ方について私は2点戦術的な問題があると考えています。すなわち、第一には、以前にも取り上げたように、個別的事例を気の向くままに取り上げる「左翼ゴッコ」「革命ゴッコ」に過ぎない点です。「競争の強制法則」というマクロ的な視点が決定的に乏しいからです。この視点を欠いている限り、どんなに「労働者側」を自称したとしても、大した政策的提言はできないでしょう。

また、「競争の強制法則」という視点を持ったとしても未だ不足があります。問題点の第二として、一見してどんなに酷い社会的構造だとしても、それが体制として確立している影には、「多数派による事実上の支持」がある点について、この手の運動はしばしば忘れがちだということです。

「労働者がブラック企業を支持しているわけないだろう!」という革命的な反論があるかもしれません。しかし、旧ブログの頃からその存在を指摘してきた「努力至上主義」的な考え方や、いわゆる「自己責任」論、そして「まあ仕方ないや」といったある種の諦め、そういったものを合わせると、「多数派による事実上の支持」といいうるもの、少なくともそう簡単には「反ブラック企業の階級闘争」に加入しそうにない一般国民は、決して少なくないと思われます。

左翼的運動は、「塗炭の苦しみに喘いでいる人民大衆は、前衛党が組織化されればすぐにでも革命の隊列に加入し、決起するはずだ」とか「人民は党を熱望しているはずだ」という「需要の読み違え」をしょっちゅう起こします。それはおそらく、「自分の感覚は人民大衆の感覚に一致しているはず」という勘違い、ちょうど大阪の橋下市長の「僕の感覚=庶民感覚」という思い上がりと同じ勘違いによるものだと思われます。そしてその勘違いは、人民大衆の現実の要求から遊離した独善的な革命的救済政策に行き着きます。

昨今のブラック企業問題は社会的な関心が高まりはじめたばかりの初期段階ですので、まだ「独善的な革命的救済政策」すらも出てきていませんが、過去の左翼的運動の展開を見ていると、今回もまた、「橋下的勘違い」の末に独善的な革命的救済政策が出てきかねません。その点、前掲記事が初期段階から出てきたことは本当に重要なことだったんですが、既に述べたように、結局、「ブラック社員」についてほとんど触れられておらず、ガッカリしました。

ただし、コメント欄には興味深い投稿がありました。
>> noa(nan...)さん
私もそう思う1,058点 私はそう思わない36点

長く働くほど良いという流れを変えないと無理
時間より質で判断しないと
<<
これは本当にそう思いますが、なかなか難しいでしょう。

たとえば旧ブログを運営していた頃(2007年)、いわゆる「ゆとり教育」の見直しをめぐって、授業コマ数を増やすべきか否かという問題がありました(結局、授業コマ数は増えることになったのは、みなさまもご存知のとおりかと思います)。そのとき多くの国民は、「授業の質の向上」ではなく「授業時間数の増加」をヨシとしていました。私はたしか、その風潮を「時間の人海戦術」と述べて批判しました(2007年10月31日づけ時間の人海戦術)が、こうした「長時間かける=良い」という観念は、日本人の意識の中に本当に深く根を張っているものであり、そう簡単に変わるものではないでしょう。

以前からさまざまな場面で繰り返し述べて来ましたが、「我々の活動のチュチェは何処の誰なのか」「チュチェは今、どういう状態にあるのか」という視点が社会問題を見るときには大切です。しかし、その視点で現状を分析してみると、なかなか大変な事業にならざるを得ないでしょう。少なくとも、現状、繰り広げられている諸々の運動は、私としては、その有効性に疑問符をつけざるを得ないような方法論が多いのではないかと思います。
posted by 管理者 at 19:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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