>>> ディズニー値上げ・満足度低下の裏にバイト時給の低迷生産過程すなわち労働環境の質は、商品品質に直結するのですから、当然すぎる帰結です。そして、昨今の情勢を見れば、そうした劣悪な労働環境は、労働市場における転職活動によって淘汰される方向性にあります。オリエンタルランド社側も、そうした因果関係自体は理解しているので、人材強化策という形で労働市場への対応を進めているが、まだまだ十分とはいえないという内容の記事です。要するに、「労働市場の市場メカニズムが作用し、労働環境改善の方向性が見えつつある」状況であるといえます。
ダイヤモンド・オンライン 2月22日(月)8時0分配信
(中略)
その一方で、最近のパークは「顧客満足度の低下」が指摘されている。例えば国内最大規模の消費者調査「日本版顧客満足度指数」(サービス産業生産性協議会)において、長年、ランキング上位に君臨していたが、2015年はトップ10からも外れてしまった。
(中略)
● 待遇変わらぬ現場は悲鳴
こうした事態を招いた要因は、アルバイトスタッフの不足だ。
長年パークで働く現役アルバイトによると、「ベテランバイトの離職率が高まっており、頭数を補うため土日に高校生・大学生バイトを増やしているものの、全く追い付かない状況」という。
背景には時給の安さなどがある。リクルートの調査によると、首都圏のアルバイト・パートの平均時給は1027円(15年12月)で、この数年で大幅に上昇。それに対し、パークの基本時給は長らく1000円(8〜22時)のままだ。
「かつては千葉で時給1000円といえば高く、ディズニーで働く魅力もあったが、今はそうでもない。しかも、激務かつ最高レベルの接客が求められる。舞浜駅から10分程度の東京駅に出れば、もっと時給が良くて楽なバイトがごろごろある」(前出のアルバイト)
こうした状況を踏まえ、オリエンタルランドは昨年11月、人材強化策を発表。研修の充実や時給の引き上げを打ち出した。
ところが、「時給が100円以上上がるのは、バイトのうちほんの一部であるため、士気など上がるはずがない」(同)というのだ。
東京ディズニーリゾートは現場スタッフによる高度なホスピタリティーに支えられ、独自の進化を遂げてきた。入園料を値上げしたぶん、スタッフの充実を図り、サービスを向上させなければ、客の足は遠ざかる。 <<<
コメント欄に目を移すと、NPOほっとプラス代表理事で聖学院大学客員准教授の藤田孝典氏のコメントが寄せられています。藤田氏というと、チュチェ104(2015)年10月8日づけ「「日本の労働組合活動の復権は始まっている」のか?――労組活動は労働者階級の立場を逆に弱め得る」においてもご紹介したとおり、労働市場の有効な作用という事実を意図的に無視し、無理矢理に従来型の要求実現型労働組合運動にゴシツケた挙句に、労組運動によってブラック体質の企業を正すことが労働者の義務であるなどという珍説をぶち上げたことで記憶に残っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。要するに、事態の本質を見誤った「観念論者」、思い込みに基づく処方箋を提示した「ヤブ医者」、ブラック経営者・資本家が「奴隷の陳情」に応じるなどと思い込んでいる甘っちょろい「ブルジョア博愛主義者」でした。
そんな藤田氏の今回の主張は、ますます有効に作用している労働市場の前に、従来型・要求実現型労働組合運動が存在感を見せ付けられていない情けない姿、かといって、陳情で如何にかなると思っている甘っちょろい「ブルジョア博愛主義」から脱し切れていない中途半端な姿が目立つ、ある意味「没落の姿」が見て取れます。
>>> 藤田孝典 | 2016/02/22 17:10一つずつ検討してゆきましょう。
NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学客員准教授
ブラック企業対策プロジェクトで取り組みをしています。
一般論ですが、従業員の離職率が高い場合には、継続した良いサービスが提供されることは少ないです。
時給や待遇面の不満が背景にあるのなら、すぐに改善をしてほしいと思います。
良いサービスが高額になるのは仕方がないことですが、そのサービスを安い賃金の労働者が請け負い、顧客にもサービスが還元されないのであれば本末転倒です。
オリエンタルランドが築いてきた顧客第一ではなく、一部の人や株主などが利潤を上げるシステムに変容しているのであれば、ファンとしても見直しをお願いしたいです。
利潤を上げていないならどうしようもないですが、オリエンタルランドグループは財務諸表や株価など極めて良好な運営です。
現場の労働者の生活改善などに寄与いただきたいです。 <<<
「一般論ですが、従業員の離職率が高い場合には、継続した良いサービスが提供されることは少ないです」
そんなこと大学教授に言われなくとも、生活者は肌で知っていることですw
「時給や待遇面の不満が背景にあるのなら、すぐに改善をしてほしいと思います。」
だから今、労働市場が自然発生的にアツくなっています。
その高まりを、労組運動の立場はどう評価し、どう対応するのかが問われているのです。それができないのならば、労働市場の活性化の前に労組運動は没落しつづけることでしょう。
まさか、「ブラック企業に要求すれば待遇が改善します!」? さすが「ブルジョア博愛主義者」ですねw
「オリエンタルランドが築いてきた顧客第一ではなく、一部の人や株主などが利潤を上げるシステムに変容しているのであれば、ファンとしても見直しをお願いしたいです。」
そこを暴露するのが大学教授の仕事ではないのでしょうか?
また、「ファンとしても見直しをお願いしたい」とは?
まさか、署名活動?!wwwそれじゃブラック経営者・資本家の財布は痛まないでしょう。
彼らにとってはゼニが一番大切なんですから、「ギャーギャー騒ぐけど、結局は買いに来る」のであれば、インセンティブ面でのインパクトは乏しいものです。
「利潤を上げていないならどうしようもないですが、」
ブラック企業対策を自称しいてる人が、こんなことを言うとは思いませんでした。
利潤を上げていないのに労働者をこき使っているというのは、つまるところ、「社会的生産力の浪費」です!
スウェーデンの「好景気・高福祉」サイクル、そのための徹底的なスクラップ・アンド・ビルドを研究してきた身からすると、こういうこと言っているから、いつまでたってもブラック企業のような非効率的な企業が生き残ると強調したいところです。
大学教授ならば、どうせズレているんだし、あまり「世論」におもねずに、既成観念を打ち破るような提案をしたほうがよいのではないでしょうか?
前掲過去ログでご紹介した際にも、藤田氏の主張は既定の結論へのコジツケが目立つ内容でしたが、今回は記事の中心に「労働市場」が据えられているのが明白なのに、主題から強引に回避しようとする余り、ますます観念的な内容になっています。他方で中途半端に「世論」に沿っているせいで、実効性にも欠けています。
労働市場の作用はいつだって自動的に有効に働くとは限らないのは、私も以前から認めているとおりです。市場メカニズムが円滑に作用するための補助的な役割としての労働組合運動は必要だと思います。しかし、当の組合側がこうも現実に対して的確な立場表明ができず、意味不明な観念論、中途半端な実効性に欠ける主張を展開しているとなると、次に労働市場が機能不全に陥ったとき、それを下支えできる勢力が既に滅び去っているのではないかと心配になります。