http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-10/2016041002_03_1.html
>>> 2016年4月10日(日)「酪農家がばらばらになれば、メーカーによる支配が強まって過当競争や価格暴落が引き起こされ、所得向上どころか所得減や廃業に追い込まれることは必至」という指摘は、たしかに、一概に間違いと断定できるものではありません。質的競争力のない凡庸な商品しかつくれない、ごくありふれた生産者は、結束して身を守る必要があるのも事実です。
生乳取引制度 廃止狙う
規制改革会議提言 北海道補選争点に
政府の規制改革会議は8日、牛乳やバターの原料となる生乳の取引について、農協などが酪農家から生乳を集めて乳業メーカーに販売する現行制度の廃止を提言しました。環太平洋連携協定(TPP)を機に廃止をねらうものです。
(中略)
現行では、全国10の「指定生産者団体」となっているホクレン農業協同組合連合会など農協組織が酪農家から一括して生乳を集め、乳業メーカーとの交渉で販売量や価格が決められています。価格交渉力を強めてメーカーと対等に交渉できるようにして、輸送コストの削減や需給調整を行い、安定供給にも役割を果たしています。
これに対し規制改革会議は、「経営判断で生産数量や販売ルートを選択できるようにする」ことで「酪農家の所得が向上する」という口実で現行制度の廃止を求めています。
酪農家がばらばらになれば、メーカーによる支配が強まって過当競争や価格暴落が引き起こされ、所得向上どころか所得減や廃業に追い込まれることは必至です。TPP参加を機に学校給食などへの参入をねらう多国籍乳業メーカーなどの要求に応えるものです。
(以下略) <<<
しかし、「一般論としての結束の必要性」が正しくとも、「指定生産者団体への結束の必要性」は、必ずしも正当化されません。現行制度解体で一旦バラバラになった個別生産者が、参加・脱退・移籍自由の原則で、改めて自主的に生産者団体を作り、市場の中で存在感を示し、価格交渉力をつければ良いだけです。本当に酪農家たちにとって必要性があるのならば、現行の指定生産者団体に比肩する規模を誇る団体が自生的に形成されるでしょう。酪農家の自主的決断の末の自生的秩序としての同業者団体は大変に結構なことですが、既存の指定生産者団体の枠内に機械的・割り当て的に押し込むべきではありません。生産者たちの自由なアソシエーションに委ねるべきです。「割り当て」と「自由なアソシエーション」は、決定的に異なるのです。レーニンでさえ、集団化は人民の自発性に基づいて進めるよう原則化しています。
スターリン主義者は、「一般論としての結束の必要性」と「特定組織への結束の必要性」とを混同させ、論理を飛躍させることで、共産党組織への機械的・割り当て的な一本化を正当化しますが、本件赤旗記事は、まさにその典型的なパターンに基づいています。この混同こそがスターリン主義の重要な一要素である点、日本共産党はいまだにスターリン主義の残滓を引き継いでいると言う他ありません。
こうした混同は、従来は「科学の目」なるもので正当化されてきました。「真理・真実を科学的に解明した唯一正しい方法論に基づく無謬の党」という位置付けです。しかし、商売のことは現場の商売人がよく知っているものです。少なくとも、党幹部・同業者団体幹部が設計できるものではありません。それは歴史的にも実証されていることです。やはり、現場の商売人たちの自主的な判断による離合自在の組織形成に委ねるべきです。現場の商売人だって万能ではないので、「理論的に最高」ではないかもしれません。しかし、「現実的に最善」にはなるでしょう。
もっとも、相手方に足許を見られて値切られるほど、特定メーカーの買い付けに依存すること自体がそもそもの誤りです。結束して特定メーカーにたいして要求を呑ませたとしても、そのメーカーが傾いたらどうするつもりなのでしょうか?
「経営判断で生産数量や販売ルートを選択できるようにする」ことでは、「酪農家の所得が向上する」というよりも、むしろ「特定メーカーの買い付けに対する依存度を下げる多極化」といった方が正確でしょう。いわゆる「下請けいじめ」というのは、結局、メーカーの「需要独占者」という経済的立場を背景にしたものです。そうしたメーカーの強い立場を切り崩すには、「結束」よりも「多極化」こそが正道でしょう。