2016年09月20日

犯罪被害者遺族と確定死刑囚との出会いの場――高橋シズヱさんと原田正治氏・河野義行氏が「一点で一致」した日

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15HB5_V10C16A9CC1000/
>> オウム松本死刑囚、刑確定10年 遺族ら「面会機会を」

2016/9/15 23:53

 オウム真理教元代表、松本智津夫死刑囚(麻原彰晃、61)の死刑が確定してから丸10年を迎えた15日、地下鉄サリン事件の遺族らが死刑制度に関するシンポジウムを東京都内で開いた。

 サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさん(69)は講演で「(元幹部らは)裁判で言えなくても、死刑確定後に話せることがあるのではないか」とし、遺族が死刑囚と面会する機会を得られるよう法務省に要望していることを明らかにした。


(以下略) <<
あの高橋シズヱさんが「(元幹部らは)裁判で言えなくても、死刑確定後に話せることがあるのではないか」とおっしゃるだなんて、時の経過を感じますね。かつて、朝日新聞夕刊コラム「素粒子」が、精力的に死刑執行を行っていた鳩山法相(当時)を風刺する一文を掲載したとき、「確定死刑囚の一日も早い死刑執行を待ち望んできた犯罪被害者遺族」などという表現を用いながら、まさに高橋さんご自身が先頭に立って強烈な(+ちょっと頭の固い)抗議活動を展開していたのに

今回の高橋さんの発言は、まさに彼女が強烈な抗議活動を展開していたその時に、松本サリン事件の被害者・被害者遺族・冤罪被害者である河野義行氏が「Ocean 被害者と加害者の出会いを考える会」の講演会で述べていたことです。旧ブログに記録してある当該の河野氏発言箇所を再掲します。
http://s19171107.seesaa.net/article/104303063.html
>> (前略)

 最後に、加害者と被害者が出会うことの意味について、河野氏の考えが話されました。
 よく被害者が「真実を知りたい」というが、では裁判の場でその「真実」は出るかといえば、出ない。裁判は起訴事実に対しての事実認定にすぎず、なぜ、自分の家族が殺されたのかの全容は明らかにはならない。となれば、全容を知るためには、加害者直接から聞く、それも、自分がしゃべることによって加害者本人にとって社会的に何ら不利な状況にならない環境においてのみ可能であろうと仰いました。
 しかし、実際は加害者と被害者はなかなか接近できない。そういうときには何らかの媒体が必要であり、それのとき「Ocean」のようなNPOがあると、割と上手く行くのではないかと仰いました。


(後略) <<
河野氏が講演を行った「Ocean」という団体は、死刑反対立場をとる殺人事件被害者遺族である原田正治氏が代表を務めている犯罪被害者団体です。団体総体としても「Ocean」は死刑制度に対して慎重な立場をとっている犯罪被害者団体です(最近は団体としての活動実態があるのかは良く分かりませんが、原田氏ご自身は精力的に活動を続けていらっしゃるようです)。

そんな「Ocean」が主催した上掲講演会は、チュチェ97(2008)年8月2日づけ「朝日は尚も「被害者」「被害者遺族」のことを考えてはいない」でもご紹介したとおり、「確定死刑囚の一日も早い死刑執行を待ち望んできた犯罪被害者遺族」とする高橋さんたちの考え方とは根本的に異なる立場を取る被害者遺族も存在しているという事実を世に知らしめることを一つの開演目的にしていることを言明していました(朝日新聞社宛の送付文書への直リンクはこちら)。

あれから8年。逃走していたオウム信者も全員捕まり、いよいよ次は確定死刑囚たちの死刑執行タイミングが専らの関心事になってきたにも関わらず、相変わらず事件の真相は明らかになっていません。それはそうでしょう。犯罪者が「被告人」という身分である段階においては、まだ矯正教育を受けてはおらず、そして、法廷での発言が自分の生死に直結するのですから。「法廷で真実を明らかに」という通俗的な発言の非現実性に、高橋さんもようやくお気づきになったのでしょうね

高橋さんが、原田氏や河野氏のように「死刑を求めない遺族」の境地に至ることはないでしょうし、至る必要もないと思いますが、彼女のようにメディアの注目を受けやすい方が「(元幹部らは)裁判で言えなくても、死刑確定後に話せることがあるのではないか」と指摘することは、重要なことだと思います(原田氏は世間一般の知名度がありませんし、河野氏はメディア的には扱いにくいでしょうからね)。

関連記事
・チュチェ106(2017)年8月7日づけ「「犯罪の加害者と被害者との対話」を目指す運動の再興期
・チュチェ105(2016)年10月7日づけ「相変わらず「死刑を求めない遺族」の存在を無視する「あすの会」――団体が「あるべき遺族」の規定に繋がる発言をすべきではない
posted by s19171107 at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック