2016年10月22日

「泣く泣く」転職市場に参入さぜるを得ないは増えてゆくだろう;労働組合は如何対応すべきか

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161022-00000016-nkgendai-life
>> 電通に続き関電…大企業ほど陥る“過労死”なくならぬ理由

日刊ゲンダイDIGITAL 10月22日(土)9時26分配信


(中略)

 サラリーマンの中には「経済界は教訓を生かしてオーバーワークを是正するだろう」と期待する声も上がっているが、そんな生易しいものではないようだ。

■一度退職したらもう再就職できない

「企業は激務を減らすよう努力するでしょうが、長続きしませんよ」と苦笑するのは労働問題に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏だ。

「大企業の経営トップにも“自分が若いころは眠らずに働いた”と自慢し、“社員は死ぬ気で頑張れ”と号令する人がいる。こうした経営者はギリギリの人数で最大の効果を出すことに躍起になり、社員はそれに応えようとして自分を追い詰める。原因は終身雇用です。日本の大企業の社員は一度退職したら中小企業にしか再就職できないことを知っている。妻に文句を言われ、収入も減る。だから追い詰められても会社を辞めることができず、無理をしてしまうのです」

 大企業や有名企業の社員ほど会社に固執し、自分を追い込んでしまうのだ。

「欧米人は個人主義ですが、日本人は組織への帰属意識が強い。会社に尽くそうと考えるのです。そこにあるのは“お家のため”という武士道の滅私奉公精神。同時に世間の目を気にしすぎるメンタリティーです。社内で“あの人はサボっている”“仕事ができない”と後ろ指をさされたくないので、ボロボロになるまで心身を酷使する。こうした他人の目を怖がる“対人恐怖症”は日本人特有の現象とされています」(明大講師の関修氏=心理学)

 関氏によると、人はイヤな仕事を押し付けられると精神的に参ってしまうが、好きな仕事なら耐えられるという。漆塗りなどの職人が寝食忘れて働いても死亡しないのは好きな仕事だから。「嫌だ」と思ったら、退職を模索したほうがいいということだ。

最終更新:10月22日(土)9時26分
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ただしい指摘です。とくに「組織への帰属意識」「終身雇用」にも触れた解説は、従来型の労働運動系人士の解説からは逆立ちしても出てこない重要な指摘です。

主体的心理面においても客観的構造面においても、かくして辞めたくても辞められない状況ができあがっています。そして、そうした「しがみつかねばならぬ」状況が、企業側の「労働需要独占者」としての立場を更に強化することになります。大企業工場が系列の下請け町工場に無理難題を押し付けるのと同じような力関係が更に強化されるのです。

ここで仮に、従来型の労働組合による要求活動を展開しても、「しがみつかねばならぬ」状況――根本的な労使の力関係――には変化はありません。むしろ要求実現活動は、実態としては企業への依存を深めることにもなるのです(チュチェ104(2015)年10月8日づけ「「日本の労働組合活動の復権は始まっている」のか?――労組活動は労働者階級の立場を逆に弱め得る」参照)。

チュチェ104(2015)年10月15日づけ「周囲の助けを借りつつ「嫌だから辞める」「無理だから辞める」べき」やチュチェ103(2014)年8月31日づけ「ユニオンが転職支援する大きな意味――「鉄の団結」は必要ない」などで何度か述べてきたように、味方になってくれる周囲の人々の助けを得ながら脱出すべきでしょう。辞めたくても辞められない状況で自らを追い詰め、また、企業側の「労働需要独占者」としての立場がますます強化されていく展開、かといって従来型の要求実現運動に逆効果の恐れがあるのならば、当の労働者にとっては何もよいことはありません

妻に文句を言われ」るのであれば、要求活動ではなく転職活動に理解がある弁護士や労働組合の助けを借りるべきでしょう。働きすぎで死ぬよりは辞めたほうがマシですし、無職なら「死ぬための時間」の調整もつき易いでしょうから、急ぐことはありません。

たしかに日本の労働市場は、一定年齢以上になると転職・再就職が急激に難しくなる状況にあります。しかし、市場の動向というものは本質的に、ひとつひとつの契約の「合成ベクトル」です。おそらく「もう無理・・・」と言って「泣く泣く」転職市場に参入さぜるを得ない中年以上の労働者は増えてゆくことでしょうが、そうした動きは、長い目で見て転職市場を活性化させることにつながるでしょう。若年労働者・第二新卒者の転職市場もそうした要素もあり、近年大きくなっているように・・・

「長い目で見て」というものの、労働者の生活は一日一日連綿と続くものです。ケインズが正しく指摘したように、「長期的には我々は皆死んでいる」のです。だからこそ、労働組合は、中途半端な要求実現活動で逆に企業側の立場の強化をアシストするようなことはせず、転職市場に参入さぜるを得ない中年以上の労働者を「階級的連帯」から支援することにより力をいれるべきでしょう。あるいは、チュチェ103(2014)年10月5日づけ「資本家の権力の源泉を踏まえた自主化闘争――自立的な自主化であるために」でも論じたように、「アソシエーション自主管理経営の第一歩」として、より先鋭的になるか。

また、労働組合のみならず、ソーシャル・ブリッジの政策的整備が必要なことも勿論です。何度かご紹介してきた古めの記事で恐縮ですが、最後に再掲しておきます。
http://diamond.jp/articles/-/10654
>> 労働政策の基本は「人は守るが、雇用は守らない」
元スウェーデン財務大臣 ペール・ヌーデル
〜スウェーデンはいかにして経済成長と強い社会保障を実現したか。日本そして世界への教訓(第2回)
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posted by 管理者 at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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