>> ゆがむ韓国経済、財閥偏重の「疑似資本主義」が迎えた限界■資本主義の見方
ダイヤモンド・オンライン 11/29(火) 6:00配信
● 大統領スキャンダルだけでない 韓国国民の怒り
(中略)
冷静に考えると、国民の怒りは、単純に大統領のスキャンダルだけが原因ではないだろう。これまで長く蓄積されてきた韓国の経済・社会の構造的な問題に対する不満が、朴大統領のスキャンダルをきっかけに爆発したと見るべきだ。
第2次世界大戦後、韓国では、サムスンや現代などの財閥=チェボルを中心とする経済構造が出来上がってきた。国は経済発展促進のため主要財閥を支援した。財閥企業は、政府の庇護の下で輸出を中心に収益を獲得するビジネスモデルを整備してきた。
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その過程で、政府と有力財閥の癒着の構造が出来上がった。その結果、経済活動によって生み出された富の多くが、財閥企業関係者と有力政治家との間で分配されるシステムが出来上がった。財閥・政治家に関係のない一般庶民は、富の分配を受けることが少なかった。経済的なメリットを、国民の間で公平に分配するシステムができなかったのである。
そうした財閥を中心とする“疑似資本主義”の弊害が、多くの国民の格差を拡大させてきた。それが最大の問題だ。韓国の政治が経済の構造的な問題の解決に取り組まない限り、財閥依存の経済がはらむ問題、それに関連する政治スキャンダルを根本から解決することは難しい。単に朴大統領だけではなく、韓国自体の先行きには不安を禁じ得ない。
(以下略) <<
共和国南半分(南朝鮮)の社会経済構造を「疑似資本主義」と評する記事。その当否を検討しましょう。資本主義が進みうる方向とは何でしょうか? 人々はどう対応すべきなのでしょうか?
理論の世界での資本主義は、「常にイノベーションが起こり、企業は栄枯盛衰がハッキリしており、競争淘汰がスムーズにすすむ」「それゆえに万人にチャンスが開かれており、全体の厚生は向上してゆく」「一部の人間への権力集中はあり得ない」ということになりましょう。しかし、歴史的事実を見れば、現実の資本主義は、必ずしもそうした呑気な資本主義ではないことが分かることでしょう。「イノベーションは常に都合よく起こるわけではなく、競争淘汰もスムーズに行われるわけではない」「資本主義においても停滞の時代はある」「競争の結果としての独占があり得る」のです。
このうち、「競争の結果としての独占があり得る」というのは重要です。歴史的に見て、群雄割拠・何でもアリの初期資本主義の胎内から独占資本主義が形成され、国家権力との癒着;国家独占資本主義が生まれました。とても資本集中など起こりそうもない混沌とした競争状況であっても、放っておくと、いつの間にか集中が起きてしまうのです。
共和国南半分の現状は、独占資本主義段階・国家独占資本主義段階に達しつつあるといっても良いでしょう。「疑似資本主義」などではなく、「これこそが現実的な資本主義の一形態」なのです。
もっとも私は、古臭いマルクス主義的な直線的発展段階史観に完全に立つつもりはありません。それは事実の一側面ではあるものの、事実そのものではないからです。資本主義が誕生してから数百年たちますが、一方的な集中・集積ばかりではありませんでした。イノベーション・競争淘汰も、とても気まぐれなタイミングで現れるものですが、確かに働いています。資本主義は、資本集中に向かうベクトルと、群雄割拠に向かうベクトルが「綱引き」していると見るのが正確な理解でしょう。
そしてこれらの正反対の諸ベクトルの社会的合成ベクトルは、法則に支配されているというよりも、自由経済においては、それぞれが偶然的に合成されているとみるべきかもしれません。つまり、共和国南半分の現状も現実的な資本主義だし、筆者の真壁氏が想定しているであろう理想的資本主義も現実的な資本主義なのです。
この理解は重要です。古臭いマルクス主義的な直線的発展段階史観が崩壊し、経済が独占に向かってまっしぐらという訳ではないからといって、呑気な資本主義物語に幻想を持ってはいけないのです。仮に、極端に経済活動を自由化したとしても、(格差問題等の社会政策的分野を完全に捨象したとしても)それがそのまま経済活性化につながるわけではないのです。
■自主経済の確立こそが救いの道
共和国南半分の現状を「これこそが現実的な資本主義の一形態」と正しく認識した上で、なおかつ、共和国南半分の問題点を探るために、つづいて以下のくだりを検討しましょう。
>> ● 貿易依存度高く 不安定な韓国経済ここでは「中小企業」や「技術革新」に期待を寄せ過ぎている観があります。
韓国経済は国内の消費市場が小さく、相対的に貿易依存度が高い。輸出のGDPに対する割合は50%を超えている。財閥企業が大規模に大量生産を進めて価格競争力を高め、輸出によって得られた収益をウォン安でかさ上げするのが韓国の成長プロセスだ。
この経済構造は海外経済の減速に対して脆弱だ。典型例が1997年の"アジア通貨危機"だ。当時、韓国は急速な自国通貨(ウォン)の下落を受けてドル建ての対外債務の支払い負担に耐え切れなくなった。韓国は、この危機を国際通貨基金(IMF)の介入、わが国からの支援などによって乗り切った。
この時、IMFや欧米の投資家は縁故を重視する韓国の企業経営などが、過剰な債務累積につながったと批判した。これは“クローニーキャピタリズム(縁故資本主義)”と呼ばれる。IMFは韓国を救済するコンディショナリティ(条件)の一つとして財閥の解体を求め、政府も応じた。
しかし根本的な問題は是正されなかった。リーマンショック後、韓国経済はウォン安に支えられて一時的には回復した。その後、中国の減速とともに財閥企業の経営は行き詰まり、経済は低迷している。
今年8月末、コンテナ船世界7位の韓進海運が経営破綻した。これは、サムスンの半導体などの製品、現代の自動車を韓進の海運業で輸出するという、財閥と輸出に依存した経済成長モデルの行き詰まりの象徴だ。
財閥重視の経済政策が進められた結果、韓国では実力を備えた中小企業が育ってこなかった。技術力に関してもわが国の素材や部品に頼るところが多く、韓国が自力で技術革新を進めることは難しい。
足元のように世界経済全体を通して需要が供給を下回り始めると、どうしても韓国経済の減速懸念は高まりやすい。それが政治スキャンダルと重なることで、国民の怒りが噴出し抗議デモの拡大に繋がっている。 <<
共和国南半分の経済構造の最大の問題点は、「非自主経済」であることです。他国の経済に組み込まれているのです。たとえ共和国南半分で強固な「中小企業」の陣地があったとしても、それが他国の大企業の系列下に組み込まれていたら、事態は同じです。数だけは多いものの一部大企業に振り回されている日本の中小企業群と同じような境遇になることでしょう。
また、「技術革新」については、先にも述べたように、これは誠に気まぐれなタイミングで出てくるものです。技術革新へのあくなき追求は絶対に必要ですが、そんなに滅多矢鱈に出てくるものではないのですから、期待を掛けすぎるべきではありません。
みずからの主体を確立する自主経済の確立こそが救いの道です。他人の指揮下ではなく、自らが主人となり、経済の循環を主宰するのです。他人・他国の動向に左右されない陣地をつくるべきなのです。それが本質なのです。
自主経済は「鎖国」ではありません。貿易を制限するわけではありません。むしろ、相互依存的な関係性を構築するために、積極的に貿易を行うべきであるとさえ言いえるでしょう。たしかに貿易によって一部の財を他国に依存することになるでしょう。しかし、他国もまた自国に対して何らかの財を依存する関係になったならば、「お互い様」という意味で、自主を追求する余地が生まれます。
■個人も国家も自主の道を
自主という概念は、私は以前から労働問題においてさかんに使ってきました。しかし、この概念は誠に応用が利くものです。一個人の運命も、一国の運命も、自主の立場から考察すべきです。