2016年11月30日

いわゆる自由主義国と社会主義国の「抑圧」は根本的に異なる

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20161130-00000010-ann-int
>> カストロ氏追悼、100万人規模に 各国からも参加

テレビ朝日系(ANN) 11/30(水) 10:31配信
 キューバの首都ハバナでは、25日に死去したカストロ前議長の追悼式典が始まっています。参加者は100万人規模になると予想されています。


(以下略) <<
コメ欄。
>> 大好き | 2016/11/30 11:52

抑圧された人にとってはカストロは極悪者だったろう。
しかし、自由主義国だって
政府による人権侵害・表現の自由の規制はある。
社会主義だから問題だったということではない。

今は弟が実権を持っている。
世襲制がちょっと心配だけどね。
<<
いわゆる社会主義国における抑圧について、「いや自由主義国でも程度の差こそあれ、あるものだ」という言説は時たま、耳にします。妙な相対化による矮小化を狙っているのか、素でそう考えているのかは分かりませんが。結論を先に述べれば、いわゆる自由主義国と社会主義国の「抑圧」は根本的に異なります。

これから述べることは、理論上の話です。すなわち、「言っていることとやっていることが違う」といったケース、自由を掲げながらも実態は腐敗しきっている政権などは論じていません。そんなものを幾ら論じても意味はありません。

いわゆる自由主義国における「抑圧」についてまず述べましょう。ここで重要なのは、その目的です。自由主義国家においては、「他人に迷惑をかけない限りにおいて、自分の個人的目的追求を許す」ことが国是であり、また、社会的に何らかの目的が設定されていることは少ないのが常です。そのため、自由主義の権力は、ひとりひとりの個人的目的の自由な追求を保障するために存在しており、こうした国家が行使する権力は、いわば「棲み分けのための権力行使」というべきです。

他方、いわゆる社会主義国においては、何らかの「正しい価値」なるものにもとづく社会的目的が設定されていることが常です(歴史的には「階級性」「革命性」「党性」などに基づく「平等の実現」や「自由競争による無政府状態の克服」などがありました)。そして、社会主義の権力はそうした社会的目的のためにあらゆる資源に総動員を掛けるために行使されます。社会的目的の効率的達成のためには、個人的目的の追求や個人的意見の表明は好ましくありません。こうした国家が行使する権力は、いわば「総動員」のための押し付け的な権力行使というべきです。これは「強制的同一化」に容易に堕落する極めて危険な可能性を孕んでいます。

キューバのように、政治的意思決定の過程が少人数の限られた人々に独占されているような国家においては、その社会的目的は、権力者の独裁的専決事項となります。意思決定の過程に関与できない一般大衆は、ただ党指導部の決定に従うほかありません。

「棲み分け」のための自由主義的な権力行使と、「総動員」のための社会主義的権力行使は、こうして比較すると根本的に性質が異なることが分かります。

根本的に性質の異なる2つの「抑圧」を混同することは、自由社会を「総動員」の道へと導きかねないのは勿論、自由社会であるからこそ必要な棲み分けに対して、「社会主義的だ!」などといった誤ったレッテルを貼ることにも繋がりかねません。前者は「正義」だの「社会的責任」だのといった、それ自体は普遍的で善意に満ちた概念を暴走させ、善意に基づく窮屈な社会を導きかねません。自由社会を全体主義社会に堕落させかねません。他方、後者は、自由社会を無法地帯に堕落させかねない危険性を孕んでいます。

「総動員」の誘惑に抗しがたいものがあることは、私も認めます。「民主的討論」を尽くした末の「合意に基づく総動員・総決起」は、右派も左派も憧れを持つ「美しい人間愛」の姿です。しかし、その善意は、窮屈な地獄に繋がっている危険性があるのです。

目の前の規制や抑圧が全体主義に繋がらないか心配する気持ちも分かります。しかし、自由は制度的枠組みがあってこそ初めて成り立つものであり、なんでもアリの無法地帯は自由ではないのです。我々が「自由だ」と感じる状態は、実はとても手入れが行き届いた状態であり、本来的には「壊れ易い制度の進化的産物」なのです。

棲み分けと「総動員」の総合の道もあると思います。基本的には棲み分けを重視すべきでしょう。棲み分けの自由・行動の自由の留保を保障した上で、「民主的討論を尽くした末の合意に基づく総動員・総決起」を行うべきでしょう。これについては、今後じっくりと考えながら論じてゆくつもりです。
ラベル:社会 政治
posted by 管理者 at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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