チュチェ106(2017)年が明けました。おめでたくするかは自分次第、自力更生であります。
本年第1回目の更新は、例によって、キムジョンウン委員長の「新年の辞」から。「小林よしおの研究室」様に早くも全文の和訳が公開されているので、引用・活用させていただきます。
「新年の辞」は全体として生産・経済分野への言及に大きなウェイトが割かれています。その中でも、次のくだりは注目に値します。
>> 「70日間戦闘」と「200日間戦闘」期間に、我々は社会主義強国建設のための新しい時代精神を創造し、人民の心の中には党にたいする信頼、社会主義にたいする信念がより深く植えつけられました。全国がるつぼと化した昨年の連続的な徹夜進軍において、すべての党員と勤労者、軍人と青年は、苦難と試練に勇敢に立ち向かう不屈の攻撃精神と、いかなる逆境にあっても党の呼びかけにただ献身と実践をもってこたえる決死貫徹の気概、互いに助け導き合いながら飛躍を遂げる集団主義の威力を余すところなく発揮しました。 <<「互いに助け導き合いながら飛躍を遂げる集団主義の威力」は「新しい時代精神」である――これは、チュチェ105(2016)年3月19日づけ『労働新聞』に掲載された「集団主義的競争の熱風を激しく巻き起こし、より高く、より早く飛躍しよう」を指しているものと思われます(全文和訳は、当ブログ6月6日づけ記事に掲載)。この論説は、伝統的に難題だった「集団主義と競争原理の両立」について、「互いに成功を学びあい、助け合い、切磋琢磨してゆく」タイプの競争を社会主義的競争と位置づけ、「弱肉強食の生存競争」としての資本主義的競争との違いを定義した点において、イデオロギー的に重要な論説だったと私は見ています。
前掲6月6日づけ記事で「今後のキムジョンウン経済改革・経済活性化のイデオロギー的な「背骨」になってゆくことでしょう」と述べましたが、「新年の辞」で総括的に言及されたことは、当面は集団主義的・社会主義的競争の路線を継続してゆくということなのでしょう。
対外・軍事関係については、南半分の連中が「ICBM最終段階発言」を非難したそうですが、「新年の辞」全体から見ると、そもそも、そうしたテーマへの言及の比重が大変小さいことがわかります。昨年は「祖国統一は、最も緊迫かつ死活的な民族最大の課題」とまで指摘していたのに、今年はパククネ「政権」がガタガタになっている好機であるにもかかわらず、そもそも南側の情勢への言及自体が小さい。「裏で操っている」と見られてはまずいので意図的にトーンを落としているのでしょうか?
「いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送りましたが、今年はいっそう奮発して全身全霊を打ち込み、人民のためにより多くの仕事をするつもりです。」という一文は、「偉大な指導者」としては異例中の異例発言です。共和国南半分・聯合ニュースも早速報じていますが、ナムソンウク教授とキムグンシク教授の分析、どちらが主たる狙いを言い当てているかは、今後の政治指導の動向を見極めてゆく必要があると思います。
集団主義的・社会主義的競争を「互いに助け導き合いながら飛躍を遂げる集団主義の威力」として明示的に総括したこと、そして、異例中の異例たる「自己批判」が、今年の「新年の辞」の注目ポイントでした。
(1月3日18時6分補足)