2017年02月22日

人員不足という労働者階級に有利な状況を生かせていない労組運動

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170221-00000000-jct-bus_all
>> セブン店舗、従業員募集で「ノルマ罰金無し」明記 「当たり前だろ」「吹っ切れたか!」

J-CASTニュース 2/21(火) 7:00配信

 東京・世田谷区とみられる地域に、新たにオープンするコンビニエンスストア大手の「セブン‐イレブン」が、「ノルマ罰金無し」をうたってアルバイト店員を募集していると、ツイッターなどで話題になっている。

 コンビニのアルバイト店員は、人手不足が伝えられている一方で、最近では節分に食べる「恵方巻」に販売ノルマが課せられているなどと、過酷で不当な労働環境が取り沙汰されていた。


(中略)

「こういう表示、いまは必要かも」

 そんなコンビニの人手不足に耐えかねたのか、新規オープンを準備中の東京・世田谷区あたりの「セブン‐イレブン」で、店舗に大きく「従業員募集中」「ノルマ罰金無し」の張り紙が掲げられた。

 近所の住民だろうか、あるツイッター主が2017年2月18日付で

  「これは…」

と、つぶやいたことでわかった。

 ツイッターに公開された写真をみる限りでは、働きやすさをアピールすることで、人材を確保しようとしたように思われる。

 なんとも自虐的というか、受け取りようによっては他の店舗では「ノルマ」も「罰金」もあったかのようにも受けとめられかねない記述に、ツイッターやインターネットの掲示板などでは、

  「やっぱりな... 前はあったんだ!いや、他のセブンはあるってことだ!」
  「店長にはあるってことだろ」
  「罰金って、何に対する罰金なのかはわからないな」

といった「不信感」を募らせている人がいるほか、

  「セブンイレブンがついに吹っ切れたか!」
  「これはなくて当たり前だろ!」
  「こういう表示はいまは必要かもしれませんね」
  「当たり前も書かなければならないご時世すかw」

などの声も寄せられている。


(中略)

最終更新:2/21(火) 8:13 <<
チュチェ105(2016)年12月25日づけ「労働者の関心事に答えず、ブラック企業の利益を無意識に実現させる労組活動家」において触れたように、コンビニでの売り上げノルマ未達成者に対する「お買い上げ強制」については、ユニオン(労働組合)界隈が参入を試み、積極的に活動しているようです。そんななかでの本ニュース。またしても、労組の要求運動によってではなく、労働市場における「見えざる手」が企業・経営者側に改善のインセンティブを与え、自発的な改善措置が取られたようです

労組運動は、通念とは反して実は好況時のほうが活発に現れ成果を挙げるものです。好況時は労働需要に対して供給が少なくなり、労働者階級の立場が相対的に強くなるので、労働者側も「要求してみよう」という気になるし、企業・経営側も「応えないと逃げられる」と判断するので、労使交渉が妥結しやすいのです。一方、不況時は労働需要が減り、労働者階級の立場が相対的に弱くなります。余剰人員が幾ら大声を上げようとも、そもそも「不要な労働力」である以上は企業側には応対する利益が無いので、労組が騒ごうとも成果を上げ難いのです。

昨今、サービス産業は著しい人員不足にあるといいます。つまり昨今は、労働市場における労働者階級の立場は相対的に強いと言い得る状況です。普段であれば、いまこそ労組運動が大衆的レベルで盛んになり、要求活動が展開される場面です。しかし今回、日本の労働者階級は、人員不足という自己に有利な状況を「労組運動を活発化させる」という道を選択するのではなく、「転職」という道を選択し、自己利益を図っているようです。今回のニュースは、その代表的一例とみなすことができるでしょう。

さて、当ブログでは自主権の問題としての労働問題を労働者階級の立場から論じるにあたっては、従来型の要求実現型の労組運動に対しては批判的な立場をとり、より労働市場を活用する形での労働自主化の道を探究してきました。その基本的見地は、チュチェ104(2015)年10月8日づけ「「日本の労働組合活動の復権は始まっている」のか?――労組活動は労働者階級の立場を逆に弱め得る」において述べています。

他方、チュチェ104(2015)年9月23日づけ「「ブラックバイト」の域を超えているのに「団体交渉」を申し込むブラックバイトユニオンの愚」においても述べたように、労働組合には、労働市場における市場メカニズムの作用が労働者階級の利益となるように補助的・補足的に調整する役割はあると考えています。労組活動にはある程度の役割があることは私も認めます。

労組活動にはある程度の役割がある――労組運動には過剰な期待は禁物ですが、壊滅してしまってはいけないので、ある程度の成果を定期的に上げてもらう必要がありますし、労組にはそうする潜在的な力があるし、そうすべきだと思っています。

しかしながら、通常であれば労組運動が活発に見られ成果を上げる状況であるはずの昨今であるにもかかわらず、今回のように労組によってではなく市場メカニズムのほうが成果を挙げています。労組は、有利な状況を生かせていません。もっとも、チュチェ103(2014)年10月6日づけ「最後の決定的な部分は下から積み上げてゆくこと」においても触れたように、このことは今に始まったことではありません。今よりは景気状況が低調にあった時期においても、「ワタミ」や「すき家」といった「ザ・ブラック企業」を窮地に追いやった決定打でした。

結局、今も昔も労組運動は成果を挙げられていないのです。ちょっとマズい状況にあると思います。
posted by 管理者 at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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