2017年03月14日

労働市場を活用した労働者階級の偉大な勝利――ゼンショー社で「勤務間インターバル規制」が実験的導入

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170313-00000097-asahi-bus_all
>> 「すき家」のゼンショー、社員休息の新制度 負担減狙う
朝日新聞デジタル 3/13(月) 20:36配信

 牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーホールディングスは、終業と始業の間に一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル規制」を実験的に始める。13日、今春闘の労使交渉で合意した。慢性的なアルバイト不足のなか、社員の負担軽減を狙って終業と始業の間を11時間以上あけるようにする。2017年度中に数店舗で始め、全店への展開を検討する。今春闘では、月1400円のベースアップでも合意。パート・アルバイトについても時給を引き上げる。


(以下略) <<
■労働市場を活用した労働者階級の偉大な勝利
あの「ワンオペ」で悪名高い「すき家」のゼンショー社が、慢性的な人手不足を背景に、実験的導入とは言うものの先進的な「勤務間インターバル規制」を導入する運びになりました。

当ブログでは以前から述べてきているように、労働者が勤め先に対して自主的な立場を獲得・維持するためには、常に「辞める」という選択肢を留保しておくべきだと述べてきました。経済学的に考察したとき、特定の企業に対して依存することは、自らの自主的な立場を弱めます

「辞める」という選択肢が無い状態においては、仮に労使交渉によって利益を獲得したとしても、それは同時に勤め先への結びつきを強めることでもあります。おそらく企業側は、「巻き返し」を虎視眈々と狙ってくることでしょう。むしろ、いったん「好待遇」を提示することで囲い込み、後々になってから労働需要独占者としての立場を利用して買い叩いてくるかもしれません。

他方、「辞める」という選択肢がある状態で企業側から譲歩を勝ち取ったケースにおいては、企業側が「巻き返し」を図ろうものなら、労働者はすぐに逃げ出すことでしょう。合理的な商売人であれば、「金のなる木」を逃がさない程度に搾取することでしょう。

今回のゼンショー社の譲歩は、慢性的な人手不足=労働市場における売り手市場という社会的な状況下で出てきたものです。つまり現在、労働者階級は、「辞める」という選択肢がある状態です。こうした状況下で、市場メカニズムを活用する形での要求活動を展開することこそが労働組合が本来的に行うべき要求活動です。ゼンショー社の労働組合は上手くやったと思います。

■偉大な勝利とは言っても勘違いしてはならない
ただし、勘違いしてはいけないのは、今回の要求の実現は、あくまで「慢性的な人手不足」という社会的状況が決定打だった、つまり、「粘り強い組合運動」に対して企業側が譲歩したというよりも、市場メカニズムの作用に企業側が反応・対応した結果に過ぎないということです。「ワンオペ」が中止に追い込まれたときと同様の構図です。「ワンオペ」のときも労働組合の改善要求に企業側が折れたのではなく、ワンオペの悪評が労働市場に広まり、アルバイトの応募が激減したことが決定打でした。時代の流れに上手く乗ってチャンスを生かすのも十分に才能だと言えますが、自分自身の力を過信してはなりません

労働組合が労働市場を常に意のままに操作すること自体は困難ですが、しかしながら、世論を醸成・喚起するキッカケづくりは可能です。世論への訴えを通じて、間接的に労働市場に影響力を行使し、労働供給側のパワーを強める手順・方法論を整備すべきでしょう。労働環境に対する社会的関心がかつてなく高まっていますが、この世論を維持する努力は今後も続けるべきでしょう。

■好況のうちから実力を
景気は循環するものであり、いつかまた不況は必ず来ます。不況下でも同じ調子で要求活動を展開すると、今度は「辞める」という選択肢が実質的にとれない状況下なので、逆に企業側に足許を見られることになるでしょう。不況下であっても買い叩かれないように、好況のうちから技能や知識を熟練化させておくべきでしょう。

■好況のうちからソーシャル・ブリッジの構築も
なお、社会人デビュー・労働者デビューが不況時代に重なってしまった運の悪い世代については、ソーシャル・ブリッジの構築が必要だということは申し述べておきます。以前から繰り返し取り上げている、スウェーデンの「人は守るが、雇用は守らない」(=労働者の生活は守るが、特定企業への財政支援・産業保護はしない)を原則とする労働政策に則ったものです。
posted by s19171107 at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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