2017年04月26日

大規模砲撃演習を「極めて挑発的な威嚇」と認識できない単細胞な「世論」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170425-00000051-reut-kr
>> 北朝鮮が軍記念日に大規模砲撃演習、米原潜は釜山入港
ロイター 4/25(火) 13:37配信


(中略)

[ソウル 25日 ロイター] - ミサイル・核開発プログラムを巡り国際的な孤立を強める北朝鮮は25日、朝鮮人民軍の創建85年の記念日を迎えるのにあわせ、大規模な砲撃演習を行った。

韓国の聯合ニュースが韓国政府筋の話として伝えたところでは、北朝鮮の軍が同国東岸の元山市近郊で大規模な実弾演習を行ったもよう。韓国国防省はこの報道を確認していない。

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は1面の社説で、朝鮮人民軍は「米国の策略と核の脅しの歴史に終止符を打つ」用意があると表明。「人民軍には、様々な精密・小型核兵器、潜水艦発射弾道ミサイルなど、独自の最新鋭軍装備があり、攻撃力に限界はない」と指摘した。


(中略)

4月は北朝鮮で記念日が続くうえ、米韓軍が大規模な合同演習を実施していることから、金正恩政権が挑発行動に出ることが懸念されている。とりわけ朝鮮人民軍創建85年に当たる25日は、6回目の核実験を踏み切る可能性が指摘されており、トランプ米大統領は、空母カール・ビンソンも合同訓練のため朝鮮半島近海に向かわせており、日韓との連帯を示すことで北朝鮮を強くけん制している。

(以下略) <<
コメ欄。
>> ビビッて火力訓練・・だと。。(笑) <<
>> やっぱり、北朝鮮は核実験やミサイル発射はできませんでした笑 <<
>> あれ?核実験やミサイル実験は?
ビビってできないなら始めからデカい口たたくなよw
<<
■いったいいつ「4月25日に核実験を実施する」と宣言したのか?
以前、昨今の「世論」について私は「戦前の朝日新聞のような単細胞」と述べましたが、もっとピッタリの表現がありました。「ミリオタ気取りの中学生」。そういえばこんな手合い、クラスにいましたよ(中学生みたいな思考回路で国際情勢語るなよ・・・)。

いったいいつ、朝鮮政府は「4月25日に核実験を実施する」と宣言したのでしょうか? そんな宣言は一言も発しておらず、日米韓各国の関係者が推測していただけに過ぎません。記念日という点では、「5.1節」(メーデー)が近づいていますし、朝鮮は年中、なんらかの記念日があるものです。

■この大規模砲撃演習こそ「極めて挑発的な威嚇」だと思わないのか?――とんでもないお気楽な脳内補完
ビビッて火力訓練」だったのでしょうか? まあ、中学生くらいのメンタルだとそう見えるのでしょう(いたなぁ・・・懐かしい)が、いまの戦略的状況を大人の視点で確認すれば、この大規模砲撃演習こそ、「極めて挑発的な威嚇」なるものであると言える可能性もあります。すなわち、「我々は核実験を必ず実施する。仮にその時、米軍がシリアに行ったような、軍事施設に的を絞った『限定的』な攻撃をしようものなら、ソウルの街と在韓米軍基地はこうなるぞ!」と。周知のとおりソウル市や在韓米軍基地は、ミサイルではなく長距離砲で攻撃が可能です。

「4月25日核実験実施」という推測がいつの間にか既定スケジュールに脳内変換され、それが現実のものにならないと見るや、さらに脳内補完を強め、相手側の真意をまったく読み違える。自分たちの「推測」に過ぎないものが、いつの間にか「現実」のスケジュールに摩り替わっている・・・日本軍の戦略的敗北の過程――なぜかは分からないが連合国・連合軍の戦術・戦略を決めてかかり、それと異なる兆候を無視する――と瓜二つです。

■「インパール作戦の国」と「ゲリラがこしらえた国」との決定的差
仮に情勢が悪いとみて砲撃演習に切り替えたとすれば、これはキムジョンウン委員長には戦略を見極める眼があることの証左です。勝てる戦いしかしないが軍人であり戦略家。何が一番大切で何を達成しなければならないのかという優先順位が固まっていれば、情勢が悪いならば涙を呑んででも撤収するのは当然の選択です。

この点こそが、「インパール作戦の国」と「ゲリラがこしらえた国」との決定的差です。ますますハッキリしました。ゲリラは勝てる見込みのない状況では戦いません。勝てる見込みのない戦いについて「あれは戦うしかなかったのだ・・・」などと少し陶酔気味に語ったり、あるいは「絶望的な戦いで見事に散華した」などと言い換えるようなのは、朝鮮にとってはまったく関心のないことなのです。

■戦略的認識を誤り大失敗を犯しそうな「ミリオタ気取りの中学生」
「戦前の朝日新聞」どころか「ミリオタ気取りの中学生」のような調子では、戦略的認識を誤り大失敗を犯しそうです。しょうもない私情を優先させてインパール作戦を再現しかねない勢いです。しかし、きっとそうした悪手を「犠牲はつきものだ」や、甚だしくは「見事に散華した」などと言い換えるのでしょう。

■費用対効果の戦略思考
「犠牲はつきものだ」というコメントも今回の中学生みたいなコメント群のなかで何度か見かけました(自分自身が実際に犠牲者になり得るという現実はもちろん捨象しているのでしょう・・・自分の問題としてではなく評論家的に述べているに過ぎないと思われます)。このことについても少し考えておきたいと思います。

「犠牲はつきものだ」という見解自体は、評論家的立場から述べれば、その通りです。しかし、「インパール作戦の国」で易々とこういうセリフが出てくるのは戦略思考としてまずい。たとえばアメリカも「犠牲はつきものだ」と考えている国ですが、あらゆる手を尽くして犠牲を最小化しようと目指しています。「あらゆる手を尽くしてもなお、発生してしまう犠牲はやむなし」という立場であり、費用対効果を常に計算し尽くした上で戦略を考えています

しかし、最初から「そういうもんだ」と考えており、なおかつ、「散華」なる言葉で自己陶酔・自己満足に至ってしまう「インパール作戦の国」では、あらゆる手を尽くして犠牲を最小化しようとしないでしょう。しかし、目標というものは達成すればよいのではなく、最小の費用で達成させるものです。

■コトは体制の問題であり「キムジョンウンの首さえ狩れば問題は解決する」はずがない
国際関係の専門家・軍事評論家がこぞって可能性の低さを指摘している「斬首」についても述べておきたいと思います。「キムジョンウンの首さえ狩れば問題は解決する」といったコメントが割りと実しやかに語られています。

コトは個人の行動によるものではなく体制的に生まれたものであり、システムとして回っているというのが根本的に分かっていないようです。仮に「独裁者」と言われるほどの権力者であっても本当にすべてを一人でまわしているわけではないし、すべての利益を一人で独占しているわけでもありません。こんなのだから小手先の改革を標榜する政治家などに一喜一憂し、社会システム総体の変革に目が向かないんでしょうね。たとえば、仮に桜井誠氏が最高権力者になったところで、この国は何も変わりませんよ。

「幕末の志士」に焦点を当てた大河ドラマの悪影響でしょうか? あの手の作り話では、登場人物たちの「熱い思い」がそのまま直接的に時代を動かしたかのごとく書かれています。しかし、そんなものは「お手本のような観念論」というほかありません。

「熱い思い」が時代を切り開く上で作用することは私も否定しませんが、闇雲な熱意のゴリ押しで時代をコジ開けるように切り開いたわけではなく、その時代の社会体制・システムの「ツボ」を突いたからに他なりません。「熱い思い」と「冷静な状況判断」によって、社会システムの「ツボ」が突かれ、時代が変化したのです。主体としての人間の熱意と客体としての社会システムが相互作用的に反応し合って、結果的に社会が進化するのです。卑近な例でいえば、闇雲な思いだけでは大学には合格できず、過去問研究・出題方式研究を重ねて「○○大学合格の傾向と対策」を極めないとダメなのと同じ、闇雲な熱意だけでは第一志望には就職できず、企業研究を重ね、模擬面接を重ね、採用担当者の「ツボ」を突かないとダメなのと同じです。

観念論的世界観は心に響くものがあるので、あの手の作り話は「熱い思いが通じて歴史が動いた」といったような単純なストーリーを意図的に編成しているのでしょうが、その悪弊がこんなところにも出ているのかも知れません。

■危険千万な平和ボケっぷりが白日の下に
この1ヶ月弱の一連のニュースに対する「世論」は、あつめて分析する価値がありそうです。危険千万な平和ボケっぷり、観念論っぷりが白日の下に晒されました
posted by 管理者 at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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