2017年07月25日

全国一律最賃制度こそ、非効率企業を淘汰し、高福祉・高効率・好景気サイクルを始動させる決定打

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-07-21/2017072104_03_1.html
>> 2017年7月21日(金)
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全労連が厚労省前宣伝

 全労連は20日、中央最低賃金審議会の小委員会が開かれた厚生労働省前で、最低賃金の大幅引き上げ・全国一律最賃制度の実現を訴える宣伝をしました。

 全労連の斎藤寛生常任幹事は「地域別最賃制度が格差を生み出し、地方からの人口流出と地域経済の疲弊を招いている。どの地域でも人間らしく生きられる全国一律最賃制度を実現すべきです」と強調。審議会や小委員会の議事を公開することも要求しました。

 全労連・全国一般の菊地亮太さんは、「中小企業への支援を抜本的に強化し、最賃引き上げを」と述べるとともに、労働者委員の公正任命を求めました。


(以下略) <<
■全国一律最賃制度の経済学的意味と帰結
最低賃金の大幅引き上げ・全国一律最賃制度の実現――コストコが既に実施している共通賃金制度を、国家として、最低賃金として実施せよという要求です。

コストコの例を見ると、地方においては、高い賃金額を提示する同社の求人に求職者たちが群がり、全体として賃上げトレンドが発生しているようです。そうしたトレンドの中でも営利企業は利潤を確保しなければならないので、当然、業務の効率化・合理化も進む。そして、そうした賃上げ圧力、合理化圧力に対応できない企業には、市場から退出を求められるようになりつつあります

高い水準の福祉と活気のある効率的な経済のサイクルとして伸ばし、従業員の待遇が悪い上に業務が非効率な企業の競争淘汰を促進し、産業構造を時代に合わせて柔軟に変化させる――以前から私が肯定的に取り上げている、スウェーデンを筆頭とする北欧諸国における最新の福祉国家モデルを日本で実現させてゆくにあたっての第一歩は、全国一律最低賃金と言えるかもしれません。

■非効率企業を淘汰し、高福祉・高効率・好景気サイクルを始動させるための政策パッケージ
もちろん、北欧型の最新福祉国家モデルにおいては、企業の業務効率化を促進するための国家的な梃入れが充実しています。また、労働者・生活者を対象とした「ソーシャル・ブリッジ」のキメ細やかな構築によって、非合理的企業の競争淘汰を促進しつつ、倒産企業に勤めていた人物が路頭に迷わないようにしています。このことをスウェーデン元財務相のヌーデル氏は「人は守るが、雇用は守らない」という言葉で表現しています。さらに、公的扶助と就業訓練をセットにするといった福祉政策と経済政策の両方に作用する政策も設計されています。

また、チュチェ102(2013)年2月18日づけ「いやいや全然違うから共産党さんw」を筆頭に何度も述べてきたように、単なる賃上げではマクロ経済における好循環のキッカケにはなり得ないことを指摘してきました。消費支出の増加に起因する底堅い景気の好循環を達成するには、家計収入の増を「恒常的なフロー」によるものだと「期待」させなければならないのです。その点において、成長戦略の提示が必要不可欠です。

政策というものは常にパッケージとして同時に実施すべきものですから、全国一律最低賃金を単発的に施行しても失敗するだけです。全国一律最低賃金制度による高福祉と好景気のサイクルの生成・非効率企業の競争淘汰を軸に据えつつも、「人は守るが、雇用は守らない」型の補完的制度や福祉政策と経済政策の両方に作用する政策の構築をパッケージ的に行うべきでしょう。

全国一律最低賃金、よい提案だと思います。一時的には非効率的企業の倒産が相次ぐでしょうが、キチンとソーシャル・ブリッジを構築し、産業構造の変化を促進させることによって、長期的に見ればプラスの結果が返ってくることでしょう。

■日本共産党は、その狙いに相反する効果をもたらす方法論を掲げている
もっとも、おそらく日本共産党の平生の主張に勘案するに、彼らが言うところの「全国一律最低賃金」では、「大企業から高い税率で収奪し、その分を補助金として中小企業に配分して倒産を防ぐ」といった類の主張がパッケージ的に付随しているものと思われます。

恣意的な「価格保障」に走らないだけ補助金のほうがずっとマシ(M.フリードマンも言っているように、価格保障は中小企業保護においては逆効果です)ではあるものの、業務の効率性と企業規模は、本来はまったく別個の問題(たとえば、大企業は規模が大きい分、小回りが利きにくく、トレンドに機敏に対応しなければならない業界・分野では逆に非効率です)であり、着眼点がズレていると言わざるを得ませんが、それを差し置いたとしても、すでに成功事例を積み重ねている北欧諸国における歴史的経緯や現況と比較するに、このパッケージは逆効果というほかありません。

■北欧諸国(スウェーデン)の歴史的事実
北欧諸国、とりわけスウェーデンもかつて――教科書的なケインズ主義がまだ支配的地位を占めていた頃――は産業保護・企業保護を通して国民生活の安定化を目指していました。しかし、1980年代〜90年代に大不況に直面した同国は、経済再生なくして福祉の維持はないと正しく認識し、経済再建のためには産業構造を変化させなくてはならないという事実を認めました。それまでの産業保護・企業保護の方向性を大きく転換させ、競争淘汰による産業構造の変化を積極的に進めるようになったのです。

私がスウェーデンを特に肯定的に評価しているのは、このように、事実から出発し、正しい認識に基づく市場活用型の方法論に大きく舵を切ることができた点、一見して「新自由主義」的な大転換をしつつも、前述のソーシャル・ブリッジのキメ細やかな構築といった「福祉国家の核心」においてはプレることなく新しい制度を構築した点にあります。高い水準の福祉と活気のある効率的な経済のサイクルを現実のものとすることができた、北欧福祉国家モデルを進化することができたのがスウェーデンなのです(付け加えれば、福祉サービス受給者の選択の自由を確保するために、一定の公的水準の下に、福祉サービス供給の参入規制緩和・多様化に踏み切ったことも評価しています。日本では未だに、公共部門・行政部門がサービス供給を独占的かつ措置として実施すべきだとする風潮が根強く残っているのとは対照的です)。

■「頭で立っている」日本共産党
スウェーデンが、足で立ち、事実から出発した結果として放棄するに至った古タイプの福祉国家路線を、「頭で立っている」日本共産党は未だに大切にしています。スウェーデンと日本の社会構造には差異があり、スウェーデンの経験をそのままコピペ的に輸入することはできませんが、すでに明らかなる行き詰まりの前例がある方法論を持ち込んだところで、おおよその展開は読めるでしょう。また、こうして安易に補助金を出して経営を下支えすることは、チュチェ106(2017)年5月22日づけ「日本共産党議員の質問に見られるソ連・東欧型放漫経営の保険・損失補填理論」においても指摘したとおり、長期的・社会的に見て決してよいことではありません。モラル・ハザード的経営の企業やゾンビ的企業を増長させることになりかねません。もっと支出すべき対象があるはずです。日本共産党は、その狙いに相反する逆効果をもたらすプランを掲げているのです。

そしてさらに情けないのが、こうしたプランの理論的裏付けが、マルクス経済学によるものではなく、入門レベルのマクロ経済学の教科書に書かれている程度に過ぎないということです。もちろん、教科書で取り上げられている内容は、モデルとしては重要ですが、それをそのまま現実に適用してはなりません。マクロ経済学の発展の過程で、もっと深堀りされた論点が多数提唱されています。オリジナル性が皆無である上に3周遅れぐらいのプランしか展開できていないのが、いまの日本共産党なのです。以前から述べているように、もはやマルクス主義政党ではなく、原始ケインズ主義政党というべきでしょう。

全国一律最低賃金の方向性自体は、よい提案だと思いますが、日本共産党が全国一律最低賃金に付随させている政策パッケージを一瞥すれば、とてもではないが支持できない提案です。これは逆効果です。

■「人は守るが、雇用は守らない」という方法論のみが現実主義的
日本は「生業」の観念が未だに強いので、日本共産党員に限らず「人は守るが、雇用は守らない」という方法論に対しては感情論的反発もあり得ます。しかし、物事の優先順位を付けられるほどの知性があれば、「人は守るが、雇用は守らない」という方法論のみが現実主義的だと言うほかないでしょう
posted by s19171107 at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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