>> なぜ北朝鮮びいきの立場で?TBS『Nスタ』の偏向したニュース原稿が物議に一連の共和国によるミサイル発射実験について「挑発」という言葉を使うか否かは、その人物の立場を決定づけるポイントです。贔屓している人であれば絶対に「挑発」という単語は使わず「対抗措置」といった具合に言い換えるものです(動機の正邪論争はさておき、共和国がアメリカに対抗していることは、万人が認める事実でしょう)。その点、「挑発」というマイナスイメージを惹起させる単語を例によって盛り込んでいる本件TBS番組は「北朝鮮びいき」などとは到底言えないものです。
2017/12/6 08:00 デイリーニュースオンライン
TBSの報道番組『Nスタ』4日の放送で、目に余る北朝鮮びいきの報道が物議をかもしている。この日の放送は自局のJNN世論調査を受けて『森友問題の政府説明「納得できない」8割超す』などと鼻息荒く伝え、『モリカケはこれからだ!』とばかりに安倍政権批判をしていたのだが、つい本心(?)が出てしまったのか、トンデモないアナウンスをしたという。
「番組の中盤、緊迫した北朝鮮情勢について、井上貴博アナウンサー(33)が『圧倒的な軍事力を見せつけるアメリカと韓国。それに怯むことなく軍事的な挑発も辞さない構えの北朝鮮。この対立の構図は変わらないままです』と紹介したんです。(以下略) <<
また一般的に、圧倒的な軍事力を誇示された側は、それなりに大人しくするものですが、共和国は逆に対抗措置のレベルを上げています。一般視聴者の感覚に立てば、目下の情勢は「正気の沙汰ではない」と言ったところでしょう。その点、「圧倒的な軍事力を見せつけるアメリカと韓国。それに怯むことなく軍事的な挑発も辞さない構えの北朝鮮」なるアナウンスは、「キムジョンウン=好戦的で向こう見ずなキチガイ」像を補強する効果があると見るべきです。「北朝鮮びいき」効果は生まないでしょう。それくらい制作者側だって十分に予測していることでしょう。
「圧倒的な軍事力を見せつけるアメリカと韓国。それに怯むことなく軍事的な挑発も辞さない構えの北朝鮮」というアナウンスを「北朝鮮びいき」だの「偏向報道」だのと騒ぎ立てる人物は、「脊髄反射」的にしても程度の低さが際立つと言うほかありません。いったいどういう理屈を繰り出してくるのかと思えば、次の通りの笑止千万な内容でした。
>> 公正な報道番組としては『大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮に対し、米韓の空軍が本日から合同演習を開始しました』とストレートに伝えるところ。あたかもアメリカと韓国の軍事演習が威圧的で、それに果敢に立ち向かうのが北朝鮮であるかのような印象報道でした」(政治部記者) <<ほほう。たしかに共和国はICBMの開発に邁進しており、実際に試射を繰り返しています。ではなぜ、共和国はICBMの開発に邁進しているのでしょうか?
当ブログでも以前から言及してきたことですが、日本メディアが絶対に報じようとしない事情を、朝鮮新報が次のように解説しています。
http://chosonsinbo.com/jp/2017/12/yr20171201-1/
>> 〈朝米核・ミサイル問題への視座 6〉米南合同軍事演習とは現在の朝鮮半島情勢を歴史的に振り返れば、もともと、朝鮮戦争の停戦協定は外国軍隊の撤退を定めている点において、「在韓米軍」なる存在は停戦協定に反するものです。その上、アメリカは単に居座り続けているだけではなく、新型兵器を次々に持ち込んでは対北圧迫を続けています。特にトランプ政権発足以降は、独立国家を思い付き的にミサイル攻撃するような人物が米軍最高司令官を務めているわけです。この歴史的経緯を踏まえれば、共和国側の危機感が今や最高潮に達していたとしても無理のないことでしょう。
停戦協定・国連憲章違反の北侵演習
米南合同軍事演習には、主に春に実施される指揮系統を確認する増援演習「キー・リゾルブ」と合同野外機動訓練「フォール・イーグル」、8月に行われる「乙支フリーダム・ガーディアン」がある。このほかに小規模な演習が年に数十回行われる。
米国は57年に南に核兵器を配備して以降、69年3月の「フォーカス・レティナ」を皮切りに40年以上も合同軍事演習を継続してきた。
(中略)
そもそも合同軍事演習は停戦協定に違反する戦闘行為だ。停戦協定第2条第12項は敵対行為の完全停止を規定、第13項は朝鮮境外からの軍事人員と作戦武器の増援禁止を規定している。(以下略) <<
このように、「元はと言えば・・・」の要領で現在の南北分断構図のスタートラインに立ち返れば、停戦協定に反する「在韓米軍」という存在が事態の根底にあるわけです。ここに元凶があるのです。
まあ、このことを日本メディアが絶対に報じようとしないのは、ある意味で仕方のないことだと思います。このことを大々的に報じてしまえば、今まで積み重ねてきた「北朝鮮=悪党」のストーリーが揺るぎかねないからです。しかし、だからといって「公正な報道番組」を云々するのは如何なものなのでしょうか。いったいどこが「公正」だと言い得るのでしょうか。
日本にとって共和国は敵国なのだから、「日本の立場、日本の国益に立脚した報道番組」というのであればまだしも、TBSの「偏向」を批判している方もまた一定の「立場」に立脚しているにも関わらず、自分自身は「公正」だと言い張っているのがこの記事の論調です。
笑止千万な言説ですが、他方で、自称「公正」ほど恐ろしいものはない点、笑ってばかりもいられないところです。共和国情勢を巡っては、以前から指摘しているように、@戦前の朝日新聞やミリオタ気取りの中学生を彷彿とさせるような短絡的で好戦的な言説があふれかえっているところですが、A自分自身もある種の「偏向」をしているにも関わらず、あくまでも「公正」と言い張る言説までもが出てきている点、日本の言論状況を憂慮せざるを得ないところです。自分自身を客観視できていないわけです。
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