2018年01月22日

「現場の奮闘」だけでシステムとしての組織全体について「妥当だった」と語ることはできない

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20180120-00000017-jnn-soci
>> 新潟のJR列車立往生、バス輸送支援をJRが断る
1/20(土) 6:56配信

 新潟県三条市で、15時間にわたり乗客が閉じ込められたJRの列車立往生から1週間、JRは、地元自治体からのバス輸送支援の申し出を断わっていたことがわかりました。

 「多大なるご迷惑・ご心配をお掛けしたことに深くおわび申し上げます」(JR東日本新潟支社 今井政人 支社長)

 19日、JR東日本新潟支社の今井政人支社長が会見して陳謝しました。三条市は県を通じて、マイクロバスによる乗客輸送をJRに提案していましたが・・・

 「(三条市の)要請をお断りした形ではないが、情報提供という認識だった」(JR東日本新潟支社 今井政人 支社長)

 道路状況からマイクロバスでの輸送は難しいと判断していました。この対応について、国土交通省は自治体に支援要請をしなかったことを問題視しています。


(以下略) <<

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180119-00000066-jij-soci
>> 代替バス申し出を放置=信越線立ち往生で―JR東
1/19(金) 12:49配信
時事通信

(中略)
 また、同市から代替バスを提供するとの打診を、検討せずそのままにしていたと明らかにした。

 同支社によると、電車が動けなくなってから約5時間半後の12日午前2時半ごろ、三条市から乗客避難のためマイクロバスを提供するとの打診が県を通じてあったが、具体的な検討に入らなかったという。

 今井支社長は「情報提供という認識だった。乗客の全員救済を前提に動いており、マイクロバスでは十分な容量がなく、全員の救済は困難と考えた」と説明した。
<<
今回の信越線立ち往生の一件については、現場社員の奮闘や、大雪という不可抗力的事情を以って「JRの対応は妥当だった」という認識が広まりつつあったところでした。

たしかに、現場社員は最善を尽くしたと言えるので、「現場の対応」については妥当だったと言えるでしょう。しかし、そのことのみ以って「JR東日本新潟支社の組織としての対応全体」を妥当だったと判断するのは早計です。このような短絡的な判断を下す人物は、物事を構造的に理解することができていないと言わざるを得ません

組織というものは、それぞれ異なる分担があり、それらが全体としてシステムを構成しています。最前線が最善を尽くしているからといって、それ以外の部署が必ずしも最善を尽くしているとは言い得ず、最前線の事情だけでシステムとしての組織全体について語ることはできないわけです。

15時間立ち往生のJR信越線、乗客から運転士に感謝のツイート 「泣きたかっただろうし、帰りたかっただろうなと思います」」という記事が出て来ていた点、このまま「鉄道マンの奮闘」ストーリーとして美談的に終わってしまいかねないところでした。最前線の現場社員の奮闘に過ぎないのに!

物事を構造的に理解することができない手合いは、こういう美談仕立てに引っかかり、組織としての問題の本質を捉え損ね、責任回避の誤魔化しに騙されるものです。乏しい手段・権限しか与えられていないものの、やはり「目立つ」現場レベルの奮闘にばかりに目を奪われ、目立ちはしないものの手段・権限については現場よりは豊富に揃っている組織幹部レベルの判断や選択に目が行かなくなるのです。

美談仕立てにの風潮に対して私は、たいへんな違和感と危機感を感じていたところでしたが、しっかりと組織分析の観点に立って、危機管理の問題として設定しなおす機運が生まれたことはよかったと思う次第です。

もちろん、詳しく検討してみれば、現場レベル以上の判断も「やっぱり妥当だった」と言えるかもしれません。しっかり振り返った結果として、そういう結論に至るのであれば、それならそれでよいのですが、ここで言いたいのは、「現場の奮闘」だけを以って、それ以外の組織部門を含めた全体について短絡的に「妥当だった」と言ってのけるその思考回路は問題だということです。
ラベル:社会
posted by 管理者 at 22:48| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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