>> トランプ大統領「決断」の裏に日本ありなんとなく後出しの無理矢理な理屈である感は否めないものです。いわゆる「対北朝鮮制裁」が効いているかといえば、共和国国内で自力更生キャンペーンが張られている点において「まったく効果なし」ではないものの、それで共和国側が音を上げているわけではないので、これを「効いている」といってよいか私は疑問に思っているところです。
3/10(土) 18:17配信
Fuji News Network
9日、電撃的に発表された米朝首脳会談。トランプ大統領がこの決断に至る過程で、日本政府が主導的役割を果たしてきたことがわかってきた。
(中略)
今回の米朝首脳会談に至る過程で、日本が蚊帳の外に置かれていると懸念する声も出ているが、首相官邸を取材している、フジテレビ政治部の千田淳一記者はこれを否定する。
政治部 官邸担当・千田記者は「今回の米朝会談へという流れは、実は、日本政府のシナリオ通りでもある。日本が主導して、アメリカと韓国を動かして、圧力を強めてきたという経緯がある。日本政府は、1カ月以上前から、北朝鮮が折れてくると読んでいて、平昌(ピョンチャン)オリンピック後に、トランプ大統領と安倍首相が、事前に直接会談するということは、すでに決まっていた。トランプ大統領の方から、安倍首相に『グッドニュースがある』と伝えてきたのをみると、2人がこうしたシナリオを共有していたとみることもできる。日本としては、今後もアメリカに積極的に働きかけて、拉致問題の進展にも結びつけることを狙っている」と話した。
実際、安倍首相は、これまで「圧力を最大限まで高め、北朝鮮の側から『政策を変えるから対話をしてほしい』と言ってくるような状況を作っていかなくてはならない」と話していて、まさにその通りになったとも言える。
(以下略) <<
しかし、そういった事実認識は別にして、なかなか思い通りの展開にならず行き詰まり感のあった日本にとって、ようやく自己正当化し得るストーリーを設定できたことはよかったと思います。圧力一辺倒の余り、もはや「頑迷」なる域に達していた日本ですが、ようやく持っていく先に困っていた「振り上げた拳」を下ろすことができ、国家としてのメンツがある程度保たれた状態で対話局面に入り得るストーリーが得られたわけです。
ここまでの経緯を振り返ってみましょう。共和国は、昨年11月のミサイル実験の成功を受けて核武力完成を宣言し、今年1月の「新年の辞」で対話を呼びかけたところです。共和国側は既に「やりたいことはやりきった」というストーリーを持っており、その流れの上に次なる対話を位置づけているわけです。
他方、圧力に偏っていた日本を含む西側諸国としては、共和国の「やりたいことはやりきった」というストーリーの上に位置付けられる対話の呼びかけにそのまま乗っかるわけには行かないところです。これでは完全に共和国側のペース。この流れで対話に応じることは、それはすなわち自分たちが掲げてきた外交戦略の敗北を自ら認めるようなものです。メンツ丸つぶれ。外交交渉ではなく「降伏の調印」に出向くようなものです。
西側諸国の対共和国政策が、対話する以外に選択肢がないことは明白であるにも関わらず、長期間にわたって行き詰まり状態のままだったのは、結局のところ、自分たちのメンツをある程度保った状態で対話に入る目途が立たなかったことに起因するものと思われます。自らのストーリーを持っていた共和国が早々から自信満々に対話を呼びかけていたこととは対照的です。
前述のとおり、いわゆる「対北朝鮮制裁」は、共和国側があの手この手の対策を講じている点において、「白旗を上げるほどには効いていない」ものです。しかし、制裁がなければわざわざ講じるはずのない「あの手この手の対策」が実践されている点において、「まったく効いていないわけではない」ところです。私は、前者の事実を重視するので、「共和国側が代替策を講じることによって自国の目標を達成しているのであれば、制裁は効果を上げているとは言えない」と現状を認識する立場ですが、後者の事実に重点を置くならば、「北朝鮮の側から『政策を変えるから対話をしてほしい』と言ってくるような状況」と現状を認識する立場もアリかもしれません。日本政府は、後者の事実に重点を置いているのでしょう。
とにもかくにも、これでようやく共和国、米国、日本、韓「国」の各国それぞれが国家としてのメンツがある程度保たれた状態で対話局面に入り得るストーリーを得ることができました。共和国にあっては「経済制裁をものともせずに核武力を完成させたから西側諸国が対話に応じてきた」と言い張ることでき、西側諸国にあっては「核・ミサイル開発に対する経済制裁が効いてきたから北朝鮮が対話に応じてきた」と言い張ることできます。核・ミサイル開発と経済制裁がセット的であったがゆえに、「ニワトリが先か卵が先か」的な構図だったのが幸いでした。
中露、とくに中国に割と「蚊帳の外」感が漂っているのが気になる(朝米接近でヘソを曲げなきゃいいけど・・・)ところですが、関係各国においては対話を突っぱねる動機はこれで一旦はなくなったわけです。真っ赤な大嘘ならば話は別ですが、対話が実現するのであれば、この程度のコジツケなど取るに足らない問題です。ここらへんで手を打っておきましょう。
ようやく、朝米首脳会談という3代にわたる大事業が実現しようとしています。遺訓が貫徹されるときです・・・!