2018年05月17日

筋を通し公開的に言質を取った共和国

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00000005-jij-kr
北朝鮮、南北閣僚級会談を中止=「米朝」へ揺さぶり―合同訓練に反発、急きょ通告
5/16(水) 4:50配信
時事通信

 【ソウル時事】北朝鮮国営の朝鮮中央通信は16日、米韓空軍が開始した航空戦闘訓練「マックス・サンダー」を「軍事的挑発」だと強く非難、16日に予定していた韓国との閣僚級会談を中止せざるを得なくなったと伝えた。

 また米国に対して「朝米首脳対面(会談)の運命について熟考しなければならない」と警告。金桂冠第1外務次官も談話を発表し、米が一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、「朝米首脳会談に応じるかどうか再考せざるを得ない」と表明し、6月12日の米朝首脳会談の取りやめを示唆し、揺さぶりを掛けた。


(以下略)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00000052-jij-kr
米朝首脳会談「再考」も=核放棄だけ強要に警告―北朝鮮高官
5/16(水) 12:05配信
時事通信

 【ソウル時事】16日の朝鮮中央通信によると、北朝鮮の金桂冠第1外務次官は談話を発表し、「トランプ米政権が一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、われわれはそのような対話にもはや興味を持たないだろう」と警告、「朝米首脳会談に応じるかどうか再考せざるを得ない」と表明した。
 
 一方で金氏は、「朝米関係改善のため誠意をもって朝米首脳会談に臨む場合、相応な対応を受けることになる」とも語った。6月12日に開催される米朝首脳会談を前に、トランプ政権から譲歩を引き出すための交渉戦術の一環とみられる。

 北朝鮮で長年対米外交を統括している金氏は、「われわれは、朝鮮半島の非核化の用意を表明し、そのためには米国の敵視政策と核脅威による恐喝を終わらせることが先決条件になると数度にわたって明言した」と強調。しかし、「米国はわが国の寛容な措置を弱気の表れと誤解し、彼らの制裁と圧迫攻勢の結果だと主張している」と批判した。

 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)らが核放棄を先行させる「リビア方式」や「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の実現を主張していることについて、金氏は「対話を通じて問題を解決するのでなく、大国に国を委ねて崩壊したリビアやイラクの運命をわが国に強要しようとしている」と反発した。

 また、「米国はわれわれが核を放棄すれば、経済的補償や恩恵を与えると騒いでいるが、われわれは米国に期待して経済建設を進めたことは一度としてなく、今後もそのような取引を決してしないだろう」と語った。
共和国にとっては体制維持が至上命題である以上は、いったん「丸腰」になることを要求する「リビア方式」は受け入れることはできないものです。また、先の朝鮮労働党中央委員会全員会議でも改めて提唱されたとおり、自力更生・自給自足を掲げている共和国においては、「米国に期待して経済建設を進めたことは一度としてな」いわけです(関連して、最近、朝鮮中央通信をチェックしていると、反帝国主義・非同盟主義の意義が再度強調されつつある点も情勢を示していると言えるでしょう)。

その点において、キム・ゲグァン同志の談話は、共和国が以前から述べていることを繰り返しているものであると位置づけることが出来、そしてこのことはすなわち、朝米首脳会談を巡っては依然として調整中であることを示していると言えるでしょう。

関係諸国の反応をザッと見ておきましょう。まず、アメリカ。興味深い反応を示しています。一部論者が主張するような「軍事行動を正当化するためのアリバイ作り」などではなく、対話を求めていると見て取れます。そしてその結果、重要な言質を取ることに成功しています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180517-00000001-cnippou-kr
ホワイトハウス「非核化、リビア式ではなくトランプ式でいく」
5/17(木) 6:51配信
中央日報日本語版

非核化の道に順調に入るかのようだった北朝鮮が16日、米国にリビア式の一方的核廃棄の強要は受け入れられないと反発し、韓国には韓米合同軍事演習を問題にした。ホワイトハウスはこれについて「リビア式モデルは使っていない」というメッセージを北朝鮮に出した。


(中略)

これに対してサラ・ハッカビー・サンダース報道官は16日(現地時間)、「リビアモデルは我々が採用中のモデルではない」としながら「(私たちが進めているのは)トランプモデルだ」と述べた。ボルトン補佐官が既に言及した非核化方式を異なるものになる可能性があることを示唆した発言だとみられる。ボルトン補佐官はこれに先立ち、FOX(フォックス)ニュースに出演して「米朝首脳会談の成功は依然として希望的」としながら「大変な交渉になるだろうと考えて準備してきた」と述べた。また「もし会談が開催されないなら、我々は最大の圧迫戦略を継続していく」と付け加えた。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は17日午前7時、国家安全保障会議(NSC)常任委会議を開く。
まず、「リビア方式」について「リビアモデルは我々が採用中のモデルではない」という発言を引き出しました。また、「もし会談が開催されないなら、我々は最大の圧迫戦略を継続していく」というくだりは、見方を変えれば、「6月の会談がまとまらなくても、ただちに軍事行動には移らない」と言い得ることが出来ます。日本の言論空間では、もう1年以上も「斬首作戦決行前夜」の騒ぎですが、まだそういった状況ではないと言えるでしょう。公開の場で言質を取った形です。

韓「国」も、たまには「役に立つ」動きを見せました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180517-00000053-reut-kr
韓国、米朝首脳会談巡り「仲介役」果たす用意=当局者
5/17(木) 13:29配信
ロイター

[ソウル 17日 ロイター] - 韓国大統領府の当局者は17日、6月に予定される米朝首脳会談を前に両国の間で「ある種の立場の相違」が生じているようだとし、韓国として仲介役を果たす考えであることを明らかにした。

(以下略)

さらに、下記のような記事が出てくる点、今回の談話は外交的に成功の部類に入るのかもしれません
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180517-36933838-bloom_st-bus_all
ボルトン氏が米朝首脳会談開催を危うくする恐れ−発言に北朝鮮反発
5/17(木) 15:02配信
Bloomberg

北朝鮮の非核化では「リビア方式」を採用すべきだとするボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の発言が北朝鮮の反発を招き、それも一因となって同国は来月の米朝首脳会談を中止する可能性を示唆した。

非核化を段階的ではなく一気に進める方式を受け入れたリビアのカダフィ大佐の独裁政権はその後崩壊し、大佐は米国が支援する反カダフィ勢力によって殺害された。

北朝鮮はこうした歴史を熟知しており、金桂冠第1外務次官は16日、北朝鮮はボルトン氏に「嫌悪」を感じているとし、「世界は北朝鮮が、悲惨な運命をたどったリビアでもイラクでもないことを十分過ぎるほど分かっている」と述べた。国営朝鮮中央通信(KCNA)が同次官の談話を伝えた。

ホワイトハウスは16日、ボルトン氏の発言とは距離を置いたものの、専門家は米朝首脳会談が数週間後に迫る中で、ボルトン氏がなぜこのような無神経な比較をしたのか疑問を抱いている。

核廃絶に取り組むプラウシェアーズ財団のジョー・シリンシオーネ代表はボルトン氏のコメントについて、「これは全く的外れだ。対北朝鮮外交は非常に順調だが、ボルトン氏が歯車を狂わせた」と指摘した。


(以下略)

史上初の朝米首脳会談予定日まであと1か月弱。まだまだ、朝米両国の根本的国益に照らしながら、事前の「取引」の行方を慎重に見守るべき段階です。
posted by 管理者 at 21:08| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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