正恩氏、核完全放棄提案に難色=16年以降の制裁解除要求−米紙https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190303-00000006-cnippou-kr
3/3(日) 14:19配信
時事通信
【ニューヨーク時事】ハノイで行われた米朝首脳会談の初日に、トランプ大統領が核開発の完全放棄を提案、金正恩朝鮮労働党委員長はこれに難色を示した上で、2016年3月以降に国連安保理が発動した一連の制裁解除を求めていた。
(中略)
これに対し、正恩氏は核完全放棄に直ちに踏み切れるほど、米朝の信頼関係は十分ではないと反論。16年以降、5回にわたり実施された国連制裁の解除を求めるとともに、見返りに寧辺の核施設廃棄を行う意向を示した。
最終更新:3/3(日) 21:28
時事通信
AP通信「今回は北朝鮮の主張が合っている…トランプ大統領が誇張解釈」
3/3(日) 12:03配信
中央日報日本語版
米国と北朝鮮が2回目の米朝首脳会談決裂をめぐり真実ゲームを行っていることに対し「今回は北朝鮮の主張が合っているようだ」という外信報道が出てきた。
(中略)
これに対しAP通信は「だれが真実を話しているのか」という問いとともに、米国政府関係者の話として「今回の場合は北朝鮮の話が合っているようだ」とした。
AP通信は「米国政府関係者も北朝鮮が要求したのは2016年3月以降に国連安保理が科した制裁解除を要求したと認めた(acknowledged)。これは10年またはそれ以上過去のすべての制裁を含むのではない」と明らかにした。
その上で、トランプ大統領が北朝鮮の要求を誇張して解釈したと指摘した。
(中略)
この当局者(注:アメリカ政府高位当局者)は「実務協議過程で米国が北朝鮮側に『民需経済と人民生活に支障を与える項目』に対する具体的な定義を要求したところ、基本的に武器を除いたすべての制裁を合わせたものということだった」と説明した。
その上で「私は彼ら(北朝鮮)が言葉遊びをしていると考える。彼らが要求したのは基本的にすべての制裁の解除だ」と付け加えた。
しかしAP通信は同当局者の解釈に対し、「北朝鮮は軍需関連制裁の解除を要求しなかった。北朝鮮は核兵器を自己防衛の手段だと主張するが、最小限核ミサイルと直接関連する制裁を受け入れるという立場」と分析した。
続けて「北朝鮮は軍需以外の制裁は邪悪だと考え交渉の対象として出したもので、北朝鮮が要求した制裁解除内容は確かに強力なものではあるが、トランプ大統領の主張のようにすべての制裁を解除しろと要求したのではない」と指摘した。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190301-00000093-mai-int
北朝鮮「一部制裁解除、米へ要求」 トランプ氏に反論、認識の違い浮き彫りに■経済封鎖解除要求が「一部」だったのか「全部」だったのかは会談評価の重要ポイント
3/1(金) 22:13配信
毎日新聞
【ハノイ渋江千春、高本耕太】北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は1日未明、ハノイで記者会見し、2回目の米朝首脳会談で示した米側への要求は「全面的な制裁解除ではなく一部解除だ」と主張した。「制裁の完全解除を求められた」というトランプ米大統領に反論した形だ。これを受けて米側は、北朝鮮側が大量破壊兵器開発に関連するもの以外の「すべての国連安保理の制裁解除」を要求したなど、より具体的な説明でトランプ氏の主張を補完。双方の認識の違いが改めて浮き彫りになった。
韓国の聯合ニュースなどによると、李外相は「(首脳会談での交渉で)国連制裁の一部、民需経済や人民生活に支障をきたす項目の制裁を解除すれば、寧辺(ニョンビョン)のプルトニウムとウランを含む全ての核物質生産施設を米国の専門家らの立ち会いの下で完全に廃棄すると提案した」と述べた。具体的には国連安保理の制裁11件のうち2016〜17年に採択された5件を挙げた。
(中略)
一方、米国務省高官はポンペオ長官の訪問先マニラで1日、北朝鮮側が会談で「寧辺核施設の一部閉鎖」と引き換えに「大量破壊兵器計画に関わる技術や機材を対象にしたものを除いた、16年3月以降に実施されたすべての(国連)制裁の解除」を要求したと述べた。また寧辺の「一部」が何を指すのか明確な説明はなかったとし、「(要求を受け入れた場合に)北朝鮮の兵器開発を巨額の資金で支援することになってしまう」と拒否の理由を語った。
これに先立ちトランプ氏は2月28日、首脳会談後にハノイでFOXニュースのインタビューに応じ、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は「ある一定分野の非核化」を提示したが、「私はすべての非核化を要求した」と述べ、北朝鮮側が寧辺核施設に限定した措置を提示したのに対し、米国は完全非核化を求めたと明らかにした。
トランプ氏は「意味のある進展がない限り制裁を解除したくなかった」と強調。完全非核化について「彼らは準備ができていなかったが、それはよく理解できる。(核)開発のために多くの時間をかけてきたのだから」とも語った。また「会談結果は満足できる内容ではなかった。彼(金委員長)も満足していないのではないか」とした上で、合意見送りの決定は「双方の判断だった」と主張した。
(以下略)
共和国の経済封鎖(制裁)解除要求が「一部」だったのか「全部」だったのか――共和国のリ・ヨンホ外相らの「深夜の緊急会見」というインパクトからか日本メディアも速報的には報じたものの、その真意を捉え損ねたのか、その後はあまり深堀する気配が見られません。ようやく幾つかの記事が、米紙報道を引用する形で続報しているくらいです。
しかし、経済封鎖解除要求が「一部」だったのか「全部」だったのかは、今回の首脳会談が新たな合意には至らなかった結末を評価するにあたって重要なポイントになります。共和国側の経済封鎖解除要求が一部に留まるものであった場合、昨年6月の第1次首脳会談ドタキャン騒動の時点で出て来、当ブログでも何回か引用してきた下記指摘が描くストーリーに話が移るからです。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10227_2.php
金桂冠は正しい、トランプは金正恩の術中にはまった段階的で同期的措置こそが国際的な基準に沿った手法――その点から考えれば、共和国の「段階的に核放棄するから、経済封鎖を民需経済に影響が及ぶ部分から段階的に解除してほしい」というのは、二国間の外交交渉としてはごく普通の要求と言えるでしょう。とくに朝米両国のように60年以上も敵対関係が続いてきた国同士が、たかだかこの1年やこそらの関係改善程度で核の完全放棄に出られるはずがありません。上掲時事通信記事中にある「正恩氏は核完全放棄に直ちに踏み切れるほど、米朝の信頼関係は十分ではないと反論」という一文は理解可能なご指摘です。事実として、アメリカはかなり信用ならない国です。共和国の要求は、それほど過大なものであるとは言えないでしょう。
2018年5月23日(水)17時23分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
(中略)
トランプは金正恩が絶対に受け入れない要求をすることで、この術中にはまった。首脳会談が中止か物別れに終われば、金正恩は、自分は誠実な呼び掛けをし、国際的な基準に沿った手法(段階的で同期的措置)を提案したのに、トランプがむちゃを要求したと主張するだろう。そして韓国とは別途、平和を探ろうとするだろう。それは韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって、むげに断りにくい提案になるかもしれない。
(以下略)
そのように考えると、今回の首脳会談が新たな合意には至らなかった結末は、アメリカ側が「過大な要求を吹っかけてきた」と評価することができます。トランプ大統領がしきりに「経済援助」を口にし、共和国を釣り上げようとする様が露骨だった点を踏まえれば、札束で頬を引っ叩こうとしたとさえ言い得るものでした。
それに対して共和国は、3月1日づけ記事でも述べたように、安易な譲歩を行わず、同時に建設的な議論を続ける姿勢を鮮明にしました。共和国はそう易々とは釣られなかったわけです。
■依然として"Deal"
日本言論空間は、第1次首脳会談の時もそうでしたが、「北朝鮮がアメリカに頼み込んでいる」というストーリーで朝米交渉を理解していますが、上掲毎日新聞記事でトランプ大統領が合意見送りの決定について「双方の判断だった」としているように、彼は依然として朝米交渉を"Deal"として捉えていることを推察できます。
いま日本言論空間で跋扈している「核放棄を求めるアメリカは、制裁解除を求める北の要求を突っぱねた」というストーリーは、見方を変えると、「経済封鎖(制裁)解除を求める共和国は、核放棄を求めるアメリカの要求を呑まなかった」であるとも言えます。なぜならば、これは「お代官様への請願」ではなく「対等な2国間交渉」だからです。事実、アメリカは共和国の非核化推進に今回は失敗し、かつ、経済面での封鎖強化に踏み出したわけではなく軍事面では米「韓」合同軍事演習の規模が縮小されたままになっています。
交渉の片方の当事者であるトランプ大統領自身が"Deal"として理解し言明し、その筋で行動しているのだから、日本言論空間も朝米交渉を"Deal"として捉えることをお勧めします。