■唯一無二の権力を掌握された最高領導者同志
共和国は「党の指導性」が憲法で定められているので、その政治力学分析においては、朝鮮労働党内での職務・地位・役割の動向分析が何よりも重要です。下記記事は、10日の中央委員会第7期第4回全員会議から推察され得るキム・ジョンウン同志の地位について報じています。
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190411001800882
金正恩氏の地位強化か 一人で党中央委総会の壇上にhttps://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190412-00000022-cnippou-kr
記事一覧 2019.04.11 14:19
【ソウル聯合ニュース】韓国統一部の当局者は11日、北朝鮮が前日の10日に朝鮮労働党の中央委員会総会を招集したことと関連し、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)の地位が昨年よりも強化されたとの見方を記者団に示した。昨年の党中央委総会ではひな壇に金委員長を含む常務委員が座っていたが、今年は金委員長だけが壇上にいたことをその理由に挙げた。
(以下略)
4人が座った主席壇に金正恩委員長だけ…「絶対権力を象徴」「共和国においてこそクレムリノロジ―的分析が有効だ」という持論の私としては、主席壇にキム・ジョンウン同志ただ一人が登壇されたことを根拠にキム・ジョンウン同志が唯一無二の権力を掌握なさったとする分析に100%賛同します(共産圏諸国はこういう所に重大な意味を付与するものです)。キム・ジョンイル同志の急逝によって急遽発足した現体制。今回の第7期第4回全員会議を以ってキム・ジョンウン同志の唯一無二の権力確立を内外に宣言したと言えるでしょう。
4/12(金) 13:58配信
中央日報日本語版
(中略)
北朝鮮メディアによると、この日の会議では自力更生問題、国家指導機関構成案、組織問題などを議論して決定した。特に今回は過去の会議とは違い、金正恩委員長(党委員長)が会議場の舞台の主席壇に一人で座って会議を進めた。韓国統一部の当局者は「昨年開かれた全員会議では金委員長が常任委員3人と並んで主席壇に座っていた」とし「今回一人で座ったのは、金委員長の絶対的権力を象徴しながら強化された地位を表している」と分析した。
(以下略)
■全朝鮮人民の総意という形で国務委員長に推戴された最高領導者同志
そして11日、最高人民会議第14期第1回会議が招集されました。党の唯一無二の権力者としての地位を内外に宣言した以上、政府機関においても何らかの地位が与えられるはずですが、まさにそのとおりの展開になっています。キム・ジョンウン同志におかれては、全朝鮮人民の総意を代表する形を以って共和国国務委員会委員長に推戴されました。
http://www.kcna.co.jp/calendar/2019/04/04-12/2019-0412-002.html
김정은동지를 조선국무위원회 위원장으로 추대3月23日づけ「最高人民会議第14期代議員選挙結果を読む」でも参考記事を引用する形で触れましたが、国務委員長の資格は最高人民会議代議員に限定されてはいません。今回キム・ジョンウン同志は、特定の選挙区で当選し最高人民会議で国務委員長に指名される形ではなく、各選挙区から選出された代議員たちに推戴される形で国務委員長を奉職されました。上掲過去ログでも引き合いにだした、キム・ジョンイル同志が党総書記に推戴されたのと似た展開(自らも委員として参加している党中央委員会の全員会議において指名されて就任するのではなく、全国の党細胞が個別に開いた代表会での推戴決議を引き受ける形で就任)です。
キム・ジョンウン同志を朝鮮国務委員会委員長に推戴
(평양 4월 12일발 조선중앙통신)최고인민회의 제14기 제1차회의에서는 경애하는 최고령도자 김정은동지를 조선민주주의인민공화국 국무위원회 위원장으로 높이 추대하였다.
(ピョンヤン4月12日発 朝鮮中央通信)最高人民会議第14期第1回会議において、敬愛なる最高領導者、キム・ジョンウン同志を朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長に高く推戴した。
최고인민회의에서는 전체 조선인민의 총의를 대표하여 탁월한 사상리론적예지와 로숙하고 세련된 령도로 온 사회의 김일성-김정일주의화의 새 력사를 펼치시고 인민대중제일주의, 우리 국가제일주의로 사회주의조선의 정치사상적힘과 무진막강한 국력을 최상의 경지에서 떨쳐가시는 김정은동지께서 조선민주주의인민공화국 국무위원회 위원장으로 높이 추대되시였음을 내외에 엄숙히 선언하였다.
最高人民会議では、全朝鮮人民の総意を代表して、卓越した思想理論的英知と老熟し洗練された領導で全社会のキム・イルソン−キム・ジョンイル主義化の新しい歴史を展開され、人民大衆第一主義・我が国家第一主義で社会主義朝鮮の政治思想的な力と無尽強大な国力を最高の境地に発揚させたキム・ジョンウン同志におかれては、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長に高く推戴されたことを内外に厳粛に宣言した。
경애하는 최고령도자동지를 조선민주주의인민공화국 국무위원회 위원장으로 높이 추대한것은 우리 조국을 영원한 김일성, 김정일동지의 국가로 더욱 공고발전시키고 주체혁명위업을 대를 이어 끝까지 완성해나가는데서 중대한 력사적의의를 가지는 대정치사변이며 태양조선의 무궁한 미래와 민족만대의 번영을 담보하는 혁명적대경사이다.
敬愛なる最高領導者同志を朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長に高く推戴したことは、私が祖国を永遠にキム・イルソン同志、キム・ジョンイル同志の国としてさらに強固に発展させ、チュチェ革命偉業を代を継いで最後まで完成していく上で重大な歴史的意義を持つ大きな政治的出来事であり、太陽朝鮮の限りない未来と民族万代の繁栄を担保する革命的大慶事である。
경애하는 최고령도자동지를 공화국의 최고수위에 변함없이 높이 모신것은 비범한 정치실력과 거창한 혁명실천으로 조선로동당과 우리 국가를 곧바른 승리의 한길로 이끄시여 후손만대의 찬란한 미래를 펼쳐주신 최고령도자동지에 대한 전체 당원들과 인민들, 인민군장병들의 열화와 같은 흠모와 신뢰심의 발현이다.(끝)
敬愛なる最高領導者同志を共和国の最高首位に変わることなく高く奉ることは、非凡な政治的実力と大いなる革命実践で、朝鮮労働党と我が国をまっすぐな勝利の一本筋に導き、子孫万代の輝かしい未来を広げてくださった最高領導者同志に対するすべての党員と人民、人民軍将兵の烈火のような敬慕と信頼の心の発現である。(終)
3月13日づけ『ハンギョレ』紙は、キム・ジョンウン同志が最高人民会議代議員選挙に立候補なさらなかったことについて、「金委員長を特定の選挙区ではなく、“全人民の代議員”に推戴し、象徴的な地位を与える可能性」と指摘しましたが、「当たらずとも遠からず」の結果になったと言えるでしょう。各選挙区選出の最高人民会議代議員たちに推戴されることで「全人民の代議員」になり、そこから国務委員長に選出されるのではなく、各選挙区選出の最高人民会議代議員たちに推戴されることで、ストレートに「全人民の国務委員長」になられたわけです。
■「大統領」にはなられなかったが権力構図には変化が表れている模様
ところで、キム・ジョンウン同志が最高人民会議代議員選挙に立候補なさらなかったことを以って「彼は大統領になる」という推測が一部に広がりました。3月23日づけ記事で私は、「キム・ジョンウン同志を対外代表権を持つ地位につける必要がある点において何らかの組織改正が予定されていると思われるものの、それが最高人民会議代議員選挙に立候補しなかった理由にはならないだろう」と懐疑的に評したところですが、やはり「大統領就任論」は当たりませんでした。
ただ、職名こそ変わっていないものの、権力構図には変化が表れているという分析が出てきています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190413-00033233-hankyoreh-kr
金正恩委員長「対外的国家首班」兼任か…側近の中庸で大幅な世代交代https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190412-00000019-reut-kr
4/13(土) 12:58配信
ハンギョレ新聞
(中略)
10日から続いた労働党会議や最高人民会議を通じて明らかになった「第2期金正恩政権」をけん引する主要ポストの人選結果は、唯一無二の最高指導者として金正恩委員長の地位の強化▽金委員長の側近の躍進に伴う大々的な世代交代▽国務委員会の強化と機能の拡大▽「安保外交」から「外交安保」へと対外関係の重点が移動した兆候などで要約できる。
(中略)
新任の崔竜海常任委員長が、組織体系上の国務委員長の下の国務委員長第1副委員長を兼職したことや、会議第3議案が「憲法の修正・補足」であることから、北朝鮮の対外的な国家首班が既存の最高人民会議常任委員長から国務委員長に調整されたものと見られる。政府当局者は「憲法改正の内容が公開されるまで、まだ確認はできないが、その可能性が非常に高い」と述べた。元高官や統一研究院のホン・ミン北朝鮮研究室長らは「金委員長が国家首班になったと思われる」と指摘した。
権力序列上、“ナンバー2”になった崔竜海常任委員長は、これまで務めてきた労働党組織指導部長から退いたものと見られる。キム・インテ国家安保戦略研究院責任研究委員は「崔竜海が常設職(最高人民会議常任委員長と国務委員会第1副委員長)を新たに任され、また他の常設職の労働党(組織指導)部長との兼職はほとんど不可能だ」と説明した。北朝鮮政治の専門研究者のキム・グァンウン国史編纂委員会編史研究官は「崔竜海が実質的というよりは象徴的な地位を維持する可能性がある」と見通した。
(中略)
電撃的に抜擢されたキム・ジェリョン新首相は「宣誓」で、「無能力な事業態度や慢性的な形式主義、保身主義、消防隊式(一時しのぎ)の業務態度と断固として決別し、敵らの制裁封鎖を自強力の増大の機会にしていく」と誓った。80歳で高齢であるパク・ボンジュ前首相は、党副委員長と国務委員会副委員長として、「経済総括司令塔」を務める可能性があると、国家安保戦略研究院が分析した。
北朝鮮が人事刷新、最高人民会議常任委員長に崔竜海氏=KCNAキム・ジョンウン同志が党内で唯一無二の権力者になられたこと、そしてそれに伴い政府機関でも国務委員長に再選されたことはこの数日間の展開で間違いのないことと言い切ってよいと考えられます(それで話題の9割方は尽きるのですが・・・)が、キム・ジョンウン同志の職名については、意味深にも「憲法改正」に関する報道がなされていない点、もうしばらく様子見が必要そうです。
4/12(金) 7:45配信
ロイター
[ソウル 12日 ロイター] - 北朝鮮が最高人民会議(国会に相当)常任委員長と首相を交代し、指導部を刷新した。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が12日に伝えた。外交や経済再建で重要な役割を果たしてきた幹部2人を入れ替える。国務委員長には予想通り金正恩委員長が再任された。
今回初めて国営メディアは金氏を「supreme representative of all the Korean people」と言及。AP通信によると、この肩書きは2月に特別法令で承認された。ただこれまで公に使われたことはなかった。
(以下略)
■チャガン道党委員長が首相に抜擢された意味
キム・ジョンウン同志の地位や職名以外について見てみましょう。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190412-00000024-yonh-kr
金正恩氏が再び国務委員長に 首相は金在龍氏に交代=北朝鮮https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190412-00000029-cnippou-kr
4/12(金) 7:26配信
聯合ニュース
【ソウル聯合ニュース】北朝鮮の朝鮮中央放送は12日、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)が11日の最高人民会議(国会に相当)で国務委員長に再び推戴(当選)されたと報じた。また、慈江道党委員会の金在龍(キム・ジェリョン)委員長が首相に任命された。
10日に開かれた党中央委員会総会で、金在龍氏は党政治局委員になっていた。朴奉珠(パク・ボンジュ)首相が党副委員長に選出されたことから、首相交代の可能性が取りざたされていたが、金在龍氏が朴氏の後任に任命されたことが確認された。
最高人民会議常任委員会の委員長は、金永南(キム・ヨンナム)氏から崔竜海(チェ・リョンヘ)党副委員長に交代した。崔氏は国務委員会第1副委員長にも選ばれ、事実上の北朝鮮「ナンバー2」の座を固めることになった。
また、対米交渉担当の金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長、李容浩(リ・ヨンホ)外相、崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官がそれぞれ国務委員会の委員に選ばれた。崔善姫氏が国務委員に選ばれるのは初。
(以下略)
北朝鮮ナンバー2崔竜海氏が国家首班に…北、正恩氏以外すべて変更私は、チャガン(慈江)道党委員長だったキム・ジェリョン同志が、経済作戦の司令塔としての役割を期待されている首相に選出されたことに注目しました。チャガン道といえば、苦難の行軍の時代に名を馳せた「カンゲ(江界)精神」を何よりも先に思い出さざるを得ません。カンゲ市はチャガン道の道庁所在地です。
4/12(金) 15:06配信
中央日報日本語版
北朝鮮の権力ナンバー2に選ばれた崔竜海(チェ・ヨンヘ)労働党副委員長が11日、国務委員会1副委員長兼対外的国家首班となった。また、北朝鮮は金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を再推戴し、内閣総理には金才竜(キム・ジェリョン)元慈江道(チャガンド)党委員長、最高人民会議議長(国会議長格)に朴泰成(パク・テソン)氏を選出し、国務委員長を除く国家首班と行政府、立法府の首長を交代するなど大々的な人事を行った。北朝鮮官営の朝鮮中央通信は12日、前日に開かれた14期第1回最高人民会議(定期国会)について報じ、「11日に開かれた最高人民会議14期第1回会議で金正恩国務委員長が再び推戴された」とし、「最高人民会議常任委員長に崔竜海が、内閣総理には金才竜が選出された」と明らかにした。
(中略)
最高人民会議常任委員長になった崔竜海氏は金日成(キム・イルソン)主席と抗日武装闘争を共に行った崔賢(チェ・ヒョン)元人民武力部長の息子で、パルチザン一族の象徴とされる人物だ。1990年代後半に地方工場の労働者に降格される革命化過程を経もしたが、金正恩時代になり軍の最高職責の1つである総政治局長を歴任するなど権力の頂点に位置してきた。金才竜新任内閣総理については公開された情報は多くないが、彼が戦力消費が多い軍需工場の本山・慈江道で戦力確保に成果を上げたことで金委員長の目に留まったという話だ。したがって、国際社会の対朝制裁の中で自力更正を強調している北朝鮮が金才竜首相の手により経済再生に取り組もうとする布石ではないかという見解が多く見られる。
前日に行われた労働党全員会議で候補委員を経ずに党中央委委員に「直行」し注目された崔善姫(チェ・ソンヒ)外務省副相は最高人民会議で断行された国家機関人事でも浮上した。通信によると最高人民会議は崔善姫副相を国家主権の最高政策的指導機関(106条)の国務委員会委員の1人に選んだ。北朝鮮は11人の国務委員を構成したが、李洙ヨン(イ・スヨン)党副委員長(国際担当)、李容浩(イ・ヨンホ)外相などと肩を並べたのだ。北朝鮮首相を歴任した崔永林(チェ・ヨンニム)氏の娘である崔善姫氏は昨年シンガポールでの米朝首脳会談実務交渉代表を担うなど1990年代中盤から米朝交渉に関与してきた。ことし2月、ベトナム・ハノイでの第2回米朝首脳会談実務交渉代表は金赫哲(キム・ヒョクチョル)にしばらく明け渡したが、現場で金委員長と対策会議を行い、会談決裂の後には記者会見などで金委員長の「考え」を西側メディアに伝えるなど格別の信頼を受けてきた。
一方、労働党の核心的政策決定機構である政治局構成員の半数を交替した北朝鮮は軍と司法府を除く国家機関の首長を新たに選んだ。内閣に船舶工業部を新設し、5人の長官級要人も交代した。全賢俊(チョン・ヒョンジュン)韓半島平和フォーラム副理事長は「今回の人事の特徴は金永南(キム・ヨンナム)元最高人民会議常任委員長と病床についている崔泰福(チェ・テボク)最高人民会議議長など90歳以上の高齢の元老グループの後退」とし、「金正日総書記の死去後に突然権力を受け継いだ金委員長が執権2期をむかえ、世代交代を断行したもの」と分析した。
http://korea-np.co.jp/sinboj2002/3/0301/61.htm
「江界精神」で困難に打ち勝った慈江道自力更生が訴えられている昨今において、カンゲ精神発祥の地であるチャガン道党委員会出身のキム・ジェリョン同志が首相を奉職したことは、単にチャガン道が朝中国境に近く、また軍需産業が盛んでロケット発射基地が存在する地域であること以上の意味を感じざるを得ません。
日々好転する人々の暮らし
こんにち、朝鮮では「強盛大国建設の新たな飛躍を遂げよう」というスローガンのもと、各地の工場、企業所で新たな革新が毎日のように生み出されている。社会主義市場の崩壊、相次ぐ自然災害による経済難と食糧難が重なった1990年代の中頃からの「苦難の行軍」。前代未聞の試練の時期を乗り越え、不死鳥のごとくよみがえった朝鮮の底力の源流は慈江道の人々が発揮した「江界精神」から探すことができる。「苦難の行軍」から「楽園への行軍」に移った慈江道はどのように変わったのか。
「苦難の行軍」を乗り越え
「平壌市民の暮らしに勝るとも劣らないでしょう。私たちはもう『楽園への行軍』をしているんです」。慈江道の人々は最近、口を揃えて得意げにこのように話す。
面積の80%が山地である慈江道は農業生産高が低く、「苦難の行軍」の時期、国家が食糧を思うように配給できなくなったとき、他のどの地域よりも大きな被害を被った。非常用として備蓄していた食糧を数キロずつ分けて道内にあるすべての工場や企業所に配給したものの幾日も持たなかった。こうした状況下、慈江道では炭化した葦の根を「代用食品」とする一方、さまざまな草の根や木の皮の栄養成分を分析する研究機関まで発足させ、食糧問題解決に奔走していた。
そんななか、当時江界トラクター工場で技能工として働いていたリ・グァンピル氏(49)は食べるものを求め、妻と2人の子どもを残し農村に住む親せきを頼って平安北道へと向かった。親せきの家で10日ほど世話になったがそれ以上迷惑をかけることはできなかった。親せきにも家族がいた。苦労を分かち合う姿を見てリ氏は自身を恥じた。
慈江道では食糧難と経済難克服のため、大小様々な河川に中小型発電所の建設を積極的に展開した。リ氏も必要な資材をかき集めながら発電所建設に取り組んだ。その結果、「苦難の行軍」の時期、新設もしくは復旧、整備した中小型発電所は300を超え、道内の工場や企業所はもちろん、農場や住宅にも電気を供給することができるようになった。電力が解決すると、味噌をはじめとする基礎食品や生活用品が徐々に生産されるようになった。
「まさか自分たちにこんな力があるとは思いませんでした。社会主義とは結局、団結力なんです」とリ氏。「『苦難の行軍』も、今では昔の話ですよ」と微笑んだ。
(以下略)
キム・ジェリョン同志と交代したパク・ボンジュ同志は、党副委員長・国務委員会副委員長を奉職しました。パク・ボンジュ同志は長く経済畑でキャリアを積み、慎重ながらも着実に経済改革を実施してきた要人です。依然として経済政策は内閣中心で行って行くつもりなのでしょうが、党要職にパク・ボンジュ同志を据えることによって内閣と党の連携を図るつもりなのかもしれません。
■対米交渉担当者の人事を見るに外交の基本路線に違いはないと見るべき
対米交渉担当者についても考えておきたいと思います。党副委員長のキム・ヨンチョル同志、外務省のリ・ヨンホ同志、チェ・ソンヒ(ソニ)同志がそれぞれ国務委員会の委員に選ばれました。2月の朝米首脳会談が合意に至らなかったことについて最近、担当者たちに問責があったという報道が出てきていますが、仮に多少のコトがあったとしても、こうして主要の面々が国務委員に選出された以上は、基本路線に違いはないと見るべきでしょう(だいたい、遊びで外交をやっているわけではないのだから、合意に至らなかった=任務を達成できなかったのであれば、職務上の責任追及はあって当然でしょう)。
■総括
いわゆる「サプライズ」はなかったものの、キム・ジョンウン同志が唯一無二の権力を掌握されたことを内外に宣言する写真の配信、チャガン道党委員長を首相に抜擢した人事、対米交渉担当者の人事は、いずれもキム・ジョンウン同志と朝鮮労働党・共和国政府の布陣と確固たる意志を感じるものと言えます。