2019.05.10 (15:45) │ 共和国 │共和国が去る4日と9日に、ロシア軍も現役として装備している9K720"Искандер"(イスカンデル)に「酷似している」といわれる武器を火力打撃訓練の一環として発射しました。朝露首脳会談の直後に「イスカンデルに酷似したミサイル」が発射された点、ロシアの影を意識せざるを得ませんが、それもあってか日米「韓」の国と地域が、いささか困惑気味に反応を示しているところです。
火力打撃訓練への非難に反ばく/朝鮮が立場を表明
金正恩委員長の指導の下、4日、朝鮮東海海上で朝鮮人民軍の火力打撃訓練が行われた。これは、最前線・東部前線防衛部隊の大口径長距離放射砲、戦術誘導兵器の運用能力と火力任務遂行の正確性、武装装備の戦闘的性能を判定・点検し、定期的な戦闘動員準備を備える目的で行われたもの。一部の外部勢力がこの訓練を非難したことと関連し、朝鮮外務省と北南将官級軍事会談の北側代表団の代弁人が8日、それぞれ朝鮮中央通信社の記者の質問に答えた。
「正常的で自衛的な軍事訓練」/朝鮮外務省代弁人
朝鮮外務省の代弁人は「今回われわれの軍隊が行った訓練は、誰かを狙ったものではない通常の軍事訓練の一環として、地域情勢を激化させたこともない」と強調。どの国でも国の防衛のための軍事訓練を行っており、これは極めて正常的なことであり、一部の国が他の主権国家を狙って行う戦争演習とは明白に区別されると述べた。
代弁人は、これまで朝鮮が朝鮮半島の平和と安定のために戦略的決断を必要とする措置を積極的に取ったことや、それに対する相応の対応措置が取られず6.12朝米共同声明の履行が膠着状態に陥ったことを指摘。「われわれが最大限の忍耐を発揮していることについては沈黙を守っていた国が、われわれが最近行った正常的で自衛的な軍事訓練に対しては棘のある声を上げている」と非難した。
一方、3月と4月にも南朝鮮で米南合同軍事演習「同盟19-1」と連合空中訓練が行われ、現在も朝鮮を狙った戦争演習計画が絶えず作成されていることに言及。これらの挑発的な軍事訓練と戦争演習については一言半句も発しない一方、朝鮮の軍事訓練のみを挑発だと主張する行為は、朝鮮の武装解除を圧迫し、最終的に侵略しようと詰め寄る企図であると強調した。
(中略)
代弁人は、南朝鮮軍部が米国とともに挑発的な連合空中訓練を行い、THAAD展開訓練を実施したことや、米国が朝鮮を脅かすICBM「ミニットマン」を発射したことに言及。これらの事柄は問題視せず、朝鮮に対してのみ「北と南が約束した軍事的合意の趣旨に反する」などと批判する南朝鮮軍部に対し、「われわれに対し、とくに北南軍事分野の合意について一言半句する体面はない」と反論した。
(以下略)
このことについて8日、共和国側から声明が発表され、10日づけ『朝鮮新報』記事が詳細に報じています。今回は4日と9日の2回に分けて敢行された共和国の軍事的アクションについて取りまとめてみたいと思います。
■火力打撃訓練に至るまでの経緯――THAAD展開訓練と航空演習を先に仕掛けてきた米「韓」両軍
まず、4日と9日の火力打撃訓練に至るまでの経緯を振り返ってみることが必要だと思います。経緯を踏まえることによってのみ事の筋を理解することが出来るでしょう。
4月20日。在「韓」米軍はTHAAD展開訓練を実施しました。あくまでも「訓練である」と主張しています。
https://japanese.joins.com/article/692/252692.html
在韓米軍、平沢基地で「THAAD」模擬弾装着訓練続いて22日からは、F15KやKF16、F16など数十機が参加する北侵演習が開始されました。米「韓」合同の航空演習「マックスサンダー」こそ中止したものの、それと比べれば些か小規模ながらも相変わらず北侵演習を展開している米「韓」両軍であります。
2019年04月24日11時06分
在韓米軍が先週、平沢(ピョンテク)の米軍基地(キャンプ・ハンフリーズ)で「非活性化弾(模擬弾、inert)」を訓練用THAAD(高高度防衛ミサイル)発射台に装着する訓練をしたと24日、明らかにした。
一週間の日程で実施された今回の訓練には第35防空砲旅団所属の将兵が参加した。米軍は非活性化弾を訓練用THAAD発射台に装着する訓練の写真を20日、第35防空砲旅団のフェイスブックに掲示した。米軍は昨年末にも慶尚北道倭館(ウェグァン)に保管中の訓練用THAADを慶尚北道星州(ソンジュ)基地に移して訓練する場面の写真を公開した。米軍側は「このような小規模単位の訓練はチームの業務関連技術をよく維持する」と説明した。
今回の訓練は実際には発射されない訓練用模擬弾を発射台に装着し、発射前の段階までの過程に慣れる目的で行われた。平沢基地でこのような訓練をした事実が公開されたのは初めて。
(以下略)
http://news.livedoor.com/article/detail/16360002/
韓米空軍が大規模航空演習を廃止 規模縮小した演習実施中米「韓」連合武力と朝鮮人民軍の、わざわざ見せつけるまでもない歴然たる軍事力の差を改めて誇示し、軍事的に恫喝しているわけです。2月の朝米首脳会談が合意に至らなかったとはいえ、依然として軍事行動が避けられるべき緊張緩和局面において、米「韓」両軍が北侵のための絶対的軍事力を不必要に誇示することには悪意を感じざるを得ません。
2019年4月23日 14時31分
聯合ニュース
【ソウル聯合ニュース】韓国軍の消息筋は23日、韓米の空軍が22日から2週間の日程で合同空中演習を実施していることを明らかにした。
(中略)
韓米の軍当局は朝鮮半島の安全保障情勢を考慮し、マックスサンダーよりも規模を縮小して演習を行っているとされる。演習には韓国空軍の主力戦闘機であるF15KやKF16、在韓米空軍の戦闘機F16など数十機が参加し、オーストラリアの空中早期警戒機E7Aも加わっているという。
■共和国からの警告
これに対して共和国の祖国平和統一委員会は25日、緊張緩和局面においてアメリカ側が先に仕掛けてきた軍事的挑発について次のように声明を発しました。
http://www.uriminzokkiri.com/index.php?lang=jpn&ftype=document&no=19863
祖平統の代弁人 南朝鮮当局の背信的行為は北南関係をより危い局面に追い込むだろう共和国側は「南朝鮮当局が看板を変えて「規模縮小」のまねをしていくら術策を弄しても、隠ぺいされた敵対行為の侵略的で攻撃的な性格と対決的正体を絶対に覆い隠すことはできない」と真相を見抜いた上で、「南朝鮮当局が米国と共にわれわれに反対する軍事的挑発策動を露骨にする以上、それ相応のわが軍隊の対応も不可避なものになりうる」と事前に警告しているわけです。
去る22日から、南朝鮮軍部は対話の相手であるわれわれの面前で南朝鮮占領米軍と共にF15KとKF16、F16戦闘爆撃機をはじめとするおびただしい飛行隊力量を動員してわれわれを狙った挑発的な連合空中訓練を行っている。
祖国平和統一委員会(祖平統)のスポークスマンは25日に談話を発表して、これは朝鮮半島の平和と繁栄を願う全民族の総意が反映されている歴史的な4・27板門店(パンムンジョム)宣言と9月平壌(ピョンヤン)共同宣言に対する公然たる挑戦であり、北と南が軍事的緊張の緩和と敵対関係の解消のために共同で努力すると確約した軍事分野の合意に対する露骨な違反行為であると糾弾した。
(中略)
また、南朝鮮当局が今回の大規模な連合空中訓練を強行して「マックス・サンダー」が歴史の中に消えた、朝鮮半島の情勢を考慮して訓練の規模を縮小したとけん伝しているが、そのような常套的なたわごとでわれわれを安心させ、内外世論の非難を避けていこうとするなら、実に愚かな誤算であると糾弾した。
そして、南朝鮮当局は今回の訓練だけでなく、去る3月にも「キー・リゾルブ」訓練を「同盟」という名称に変えて、すでに中断されるようになった合同軍事演習を強行したし、今後も引き続き行おうとしているとし、次のように指摘した。
南朝鮮当局が看板を変えて「規模縮小」のまねをしていくら術策を弄しても、隠ぺいされた敵対行為の侵略的で攻撃的な性格と対決的正体を絶対に覆い隠すことはできない。
風が吹けば波が立つものである。
南朝鮮当局が米国と共にわれわれに反対する軍事的挑発策動を露骨にする以上、それ相応のわが軍隊の対応も不可避なものになりうる。
(中略)
南朝鮮当局は、北南関係改善の雰囲気を生かすかどうかという重大な時期に、われわれに反対する露骨な背信行為が北南関係の全般を取り返しのつかない危険に陥れかねないということを銘記して、分別のある行動を取るべきであろう。
■あくまでも正常的で自衛的な訓練としての火力打撃訓練の位置づけ
こうした経緯を踏まえたうえで、冒頭で引用した『朝鮮新報』記事に立ち返り、4日と9日火力打撃訓練について考えてみたいと思います。
「どの国でも国の防衛のための軍事訓練を行っており、これは極めて正常的なこと」という指摘。まったくそのとおりの指摘であり、この火力打撃訓練は正常な国防措置であると位置づけることが出来るでしょう。
緊張緩和局面において、若干規模を小さくしたとはいえ依然として北侵を意図する航空演習を展開してきたことは見逃せない事実ですが、そうはいってもあくまでも正常的で自衛的な火力打撃訓練なのです。対抗措置だとしても、共和国は「南朝鮮当局が米国と共にわれわれに反対する軍事的挑発策動を露骨にする以上、それ相応のわが軍隊の対応も不可避なものになりうる」と事前に警告していたわけです。「アメリカ側が先に仕掛けてきた」という他ありません。
あくまでも正常的で自衛的な火力打撃訓練なのです。THAAD展開訓練について、前掲の中央日報記事で引用した「このような小規模単位の訓練はチームの業務関連技術をよく維持する」という米軍公式発表が許されるのであれば、共和国の火力打撃訓練についても、兵士たちの練度を維持する点において同様に認められるべきでしょう。
にもかかわらず、共和国側の火力打撃訓練だけが非難されるという展開は、まさに共和国側代弁人が主張する「朝鮮の軍事訓練のみを挑発だと主張する行為は、朝鮮の武装解除を圧迫し、最終的に侵略しようと詰め寄る企図である」という認識の正しさを証明する展開という他ないでしょう。チュチェ105(2016)年2月11日づけ「「北朝鮮だけが「衛星」を打ち上げてはいけない理由」の本音――馬脚が自爆的に表れる日は近い」でも述べましたが、アメリカの訓練が許されて共和国の訓練が許されないなど、結局のところは「のび太のくせに生意気な!」の類いに過ぎず、正当な論拠に基づくものではないのです。
■「安保理決議違反」について
相変わらず「安保理決議」がどうのこうのと持ち出してくる手合いに答えましょう。チュチェ106(2017)年7月29日づけ「ICBM発射実験は安保理決議違反だが正当防衛」で述べたとおり、わざわざ見せつけるまでもない歴然たる軍事力の差を改めて誇示し、軍事的に恫喝してくる米「韓」両軍に対抗し、国の主権を守るためには実力を持たねばなりません。
共和国は目下、アメリカ帝国主義の急迫かつ不正なる脅威に直接的に晒されています。アメリカの甘言に乗せられて油断したり武器を置いたりした結果、政権を打倒されたり転覆させられたりしてしまった反米国家の例は、枚挙に暇がありません。共和国が軍備を充実させることは、「安保理決議違反」であったとしても国の自主権を保障するための、やむを得ぬ行為です。朝米間の明らかな戦力差・国力差を見れば、このことは単なる主観的なことではなく客観的に言えることなのです。
■どちらが挑発的で、どちらが悪意的か?
共和国側の主張は実に首尾一貫しています。あくまでも正常的で自衛的な火力打撃訓練なのです。仮にこの訓練が「安保理決議違反」だとしても、アメリカ帝国主義の急迫かつ不正なる脅威に直接的に晒されている共和国としては、やむを得ぬ行為です。
緊張緩和局面であるにもかかわらず、米「韓」両軍の軍事力と比して圧倒的に劣勢なる共和国が一年半も軍事的アクションを取ってこなかったにも関わらず、アメリカ側が先に北侵演習やTHAAD展開訓練実施の暴挙に出た事実を踏まえるべきでしょう。どちらが挑発的で、どちらが悪意をもって北東アジアにおける緊張緩和の雰囲気を破壊しているのでしょうか?
そして、目下の情勢において、朝鮮人民軍がノホホンと日向ぼっこにうつつを抜かし、兵士の練度維持に必要な火力打撃訓練をしないという選択肢はあり得るのでしょうか? このことを問わねばならないでしょう。