NYT「北核凍結説」 ビーガン氏「完ぺきな推測」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190703-00033800-hankyoreh-kr
7/3(水) 8:54配信
中央日報日本語版
米国政府が北朝鮮との核交渉をめぐって核凍結水準で妥協できる案を準備中というニューヨークタイムズ(NYT)の先月30日付の報道に対して韓米両国が強く否認した。ドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の先月30日の板門店(パンムンジョム)会談以降、米朝が非核化実務交渉を再開することで合意した後の報道だった。NYTの報道通りに米国政府が非核化の目標を「核凍結」に合わせる場合、北朝鮮を事実上核保有国と認定することになる。
ジョン・ボルトン国家安保会議(NSC)補佐官は1日(現地時間)、ツイッターを通じて「NSC関係者や私自身の中で誰もこれを議論したり聞いたりしたことがない」と否認した。ボルトン補佐官は「これは大統領を身動きできないようにしようとする誰かの非難すべき試み」として「責任を負わせる必要がある」と話した。これに先立ち、スティーブン・ビーガン国務省対北朝鮮特別代表もNYTに「完ぺきな推測」と反論した。
関連事情に明るい韓国の外交消息筋も2日「韓国だけでなく米国の対北交渉チームも核凍結協議案の提示を全く念頭に置いていない」と報道を強く否認した。彼は「北朝鮮の完全な非核化という大枠で凍結が1次関門になり得るが、これはあくまでも中間地点で最終目標は完全な非核化」と再確認した。
(中略)
だが、一部では北核交渉を再選に積極的に活用しているトランプ大統領が米国本土を脅威する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄に焦点を当てて「米国に平和がやってきた」として成果として前面に出す可能性を懸念している。ICBM廃棄の次の段階である核廃棄は進展しないのに結果的に核凍結で終わるシナリオだ。
核凍結で終わろうとする場合、トランプ大統領が米国内で逆風にさらされる可能性があるという指摘もある。ワシントン事情に明るい消息筋は「核凍結論はむしろトランプ大統領と米国の対話派を苦境に落とす可能性がある」として「核凍結論は米国内交渉派の肩身を狭めるために『北朝鮮の非核化はすでに水の泡になった』という自称「現実論者」らの主張であるばかり」と一蹴した。
(以下略)
トランプ大統領「金委員長に近いうちにまた会いたい…急ぐ必要はない」核凍結論――以前から燻っている観測ですが、このことを確度高く裏付ける証拠はいまのところありません。アメリカ国内では核凍結論を求める声はさほど大きくはなっておらず、打ち上げるにしては少し早すぎる「花火」です。条件が整っていない段階で打ち上げてしまうと、反対勢力の抵抗を突破できる支持を得られずに失速してしまうでしょう。
7/3(水) 12:02配信
ハンギョレ新聞
(中略)
一方、ニューヨーク・タイムズ紙は、米政府が北朝鮮の核開発凍結(freeze)に焦点をおいた新たなシナリオを検討していると、30日付で報道した。北朝鮮の完全な非核化という従来の目標を下げて、北朝鮮を核保有国として暗黙的に認める案ということだ。同報道について、国務省は「私たちの目標は依然として北朝鮮に対する『最終的かつ完全に検証された非核化』(FFVD)」としたうえで、「我々は現在いかなる新しい提案も用意していない」と否定した。スティーブン・ビーガン国務省北朝鮮政策特別代表も「単なる推測」だと否定した。
しかし、米国が北朝鮮に最終的な核廃棄に進む非核化ロードマップを求める中、核凍結はロードマップの“入り口”にあたる必須の段階だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、米政府が核凍結に目標を修正しているかのように報道し、「トランプ政権が北朝鮮に屈服している」という論議を触発しようとしたものと見られる。
ゆくゆくはアメリカは、核凍結という選択肢を真剣に検討する必要が生じると私は考えていますが、現時点では時期尚早でありましょう。当のトランプ政権幹部たちは揃って報道内容を否定しており、また、『ニューヨーク・タイムズ』報道の続報や深堀も出てきていません。日が経つごとに胡散臭さが強くなってきています。こうなると、本件は「怪情報」だと位置付けざるを得なくなってきます。
さて、「いま」こういった「怪情報」が飛び出てくる背景は何でしょうか? 上掲引用記事でも指摘されていますが、朝米接近を快く思わない勢力の影を感じ取らざるを得ません。朝米融和局面に危機感をおぼえた反共和国派が先回りして「暴露」することで「核凍結で手を打つ」という選択肢を事前に潰してしまおうとしている可能性が考えられます。
トランプ大統領がよく口する「急がない」という言葉の意味するところが徐々に変化し、かつてのような勇ましさが見る影もなくなっています。「急がない」は、朝米首脳が接触するたびに意味するところが変わってきました。
ついちょっと前まで「斬首作戦」が取り沙汰されていたタイミングでの急展開的なシンガポール会談での「急がない」は、「会談・交渉が今回で妥結しなくても軍事攻撃はしない」ということを意味しており、緊張緩和の効果を果たしました。反共和国派には衝撃を与える「急がない」でした。
続くハノイ会談の「急がない」は、全体としては緊張緩和局面を維持するが、前進も後退もしないもの。「非核化の前進」には資さないものでした。シンガポール会談でトランプ大統領が予想以上に共和国側に融和的だったことと比較して厳格な姿勢を取った点、経済封鎖の継続によって「兵糧攻め」的な効果が期待される点において、反共和国派には概ね好評な「急がない」でした。
今回の板門店会談での「急がない」は、その直前に確認された「同時並行原則」に照らせば、一息に完全非核化を目指すのではなく段階的非核化を目指し、その見返りとして段階的に封鎖を解除してゆくという意味合いが込められているものと考えられます。これはまさに共和国が目指してきたものであり、反共和国派にとっては悪い方向に向かっている兆候といったところなのでしょう。
再度の「揺り戻し」を警戒する反共和国派の心情は容易に推測できます。『中央日報』でさえも次のように主張しているのだから、筋金入りの反共和国派の懸念は更に強いことでしょう。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190703-00000021-cnippou-kr
米国の有力紙が米行政府の交渉目標が北朝鮮の完全な非核化から後退するかもしれないと報じたことを受け、米国務省は直ちに否認した。ジョン・ボルトン国家安保会議(NSC)補佐官はツイートを通じて「(北核凍結は)協議したこともなく、聞いたこともない」と明らかにした。スティーブン・ビーガン国務省対北朝鮮特別代表も「純然たる推測」として一蹴した。しかし「火のないところに煙は立たぬ」という疑いが多い。私は基本的に、他人の主張を評価するにあたっては、「何が語られているのか」、すなわちその内容の論理的正当性だけで判断するよう心掛けており、「誰が語っているのか」、すなわちその人物の属性や平生の主張内容からレッテルを貼ることはしないように心掛けているつもりです。しかし、それでもやはり、本件のようなケースでは「誰が語っているのか」にまったく無頓着であってはならないでしょう。
実際、ビーガン代表は先月末「6・12シンガポール共同声明の合意事項を同時的・並行的に進展させるために北朝鮮側と建設的議論をする準備ができている」と言及したことがある。「同時・並行的」は北朝鮮が主張してきた非核化へのアプローチだ。北朝鮮寧辺(ヨンビョン)核団地と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の除去に合わせて北朝鮮に対する制裁も一部解除するということだ。北朝鮮の既存の核兵器と残りの核施設は後ほど段階的に除去する。そうなると北朝鮮の核保有は相当な期間に認められることになる。状況によっては北朝鮮が核兵器をあきらめられない可能性もある。そのため、米国は北朝鮮の非核化を先に成功させた後、北朝鮮に対する制裁を解除するというのが原則だった。
問題は北朝鮮の核保有が認められれば韓国、北朝鮮の間に深刻な安保不均衡が生じるという点だ。北朝鮮は核兵器を土台に米国と核軍縮を提起し、核傘の除去と在韓米軍の撤収まで持ち出す可能性もある。韓半島の安保状況がさらに複雑になる。したがって、韓国政府は「核凍結論」を鋭意注視する必要がある。
『ニューヨーク・タイムズ』はリベラルな論調で知られていますが、アメリカのリベラル派は日本のそれとは大きく異なり、トランプ大統領のことも共和国のことも心底嫌っています。以前から『ニューヨーク・タイムズ』は、共和国について誇張した内容の記事を書いてきました(『ハンギョレ』チュチェ107・2018年11月14日づけ「[ニュース分析]NYT「隠れた北朝鮮ミサイル基地」報道が誇張・歪曲である理由とは」)。今回も、そうした社の論調とまったく無関係だとは言えないでしょう。
日々刻々と変わる情勢を、もうしばらく見つめる必要がありそうです。