2019年09月06日

記事の書き手の書きっぷりもよくないが、読み手がその行間を勝手に解釈しているという面もあるのでは

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190906-00010007-huffpost-soci
京急脱線事故「#がんばれ京急」がトレンド入り。京急の責任を検証する報道への「違和感」
9/6(金) 15:44配信
ハフポスト日本版


(中略)

7日始発までに事故で不通となっている区間の運転再開を目指す中、ツイッター上では「#がんばれ京急」のハッシュタグがトレンド入り。6日正午現在で8万9千件以上ツイートされている。夜を徹して復旧にあたる作業員を応援するコメントが相次いでいる。

こうした投稿の中には、テレビ朝日が5日に報じた、運転士の経験の浅さを指摘するような報道に対し「京急の責任を追及しているのではないか」と疑念を呈する声もある。


(中略)

この報道をめぐっては、ネット上で、「その見出しは違うと思う。京急側に責任がある話なの?」「京急がまるで悪いみたいな報じ方」などと、批判的なコメントが相次ぎ、ツイッターでは「#がんばれ京急」のハッシュタグが作られ、様々なコメントが寄せられている。

「原因究明が不十分な今の時点で、鉄道会社が悪いみたいな言い方はよくない」

「夜を徹して復旧に向けて頑張っている京急を、むしろ応援したい」

「マスコミが京急を叩いている意味がわからない。#がんばれ京急」

コメントの中には、事故の原因を探ろうとする報道を「マスコミが京急を叩いている」とし、批判するものも多い。


(以下略)
■「事実関係の究明」と「責任追及」は別
大津での保育園児の右直巻き添え事故や、京アニ事件のときと同様の展開。以下で述べるとおり、「#がんばれ京急」のトレンド入りは、「事実関係の究明」と「責任追及」を混同する日本社会の風潮・傾向があらわれていると言えそうです。

7月28日づけ「ムラ社会とブルジョア「自由主義」社会とのハイブリッドである日本社会の現状」でも述べたとおり、事故の瞬間を克明に描き出すためには、責任追及とはまったく別問題として事実関係を洗い出さなければなりません。本件事故の「非」がトラック側にあるのは常識的範疇では当然のこと(自ら起こしたコトとはいえ、トラックを踏切から脱出させようと努力して、果たせずに残念ながら亡くなった運転手氏については、さすがに亡くなってしまっただけにそこまで激しいバッシングにはなっていない模様)ですが、それを前提としつつも、あくまでも「事故の瞬間を克明に描き出す」ためにこそ、踏切安全装置や運転士の経験年数等にもスポットライトがあてられるのは当然のことです。

もちろん、一度安全装置が作動すれば有無を言わせず自動的に電車を停車させるシステムを導入すれば、逆に電車が危険な場所で停止してしまうこともあり得るので、これは簡単な話ではありません。「電車は急には止まれません」と昔から言いますが、運転士の経験年数では如何にもならないことなど幾らでもあります。

■「京急の責任を追及している」とまでは言い切れない
とはいっても、たしかに、朝日新聞やテレビ朝日、神奈川新聞の報道をみるに、非のある人物・団体等を責任追及する場合と似た論調であることは否めないところです。普段から他人の責任追及に血道をあげている会社ですから、意図せずとも行間に滲み出てきてしまうのかも知れませんw
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190905-00000069-asahi-soci
踏切の異常検知は作動 自動ブレーキ機能なく 京急説明
9/5(木) 21:20配信
朝日新聞デジタル


(中略)

 今回の列車は停車駅が少ない「快特」で、営業運転の最高時速は120キロ。事故前に120キロで走っていたことや、検知装置や信号が正常に作動したことを京急は確認しているという。

 京急の説明では、この列車は運転歴1年1カ月の男性運転士(28)が運転していた。運転士は「信号機に気付いて非常ブレーキをかけた」と話しているが、間に合わなかった。どの時点でブレーキをかけたか、京急は「調査中」として明かさなかった。ブレーキには異常は確認されていないという。

 運輸営業部の小林秀行部長は「原因は調査中だが、ブレーキを適切にかければ止まれるようなシステムにはなっている」と話した。

 他の鉄道会社では、東急や京王、小田急、東武、JR東日本の一部路線で、検知装置を自動列車制御装置(ATC)などの信号保安装置と連動させる仕組みがあり、装置が作動すると自動的にブレーキがかかる仕組みとなっている。だが、京急本線にはこうしたシステムは導入されておらず、運転士が手動でブレーキをかけることになっていた。(細沢礼輝、贄川俊)

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20190905-00000051-ann-soci
京急線「ブレーキ間に合わず」 運転士歴は1年1カ月
9/5(木) 20:07配信
テレ朝 news


(中略)

 事故原因の関連について、踏切には「障害物検知装置」が設置されていて、作動して非常ボタンも押されていたため、340メートル手前の信号が赤く点滅していました。そのため、運転士はブレーキを掛けましたが、間に合わなかったと話しているということです。また、この運転士は車掌から運転士になって1年1カ月だったということです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190905-00000024-kana-soci
【京急脱線】帰宅ラッシュ直撃 県内事故多発「不安」「早く復旧して」
9/5(木) 22:40配信
カナロコ by 神奈川新聞


(中略)

 市営地下鉄で通勤している男性会社員(27)は「明日朝のラッシュでさらに混雑するのは困る。早く復旧してほしい」といら立ちを隠せない様子。「最近、県内で電車事故が多いので不安。安全対策をしっかり見直してほしい」と鉄道事業者に注文を付けた。

(以下略)
しかし、冷静にそして字面だけを素直に(真に受ける調子で)読んでみると、やはりあくまでも「事故の瞬間を克明に描き出す」意図のもとに書かれていることが分かるでしょう。落ち着いて読めば、このかなり微妙な表現の文章からは「京急の責任を追及している」とまでは言い切れません。なんたって朝日。本気で粗探し・責任追及するつもりなら、もっと露骨な論調でアクロバットな理屈を展開しますって。

朝日新聞記事は、「ブレーキを適切にかければ止まれるようなシステムにはなっている」はずなのに事故が起こってしまったという厳然たる事実を提示するに留まっています。「京急本線にはこうしたシステムは導入されておらず、運転士が手動でブレーキをかけることになっていた」は、あくまでも事実です。それについて非をあげつらうような私見を述べているわけではありません。「京急の責任を追及している」とまでは言い切れません。

テレビ朝日記事は、「踏切には「障害物検知装置」が設置されていて、作動して非常ボタンも押されていたため、340メートル手前の信号が赤く点滅していました。そのため、運転士はブレーキを掛けました」が事実として事故が起こってしまった以上は、システムが正常に動作していたとすれば、人間(運転士)側についても調べる必要はあるでしょう。それは責任追及とはまた別の問題です。結果として責任問題になるかも知れませんが、現時点ではそこまで行き着きはしないでしょう(当然、運輸当局や京急電鉄だって運転士についてかなり詳細に調べている、あるいは今後調べることでしょう)。少なくとも、そこまでは書いていません。行間を意図的に解釈しないと、「想像力豊かに」読み込まないと「京急の責任を追及している」と断定することはできません。

まあ、経験年数と事故発生との間の因果関係は、一般論としては考えられないことはありませんが、本件については現時点では当てはまるとは言い切れず、いささか「無責任」であり、また、テレ朝記者が自らの浅はかさを自白しているとは言えるでしょう。いろいろな可能性を想定して検討することは大切なことですが、報道機関としては、もう少し因果関係が見えてきてから経験年数問題を報じた方が良いとは思いますよ。

神奈川新聞は・・・まったく性質の異なる事故を同一視している、掲載する価値のないバカなインタビュー回答を敢えて掲載するという編集方針は、つまるところインタビュー回答者の口を借りて会社としての主張を展開していると言えるかもしれません。他方、人身事故による運転見合わせで改札口の駅員に罵声を浴びせるおバカさんは津々浦々にいますから、「バカのサンプル」として敢えて掲載している可能性も否定できません。これもまた断定し切れないところです。

■「事実関係の究明」と「責任追及」が混同される日本社会の風潮・傾向
さて、「#がんばれ京急」のトレンド入りは、大津での保育園児の右直巻き添え事故や京アニ事件のときの世論動向と同様の展開を見せ始めた兆候と言い得ると考えます。

7月28日づけ「ムラ社会とブルジョア「自由主義」社会とのハイブリッドである日本社会の現状」でも述べたとおり、日本社会では「事実関係の究明」と「責任追及」が混同される風潮・傾向があります。それゆえに、「何か問題が発生している状況下で特定個人に声がかかる」ということを「その人の責任が追及されている」と受け止め、事件・事故の被害者に事実関係の確認をすることを「粗探しして被害者の落ち度をあげつらおうとしている」と見なす傾向にあります。

このことは、もっと言ってしまえば、自分が普段から他人の粗探しばかりしているから、「マスゴミは京急の粗探しをしているに違いない(他人も自分と同じように粗探しをしているに違いない)」と思い込んでしまうとも言えるかも知れません。

今回の世論動向は、「京急の責任を検証する報道への「違和感」」だけでは解明しきれないようにも思われます。朝日系報道機関の書き手の書きっぷりもよくないが、読み手がその行間を勝手に解釈しているという面もあるのではないでしょうか?

大津での保育園児の右直巻き添え事故や京アニ事件のときの世論動向と同様、今回もまた、「事実関係の究明」と「責任追及」を混同する社会的風潮・傾向に基づく「誤読・誤解」もありそうです。
posted by 管理者 at 21:15| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。