2020年06月15日

非マルクス主義的な労働者意識・被雇用者意識及び生活防衛行動の吉兆

https://news.careerconnection.jp/?p=95598
最低賃金なのにここまでやらされるの? 「時給780円で店舗運営とバイヤー」「パートなのに外国人と交渉」
2020.6.15
okei

最低賃金で労働を強いられている人もいる。現在の最低賃金は、最も高い東京で1013円、神奈川が1011円で1000円以上はこの2都県のみ。青森や沖縄など15県790円で、全国平均は840円だ。働く上で「こんな低賃金じゃ割りに合わない!」と感じている人は少なくないだろう。

ガールズちゃんねるに5月末、「最低賃金なのに、ここまでやらされるのかと思った仕事」というトピックが立った。トピ主は、小さな会社の事務補助のパートとして採用されたのに、

  「外国人相手に英語で面接、給料や保険の手続きなどをやらされ、Google翻訳と辞書を片手に交渉するのがしんどくなってやめました」

と語る。履歴書に英検2級と書いたため、強引に仕事を振られたようだ。トピ主が、

  「最低賃金にも関わらず、責任が重い、仕事が難しい、やらされることが多すぎる……などの体験談を書くトピです」

と募ると、似たような苦しみを訴える人が相次いだ。(文:okei)

派遣した人が現場に来ないときは「代わりに飛んでいく。後で菓子折もって謝りに行く」
トピックでは、最低賃金の非正規雇用なのに管理職や正社員と同様の仕事をやらされ、心身共に疲弊した過去を綴る人が多かった。

  「時給780円で店舗運営とバイヤー。辞めたよ」
  「時給950円で店舗責任者やってました。たまに本社まで行って会議出たりしないといけませんでした。本社まで片道4時間、もちろん移動時間の時給は出ません」

パートなのに法務関係、社員の超個人情報を扱う人や、時給700円台のスーパーのレジなのに数時間かかるシフト組みとシフト表を自宅で作らされた人、派遣会社のコーディネーター(非正規)で休日でも電話が来るという人は、派遣した人が現場に来ないときは「代わりに飛んでいく。後で菓子折もって謝りに行く」と綴っていた。

また、多くの人が挙げたのが、業務量が膨大な「コンビニ」だ。店舗内外の掃除、品出し、カウンターフードの調理諸々の上に、同時進行で「丁寧な接客によるレジ」をしなくてはならなず、とてもじゃないけど最低賃金ではやりきれない!と、次々に不満が書き込まれていた。

(中略)

トピックの書き込みは、「辞めてよかった」と、すでに退職・転職済みだと語る人が多かった。雇用者が「安く使える良い人材」を望むなら、労働者も「働きに応じた報酬が出る職場」を探すのは当然の流れだ。
こんな低賃金じゃ割りに合わない!」――この直感こそが、剰余労働の搾取に対する理解の第一歩です。

学問的厳密性を重視するのであれば、労働価値説に立脚して労働の二重性を云々することも大切でしょうが、労働者階級の生活上の要求を重視するのであれば、単に「割に合わない気がする」くらいの直感的動機を大切にした方がよいでしょう。

それどころか、労働価値説の学問的厳密性が揺らぎ、限界効用価値説がほぼスタンダードと化している現代においては、「割に合うか否か」という主観的価値評価の土俵で搾取を如何に考えるかという観点も必要でしょう。主観的価値評価の土俵に上がることは、労働問題を自主権の問題として捉える立場からも推奨したいところです。

ところで、「こんな低賃金じゃ割りに合わない!」と感じている労働者たちにおいては、「「辞めてよかった」と、すでに退職・転職済みだと語る人が多かった」とのこと。「雇用者が「安く使える良い人材」を望むなら、労働者も「働きに応じた報酬が出る職場」を探すのは当然の流れだ」と結ばれているように、昨今の労働者階級は、剰余労働の搾取を直感的に理解しつつも、待遇改善要求を展開するのではなく、サッサと転職することを選択しているようです。

待遇改善の主要手段を転職に見出すことについては、当ブログは積極的に推奨してきました。チュチェ104(2015)年10月8日づけ「「日本の労働組合活動の復権は始まっている」のか?――労組活動は労働者階級の立場を逆に弱め得る」を筆頭に述べてきたとおり、労働者を低賃金で使いつぶそうとする企業家・資本家が労働運動で改心するはずがありません。仮に一時期な労使関係のバランス的事情によって「譲歩」を見せたとしても、企業家・資本家らは「巻き返し」を虎視眈々と狙っているはずであり、不況等によって「無産階級」としての労働者階級の交渉力が低下したタイミングで「回収」を期するのは目に見えています。

そもそも、労働者階級が企業家・資本家らに対して自主的な地位に立つためには、彼らに対する依存度を低下させる必要があります。

経済学的に考えましょう。独占企業が独占利潤で暴利を貪れるのは、他に競争相手がいないからに他なりません。売り手としての独占企業に対する買い手としての消費者の依存度が極めて高いからこそ、売り手としての独占企業は暴利を貪れるのです。売買のどちらかが一方的に強い交渉力を有している場合、その他方は弱い立場に立たされ、札束で頬を叩かれるようなことになるのです。

この構図を労働市場に適用させれば、労働力の売り手としての労働者が労働力の買い手としての企業に依存的である場合、もっと平たく言えば、労働者が辞めるに辞められない状況にあるとき、労働環境に関する交渉力は企業にあると言えます。いくら労働組合が闘争を展開したところで、「どーせお前たちは辞めるつもりはないんだろ? ストだとか言っているけど、そのうち戻ってくるんだろ?」と企業側に足元を見られてしまえば、その時点で企業側に圧倒的な交渉力が生じるのです。

企業家・資本家らの「戦略的撤退」のごとき「譲歩」に無邪気に飛びつき、愚かにもその「譲歩」を自らの生活費の不可分な一部に組み込んでしまった労働者は、「回収」のタイミングにおいては不況なので辞めるに辞められず、再度の労働運動を展開したところで労働者階級の交渉力も低下している(不況においては一般に労働需要は低迷する)ために企業家・資本家らには無視されるので、いよいよ困窮し、さらに企業家・資本家らに買い叩かれることでしょう。

労働者階級が企業家・資本家らに対して自主的な地位に立つためには、労働者階級は常に企業家・資本家らに対して「では辞めさせていただきます。お世話になりました」と言える立場に立つ必要があるのです。その点、労働者階級の自主権を重視すればこそ、サッサと転職することが重要なのです。労働者側が要求を展開してやっと待遇改善に取り組むような企業にいつまでも幻想を抱くのではなく、企業家・資本家らが企業戦略として自発的に待遇改善に取り組むような企業を労働者側が積極的に選択し、待遇改善競争のトレンドを巻き起こす必要があります。

マルクス主義的な労働者意識・被雇用者意識及び生活防衛行動が衰退した昨今において、それとは別由来・別経路の労働者意識・被雇用者意識及び生活防衛行動が少しずつ育ちつつあるようです。
posted by 管理者 at 22:44| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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