2020年07月11日

コロナパニックの裏返しとしての「キレイな独裁」論

ちょっと古い記事ですが。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202006230000573.html
堀江氏ら、NHK世論調査結果に「めっちゃやばい」
[2020年6月23日18時53分]

ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏(47)らが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、政府や自治体が外出禁止や休業を強制できる法改正が必要だとする声が約6割にのぼったとしたNHKの世論調査の結果に懸念を示した。

(中略)
フリーアナウンサーの長野智子は、この調査結果に「うそでしょ。。」と驚き、ジャーナリストの津田大介氏は「みんな管理されたい欲望が強いんだね……」とツイートした。
■民衆は「管理されたい・支配されたい」わけではないのでは?
民衆は管理されたい・支配されたいわけではなく、「清廉潔白・公平無私なる救世主な権力が正確無比に強権を振るい、国民の命と生活を守り抜く」ことを求めているのだと思われます。「新型コロナウィルス対策を鮮やかに展開し、パンデミック下であっても憂いなく過ごしたい」という強い願望が国家権力に託されたわけです。

たとえ「手法」が管理国家的であったとしても、自分たちが「求めるもの」を過不足なく正確に実現してくれる限りでは、それは「民主」だというのでしょう。強権や独裁的な体制が「悪」とされるのは、それが権力者自身の私利私欲の追求が第一目標になるときであって、そうでないときは必ずしも「悪」とは言えず、国民の利益を仮借なく実現してくれるのであれば、むしろ強権であった方が好ましいとさえ考えているのかも知れません。

■パニック・ヒステリーの裏返しとしての救世主・強権待望論
新型コロナウイルス禍を巡るここ数か月の世論は、社会的なパニック・ヒステリー状態が続いてきたと総括することができるでしょう。そしてその裏返しとして、「清廉潔白・公平無私な権力が正確無比に強権を振るい、国民の命と生活を守り抜く」ことが渇望されてきたと言えるでしょう。

たとえば、まだマスク不足騒動が起こる以前、マスクの有効性が議題になっていた頃を思い起こしましょう。医師等専門家の意見を基に行政が、感染予防の基本中の基本である「手洗い・うがい・マスク」の重要性を改めて周知したところ、少なくない人々が「未知の新型ウィルスだというのに、その対策が『手洗い・うがい・マスク』だなんて信用できない!!」と騒ぎたてました。他方、「27度程度のぬるま湯でコロナが死ぬ」などという出所不明の明らかに胡散臭い話に飛びつく人たちが一定数見られました。

新型コロナウィルスは「新型」であり未知の部分が多い疾病であるとはいえ、大きく分類すれば「コロナウィルス」なのだから、そこから大きく外れることはありません。また、体温よりも低い温度のお湯を呑んで病原性ウィルスが不活化するなどあり得ない話です。それゆえに、「手洗い・うがい・マスク」が基本になるのは間違いのないことです。落ち着いて考えてみれば、ただちに分かることです。

最近でも、こんなコメントが投稿されています(朝日新聞デジタル 7/2(木) 5:00配信「東京、コロナ警戒の数値基準撤廃 幹部「経済持たない」」のコメント欄)。
新型コロナ騒ぎで、初めて心底から
日本の行政って本当に信用できないし能力ないんだ、と思い知った。

そして責任の所在を曖昧にする事には長けていて、未曾有の災難の中でも、税金からずる賢く儲けようとする輩が暗躍する事も。

自分の名誉や利権や権力を守る事じゃなくて、
本当に国民の命を思う政治家っているんだろうか?
なんか絶望してしまう。
後知恵的な「こうするべきだった」さえもなく、漠然と「本当に信用できないし能力ない」と断じているあたり、どうしようもない不安で滅多矢鱈に騒ぎを起こしているのが実態であると言えそうです。

こうした世論反応を振り返るに、新型コロナウィルスに恐れ戦く人々は、その不安を解消するために「魔法」のように良く効く事態打開策を渇望していたものと思われます。不安が大きくなればなるほど、更に大胆に事態を打開してくれる「奇跡」を求めるようになり、結果として「奇跡」を起こしてくれる「救世主」の登場を渇望するようになったものと思われます

しかし、行政の担当者は、社会的分業・社会的専従としての専門性を持っているとはいえ「人間」「魔法」や「奇跡」など繰り出せるはずがありません

無責任なポピュリスト連中でさえ「こうすればコロナは退治できる!」や「こうすればマスクや消毒液不足は解消され、病床は確保され、収入は保障され、パンデミック下でも憂いなく生活できる!」などという魔法的な施策は提案できませんでした(収入保障については、「打ち出の小槌」があるかのように主張する手合いもいましたが、それでも控えめでしたよね)。つまり、そういうことなのです。魔法などないのです。

それゆえ、パニック・ヒステリー状態にある人たちの欲求が満たされることはありません。願望の強さの裏返しとして、「魔法」が効かなかったときの失望は大きくなるもの。そんなわけで、感染予防の基本的所作に対して「未知の新型ウィルスだというのに、その対策が『手洗い・うがい・マスク』だなんて信用できない!!」などという錯乱した主張が展開されたり、具体例も後知恵の批判もなく漠然と「新型コロナ騒ぎで、初めて心底から日本の行政って本当に信用できないし能力ないんだ、と思い知った」などというコメントが出てきたものと思われます。

今回の世論調査結果は、こうした文脈で解釈すれば極めてスンナリと消化できるものです。依然として国民は、「救世主」を求めているわけです。強権を私利私欲のために使うことは許されないが、救世主が「国民の命を守る」ためであれば、強権を振るうことはむしろ歓迎すべきことであり、それが仮に独裁的な手法であったとしても、「キレイな独裁」ということなのでしょう。

■日本でも「スターリン待望論」的現象が起こった
こうした現象は、世界的に見てもよくあることです。たとえば近年ロシアではスターリン人気・スターリン待望論が再燃していますが、これは、プーチン政権下における腐敗と不条理への不満の裏返しとして、「強く断固とした指導者」としてのスターリンの「イメージ」に期待が集まっているためであるとされています。もちろん、スターリンは清廉潔白・公平無私・正確無比とは無縁の暗黒腐敗・私利私欲・無知蒙昧というべき究極の俗物でした。

社会的なパニック・ヒステリーは、政府に対する過度な期待及び強権の容認、並びに科学的見解に対する反発及び迷信的行為の発生の原因です。歴史的に見てその例は枚挙に暇がありません。そしていま、その一例が人類史に付け加わったわけです。日本でも「スターリン待望論」的現象が起こったわけです。

■「職人気質的に黙々と仕事を進めてはいなかっただろうか」という振り返りは必要かも
パニック・ヒステリーの裏返しとしての救世主・強権待望論が、かかる世論調査の結果をもたらしたとなると、事態の根底にはパニック・ヒステリーがあるだけに、こうした風潮を抑えることは難しそうです。パニック・ヒステリーは、すべての道理を押し流してしまうからです。

ところで、「魔法」のような解決策を平気で口にする手合いは、必ずしもパニック状態であるとは限りません。それなりに「冷静」でありながらも、本気で「魔法」があると思っている手合いもいるものです。

平たく言ってしまえば「無知」以外の何物でもないのですが、チュチェ106(2017)年9月19日づけ「実作業に関する知識に乏しく、相場を知らない発注元企業が外注業者に「無理な発注」を控えることはできるのか?」においても書きましたが、社会的分業が高度化し、自分が従事しているもの以外の仕事の進め方がブラックボックス化している現代。「消費者意識」が妙な方向に肥大化−−「丸投げ」が当然視され、また、「お客様」であればどんな要求でも許されるとでも言わんばかりの風潮−−している現代においては、根の深い問題です。

社会的分業が高度化した現代社会においては、「ヨソ者は、自分の仕事のことがよく知らないので、時に安易に過大な要求を吹っかけてくるものだ」という心構えを持つ必要があります。そして「コレをやるにはコレだけの時間と費用が掛かる」ということをオープンにする必要があります(まあ、実際の商売においては「力関係」があるので、これを貫徹するのは難しいんですけどね・・・)。

その点、「行政側の発信が十分だったのか」「職人気質的に黙々と仕事を進めてはいなかっただろうか」という振り返りは必要かも知れません。もちろん、パニック・ヒステリー状態の世論に聞く耳があるとは思えず、また、ワイドショーを中心としたオールド・メディアが扇動的な報道を氾濫させていた以上は、仮に発信していたとしても難しかったとは思いますけどね・・・

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posted by 管理者 at 21:45| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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