2020年10月06日

帝国主義覇権争いの世界において「健在ぶり」をアピールしなければならない現職大統領・米軍最高司令官たるトランプ氏

私はよく「不思議な人だ」と言われます。敵対的関係にある人についても、場合によっては率先して擁護の姿勢を取ることにあるからです。「あんなに嫌っていたくせに、今回は何でそんなに擁護するんだ?」と言われたこと、臨戦態勢で迎え撃とうとしていた相手方が予期せぬ私からの援護射撃に逆に大混乱に陥ったことも多々ありました。

これは、私が「利害関係」よりも「事実」を大切にするからです。私は、人民大衆自身が主人となった主体的で協同的な社会主義;「公平な観察者」が「お互いさま」の精神で社会を共同管理する世界を目指しています。自分たちの社会の主人としての責任と矜持を持てばこそ、批判のための批判などは最も恥じるべきであり、クレーマー気質の喚きとは一線を画すべきと考えます。政治的意図によって事実を曲解したり、「批判のための批判」と言うほかないようなイチャモンや言いがかりを弄するような手合いは、そうした社会の主人には相応しくないと考えるからなのです。

そんな私が下記記事について論評してみたいと思います。
https://news.yahoo.co.jp/articles/903f38cd4550cc275c80195edb95d14665ccaee5
感染予防規定を無視、トランプ氏の外出「パフォーマンス」に医療関係者ら怒り
10/5(月) 12:22配信
AFP=時事

【AFP=時事】(更新)新型コロナウイルス感染のため入院治療中のドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が車で外出し、車内から支持者に手を振ってあいさつしたのは米政府の定めた感染予防規定に違反しているとして、医療関係者から怒りの声が上がっている。
(中略)
 しかし、トランプ政権が定めた公衆衛生ガイドラインでは、治療中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者はウイルスを放出しており、隔離措置を取らなければならないと定められている。このため、医療専門家らはトランプ氏の行動は大統領警護隊(シークレットサービス)を危険にさらしたと批判している。

 トランプ氏は外出の直前、新型コロナ感染の体験を「本物の学校」と呼び、「多くを学んだ」と述べる動画をツイッター(Twitter)に投稿していた。だが、テレビ番組やソーシャルメディアでは、トランプ氏が何も学んでいないことを浮き彫りにする政治的パフォーマンスだとの批判が専門家から相次いだ。

「全く必要のない大統領の外出のせいで、車に同乗した全員がもれなく14日間隔離されなければならなくなった」と、米ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)の災害医学の専門家、ジェームズ・フィリップス(James Phillips)医学博士はツイート。「彼らは病気になるかもしれない。死ぬかもしれない。政治パフォーマンスのためにだ。トランプ氏は、パフォーマンスのために命を危険にさらすよう命じたのだ。狂気の沙汰だ」と批判した。
(以下略)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4a9b06f4e95c84909fb01ad38e71d0fa5f394898
トランプ大統領、コロナ迅速検査の陽性すぐには明らかにせず−報道
10/5(月) 11:42配信
Bloomberg

(ブルームバーグ): トランプ米大統領が1日に受けた新型コロナウイルス感染症(COVID19)の迅速検査で陽性と判明後、すぐにはそれを明らかにせず、もっと綿密な検査の結果が出るまで公表を待ったことが分かった。ダウ・ジョーンズ(DJ)通信が事情に詳しい複数の関係者を引用して報じた。
(中略)
ホワイトハウスの手順に基づけば、迅速検査で陽性となった場合にだけ、もっと信頼性の高い検査が行われることとなっており、事情に詳しい関係者によると、大統領の場合もこれに従った形という。
医学的には、「医療関係者」の指摘はそのとおりでしょう。しかし、トランプ氏は単なる大統領選候補者ではなく現職大統領・米軍最高司令官です。以前から指摘しているとおり、現代世界は帝国主義覇権争いの世界。朝鮮民主主義人民共和国の国務委員長であるキム・ジョンウン同志が、ご自身の健康問題を徹底的に秘匿されていることに端的にあらわれているように、最高指導者の健康問題は、帝国主義覇権争いの世界において死活的に重要な戦略的情報です

お互いに少しでも相手方を出し抜こうと虎視眈々と狙っている情勢。いかに権力の空白を回避するために組織的に序列第二位の人物(副大統領)が控えているとしても、実際の「そのとき」においては、合法的な権限移譲を確定するためには、若干の手続き時間がかかります。しかし、まさにその若干の時間が覇権争いにおいては命取りになります。最高指導者の健康問題は国家組織の意思決定における最大の弱点なのです。

アメリカ帝国の首魁たるトランプ大統領が、よりにもよって「あの」新型コロナウィルスに罹患するなど最悪の事態であります。このことはただ速やかに発表すればよいというものではありませんし、報じるにしても「健在ぶり」をアピールすることとセットにする必要がどうしてもあります。アメリカ帝国そのものの安全と安泰そのものだからです。

アメリカ帝国の首魁、独占資本の利益代表者たるトランプ氏がアメリカ帝国の安全と安泰と実現させなければならないのは、彼が置かれた条件;帝国主義の覇権争いが求めるものです。トランプ氏は立場上、健在ぶりをアピールしなければならないのです。

帝国主義の覇権争いは、私たち現代を生きる生身の人間にとっては、所与の条件であります。私たちは、否応なくこの関係性の中に生きており、この関係性に縛られています。マルクスは『資本論』の序文において次のように指摘しています。
ここで諸人格が問題になるのは、ただ彼らが経済的諸カテゴリーの人格化であり、特定の階級諸関係や利害の担い手である限りにおいてである。経済的社会構成体の発展を一つの自然史過程と捉える私の立場は、他のどの立場にもまして、個々人に諸関係の責任を負わせることはできない。個人は主観的にどんなに超越しようとも、社会的には依然として諸関係の被造物なのである。
マルクス『資本論』第1巻第1分冊、新日本出版社、1982年、p12

もちろん、この条件の矛盾性と不条理性に対して立ち上がり変革するのは我々自身ですが、決意したからと言って今日明日に急に変革が起こるわけではなく、なお一定の期間は、否応なくこの関係性に縛られるものです。

ちなみに、アメリカ帝国と敵対している国々もまた、帝国主義の覇権争いという世界的枠組みにおいて、そうせざるを得ない状況に置かれています。帝国主義の覇権争いとは、どこかの国が悪いという問題ではありません。人類が歴史的経緯を経て作り上げた条件がもたらした、一種の悲劇的な結末なのです。

車に同乗した全員がもれなく14日間隔離されなければならなくなった(中略)彼らは病気になるかもしれない。死ぬかもしれない」というPhillips博士のツイートについては、もちろん、こんなことやらないで済めばそれに越したことはないでしょうが、現職の米大統領・米軍最高司令官としては、健在ぶりをアピールする必要がある点、ものすごく苦しい選択ではあるが、「致し方ない部分もあるのではないか」と思うのであります。

「健在ぶりをアピールすることが現職大統領の職務の一つだとしても、トランプ氏が大統領選挙のことをまったく考えず、ひたすらに現職大統領の職務のためだけにやったはずがないだろう」という指摘もあるでしょう。もちろん、私的な狙いだってあるでしょう。そのことを私は否定するつもりはありません。

私的な狙いがあってはまずいのでしょうか? そもそも、私的な狙いもなく政治家をやる人がいるのでしょうか? 政治家は常に選挙での当選を意識して政策を打ってゆくものです。政策を推進して国民生活を改善させつつ自分自身の権力を固めるのが政治家というものです。もっといえば、当選したいから政治家は独りよがりな理想ばかりではなく選挙民の要求を織り込むものです。

現職大統領の職務として、そしてまた自分自身の再選のために「健在ぶり」をアピールすることは、それは政治家として普通のことではないかと思います。

なんで私がアメリカ帝国の首魁たるトランプ氏の擁護・弁護をしているんだか・・・
posted by 管理者 at 21:35| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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