2020年11月01日

リベラリズムは没落し、プログレッシブは芽の段階

https://news.yahoo.co.jp/articles/56adafb53f87244f73ef1607fa33ee433cb388a3
勝利ムードに酔うエリート層が映し出す民主党の正体
10/28(水) 6:01配信
JBpress

(中略)
■ 労働者の政党を知識層が牛耳った結末
 民主党が敗北したより根源的な要因として指摘されるのは、製造業の疲弊に象徴される「経済格差と雇用」が有権者の関心事だった兆候を十分に掴んでいたのに、対応を怠ったというものである。

 よく考えれば、これは不思議なことだ。なぜなら同党は伝統的に熟練工などブルーカラー労働者層が支持基盤であり、その支持者たちに見限られるということは、民主党がその正統性にかかわる構造的な問題を抱えていることを示唆する。

 また、その課題を過去4年間に反省し、抜本的な改革を行ってこなかった場合、有権者に見透かされて再び敗北する可能性があることになる。トランプ陣営が自壊する「敵失」によってバイデン民主党候補が地すべり的な勝利を収めても、構造的問題は根治していない癌のように再び頭をもたげ、リベラル陣営にさらに大きな危機をもたらすことが予想される。

 経済格差と雇用は、バイデン候補が副大統領を8年間務めたオバマ政権時代に確実に悪化した。中間層と低所得層の賃金上昇はオバマ時代にさらに鈍化する一方、最高所得者層の実質賃金は35%ほど増加した。中所得層と低所得層にリーマンショック後の景気回復の恩恵が及ばなかったのだが、これは民主党オバマ政権が危機を引き起こした銀行をはじめ、大企業や株主を真っ先に救済し、庶民を後回しにしたからである。

 税制においても共和党レーガン政権が始めた、富裕層に有利となる累進性が低いフラットな構造を基本的に維持したため、格差は拡大する一方であった。通商政策においてもオバマ政権は自由貿易を推進したため、米国内の仕事が大量に失われる一方、賃金面でも低賃金国との競争にさらされた米労働者の価格競争力や雇用の質は低下した。これらの要因により、社会における所得の不平等さを測る指標であるジニ係数は2013会計年度の0.485と、世界で最もひどい部類にランクインするようになった。

 オバマ民主党政権は、経済格差是正に対して繰り返しリップサービスを行い、少しばかりの是正策を実行したが、実際の効果はなかった。目玉政策の国民皆保険制度であるオバマケアの実現も、人々は高騰する保険料の支払いにあえぎ、保険金が下りる前に支払わなければならない高額の自己負担金のために診察や治療をあきらめることも多い。

 皆保険のおかげで収入源が法的に確保されて安泰の医療保険大手が空前の収益を上げられるようになる一方、救済対象である低所得層が保険に加入しなければ、連邦税に累進制で多額の罰金が科せられるという狂気の沙汰のシステムを民主党は作り上げた。

 翻って、富裕層の利益に奉仕するウォール街では早くも「バイデン候補勝利」を前提に、民主党政権発足後の大型景気浮揚策と財政支出を歓迎する動きが広がっていると伝えられる。

 なぜこのような結果が生まれるのだろうか。それは、民主党を牛耳るのがグローバルエリートの知識層であるからだ。民主党はもはや労働者の党ではない。つまり、民主党は庶民の主張を代表するよりも、むしろ統治者たるエリート知識層や企業・株主の主張を米国民に対して代表する政党なのだ。この裏切りこそ、2016年の大統領選で民主党を敗北させた本質である。候補者個人の資質は些末な問題に過ぎない。

■ 民主党は「失敗の本質」に学んだか
 民主党指導層は、自党が「労働者の党」の看板を掲げながらも、実際にはエリート知識層や財界の利益に奉仕していることは誰よりもよくわかっている。だが、労働者の味方の看板は得票や献金、さらには「アリバイ」が得られるおいしい商売のネタだから、引っ込めるわけにはゆかない。

 そのため、多くの労働者の離反で負けた4年前の大統領選の総括はなされていないし、これからも「失敗の本質」から学ぶこともないだろう。できることは、これからも裕福層やエリート知識層の利益を代弁しながら、それが労働者の利益になるとウソを叫び続けることと、庶民救済の失敗の原因を「保守派が邪悪だから」「共和党が議会で妨害したから」との言い訳でごまかすことだけだ。「理不尽な共和党」を押し切れないほど無能力な党であれば、潔く責任を認めて内部改革を断行するか、政治から退出してしまえばよいのだが、それもしない。

 さらに、富の再配分を必要とする弱者の労働者を擁護すべき党が、実は労働者から収奪しているという真実を隠すため、民主党はアリバイ作りとして女性やLGBTなどの権利を戦闘的に勝ち取ることに邁進している。だが、それは格差を縮小させる「利益の民主化」は決してもたらさない。「衣食足りて礼節を知る」と言うが、教条的な文化的理念を経済的利益より優先すれば、民心は党から離れてポピュリストに向かうばかりだろう。

(以下略)
https://news.yahoo.co.jp/articles/fe09a6d38452eef68cbf1e6c4377bddd4eb59547?page=3
トランプ支持者をバカ、無知、無能と見るエリート
10/29(木) 6:01配信
JBpress

(中略)
■ 民主党の「弱者」推しは共和党に有利
 また、これは米国や日本だけではなく、世界的な傾向なのだが、リベラル派の正統性喪失に起因する凋落が著しい。「上から目線」をやめず、言行不一致がますます悪化しているからだ。それは構造的な問題であるため、内部改革は不可能であり、有権者の支持を得ることはますます難しくなってゆく。

 民主党は女性やLGBTなど、社会的「弱者」の自己決定権を支持する方向へと舵を切ったため、トランプ共和党は、本来民主党の役割であったはずの再分配と労働者保護策の言説を打ち出す機会を得て、支持を集めるようになった。もちろん、共和党は財界や株主の味方であることは変わりなく、米国民は真の救済を得られなくなっている。これは、絶望的な状況だ。

 しかし、女性やLGBTなどの社会的な地位上昇によって、(男性)労働者は雇用の質が低下し、経済格差が拡大したばかりか、旧来の価値観や常識をも否定され、二重三重の剝奪感を抱くようになっている。これは、民主党支持がある一定のレベル以上に伸びない大きな原因となっている。このジェンダー化された分断は、共和党有利の方向に働く。

 一方で、トランプ大統領のやり方のあまりの酷さという「敵失」でバイデン候補が勝利し、民主党が上下院を押さえる「ブルーウェーブ」も完全には不可能ではなかろう。ただ、民主党が勝つことは、リベラル派エリート知識層がその意味を読み誤り、反労働者・反黒人色の強い政策を引き続き推進することで中長期的にコア支持層の人心を完全に失うリスクが高まることを意味する。

(以下略)
■19世紀以来一貫して詐欺師であり続けたリベラリスト
リベラリズム・リベラリストの詐欺師性を鋭く指摘した読み応えのある記事! この記事は、バイデン候補云々の記事ではなく「アメリカ民主党そのものの性質」について論じている記事です。「ヒラリーVSトランプ」と比肩するくらい「究極的な選択」を強いられる今回の大統領選挙の結果がどうであれ、この記事が持つ意味合いは少しも変わりません。「民主党はもはや労働者の党ではない。つまり、民主党は庶民の主張を代表するよりも、むしろ統治者たるエリート知識層や企業・株主の主張を米国民に対して代表する政党なのだ」及び「富の再配分を必要とする弱者の労働者を擁護すべき党が、実は労働者から収奪しているという真実を隠すため、民主党はアリバイ作りとして女性やLGBTなどの権利を戦闘的に勝ち取ることに邁進している。だが、それは格差を縮小させる「利益の民主化」は決してもたらさない」という指摘は、あまりにも的確です。

リベラリストたちが「人権」を云々するのは今に始まったことではありませんが、近年はそれに加えて"SDGs"なる看板を掲げて「誰一人取り残さない(leave no one behind)」などと取ってつけたようなことを言い始めました。しかし彼らは、現状の災禍の根底にある資本主義の「制度そのもの」には決して手を触れようとせず、「政策的調整」でお茶を濁そうとしています

リベラリストたちが「人権」を云々しつつ現実の人権侵害の根本にある資本主義の「制度そのもの」には決して手を触れようとしないのは、19世紀以来、彼らが一貫して詐欺師であったことを示すものです。

「自由・平等・博愛」という概念をリベラリズムの根本教義であるとする見方には、異論はないでしょう。この概念は、もともとは18世紀フランス革命の理念を示すスローガンでした。18世紀末から19世紀初頭においてリベラリズムは、身分社会を打破し自由社会を切り開く上で、王族及び貴族並びに聖職者たちが牛耳る社会からブルジョアジー中心の社会へと変革を進める上で理念的原動力として輝いていました。

その一方で、フランス革命と並行していた産業革命以来の急激な工業化と都市化は、農村の農民共同体と都市の職人共同体を破壊し、彼らを「単なる労働力」に仕立て上げ、否応なく機械制大工業、そして利潤追求を第一目的とする近代資本主義に巻き込んで行きました。今のような労働法制が十分でなかった当時は、「単なる労働力」が置かれた状況は現在とは比べ物にならないくらい劣悪であり、資本主義化が先進的だった西ヨーロッパ諸国では労働争議が頻発しました。

「単なる労働力」が置かれた状況は、フランス革命と近代リベラリズムが掲げていた「自由・平等・博愛」とは懸け離れた現実でした。革命理念の筋を通すのであれば、「第2次」フランス革命が起こるべきところでしたが、すでに「第1次」フランス革命を英雄的に推し進めたブルジョアジーたちにかつてのような「理想」はありませんでした。むしろ、連中にとっては「革命は済んだこと」であり、連中こそが「単なる労働力」を酷使する張本人だったのです。

ここにおいて「自由・平等・博愛」の「自由」は単なる自由放任に、「平等」は形式的平等に、「博愛」は単なる宗教的道徳倫理に留まるものに変質してしまいました。いやもしかすると、そもそも「自由・平等・博愛」というスローガン自体、つまりリベラリズム自体が、王族及び貴族並びに聖職者たちから権力を簒奪するための口実に過ぎなかったのかもしれません。

いずれにせよそれ以来、「自由・平等・博愛」のスローガンは、眼前の現実社会がフランス革命の崇高なる理念を引き継いでいるものだと喧伝する「表の顔」と、現実の災禍を誤魔化すためのイデオロギーとしての「裏の顔」を持つようになりました。

近代の社会主義・共産主義運動においては、このような「自由・平等・博愛」が実現しているとは懸け離れた現実を是正し、その理念を完遂するという動機もありました。

■資本主義の「聖域」には人権問題と言えども決して切り込まず頬かむりするリベラリスト
この基本構図は依然として変化はありません。現代リベラリストの「人権」尊重も、本当に人権を尊重しようとすれば、労働力の商品化という制度自体の再検討がどうしても必要ですが、それはまさにブルジョアジーの利権そのものであり、資本主義の根本といっても過言ではない「聖域」です。だからこそ、19世紀のリベラリストたちが頬かむりしたように21世紀のリベラリストたちも頬かむりしているのです。

他方、女性やLGBTの問題は、ブルジョアジーの利権を脅かすものではありません。リベラリストにあっては、依然として「自由・平等・博愛」の看板を掲げている以上は、ときどき「それっぽい姿勢」を見せる必要があります。女性やLGBTの問題は、とても「使いやすい」わけです。SDGsについても、すでにこれが投資キャンペーンとして証券会社(野村証券)の営業文句になっています

リベラリズム運動とは、まさに「アリバイ作り」であり、それどころか「新しい商売のタネ」でさえあるのです。しかしこれは「格差を縮小させる「利益の民主化」は決してもたらさない」ものです。19世紀以来続いてきたリベラリストたちの古典的な詐欺手口です。21世紀になっても相変わらず同じ手口で人民大衆を騙そうとしているわけなのです。

この点においてこの記事は、リベラリズム・リベラリストの詐欺師性を鋭く指摘しています。

■プログレッシブたちの勃興について
ただ、この記事がアメリカ民主党内のプログレッシブたちについて、ほとんど触れていないことには不十分さを指摘せざるを得ません。プログレッシブとリベラリズムは明らかに異なりますが、いまのところ二大勢力として同じ民主党でまとまっています。この記事は、あくまでもアメリカ民主党内のリベラリズム・リベラリストの凋落について論じているにとどまるものであり、もう片方のプログレッシブについては、ほとんど論じていません。これを「民主党の正体」と言い切ってしまうのは、不十分に思います

記事中、「トランプ共和党は、本来民主党の役割であったはずの再分配と労働者保護策の言説を打ち出す機会を得て、支持を集めるようになった。もちろん、共和党は財界や株主の味方であることは変わりなく、米国民は真の救済を得られなくなっている。これは、絶望的な状況だ」というくだりがあります。このことについて当ブログでは、まさに4年前のトランプ氏当選直後(11月9日)の記事「トランプ氏の当選を労働者階級として敢えて歓迎する――政治改革の幻想が打ち砕かれた「トランプ後」こそが、いよいよ労働者階級にとって正念場になる」で次のように述べました。
マルクス、そしてキム・ジョンイル総書記が指摘しているように、政治家は、その社会構造が生んだものに過ぎません誰が大統領になろうとも、小手先の政策にこそ違いがあるとはいえ、本質において「飛躍」はありえないのです。現に建玉のある資本家や、そうした連中の利益を代弁する「専門家」にとっては、そうした小手先の政策が収益に直結するため、いままさにテレビ等で放映されている通りに大騒ぎしていますが、本質においては、トランプ氏もクリントン氏も大差ないのです。
(中略)
トランプ氏は、労働者の「期待」に応えることはできないでしょう。このことこそが、長期的に見て労働者階級にとって福音となります。クリントン候補のような「明らかに既得権益層」が見限られたのにつづき、数年以内に「改革のビジネスマン」が見限られるのは間違いないでしょう。「政治改革」がついに行き詰まり、それが幻想に過ぎないことが白日の下に晒されるのです。

「政治改革」などという小手先の小細工の行き詰まりこそが、「社会総体の大改革」への道を切り開きます。経済、社会、思想文化を含めた社会総体の構造こそが、いまの閉塞感の元凶であることを否応なしに認めざるを得なくなるのです。「トランプ後」こそが、いよいよ労働者階級にとって正念場になるのです。
もちろん、明らかに目指すものが異なっているリベラリストたちとプログレッシブたちが同じ党で奇妙な「同居」をしている事実は、リベラリストはすでに独りでは立ち上がれないくらいに足腰が弱ってしまったが、かといってプログレッシブもまだ独り立ちできないくらい未熟である事実を示しています。現時点ではこれを過大評価してはならないでしょう。

また、NHKが報じているとおり「社会主義」を巡っては「世代の分断」が指摘されています(『連載・経済とアメリカ大統領選挙』第6回・“社会主義”に象徴される世代の分断 2020.10.23)。加えて私は、左記NHK記事を見るに、「ここでいう『社会主義』の指し示すものが判然としていないので、たぶんアメリカでは『社会主義』の定義が固まっていないのだろうな」と考えるところです。フワッとした「社会主義的なもの」が少しばかり注目を浴び始めたくらいのものです。

プログレッシブは、決して無邪気に飛びつくべきものではありません。しかし、やはり「あのアメリカ」でも「社会主義」が話題になる時代になったのです。

チュチェ思想を信奉する主体的社会主義者として私は、リベラリズムは論外ですが、プログレッシブについても不十分さが目立つように考えています。しかし、何もやらないよりは少しでも前に進めた方が良いに決まっています。また、あのアメリカで「民主社会主義」を公然と掲げる勢力が出てき始めたことは注目に値するでしょう。そして、プログレッシブとBLM運動の文革騒ぎとのつながりが指摘されるところではあるものの、一応、民主党内のリベラリストと同居できているあたりにも注目すべきでしょう。はしゃいではならないものの、注目すべき事態なのです。
ラベル:政治
posted by 管理者 at 19:24| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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