GoTo「即刻中止を」 病院団体果たしてGoToキャンペーンを一時停止すれば人の往来が減少するのか、疑わしいようにも思われます。
12/11(金) 15:52配信
時事通信
日本病院会(相沢孝夫会長)は11日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、需要喚起策「Go To」キャンペーンの「即刻中止」などを国に求める声明を発表した。
(以下略)
GoToキャンペーンはあくまでもキャンペーンであり、補助金を出すから旅行に行こうという「呼びかけ」です。このご時世に旅行に行くという意思決定をしているのは各個人です。まさか医師会の医者たちは、普段の診療のように「先生」がいうことであれば、国民は自発的に従うとでもお考えなんでしょうか? 政府が「呼びかけ」をすれば国民は言うことを聞く、「お上」は「下々」を操れるとでもお考えなんでしょうか?
診療の場面で「治療方針」という医者の「呼びかけ」に対して患者が自発的に従うのは、既に疾病により苦痛を感じており、それを和らげたいからです。そのため、たとえば、ほぼ症状が治まった患者は医者が「薬は最後まで飲み切るように」と指導しているにも関わらす飲み残すことがよくあります。夜間救急外来で「一晩分の薬は出すので、明日必ずかかりつけ医に診てもらってくださいね」と言われて守らない人も多いものです。健康診断で医者の勧めを聞かない患者も多いものです。
1億3000万人の国民のうちほとんどは新型コロナウィルスには罹患しておらず、内心どこかで「そうはいっても自分は罹患しないだろう」と思い込んでいます。「誰もがかかりうる病気なんです!」と声高に指摘されていること自体がその証左でありましょう。
だからこそ、医者や政府が幾ら「呼びかけ」を展開したところで、健康診断で医者の勧めを聞かない患者に対するように、あまり響かないと思われるのです。
もちろん、財布のひもが固くなったことによりある程度の遠出は減るでしょうが、このご時世に旅行に行こうとする人は元々アウトドア派でしょうから、遠くに行けなければ近場に外出するだけでしょう。わずかな人出を減らすためにGoToをやめるのは、費用対効果の面で意味があるのでしょうか?
他者にその意思に反しても一定の行動させる/させないように強いる力を政治学では「権力」といいます。かつてダール(Robert Alan Dahl)は「Aの働きかけがなければBは行わないであろうことを、AがBに行わせることができたとき、AはBに対して権力を持つ」と指摘しました。権力行使のためには、強制力と権威が必要だとされます。「組織」というものは、その内部が強制力と権威によって規定された典型的な社会集団ですが、日本社会はそこまで高度に組織化されていません。
携帯電話の位置情報データから推測される繁華街等への人出を見るに、国民はもうGoToがなくても外出をやめることはないでしょう。東京都民が新宿に行くのにGoToは使わないし、大阪府民が梅田に行くのにGoToは使いません。
国境封鎖・都市封鎖を提唱して強制的に人の往来を停止させるべきだというのならば、まだしも、キャンペーンでしかないGoToキャンペーンを一時停止したところで人の往来が減るとは思えず、むしろ都市部を中心に「近場で楽しむ」が増え、問題の感染拡大防止・医療資源逼迫阻止には、さしたる効果があるようには思われません。
単なる「象徴」にしかならないように思われます。それともむしろ、国境封鎖・都市封鎖に向けた地ならし?(さすがにそんなわけないか)