2021年03月08日

あなたの心の中のブラック企業経営者マインドと組織運営における組織指導、とくに人事権行使の死活的重要性

https://news.yahoo.co.jp/articles/5e495b215e65cfe90393941f31958037c5afc498
みずほ銀、3度目のシステム障害 揺らぐ信頼性
3/1(月) 21:41配信
産経新聞

 みずほ銀行は2度の大規模障害を経て、10年近く費やして刷新した基幹システムを一昨年に稼働させたが、3度目を防ぐことができなかった。昨年には複数の電子決済サービスを使った不正な預金引き出しがあったことも明らかになり、金融機関に最も求められる“信頼性”は揺らいだままだ。

(以下略)

■あなたの心の中のブラック企業経営者マインド
大騒ぎになった先週のみずほ銀行のシステムトラブル。騒ぎがここまで大きくなってしまったのは、非常時の社員動員体制、つまりBCPが徹底されていない点(さすがに「BCPが存在しない」なんてことはないはず・・・)にあったように思われます。会社組織の問題ということです。

この点を追及しなければならないはずであるところ、しかし、「社員は、会社の非常時には自発的に駆けつけるべきだ」といった職業倫理・道徳論的なコメントが目立っています
何よりも論外なのはトラブルが起きているのに行員が対応せず、カードや通帳を呑み込まれた被害者が他の来店者に「故障している」と注意して更なる被害を食い止めていたという事実

トラブル対応のための日曜日出勤がそんなに嫌なのですか
トラブルが起きた事よりも、トラブルを軽視している姿勢の方が問題だわ
単に使用不能なだけじゃなくカードや通帳が呑み込まれたんだから、行員が駆けつけてお客様対応するのは普通だろ。
連絡先を聞いて後日自宅まで届けるぐらいは普通の民間企業はするよ。
どんな担当職であっても、トラブルがあったらまっさきに自分の担当支店や本店にかけつけるのが当たり前だと思います。それで何ができるかわかりませんが、少なくとも謝罪し、お名前と連絡先をメモして、通帳やカードを速やかに戻すことを約束するだけでも違います。

一般的に銀行の支店長は偉そうで、とてもそんなことをしそうもない人を見かけますけれども……

休みとか関係ないですね。
トラブルの時は寝食を削ってでも即応するのが基本です。
この手の主張の背後にあると思われる「『普段の担当職務』なんて客には関係ない、客からすれば『みんな、みずほの社員』だ」というのは、一面においては疑いのない正しい言い分です。以前から、戦闘的な左翼労働運動批判などにおいて繰り返してきたように、こんにちの市場経済においては、企業と従業員は「呉越同舟」に会社共同体を形成しており、顧客を無視した労使の内紛は「企業そのものの競争淘汰」という形で「呉越共倒れ」になりかねません。「普通の会社」であれば、顧客無視は回り回って自分の首を絞めることになるので、各従業員は、会社共同体単位で行動するものです(そういった「経済システム」を理解できない手合いが、安易にストライキ云々と騒いでいるわけです)。

しかし同時に、この手の言い分は、ブラック企業の経営者の発想と寸分もたがわないものであるというのも疑いのない事実です。ワタミ会長が典型的ですが、彼らは雇用が労働市場における商売であることを無視し、際限のない労働を職業倫理や道徳の問題として正当化してきました。

近年、一般論的な文脈では、「土日時間外の労働には、それ相応の対価・待遇があってしかるべきだ」という機運が高まりつつあったところですが、自分自身が割を食う展開になるや否やこのように、職業倫理や道徳論的な説教が噴出するあたり、依然として日本社会そのものが「ブラック企業」的な価値観:商売相手の都合などお構いなしに自分の都合しか考えない風潮が蔓延していることが推察されるところです。

チュチェ104(2015)年10月26日づけ「学校教育がブラック経営者・ブラック資本家を人格的に準備する;教育カリキュラムとしての、軍隊社会としての「ブラック部活」」でも論じましたが、そもそも同じ社会で同じ教育を受けてきた人々がのうち、ある人々はブラック経営者・ブラック資本家になり、ある人々は奴隷的労働者になっている事実は、現代日本の教育課程・学校社会段階にこそ、企業社会段階におけるブラック経営者・ブラック資本家を人格的に準備する要素があると言わざるを得ないことを示しています。そのことはすなわち、いまブラック企業において奴隷的労働に就かされている人物も、いざ事情が変われば、ブラック経営者・ブラック資本家のような搾取階級になり得るといわざるを得ないということ、より平たく言えば、日本社会そのものがブラックな価値観で動いているということに他ならないわけなのです。

■労使も商売、従業員に開き直られて辞められたら終わり
だいたい、「『普段の担当職務』なんて客には関係ない、客からすれば『みんな、みずほの社員』だ」というのならば、「『みんな、みずほの社員』だなんて関係ない、自分は与えられた職務を担当するだけの権限と給料しかもらっていない」とも言えます。もとよりメガバンクは以前から大量採用・大量離職が大前提。全員が全員そうだと言うわけでは決してありませんが、勤め先が商売上の信用を失ったところで、どうせ遠からず足を洗う予定の社員にとっては関係のないことで、会社のトラブルだからといって自発的に馳せ参ずることはないでしょう。

企業と顧客の関係が商売の関係であることは勿論ですが、企業と従業員の関係もまた商売の関係であるということを忘却してはなりません。「客には関係ない! 会社の一員として働け!」と顧客が吠えたところで、「私にも関係ない! 会社なんか潰れてしまえ!」と返されたら、それまでです。「お客様は神様」などと持ち上げている消費資本主義社会において忘却されがちなことですが、「他人に何かを実行させる」というのは本来的には難しいことなのです。

■組織運営における組織指導、とくに人事権行使の死活的重要性
組織のパフォーマンスはひとり一人の構成員の士気や能力に大きく負っており、彼らの士気・能力をいかに「引き出す」のかが重要になりますが、BCPの次元で考えた場合には、ひとり一人の構成員の士気や能力に頼るのではなく、士気や能力が低い人材をいかにして「使う」かが重要になります。BCPは「成果を挙げること」を目的としているのではなく非常事態における「業務の継続」が目的なので、いまあるリソースを、どのように応急運転的に使うのかが焦点になります。

こうした現象を職業倫理や道徳問題として批判することには、とくにBCPが発動するような非常事態においては、なんら意味のないことでしょう。与えられた条件:士気や能力の低い構成員を使いこなして「業務継続」という組織目標を達成すること以外に頭を使うのは、ましてや職業倫理や道徳問題の説教に時間を費やすのは、非常事態において為すべきことではありません。

また、非常事態に一段落付き「反省会」を開く段階においても、大活躍した構成員を表彰することに意味はあっても、士気・能力を十分に生かしていたとは言い難い構成員に職業倫理や道徳問題の説教を垂れることには、あまり意味はないでしょう。士気の低い人にいくら説教を垂れたところで改心するはずがないし、能力の低い人にそのことを責めたところで努力する決心を抱くことはあっても急に有能になるはずがありません。辞めさせることができないのなら、そういう人材を抱えた条件のもとで組織運営を続けるしかないのです。

もとより組織運営の要点は、「使えない人」に「おまえは使えない奴だ!」と言うことではなく、使えないなりに配置を工夫して使いこなすことで、少しでも組織全体の利益にとってプラスの結果を搾りだすところにあります。ここに組織運営における組織指導、とくに人事権行使の死活的重要性があります。

平時における士気・能力の発掘によるパフォーマンスの向上、非常時における所与の条件をフル活用することによる最低限の業務継続。すべて組織としての体制づくりが根本にあります。個人の滅私奉公的な努力や超人的な頑張りに目が行きやすいものですが、その背景には組織運営・組織指導があるのです。

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posted by 管理者 at 20:42| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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