2021年05月05日

現実をカテゴライズして静的に「理解」することの政治的誤りについて

https://news.yahoo.co.jp/articles/910e3571fd1e5bb73b52473a1adda2615483d0b3
トランプ前大統領「私はワクチンの父だ」 バイデン大統領のアピールに“対抗”
4/30(金) 14:41配信
ABEMA TIMES

 トランプ前大統領が「私はワクチンの父だ」と主張した。

 アメリカのトランプ前大統領は『FOXテレビ』の電話インタビューで、アメリカのワクチン接種状況について「私が大統領でなければ5年間はワクチンにありつけなかっただろう」「私はワクチンの父だ」と訴えた。バイデン大統領が28日の議会演説で、新型コロナのワクチン接種が2億回を超えたとアピールしたことに対抗した形だ。

 
(以下略)
意外と多くの人が忘れているようですが、トランプ氏は選挙期間中からワクチン早期供給に意欲を示していました。それが経済大統領として再選する為の鍵と思っていた節があります(供給・接種計画は具体的ではなかったようですが)。投票日前に成果を示したいあまりトランプ氏は、かなり拙速な見通しを展開したために対立候補だったバイデン氏から「いい加減なことをいうな」と、たしなめられたくらいでした(「バイデン氏、コロナワクチン巡るトランプ氏発言を批判 2020年9月18日 ロイター通信」)。

そして、退任後も「皆に接種を勧める」と述べていました(「トランプ前大統領、国民にワクチン接種を呼び掛け」 2021年3月17日 CNN)。その点、「ワクチンの父」を称するのはいつもの誇張ですが、少なくとも「推進派である」とは言えるでしょう。

これにて、トランプ嫌いのあまりしばしばハチャメチャなことを口走ってきた猪瀬聖・元日本経済新聞ロサンゼルス支局長に代表される下記言説は完全に封じられたというべきでしょう。
https://news.yahoo.co.jp/profile/commentator/inosehijiri/comments/16146633044528.ca0c.27514
国民に対して新型コロナの重大さを否定し続けてきた手前、さすがに自らのワクチン接種の事実を公にはできなかったのだろう。チキン(弱虫)とのイメージを与えてしまうと、大統領選への再出馬のシナリオも狂う。トランプ氏に関しては、歴代最低の大統領と評価する専門家も多いが、今回のニュースも、その評価を裏付ける一つのエピソードとして使われそうだ。
はじめからトランプ氏はワクチン開発・供給・接種に再選の命運をかけて来、ある意味「ワクチン頼み」だからこそコロナ軽視に拍車がかかったという観さえあったのだから、猪瀬氏の言説はそもそも大間違いの見立てですが、大統領選挙の「どさくさ」に紛れてトランプ氏のワクチン観が分かりづらかったことも事実です。しかし、今回ここまで本人が明確にワクチン推進の立場を鮮明にしたのだから、上記言説はトランプ批判の道具としてはもう使えないでしょうね。

他方、NHKBSの「国際報道2021」は「集団免疫の達成に立ちはだかるトランプ支持者たち」を予定しているといいます(https://www.nhk.jp/p/kokusaihoudou/ts/8M689W8RVX/episode/te/VN7XGYPY1J/)。情勢判断を誤りそうな題名であると言うわざるを得ないでしょう。推進派のトランプ氏本人と懐疑派のトランプ氏支持者――「事実」は、いわゆるトランプ派が決して一枚岩でなく離合集散を繰り返す運動体であることを示唆していますが、「国際報道2021」編集部は、未だにカテゴライズして静的に「理解」しているわけです。

かつてキム・ジョンイル総書記は「一人では将軍になることはできません」と仰いました(『党のまわりに固く団結し新たな勝利のために力強くたたかっていこう』チュチェ84・1995年1月1日)。政治は領導芸術とも言いますが、領導の芸術性の高さは、刻一刻と変化する情勢下で様々な動機を持った人々を運動体として指揮するところにあると私は考えています。その点、人々をカテゴライズして静的に「理解」するのは、政治が運動体であることへの理解不足と考えられます
ラベル:メディア
posted by 管理者 at 20:37| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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