2021年12月11日

言うは易く行うは難し

https://news.yahoo.co.jp/articles/3d16ef370aa944f6225476b78b7d0aacb7756aa4?page=2
ウトロ地区放火事件、Yahoo!ニュースのコメント欄には肯定する投稿も ヘイト対策は“排除”だけでなく“包摂”を
12/8(水) 12:07配信
ABEMA TIMES

(中略)
 さらに、(注;在日韓国人の徐東輝弁護士は)ヘイトスピーチをしていた当事者に話を聞いた際のエピソードを紹介した。

 「“韓国人が嫌いだから”ということではなく、“所属しているコミュニティ内で自分が承認されていない、抑圧されているという感覚があった”と言っていた。なんとか認められようという中でオンラインでヘイトスピーチや誹謗中傷をしてみると、リツイートや“いいね”で承認欲求、快楽が得られてしまう。そこから“韓国人はダメなんだ。中国人はダメなんだ”という凝り固まった考えになっていったようだ。そういう話をオフラインでしっかり聴いた後は、泣きながら“二度とヘイトスピーチをしない”と言って握手をしてくれた。“この人たちが言っていることは嘘だから”“誹謗中傷だから”といってAIなどを使ってコンテンツを排除するだけではなく、社会的に承認されている、包摂されているという感覚を作っていくことは、すごく長い道のりに見えて、実は最短距離なのかもしれない」。(『ABEMA Prime』より)
たしかに、なぜヘイトスピーチを口にするに至ったのかについて突き詰めること、そして、ヘイトスピーチを口にする人であっても包摂する方向で対応する姿勢は非常に重要であります。怒りを原動力にすることは非常に危険なことです。当ブログでは以前から、偉大な首領;キム・イルソン同志の談話やチュチェ思想国際研究所事務局長の尾上健一氏は著書を引いて、相手方を打倒する方法論・文化大革命的な方法論を批判してきたところです。

キム・イルソン同志は次のように指摘されています。
社会主義革命をおこなうときの階級闘争は、ブルジョアジーを階級として一掃するための闘争であり、社会主義社会での階級闘争は、統一団結を目的とする闘争であって、それは決して社会の構成員を互いに反目し、憎みあうようにするための階級闘争ではありません。社会主義社会でも階級闘争をおこなうが、統一と団結を目的とし、協力の方法で階級闘争をおこなうのであります。
キム・イルソン(1967)「資本主義から社会主義への過渡期とプロレタリアート独裁の問題について」『金日成著作集』第21巻、外国文出版社p282

尾上健一氏は次のように述べています。
これまでの社会運動は対立物の闘争と統一の法則や矛盾論にもとづいていたため、対立や矛盾をさがしだすことが重要視されてきました。

新しい社会を担う人間を育てることに力をいれるよりも、敵を見つけていつも誰かを敵にしてたたかうことに関心がむけられたのです。

労働者が政権をとった新しい社会になってからも、労働者同士で対立する事態が生じました。なかまを信じられずたがいに協力しない社会が人間の理想社会といえるでしょうか。

(中略)
支配層にたいしてだけではなく、なかまや大衆にたいしても闘争対象とみる傾向があります。

対立物の闘争と統一の法則は、自然にたいしては部分的に適用されても、人間と社会に適用することはできません。

資本主義社会をこえてもっとよい世界をつくろうとするときに、対立物の闘争と統一の法則を適用することはむしろ弊害になります。
立場を異にする相手方に対して打倒の姿勢で接すれば、相手方だって経緯があってその立場に立っているのだから、必然的に意固地になるものです。ヘイトスピーチを何故乗り越えなければならないのかといえば、多様性ある社会の統一団結のためであります。その点、「社会主義社会での階級闘争は、統一団結を目的とする闘争であって、それは決して社会の構成員を互いに反目し、憎みあうようにするための階級闘争ではありません」というキム・イルソン同志の綱領的ご指摘は、ヘイトスピーチへの対応にもそのまま活きるべきものでありましょう。

また、尾上氏の指摘を出発点とすると、「敵を打倒する」というスタイルは、それが癖になってしまったとき、ありもしない「敵」をデッチ上げて不要な内部混乱を引き起こすことにもつながります。どうしても戦わなければならないときは戦うべきですが、戦いが選択肢の筆頭に置かれているようでは、常在戦場的な不信感が四六時中ぬぐえない精神的に不安定な状況が永続することでしょう。また、不必要に戦いの火蓋を自ら切ってしまうことに繋がります。その最たる例が、「階級闘争激化論」の唱道者;スターリンでした。常に猜疑心と恐怖に取り憑かれておりどう見ても幸せそうには見えず、居もしない「敵」との戦いの過程でおびただしい人命を無意味に奪ったのがスターリンでした。尾上氏が指摘するように、「なかまを信じられずたがいに協力しない社会が人間の理想社会といえるでしょうか」?

その意味で私は、徐東輝弁護士の主張は正しい主張だと賛同するところです。しかしながら、実際問題としては非常に「割り切り難い」のではないでしょうか? ヘイトスピーチとは一理もなく擁護の余地のない全面的に間違った主張です。糺したくなるのが人情というものでしょう。また、こちらも感情のある人間ですから、面と向かって自分に対して罵詈雑言を浴びせかけてくる手合い、自分の人格と存在を全否定する暴言を浴びせかけられて顔色一つ変えないのは難しいでしょう。ヘイトスピーチに対して「破邪顕正」モードに入らないでいられる聖人君子がいったいどれだけいるというのでしょうか?

こんな記事がありました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/349f494225feb6068fe62e338d621178b23f8e57
朝日新聞「天声人語」への“筋違い”の批判ツイート。原文、ちゃんと読んでる?
11/19(金) 8:54配信
週刊SPA!

激しいツイートは筋違いだった
《朝日新聞、狂ったか
 「天声人語」も地に落ちた
 私なんかに言われてどーすんのよ。ってか、ひどすぎる。》

 ツイッターにずいぶん激しい書き込みを見つけました。このツイート主さんと面識はありません。

「だいぶキツくやられてるなあ。まあ言論機関だからいろんな批判があるのは宿命だよね」

 そう思って同じ方の次のツイートを見ると……。

《だって、与党と野党を比べたら、「野党におきゅうをすえるべき」って言ってんでしょ? もう、わざと何かを曲げて書いてるとしか思えないよね。》

 うん? これって11月13日の「天声人語」(『朝日新聞』朝刊1面に連載中のコラム)のこと? そんなこと書いてたっけ? 確かめてみると、こうでした。

《衆院選でおきゅうをすえられたのは、与党ではなく、共闘した野党だったのかもしれない。》

 別に『朝日新聞』の味方をするつもりはありませんけど、これは意味が違うでしょう。ツイート主さん、違いますよ。「野党におきゅうをすえるべき」とは書いてなくて、選挙結果から見て、共闘した野党が「おきゅうをすえられたのかも」と書いています。

 もちろん「おきゅうをすえられたという表現は適切ではない」という批判はあり得ますけど、相手が書いてもいないことを「書いている」と言って非難するのは筋違いです。

怒りのあまり意味を取り違えた?
 このツイートに悪意はないと思います。ではなぜこんな誤解が起きたんでしょうか? 一つには、「天声人語」の趣旨が、衆院選で野党共闘が敗因だったとも読めるので、共闘を支持する人の強い反発を買ったのだと思われます。その思いのあまり、おきゅうを「すえられたのかも」という“分析”の言葉を、「すえるべき」という“主張”の言葉と取り違えたのかもしれません。

 でもこれでは意味がすり替わってしまいます。それこそ「わざと何かを曲げて書いてる」ということになってしまいます。

 それに「天声人語」を最後まで読むと、日々の地道な活動の大切さを語ったうえで「与野党伯仲も政権交代も、その先にしかありえない」と締めくくっています。おきゅうをすえる云々が結論ではありません。

(以下略)
怒りのあまり意味を取り違えた?」――私もネット上での議論に首を突っ込んでそれなりの歳月が経ちましたが、びっくりするような文意の取り違えを何度も見てきました。そして、取り違えている人はたいてい、議論の相手方に激しい敵愾心を持っているものです。

政治報道でしばしばみられる「発言の一部だけを切り取って叩く」という現象;ストローマン手法は、実は怒り・敵愾心のあまり本気でやってるのかもしれません。やはり、怒りを原動力にすることは非常に危険なことです。

ヘイトスピーチや罵詈雑言に腹を立てていても仕方ないというのは頭では分かることです。方向性としては徐弁護士の指摘は正しいものですが、実践は非常に難しいものと考えられます。もちろん、だからといって諦めてはなりません。この事実を踏まえたうえで修養に努めることが重要だと思っています。私もちょっとやそっとのことでは怒らないように頑張っています。また、戦うべきか戦わざるべきかは、他人の意見や過去の事例の分析から導出される「相場」及び主体的な情勢分析から慎重に判断するようにしています。

私の個人的秘訣は「何でこんなこと言うんだろう?」などと疑問を持つことにあると思っています。これだけで少しは冷静になることができます。支離滅裂な怒りの主張に対しては「かわいそうだな」と思えるようになってきました。もちろん、「相手を哀れむ」というのは「相手を見下している」のとほぼ同義であり、相手を彼岸を押やることに繋がるので、その点は十分に留意が必要ですが。
posted by 管理者 at 19:41| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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