【火星17型】米専門家「今回のミサイル発射に進展はない」冷静さを装いつつも動揺を隠しきれない分析。「き、北朝鮮なんて大したことないもんね!」という強弁にも見えないこともない元米国務省人士であるヴァン=ディーペン氏の米政府系「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)とのインタビュー。
ニュースリリース| 2022年03月27日(日)
2022年3月24日に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射において「大きな進展がみられる」とは思えないと、元国務省国際安全保障・不拡散局拡散対抗担当筆頭次官補のヴァン・ヴァン=ディーペン(Vann Van Diepen)氏は述べました。ヴァン=ディーペン氏はVOAとのインタビューで、北朝鮮がすでに2017年にアメリカに到達できるICBMを2回発射していると前置きしたうえで、こう述べました。
また、現在の北朝鮮のミサイル戦略を世界4位と評価し、ミサイル技術の相当部分を旧ソ連から獲得し、中国からは部品と原資材などをつねに調達していることは明らかだと指摘しました。2009年から16年まで、国務省筆頭次官補を務め、国家情報局長室で大量殺傷兵器担当官を務めるなど、アメリカ政府で34年間、大量殺傷兵器を扱った見去る専門であるヴァン=ディーペン氏に、チョ・ウンジョン記者がインタビューしました。
――北朝鮮が3月24日にICBMを発射しました。北朝鮮はこのミサイルが最大高度6248キロメートルまで上昇し、1090キロメートル、67分間飛行したと発表しました。今回の発射は大きな進展を意味しますか。
大きな進展だったとは思いません。重要なことは、このミサイルがアメリカに到達できると思われることですが、北朝鮮はすでに2017年にそのような能力を持つICBMを2回発射しました。今回のミサイルは、大きさがより大きく、より重い搭載物を載せてそれなりに飛行できるということがちがいます。このミサイルは北朝鮮が開発したいと明らかにしてきた多弾頭を装着できる選択権を与えるものです。
――北朝鮮が頭技術を完成させたのでしょうか。
北朝鮮はまだその技術を試していません。2021年1月、金正恩は多弾頭誘導技術を研究していると言及しました。しかし、多弾頭には2つの種類があります。より簡単なものは「多弾頭最新入体(MRV)」であり、いくつかの子弾が1つの目標地域に分散して着弾するものです。
より精巧な技術は「個別誘導多弾頭再突入体(MIRV)」です。小さなロケット段階を活用して子弾が個別に操縦され、それぞれの最進入体が個別的に移動します。したがって、より遠く離れた目標物をより正確に打撃できるというものです。北朝鮮が2つのうちどちらの技術を推進しているかはわかりませんが、MIRVを完成させるためには多くの実験を繰り返さなければなりません。われわれはまだ、それほどの実験を目にしていません。
(中略)
――北朝鮮のミサイル戦力は、世界でどの程度だと評価されますか。
評価は難しいですね。アメリカやロシア、中国ははるかにレベルが高く、有能なミサイル戦力を持っていることは明らかです。これ以外には、ミサイルの数で見ると北朝鮮とイランが次のレベルにあるでしょうか。私は北朝鮮をイランより上にあると見ています。北朝鮮は実際にICBMと潜水艦発射ミサイルを試験しました。また現時点で、より多様なミサイルを持っています。北朝鮮は世界4位とみることもできます。
――北朝鮮のミサイル開発のスピードがとても速く、多くの技術を外部から取り入れているとの分析もあります。1980年代、国務省でソ連の戦略軍を分析した経験をお持ちですね。この点について、どのようにご覧になりますか。
北朝鮮のミサイル戦力についてよく知られていない部分は、いつ、どのように技術を、誰から輸入したのかということです。明らかに北朝鮮のムスダンミサイルはソ連のSS-N-6潜水艦発射弾道ミサイルと似ており、KN-23短距離ミサイルはイスカンデルのように見えます。北朝鮮がミサイル技術の相当部分を旧ソ連から獲得したことははっきりとわかります。
火星17、12、14、15型に使われたエンジンも、旧ソ連のロケットエンジンととても似ているように見えます。また中国からは部品や原資材、化学品を絶えず調達していることは明らかです。これらすべてのことが、北朝鮮のミサイル開発に大きく進展を与えました。
――北朝鮮のミサイル開発は今後、どのような方向に進むでしょうか。
北朝鮮にとって、それは技術的、軍事作戦の問題というよりは、政治的な問題です。北朝鮮指導部がどのようなメッセージを出したいのか、どのような能力を誇示したいのか、国際社会の反発にどれだけ心配するのか、これらすべての要件が次にどう動くかを決定するでしょう。
はっきりしていることは、北朝鮮は核兵器保有国として見られることを望み、核ミサイル能力を維持しようとするだろう、ということです。また弾道ミサイルは北朝鮮にとって、とても重要な在来式戦闘能力になりました。現代的な空軍がないという点を補完します。北朝鮮は明らかにミサイルを通じて政治的メッセージを出すだけでなく、信頼できる抑止力、在来式戦争遂行能力を持とうとしています。(以下略)
「私は北朝鮮をイランより上にあると見ています」とのことですが、アメリカがかくもイランを目の敵にしつつも、武力で打倒できないがゆえにしぶしぶ外交的な枠組みの形成に尽力してきたところを見ると、それ以上の実力を持っている対朝鮮外交については、遠くないうちにイラン並み・またはそれ以上の形での外交的妥結の可能性があるということになるでしょう。