金平茂紀氏「頭がクラクラした」感情的なやり取りも「報道特集」露大使を1時間取材ジャーナリストの金平茂紀氏は今回、「頭がクラクラした」したそうですが、私は金平氏が出演するTBS系『報道特集』の「ウクライナ国営放送日本語版」っぷりに開戦以来ずっと「クラクラ」し続けています。
4/9(土) 19:26配信
デイリースポーツ
ジャーナリストの金平茂紀氏が9日放送のTBS「報道特集」に出演。ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使にインタビューした様子を放送し、「頭がクラクラした」と感想を述べた。
金平氏がガルージン大使を取材したのは7日で1時間以上行ったという。ガルージン大使は一貫してロシアはウクライナの軍事施設のみを攻撃し、民間施設は攻撃していないと主張。ロシア大使館が編集したというブチャでの映像を提示し「遺体もがれきもない」と話した。病院や学校が砲撃にあったと追及されると「一般人が追い出され、軍事施設になった」と言い放ち、金平氏と口論寸前となる場面もあった。
スタジオで取材を振り返った金平氏は、「かなり感情的なやり取りになった場面もあった」と明かした。特に、ガルージン大使が「特に『民間人の被害は自作自演。でっち上げ』という言葉を目の前で実際に聞いていると頭がクラクラして、正直言って鈍い衝撃があって、不条理という言葉が心に浮かんだ」と感想を言葉にした。
(以下略)
この1か月あまりの日本における戦況報道は、「ウクライナ国営放送の戦意高揚モノか?」と思わずにはいられないシロモノ溢れかえっていました。キエフやオデッサでバリケードを作ったり土嚢を積み上げたりする市民の姿を報じる記事を見て私は、Der Untergang(邦題;ヒトラー最期の12日間)のワンシーンを思い出さざるを得ませんでした。ベルリン市街戦直前に88ミリ砲の前で意気揚々とソ連赤軍戦車撃破の決意を述べる少年少女と、その甘い見通しに激怒して帰宅するよう叱り飛ばす、おそらく従軍経験のある壮年男性とのやり取りのシーンです。
その中で特に驚いたのが、金平氏の『報道特集』3月12日及び3月26日の放送回。フジ・サンケイ系ならまだしも、普段のリベラルなTBSの報道姿勢とは真逆の、きっとウクライナ政府が見せつけたいと思っているであろう「美しき挙国一致」の姿が何らの批判的視点もなく公共電波に流されていたのです。「北朝鮮報道」であれば、共和国側の案内員の説明にほとんど揚げ足取りのようなくだらないナレーションを入れて「これこそが批判的ジャーナリズムだ」などと宣っているのに、ゼレンスキー大統領に忖度した訳です。
3月12日放送回(「特集アーカイブ 日本人ジャーナリストが見た首都キエフの今 (2022/03/12)」で視聴可能)は、ちょうどキエフ攻略秒読みと皆が思っていた頃合いだったこともあり、市民がバリケードを設営したり土嚢を積み上げたりする姿を放映していました。普通の神経を持つ人であれば、これから始まるであろう戦闘に不安がないはずがありませんが、非常に戦意が高く勇ましい「市民の声」だけが放映されていました。プロパガンダ臭しかしません。
そもそも、あのタイミングでの取材で現地の真の姿を本当に撮れると思っていたのでしょうか? 今回の戦争においては、ウクライナは国際世論を味方につけて援助を引き出さなければ勝ち目はありません。プロパガンダを発信する動機に満ち満ちているわけです。そんな背景のもとでの「決戦直前の地」の取材にウクライナ当局が関与していないはずがありません。また、とりわけ今回の戦争の相手はロシア。弱みを握ったり買収したりしたジャーナリストを使って偵察させることくらい当然にやることは、かつてソビエト連邦で「兄弟国」としてやってきた経験からよくよく知っているはず。自由な取材行動は二重の意味であり得ないはずです。
せめて、プロパガンダ臭の満ち満ちた現地取材を中和するようなコメントをスタジオあるいはナレーションで差し込めばよかったものを、いっさいありませんでした。これがもし「ピョンヤン現地取材」であれば、「顔が引きつっていた」とか「勇ましいことを言ってはいるが、かなりの食糧不足のさなかである」いった、ほとんど揚げ足取りのような印象操作的なナレーションが必ず挿入されているであろうところです。
3月26日放送回(「特集アーカイブ 深刻化するウクライナ人道危機・最前線緊急レポート (2022/03/26)」で視聴可能)に至っては、「ウクライナ危機の”原点”」とする特集の中で、「市民の団結(が)ロシアに抵抗」というテロップを出した直後に、あるウクライナ人画家の「多くの人が協力すれば大きな力になることを知った。マイダン革命の後、ウクライナ国民はどんな敵に対しても恐れることはなくなった」という、おそらくゼレンスキー氏が100点満点を付けるであろう発言を無批判的に報じました。
今回のインタビューは「虐殺は「自作自演のでっち上げ」民間人の死者は「ウクライナ政府の無責任な政策の犠牲者」駐日ロシア大使が語った“認識”【報道特集】」(4/10(日) 13:20配信 TBS系(JNN))で一部文字起こしされていますが、そのなかで「ウクライナでは、マンションがミサイルの攻撃を受けたりショッピングモールが爆撃されたりするなど数々の民間施設が被害を受けている」というくだりがあります。このうち、マンションに対する攻撃についていえば、軍事ライターのJSF氏が次のような記事を発表しています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20220304-00284973
ロシアとウクライナのプロパガンダ合戦、ミサイルの正体について開戦早々のキエフの民生施設に対するミサイル攻撃ということで、TBSを含めこの報道は非常に大きく取り上げられましたが、軍事的に解析するとこのような可能性があるわけです(ちなみにJSF氏が事実を曲げてまでロシアの肩を持つなんてことはあり得ないので、むしろ信憑性があるというるでしょう)。しかし、このことを日本メディアで報じたところがあったでしょうか? ガルージン駐日大使の抗弁も苦しいところがありますが、金平氏には引き続きクラクラせざるを得ないところです。
JSF軍事/生き物ライター
3/4(金) 23:22
戦争になると敵味方の双方がプロパガンダ合戦を始めます。独裁的な国ほどプロパガンダの嘘が酷くなる傾向がありますが、民主的な国でも全く嘘を吐かないとは限りません。
現在行われているウクライナ戦争でもロシアとウクライナのプロパガンダ合戦が幾つも行われています。此処では駐日ロシア大使が提示した2つの事例を検証してみたいと思います。
ガルージン大使は、ハリコフの庁舎への攻撃について「おそらくウクライナ軍による誤射だ」と述べた。さらに、ウクライナの首都・キエフでアパートの一部が破壊されたことについて「我々の軍の専門家や国防省の発表によると、ウクライナの対空防御の関係のミサイル誤射だと確認した」と述べた。
出典:駐日ロシア大使が主張「ハリコフ庁舎攻撃はウクライナの誤射」 占拠の意図なしと強調:FNN(2022年3月2日)
※ハリコフ(ハルキウ)、キエフ(キーウ)。
結論を先に言えばハルキウ庁舎攻撃はロシアの主張が間違っていることがほぼ確定、キーウ高層アパート攻撃はウクライナの主張が間違っている可能性が高いでしょう。
(中略)
空対地ロケット弾は地対空ミサイルよりも固体燃料ロケットモーターの推進剤がかなり少ないので燃焼時間が非常に短く、燃焼中の輝きが見えて白煙を出しているなら発射直後であるはずですが、発射母機である戦闘機は映っていません。この日の戦闘機の目撃例もありません。
高層アパート着弾の動画を見る限り、固体燃料ロケットモーターが燃焼している輝きは強く、吐き出される白煙の量も多く、地対空ミサイルのように見えます。
そうなるとミサイルの形状がはっきり判明しないので断言はできませんが、キーウの高層アパートへ着弾したミサイルは、付近に配備されたウクライナ軍の地対空ミサイルがうっかり誤射してしまった可能性が高くなります。
(以下略)
私がとりわけ許しがたいのは、3月12日放送回で、誰もこれからの首都決戦への不安を口にしなかったことに番組が触れなかった点にあります。もちろん、ウクライナ政府の景気のいい宣伝に乗せられて威勢のいいことを本気で口にしている市民は大勢いたでしょう。しかし、本当は不安と恐怖でいっぱいなのに、外国人ジャーナリストには口が裂けても本音を言えなかった市民だっていたはずです。
ジャーナリズムというものは、こういう無言の本音を掘り起こすところにその使命があるのではないのでしょうか? 政府公式発表なら公式ルートでいくらでも入ってきます。公式発表を垂れ流すだけなら民営メディアなど必要ありません。同じことしか言わないなら一つで十分です。いくつもあっても非効率でしかありません。言論の自由が存在する意義・多様なチャネルが存在する意義とはいったい何なのでしょうか? 民営メディアの存在意義とは何なのでしょうか? 少なくとも私は、公式発表から見えてこない別の切り口を民営メディアが提供してくれると信じてきました。信頼してきました。
かつて筑紫哲也氏は、オウム事件に関連してTBSのジャーナリズムは死んだと指摘しました。情報源を秘匿せず結果的に情報源が殺害されたTBSビデオ問題。情報源の秘匿はジャーナリズムの根本です。これが守られなければスクープは生まれ得ません。また、筑紫氏はジャナーリズムの命は「信頼」にあるとも言いました。このことは、今も昔も未来永劫変わらないことでしょう。
そう考えると、「ウクライナ国営放送日本語版」に成り下がったTBSにジャーナリズムの根本は、オウムビデオ問題とは別の意味ではあるものの、やはり根付いているとはいえず、また、市民が民営メディアを求め、それを信頼している動機にも根ざしていないと言わざるを得ないものです。TBSのジャーナリズムは今もまだ死んだままだと言わざるを得ないでしょう。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/492958
ロシアは21の共和国から構成される連邦国家だ。民族は実に195に及ぶ。
ロシア連邦が、ウクライナ戦争で敗れた場合、ソ連が崩壊した時同様15〜20の国に分裂する可能性を指摘するのはイギリスのシンクタンク『王立国際問題研究所』のアッシュ氏だ。
アッシュ氏の予測よりも辛辣な分裂地図を表したのは、ウクライナ・キーウでコンサルタント会社を運営するマガレツキー氏。戦後ロシアは41の国に分裂するという。
(引用終わり)
報道特集では無いとは言え
>TBSのジャーナリズムは今もまだ死んだまま:「ウクライナ国営放送日本語版」に成り下がったTBS
と言う貴記事の批判がもろに該当するTBSのトンデモぶりです。
勿論「遠い将来には」プーチン失脚→ソ連崩壊のようなロシアの崩壊(というか、チェチェンなど一部の少数民族自治区の独立)があるかもしれない。しかし少なくとも現時点ではそんな兆候は何処にもないでしょう。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/494710?display=1
これまたTBSのトンデモぶりを示す記事でしょう。「引用は省略しますが」ワグネル以外の「民間軍事会社の乱立」を「プーチン体制崩壊に備えて、身の安全を守るため、自分の手駒となる私兵部隊をプーチンの部下たちが整備している」と勝手に解釈した上で「プーチン体制崩壊の予兆か?」とまでタイトルに書くのはまともではないでしょう。
コメントありがとうございます。
「ロシア“41に分裂”の現実味」で語られている内容は、以前、メドベージェフ・元ロシア大統領がツイッターに投稿した「ウクライナの戦後地図」並みに荒唐無稽な内容ですね。
それにしても、「中央アジア共和国」って何のつもりなんでしょうねwかつて、スラブ系ソ連人がなんとなく抱いていたステレオタイプに近しいものがあるような。
少数民族にスポットライトを当てた英「王立国際問題研究所」のアッシュ氏については、ロシア「帝国」の経済的な構造についての分析が甘いように思われます。
マガレツキー氏の言説。まあ、ロシアからの独立を欲する人たちは常にいるでしょうね。
「民間軍事会社の乱立」で語られている内容については、「プーチン体制が本当に崩壊するのかはわからないが、民間軍事会社の乱立はスムータを予感させる現象の1つと言えなくもない」と結んでいるあたり、PV目当てでしょう。