【速報】プーチン大統領「戦争宣言」せず ウクライナ侵攻を正当化コメント欄。専門外の分野に首を突っ込み、素人のヤフコメと同等以下の内容を精力的に書き込んでいる門倉貴史氏と白鳥浩氏の「豪華共演」w
5/9(月) 16:31配信
FNNプライムオンライン
ロシアの首都モスクワで9日、対ドイツ戦勝記念日の式典が行われ、プーチン大統領が演説を行ったが、注目されていた「戦争宣言」はしなかった。
(以下略)
門倉貴史
エコノミスト/経済評論家
プーチン大統領が正式に「戦争」を宣言するのではないかという観測もあったが、それは見送られた。
戦争宣言をすれば、予備役や民間企業など国家総動員を図ることが可能になるが、その一方で国民の反発が強くなる可能性が出てくる。また、戦争宣言は、国内外にこれまでの「特別軍事作戦」がうまくいかず、失敗であったことを公式に認めることにもなり、ロシア軍の士気にマイナスの影響を及ぼす可能性もあった。
戦争宣言のメリットとデメリットを考慮すれば、デメリットのほうが大きいとの判断から、戦争宣言に踏み切らなかったのではないか。
(以下略)
白鳥浩「5月9日の対独戦勝記念日を以ってロシアがウクライナに正式に宣戦布告する」という観測は確かに少し前から取り沙汰されていましたが、あくまでも英米など西側諸国の「分析」に過ぎないものだったはず。ロシア政府筋がそれを匂わせたり、リークしたものではありませんでした。
法政大学大学院教授/現代政治分析
プーチン大統領は「戦争宣言」を行わなかった。
これには様々な意味があるのかもしれない
(中略)
21世紀の戦争は、コストの高いものとなることをプーチン氏も自覚したのではないだろうか。
またしても「北朝鮮」報道と同じ展開。西側が勝手に推測して盛り上がっているに過ぎない出来事がいつの間にか既定路線にすり替り、それが現実のものにならないことが分かるや否や「目論見、外れたり!」と騒ぎ立てる現象。チュチェ106(2017)年4月26日づけ「大規模砲撃演習を「極めて挑発的な威嚇」と認識できない単細胞な「世論」」で私は次のように書きました。
「4月25日核実験実施」という推測がいつの間にか既定スケジュールに脳内変換され、それが現実のものにならないと見るや、さらに脳内補完を強め、相手側の真意をまったく読み違える。自分たちの「推測」に過ぎないものが、いつの間にか「現実」のスケジュールに摩り替わっている・・・日本軍の戦略的敗北の過程――なぜかは分からないが連合国・連合軍の戦術・戦略を決めてかかり、それと異なる兆候を無視する――と瓜二つです。
西側の「分析」関連で次の記事。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1b8ca1662b55ba60ced05ddafe545f5e22527492
【寄稿】 「プーチン氏の前にはもはや種々の敗北しかない」 英の国防専門教授プランAからCまでの整理はたしかに今までの戦況の変遷をなぞったものです。しかしながら、素人考えながらもちょいちょいと違和感を覚えざるを得ません。
5/9(月) 9:44配信
BBC News
ロシアでは毎年5月9日を、第2次世界大戦の対独戦勝を記念する「戦勝記念日」として祝う。モスクワで予定される毎年恒例の軍事パレードなど、各種の祝賀行事でロシア政府が何を主張するにしても、現状はウクライナに対する勝利とは程遠い状態にあると、イギリスの国防研究者、マイケル・クラーク教授は指摘する(文中敬称略)。
もはやこの戦争に、ロシアが有意義な形で勝つことはできない。
(中略)
ジョージア、ナゴルノ・カラバフ、シリア、リビア、マリ、そして2014年にウクライナで2度、ロシア政府は低コストで介入し、相当に有利な立場に立った(2014年にウクライナで2度というのは、まずクリミアを違法に併合したのち、ロシアに従属するルガンスクとドネツクの自称共和国を作ったことを指す)。
どの場所でもロシアは素早く、容赦なく動き、西側世界は段階的な制裁でしか対抗できなかった。西側の制裁に現実を変える力はなかった。プーチンは「現場で新しい事実を作り出す」のが得意だった。
今年2月に彼は、同じことをウクライナで、最大級の規模でやろうとした。人口4500万人の国、領土面積でいうと欧州で2番目に大きい国の、政治的実権を約72時間のうちに奪取しようとしたのだ。驚くほど無謀なギャンブルで、最も大事な第1週で、その賭けは完全に失敗した。
(中略)
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の軍隊や、外の世界が反応できる前に、首都キーウ(ロシア語でキエフ)の政府を支配下におくという「プランA」の実現に失敗した後、ロシア政府は「プランB」に移った。これは「プランA」よりも「作戦展開」を重視する軍事的な計画で、まずキーウを包囲してから、チェルニヒウ、スーミ、ハルキウ、ドネツク、マリウポリ、ミコライウといった他の主要都市を攻略しようというものだった。降伏か全滅かと首都キーウを脅かす間に、ウクライナの武力抵抗をあっさり消滅させようというのが狙いだった。
しかし、これもまた失敗した。陥落してロシアの支配下に入った主要都市は南部へルソンのみで、ここでも住民はロシアの統治に抵抗し続けている。結局のところ、ウクライナほど巨大な国を圧倒的に支配するには、ロシアの軍勢は小さすぎた。
(中略)
戦況の停滞にいらだつロシア政府は、今度は「プランC」に移行した。これはキーウと北部の制圧を諦め、その代わり、東部ドンバス地域からおそらく南西部オデーサに至る南部全域に大攻勢をかけるため、戦力を集結させるというものだ。主要な港湾都市オデーサを含む南岸一帯をロシアが掌握すれば、ウクライナは事実上、内陸国になってしまう。
そして現在、南東部のイジューム、ポパズナ、クルルカ、ブラジキウカなどで展開しているのが、この作戦だ。
ロシア軍はウクライナ軍の統合作戦部隊(JFO)を包囲しようとしている。JFOはウクライナ陸軍の約4割にあたる部隊で、2014年以来、分離派が実効支配するルハンスクとドネスクの自称「共和国」に対峙(たいじ)している。この地域でロシア軍にとって鍵となる目標は、スロヴィヤンスクとその南のクラマトルスクを掌握することだ。両都市ともドンバス地方全域を支配するための要衝となる。
そしてこの戦争は、軍事的にこれまでとは異なる段階に入った。今までより広い土地で、今までより良い天候の中、戦闘が繰り広げられる。戦車と機械化歩兵、そして何よりも敵の装甲車がなだれ込んでくる前に相手の防衛を殲滅(せんめつ)するよう設計された大砲を駆使して。
しかし、これはそれほど単純なプロセスではない。
ロシアの攻勢は出遅れ、ウクライナのJFOはロシアの進軍を食い止めている。おかげで、今頃はここまで到達しているはずとロシア側が想定していたほどの前進は、まだ実現できていない。これによってウクライナ側は貴重な時間を稼いだ。戦闘が本格化する前に、それぞれが重火器を前線に投入しようと、今は「ヘビーメタル(重火器)の競争」が進行中だ。これは今後数週間でさらに状況が進むだろう。
しかし、ドンバスで何が起きたとしてもそれは、さまざまな敗北の選択肢から何かを選ぶ機会を、プーチンに与えるに過ぎない。
(以下略)
記事中、「結局のところ、ウクライナほど巨大な国を圧倒的に支配するには、ロシアの軍勢は小さすぎた」とありますが、このことについては3月20日づけ「「北朝鮮」報道化したロシア報道:怪しげな情報源によるもの、希望的観測の継ぎ接ぎ等々」でも述べたとおり、20万弱の兵力でウクライナ全土を占領統治することはそもそも無理です。全兵力を束にしてぶつけても不可能です。算数の問題として、ロシアが用意した兵力規模から見てウクライナ全土を直接統治する気はもともとなかったと考えるべきではないでしょうか?
また、NATO諸国との緩衝地帯を求めているロシアが自ら西進してNATO諸国と国境を接することも考えにくいものです。具体的にどの程度の領域を緩衝地帯化すればロシアとして安心できるのかについては、私はそこまで地政学に詳しくないので分かりかねるところです(ウクライナ全土を緩衝地帯化すればいいのか、ドンバスはロシアに併合してしまっても構わないのか、それともヘルソン州を含むいわゆるノヴォロシアのかなり広大な領域までも併合してしまって構わないのかは私には分かりません)が、流石にNATO加盟国であるポーランドとの国境地帯まで併合してしまっては緩衝地帯にはならないでしょう。やはり、ウクライナ全土を直接統治する気はもともとなかったと考えるべきではないでしょうか?
初めからロシアが軍事力を使うことでウクライナ政府に強制できたプランは、チェコ事件のように政権首脳部を無理やり交代させるパターンか、あるいは、冬戦争のように現政権首脳部を「痛い目」に合わせて「思い知らせる」パターンしかありませんでした。いくらプーチン・ロシア大統領が「裸のツァーリ」でも、こんなことまで分からないとは考えにくいものです。プランA・Bの解釈に違和感を覚えます。
そもそも客観的に不可能であり、主観的にその意志があったのかも疑わしい「計画」が現実のものにならなかったからといって、「失敗」だと言い立てることに非常に違和感を感じます。「北朝鮮」報道と同じ過ちを犯しているように思えてなりません。
プランCの解釈については、たしかに、ロシア側としてはゼレンスキー・ウクライナ大統領が早々に白旗をあげてウクライナ全土を衛星国化できればラッキーだと思っていたでしょう。しかし、プーチン大統領の開戦時演説を振り返るに、ドンバス地方の「防衛」こそが戦争目的の核心だったと推察できます。このことは、今日のプーチン氏演説にも色濃く現れています。
「Victory Parade on Red Square」(ロシア大統領府:演説全文の英訳)
「「祖国防衛は常に神聖」 プーチン大統領演説要旨」(2022年5月9日 20:01 日本経済新聞)
ちなみに、勇ましいことは言うが自己保身第一であり、その問題に関しては驚異的に鋭敏なアンテナを持っている日本のジャーナリストたちが「現地取材」と称して、ほぼ安全な西部リヴィウを一貫して取材拠点としているあたり、ロシア側としては戦火をウクライナ全土に広げる意志はもとより乏しいことは明白だったように思われます。
ウクライナ軍はたしかに敢闘しました。しかし、いまのところロシアの「野望」は完全には達成されていないものの「戦争目的」は(辛くも)達成されています。記事におけるプランA・Bに対する断定的評価に対してプランCに対する評価は少々控え目です。プランC自体が現在進行形だということも大いに影響しているのでしょうが、現在の「膠着状態」にある戦況を見るに少し弱気の評価にならざるを得ないのかもしれません。
結局、ロシアとしてどこまでが「歴史的ロシア」と言い得るのか、そして、どの程度の領域を「中立化」できればロシアとしてNATO諸国との緩衝地帯として安心できるのかがカギになってくるように思われます。つまり、何を以って「勝利」とするのかという問題です。
権力にとっての最大の関心事は政権転覆の危険性ですが、ロシアの国家権力としては、国内・国民世論の不安定化こそが真の脅威であり外野が騒いでいるくらいならばそれほど脅威になると思っていないように見受けられます。もとよりロシアは対外的に支持・共感されようとは思っておらず、対内的にストーリーが完結していれば構わないと思っているように見受けられます。
「勝利」の水準設定は一元的にプーチン大統領による裁量の範囲内です。彼は先日「ウクライナでの軍事作戦で「全ての目標を無条件で達成する」と強調した」といいます(「ロシア大統領、欧米介入には軍事対応も ウクライナ作戦「目標達成する」 英報道「核への言及」と警戒」4/28(木) 8:42配信 時事通信)。何を以って目標達成とするかは、ロシア政府の一存です。最後は荒唐無稽的であっても「勝利」を言い張ることでしょう。
関連記事:3月20日づけ「「北朝鮮」報道化したロシア報道:怪しげな情報源によるもの、希望的観測の継ぎ接ぎ等々」