ウクライナ軍、戦車やミサイルなど「50%を失った」…損害情報を積極的に開示開戦から間もなく4か月。最近になってウクライナ軍が戦車やミサイルなどを最大で50%を失ったという報道が出てくるようになってきました。
6/18(土) 12:01配信
読売新聞オンライン
【キーウ(キエフ)=深沢亮爾】ウクライナ軍のウォロディミル・カルペンコ地上部隊後方支援司令官は、ロシア軍とのこれまでの戦闘で、歩兵戦闘車約1300台、戦車約400両、ミサイル発射システム約700基など、それぞれ最大で50%を失ったと明らかにした。
15日付の米軍事専門誌「ナショナル・ディフェンス」とのインタビューで語った。ゼレンスキー政権は最近、戦死者数を含めた損害に関する情報を積極的に開示している。米欧に武器供与の加速を促す狙いとみられる。
(以下略)
損耗率50%といえば通常は「全滅」というべきレベルの損害です。3か月前、ロシア軍の損耗率分析に関連して次のような記事が配信されました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/50f03595b777ad72c4701c25f5dd940c3e1d3166
『ロシア軍の"損耗率"から読み解く、ウクライナ戦争のゆくえ』ご丁寧に「10%の損耗で戦闘行動に支障」「15%の損耗で部隊交代や人員の補充・再編成が必要」「損耗率20%でほぼ戦闘不能」「損耗率30%で戦闘不能」「50%で全滅」と分かりやすく説明してくれています。
3/25(金) 18:00配信
週プレNEWS
2月24日にウクライナへの侵攻を開始したロシア軍。短期決戦に失敗したことで、当初の作戦の変更を余儀なくされている。その矢先、3月24日にロシア海軍の戦車揚陸艦を、黒海の港・ベルジャンシク港で爆発撃沈したとウクライナ海軍が発表した。
泥沼化する気配も漂う戦いが続いているが、戦争の動向は「損耗率」から読み解くことができるという。元・陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍元陸将補に解説して頂いた。
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3月23日の報道によると、アメリカ国防省高官が、ロシア軍は開戦1ヶ月で総兵力19万人の内、その10%を喪失していると発言した。
「部隊の損耗率で、戦争が継続できるか否かの目安がわかる」と二見元陸将補は語る。
「部隊の10%の損耗で、戦闘行動に支障が出始めます。これが15%になると、部隊交代や人員の補充・再編成(新たな人員の補充と損耗した部隊の補充)が必要となります」
"部隊交代"とは、損耗した最前線の部隊を後方に下げ、充足率100%の部隊と入れ替えることだ。これをサッカーに例えるならば、疲れたフォワードの選手交代に当たるだろう。
さらに3月23日のアメリカメディアの報道によると、ロシア軍は1ヶ月の侵攻で死傷者・行方不明者・捕虜の合計が約4万人にのぼるとの数字が出たという。
そうなると、最初に投入したロシア軍総兵力19万人の内、損耗率は約21%になる。
「戦闘部隊は、損耗率20%で"ほぼ戦闘不能状態"となります。損耗率30%で"戦闘不能状態"、50%で"全滅"と判断されます」
21%は半全滅と考えてもよい。そうなれば、ロシア軍は部隊交代や人員の補充・再編成を行うための戦線の整理が必要となってくる。
ウクライナ軍は3月23日に、キエフ東方20−30キロにいたロシア軍を、中心部から55キロ後退させるのに成功したと発表している。
「ロシア軍部隊の損耗が激しいため、部隊を後方に下げたというのが正しい見方だと思います。しかし、それだけウクライナ軍が善戦している証です。ロシア軍には今、攻勢戦力が圧倒的に足りません」
(以下略)
3か月前といえばウクライナ軍が予想外に善戦し「国際社会」ことアメリカとその追随国が沸いていた頃。それだけに一般人にはなじみのない損耗率の「意味」が詳しく解説されている上掲記事です。たしかに当時のロシア軍の損耗は大きく、現在の戦線膠着はこの損耗が今だに一部尾を引いているという見方も可能でしょう。
これに対して今回のウクライナ軍の損耗率分析報道。各社の報道をザッと見る限り、3月のロシア軍の損耗率分析報道と異なり「損耗率50%」が意味するところが正確に報じられていないように思われます。
「損耗率50%で全滅」というのは一般人の感覚とは異なるものです。一般的な意味における「全滅」とは本当に一人残らず死んでしまうことをイメージするものです。緩く定義しても「戦闘可能な人員が10%以下」といったイメージではないでしょうか? 半分も残っていれば一般的な感覚から言えば「厳しいが、まだ行けるはず」という印象です。とりわけ「ウクライナ軍は『士気が高い』から踏みとどまるだろう」という印象を持ってしまいがちです。
しかしながら、戦争というものは高度に組織的に遂行するものであり、軍隊はシステムです。システムの構成要素のうち半分が撃滅されてしまえば、兵員や戦車・装甲車などが「まだ半分も残っている」としても、もはやシステムとして正常な機能は期待できないでしょう。その意味において「50%で全滅」なのです。
日本にとってロシアは敵性国家なので「敵の敵は味方」の論理によりウクライナは「味方」になります。味方が被った損耗率の正確な意味に触れようとしない・・・むしろ、素人の「勘違い」を幸いとして「まだまだ戦える」という印象操作さえ狙っているようにも思われます。退却を転進と言い換えていた頃と基本的に進歩がないようです。
